木走日記

場末の時事評論

「最も温かい人類愛を有するのは韓国」(中央日報)〜これはもはや時事論説ではない、ポエムなのだ!

 
 
 
 韓国メディアで韓国人記者の手によるすごい論説が話題になっております。
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 安倍首相は今こそ訪韓すべきだとの主張であります。
 
 安倍首相の訪韓を求めること自体はそれほど違和感はないのではありますが、問題はその結論を得るまでの論理展開です、恐ろしいほどの自国中心の主観と日本に対する対抗心、怨嗟と嫉妬の感情がむき出しでありまして、一読した後当ブログは鳥肌が立つ思いでありました。
 
 なんだ、この”凍てつく波動”のようなマイナスエネルギーが充満している論説は! 
 なんだこのむき出しの自国中心主義は! 
 これは是非読者の皆さんにご紹介しなければと考え、今回はこの韓国中央日報のたいへん興味深い論説を取り上げたいと思います。
 

 2015年06月11日08時47分
【時視各角】安倍首相、今が訪韓の絶好の機会だ
http://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=201650&servcode=100§code=140

 論説の書き出しは、2002年SARSが中国を襲ったとき、世界各国の駐在官は我先に逃げ出したのに「その時、韓国はどうだったか。」「韓国人は撤収しなかった」とご自慢の話から始まります。

2002年11月、重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国を襲った。翌年7月まで中国はパニックだった。世界各国は駐在官・企業はもちろん、自国民を一斉に撤収させた。

その時、韓国はどうだったか。当時の金夏中(キム・ハジュン)駐中大使の著書『神様の大使』によると、韓国人は撤収しなかった。撤収どころか「SARS対策委員会」を設置し、寄付金を集めて中国に伝えた。盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領は7月初めに中国を訪問し、SARS発生後に初めて中国を訪問した国家元首となった。参謀が引き止め、中国政府も「来なくてよい。理解する」と伝えたが、盧大統領は訪中を強行した。当時、中国との関係が深まったのは、盧武鉉のこうした勇気と誠意があった。

 次に、2011年、東日本大震災が日本を襲ったとき、世界各国の脱出ラッシュが続いた中、「その時、韓国はどうだったか。」「韓国の119救助隊は真っ先に日本に到着」「国民の寄付は過去最大を記録」とご自慢です。

2011年3月11日、東日本大震災が発生した。この年、日本はまさにパニック状態だった。世界各国の脱出ラッシュが続いた。

その時、韓国はどうだったか。韓国の119救助隊は真っ先に日本に到着した。企業の支援も相次いだ。サムスン・LG・ポスコが人命救助団と医療スタッフを派遣し、1億円ずつの寄付と救援物資も伝えた。国民も過去のことは伏せて、苦しんでいる時は助けようと動いた。「いい気味だ」と皮肉る人はむしろ激しく非難された。国民の寄付は過去最大を記録した。当時の武藤正敏駐韓日本大使は「韓国は日本の真の友人」と感激した。

 韓国が中国や日本に過去こんなに優しくしてあげたのに、2015年韓半島にMERSが上陸した現在、「中華圏のネットユーザーは韓国たたきに余念がない」「日本や中国で韓国を助けようとか、医療スタッフを派遣するとか、寄付金を集めたとかという声は全く聞こえない」とお怒りです。

場面が変わって2015年6月。今度は韓半島朝鮮半島)に中東呼吸器症候群(MERS)が上陸した。SARSのように感染力が高いわけではない。放射能のように致命的なものでもない。それでも香港・台湾・中国など中華圏のネットユーザーは韓国たたきに余念がない。MERS接触者が香港行きの飛行機に乗ったことなどを理由に「利己的な韓国人」 「MERS輸出国」という非難が相次いでいる。一般市民はそうだとしよう。香港防疫当局は医療スタッフ交流を中断した。中国国務院側は「韓中言論人交流」を無期限延期した。それも前日に「来るな。MERSのため」と一方的に通知した。

日本や中国で韓国を助けようとか、医療スタッフを派遣するとか、寄付金を集めたとかという声は全く聞こえない。もっとも日本は韓国が温情を見せた大震災当時にも1万トン以上の原発の水を隣国の我々に通知もせず無断放流した。最近は福島産水産物の輸入を禁止したとして世界貿易機関WTO)に韓国を提訴した。台湾・中国は輸入を全面禁止しているが、韓国だけをターゲットにしたのだ。

 で、ここ一番いろいろな意味でぐっと鳥肌が立つ箇所ですが、今回のMERSの件で「韓日中、隣接する3カ国のうち韓国が最も温かい人類愛と大人君子の姿を備えたという事実が確認された」のだそうであります。

もちろん受けようとして施すのは温情でない。薄情に感じるが、慰めもある。韓日中、隣接する3カ国のうち韓国が最も温かい人類愛と大人君子の姿を備えたという事実が確認されたということだから。それでも最近、MERS初期防疫の失敗と一部の市民の逸脱行為のため、自らを蔑んで自嘲する声が高い。我々の中でそうする理由はなく、そうしてもならない。

 で、今安倍首相が訪韓して「MERS完治患者と抱擁する姿を見せれば」なおよいと提案します。

この際、突飛な提案を一つしてみる。安倍晋三首相の訪韓だ。安倍首相には、中華圏がSARSのトラウマで韓国に背を向けた今が絶好の機会だ。ちょうど22日が韓日国交正常化50周年だ。手続き・格式・議題も必要ない。失意と苦痛を感じる韓国国民に隣人として友人として深甚な慰労のために訪問することで名分は十分だ。訪米を延期した朴槿恵(パク・クネ)大統領も断りにくいだろう。MERS完治患者と抱擁する姿を見せればなおさらよい。

昨年4月のオランダ・ハーグ韓日米首脳会議で、安倍首相は朴大統領に先に近付いて韓国語で挨拶した。朴大統領はそっぽを向いた。振り返ってみると、当時の場面を通じて安倍首相はそれなりの成果を得た。韓日関係悪化の責任を朴大統領に転嫁できるようになったのだ。

 「今回を逃せば、安倍首相に対して凍りついた韓国国民の心をなだめるこれ以上の機会はない」この論説は結ばれています。

多くの韓国国民は安倍首相が表面では和解と協力をいうが、内心は慰安婦真実の歪曲と神社参拝、独島(ドクト、日本名・竹島)争点化を進めていると考えている。あの時の挨拶がショーではなく誠意だったと信じさせるには今が機会だ。今回を逃せば、安倍首相に対して凍りついた韓国国民の心をなだめるこれ以上の機会はない。

イ・ジョンジェ論説委員

 そうか、当ブログがこの興味深い論説を一読して、”凍てつく波動”のようなマイナスエネルギーが充満しているのを感じたのは「安倍首相に対して凍りついた韓国国民の心」をイ・ジョンジェ論説委員が代弁していたからなのかもしれません。

 なんといいますか、全編を通じて事実について論じる客観的な「時事論説」を読んでいるというよりも、一つの「芸術作品」例えば私小説のようなひとつの確固たる独自の世界観に基づく「物語」を読んでいるような読後感がありますです。 
 前半の「 その時、韓国はどうだったか」の連呼も、くどくて素敵(苦笑)ですが、とくに素敵だなと思った描写がやはりここ。

「韓日中、隣接する3カ国のうち韓国が最も温かい人類愛と大人君子の姿を備えたという事実が確認された」

 「最も温かい人類愛」「大人君子の姿」とか、これ「自画自賛」とかのレベルを突き抜けた表現でしょ、普通大新聞の時事解説コラムでここまで自国の賞賛なんて、恥ずかしくて普通書けません。
 
 ・・・
 
 もちろん事実を曲解しまくっている箇所が多すぎですので、個別に反論は可能なのですが、ここまで行き着くとこまで妄想世界が「芸術」レベルにまで達するとなると、これはこれで一目置きたい、今回は批判せず、ただこの「作品」を愛でるのみにとどめたいと思います。

 「最も温かい人類愛を有するのは韓国」
 
 これはもはや時事論説ではない、ポエムなのであります。 
 
 
(木走まさみず)