木走日記

場末の時事評論

この局面で韓国メディアよりも突出する朝日新聞の日本政府・安倍政権批判

前回のエントリーの続きです。

中国には沈黙し日本には激しく干渉し報復する韓国〜ここまで来るとこれはもう心の問題なのかもしれない
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/03/06/141823

日本政府は5日、中国・韓国からの入国者(国籍問わず)に対し指定場所での2週間の待機を要請することや中国人・韓国人に対する査証(ビザ)免除制度の一時停止、入国拒否の対象地域の拡大といった水際対策強化を発表しました。

これに対し中国は日本政府の水際対策強化に理解を示します。

対して韓国はこれに猛反発、早速日本に対して報復措置に出ました。

今回は本件に関し、日韓メディアの論説を検証いたします。

まず、韓国左派メディアの代表であるハンギョレ新聞は、「[社説]安倍政府「韓国からの入国制限」撤回を」を掲げます。

[社説]安倍政府「韓国からの入国制限」撤回を
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/35958.html

社説は「問題解決のために日本が先に韓国からの入国制限措置を撤回するのが正しい」と主張します。

 日本政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡散防止のためとしたが、韓国政府と事前協議や予告なしの一方的な措置だ。安倍政権が初期防疫に失敗した責任を無理やり押し付けようとする意図と見られる。ただでさえ悪化していた韓日関係により一層の悪影響を及ぼすことが明らかだ。問題解決のために日本が先に韓国からの入国制限措置を撤回するのが正しい。

社説は、「韓国の透明かつ体系的な防疫システムは国際社会でも高く評価されている」と自画自賛し、上から目線で「日本も今回少なくない弱点を見せた」が「日本政府の前向きな措置をあらためて促す」と日本政府から入国制限を撤回せよと主張して、結ばれています。

 韓国国内の感染者は6千人を超えたが、累積検査数が16万余り件に達するなど、韓国の透明かつ体系的な防疫システムは国際社会でも高く評価されている。日本も今回少なくない弱点を見せたが、優秀な防疫システムを備えているという評価を受けている。韓日両国は臨床経験や情報共有などで緊密に協力して共に感染病退治に立ち向かう姿勢を整えることが必要だ。日本政府の前向きな措置をあらためて促す。

左派文在寅ムン・ジェイン)大統領政権を支持する左派ハンギョレのこの社説は、ほぼ韓国政府の言い分をなぞっていると言ってよろしいでしょう。

そこには中国政府が同様の措置を韓国にしたときは沈黙を守ったのに、日本政府の措置にだけ感情的に激しく反発するという韓国政府のダブスタには、一切触れられていません。

一方、韓国保守メディアの代表・朝鮮日報は「【社説】日本はやっと中国を遮断、世界から孤立する韓国は日本にだけ憤怒」を掲げます。

【社説】日本はやっと中国を遮断、世界から孤立する韓国は日本にだけ憤怒
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/07/2020030780012.html?ent_rank_news

社説は、「韓国が間違っている」と左派政権を断罪します。

 感染者が多い国に対する入国制限は、防疫の次元からどの国も検討することは可能であり、それを非難することはできない。中国人の入国を遮断しない韓国が間違っているのだ。

日本の措置は問題があると指摘したうえでですが、「中国に対して一言も言えない政府が、ただ日本に対してだけは激しい怒りを表出している」と「世界100カ国以上の国から入国制限を受けている韓国政府」を嘲笑いたします。

 注視すべきことは中国の態度だ。中国共産党の宣伝機関はこの日、日本による中国人の入国制限について「理解できる」との考えを示した。日本と事前の交感があったようだ。ところが世界100カ国以上の国から入国制限を受けている韓国政府はこれまで一度も対抗措置について言及しなかった。今も韓国国民800人が中国で強制隔離されている。この中国に対して一言も言えない政府が、ただ日本に対してだけは激しい怒りを表出している。青瓦台と政府が総動員し「その意図が疑われる」という非外交的な言辞まで使った。選挙を前に「反日竹槍歌」をもう一度歌うチャンスとして活用するだろうか。

左派文在寅ムン・ジェイン)大統領を激しく批判してきた保守メディアだけあって、広い視点から政権批判をしているのが印象的です。

最後に日本の朝日新聞の社説を取り上げましょう。

(社説)中韓入国制限 説明なき転換、またも
https://www.asahi.com/articles/DA3S14393335.html?iref=pc_rensai_long_16_article

社説は冒頭から結びまで全編、日本政府・安倍政権を徹底的に批判しています。

冒頭、「またも唐突な方針転換である。その必要性や効果について、納得のいく説明もない」と今回の措置の批判から始まります。

 またも唐突な方針転換である。その必要性や効果について、納得のいく説明もない。「国民の不安感の解消」を目的に掲げながら、これではかえって混乱を助長しかねない。

「中国では武漢以外での感染拡大の勢いが弱まり、韓国は全土に感染が広がっている状況とはいえない」のに、「どれほどの意味があるのだろうか」と批判します。

 政府はこれまで、中国については感染源となった武漢市を含む湖北省など、韓国では集団感染が発生した大邱やその周辺などに限って、入国を拒否してきた。中国では武漢以外での感染拡大の勢いが弱まり、韓国は全土に感染が広がっている状況とはいえない。

 にもかかわらず、いま両国の全域を一律に対象とすることに、どれほどの意味があるのだろうか。感染者が急増しているイタリアやイランの扱いとも整合性がとれない。

安倍首相の「科学的な根拠に基づかない「政治判断」は、大規模イベント自粛や全国一斉休校の要請に続く」ものだと批判します。

 それでも、首相が事前に専門家会議の意見を聞いた形跡はない。科学的な根拠に基づかない「政治判断」は、大規模イベント自粛や全国一斉休校の要請に続くものだ。

今回の措置が「首相の支持基盤である保守層」つまり「支持層を意識したアピールだとしたら、不見識」だと批判します。

 また、首相の支持基盤である保守層からは、「中国全土からの入国拒否」を強く求め、首相の対応を「中国に甘い」と批判する声もでていた。中国の習近平(シーチンピン)国家主席の訪日延期を発表した直後というタイミングでの、支持層を意識したアピールだとしたら、不見識である。

朝日社説は最後に、「合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相」と安倍首相を痛罵して結ばれています。

 新型コロナウイルスを対象に加える新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が成立すれば、人権の制限を伴う措置が可能となる緊急事態宣言を首相ができるようになる。しかし、合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相に、その判断を委ねるのは危ういと思わざるを得ない。

・・・

ハンギョレ朝鮮日報朝日新聞と、日本と韓国主要3紙の、3月7日付けの社説を読み比べて検証いたしました。

検証したとおり、冷静に韓国政府を批判しているのは朝鮮日報だけであり、左派ハンギョレ朝日新聞は韓国政府批判には全く触れられてもいません。

一方日本政府批判は濃淡はあるものの3紙全てその論説で取り上げられていますが、朝日新聞社説は韓国左派ハンギョレ社説よりも、強烈に日本政府を批判しており、特に「合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相」と安倍首相を痛烈に罵(ののし)っているところが非常に目立ちます。

この局面で、韓国メディアよりも、視野狭く日本政府・安倍政権だけを痛罵する日本の朝日新聞社説なのでした。



(木走まさみず)