木走日記

場末の時事評論

新聞社説の漢字「戦」の熟語『戦争』使用率を徹底検証〜実は「戦争」が一番好きなのは朝日社説

 72回目の終戦記念日を迎えました。

 さて日本の新聞では、終戦記念日に、普段は2本掲げる社説を1本に絞り長文の社説を掲げるのが恒例になっております、今年もこんな感じ。

【朝日社説】72年目の8月15日 色あせぬ歴史の教訓
http://www.asahi.com/articles/DA3S13087266.html?ref=editorial_backnumber

【読売社説】終戦の日 平和の維持へ気持ちを新たに
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170814-OYT1T50098.html

【毎日社説】きょう終戦の日 目指すべき追悼の姿とは
https://mainichi.jp/articles/20170815/ddm/005/070/097000c

【産経社説】終戦の日 「名誉」は守られているか 真の歴史知り危機に備えたい
http://www.sankei.com/column/news/170815/clm1708150001-n3.html

【日経社説】わだかまりなく戦没者を追悼したい
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO19988080V10C17A8EA1000/

 さて夏休みの読者も多いでしょうからお時間のある読者は是非各紙の「力作」を直接お読みいただくとして、当ブログとしては少し角度を変えてこのマスメディア5紙の終戦記念日社説を読み比べてみたいと思います。

 それぞれの社説は長文なのですが、おおむね終戦記念日に掲げる内容は各紙のスタンスが反映されており、まあその内容は代わり映えがしない(失礼)といいますか、読者の想像のとおりなわけですが、ここで当ブログとして着目したいのは「戦」という漢字の使われ方並びに使用頻度なのです。

 5大紙を保守系、リベラル系で色分けすれば、リベラル色が強い順に、

 朝日>毎日>日経>読売>産経

 の並びになるでしょうか、まあ、異論ある読者も中にはいるかもですが、おおむね同意いただける評価だと思います。

 で、各紙の終戦記念日社説における、「戦」という漢字の使われ方並びに使用頻度なのであります。

 これちょっと調べてみたのですが明らかに興味深い傾向が見られるのであります。

 まずは朝日社説、出現回数は20回です、以下出現順に列挙。

戦争
戦地
戦時下
戦中
不戦
戦争
戦争
戦時下
戦争
戦争
戦線
戦地
戦争
戦争
戦争
大戦
戦争
戦争
戦争
戦前

 読売社説は13回。

終戦
終戦
戦没者
大戦
戦後
冷戦
戦争
戦力
大戦
作戦
戦略
抗日戦
戦後

 毎日社説は26回。

終戦
終戦
戦没者
戦争
戦没者
不戦
戦没者
戦争
戦争
太平洋戦
戦災
終戦
非戦闘員
戦没者
作戦
戦陣訓
戦後
戦犯
戦争
戦争
敗戦
戦争
戦争
戦後
不戦
戦争

 産経社説は12回。

終戦
終戦
終戦
参戦
敗戦
終戦
終戦
戦後
敗戦
戦争
戦争
終戦

 最後、日経社説は18回です。

戦没者
戦後
終戦
大戦
沖縄戦
戦後
沖縄戦
戦い
戦没者
沖縄戦
戦後
戦地
戦争
戦場
戦争
戦犯
戦没者
戦前
戦争

 以上、終戦記念日の社説で「戦」という漢字が使用されたのは5紙の社説合わせて90回なわけですが、今度はその使われ方に注目すると興味深い傾向がはっきり浮き出てきます。

 「戦争」という熟語での出現頻度に明らかに差があるのです。

 「戦争」出現数多い順にまとめると以下のとおり。

朝日 11回/20回 55.0%
毎日  8回/26回 30.8%
日経  3回/19回 15.8%
産経  2回/12回 16.7% 
読売  1回/13回  7.7% 

 上記表の各行の%表示は、「戦」という漢字の出現回数のうち「戦争」という熟語で出現した「漢字「戦」の熟語『戦争』使用率」(ああ、わかりづらい(苦笑))であります、朝日社説をみてください、ぶっちぎりの55%であります。

 終戦記念日の社説における「『戦争』出現回数」を比較すると、どうでしょう、

 朝日>毎日>日経>産経>読売

 と、見事にリベラル系>保守系の色分けが、くっきりと浮き出るのでございます。

 これは何を意味するのか。

 当ブログの考察は単純です、それは「戦争」という単語がすでにリベラル系により「印象操作」が繰り返され、残念ながら香ばしい「香り」が付着してしまい使いづらい単語になってしまったからです。

 かつて「反戦」「平和」など数々の単語が、一部リベラル系によりその活動の主張に乱用されある種の「印象操作」により、本来の純粋な意味を失い、残念ながらある種の香ばしい「香り」が付着してしまったのはみなさんご承知の通りであります。

 最近では「民主」という伝統ある単語が同じ運命にあいました、一部リベラル系により、悪のレッテルを貼られてしまったわけです。

 今まさに、「戦争」という言葉が、「戦争=悪」という単純な構造を有するリベラル系の論説により、使いづらい香ばしい単語になりつつあるわけです。

 「戦争」という単語を使用すればするほど、現実を見据えた安全保障上の冷静な議論がしづらくなる傾向があるのではないでしょうか。

 以上、反戦とは裏腹に「戦争」という単語が大好きなのは実は朝日社説であることが実証されたのであります。

 なんだかなあ・・・

 ふう。



(木走まさみず)