木走日記

場末の時事評論

「新型コロナウイルスに感染力に差がある2つの型が存在」(中国論文)について検証(訂正あり) 

新型コロナウイルスについて、最新の話をご提供いたします。

中国の研究チームは、新型コロナウイルスが大きく2つのタイプに分類できて感染力に差があるとの研究結果を発表しました。

北京大学の研究者らは新型ウイルスの遺伝子分析を行い、論文を発表しました。

発表された論文はこちら。

On the origin and continuing evolution of SARS-CoV-2
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwaa036/5775463#supplementary-data

24ページの論文本文はPDFファイルで公開されています。

これは大変興味深いです。

論文によりますと、103個のサンプルを分析した結果、新型ウイルスが「L型」と「S型」と呼ばれる大きく2つのタイプに分類できるということです。2つのうち全体の約7割を占めるL型の方が感染力が強いとされ、一方のS型はコウモリから検出されたコロナウイルスの遺伝子と似ていることから、より古くから存在していたとみられます。

論文本文の21ページの図5(Figure 5. )に注目してください。

f:id:kibashiri:20200308174704p:plain

論文によれば、図の下に赤く示されている"S Type"(「S型」)は、コウモリから検出されたコロナウイルスの遺伝子と似ていることから、より古くから存在していたと推測されています。

<ここから訂正 2020/03/09>
初期の武漢で蔓延したタイプを新型のLタイプではなく旧型のSタイプと読み間違い、また重症性など間違った前提の推測をしてしまいました。

推測部分は全面的に削除し、以下のように論文の概要の説明にとどめておきます。

<ここから追加 2020/03/09>
論文によれば、その後、遺伝子の変異により図の上に青く示されている"L Type"(「L型」)が生まれました。

この"L Type"(「L型」)は、発生初期の武漢周辺で重篤な症状を多く発生させました、武漢で多くの死者が発生したのはこの「L型」によるものだと推測されます。

L型は発生の初期段階で現在より一般的でした

現在ではLタイプ(〜70%)はSタイプ(〜30%)とあり、武漢では、L型の頻度は2020年1月初旬以降減少しました。

感染拡大を阻止するための人的介入により、より攻撃的で、より速く広がるLタイプにより厳しい選択圧力がかかった可能性があります。

Sタイプは進化的に古く、攻撃的ではないため、比較的弱い選択圧のもとで、相対頻度が増加した可能性があります。

<ここから削除 2020/03/09> 
この"S Type"(「S型」)は、発生初期の武漢周辺で重篤な症状を多く発生させました、武漢で多くの死者が発生したのはこの「S型」によるものだと推測されます。

"S Type"(「S型」)は、感染者を早い段階で重い症状にするために、感染者が移動して他者にウイルスを拡散する可能性は低かった、つまりその感染力は弱かったと推測されます。

論文によれば、その後、遺伝子の変異により図の上に青く示されている"L Type"(「L型」)が生まれました。

この"L Type"(「L型」)は、症状が無症状であったり軽症であったりするために、強い感染力を示していると推測されています、武漢以外の中国国内の致死率が低いのは、主にこの"L Type"(「L型」)が流行しているためと推測されます。

論文によれば、現在は感染力は弱いが重症化しやすい旧タイプの"S Type"(「S型」)は30%、感染力は強いが症状は軽い傾向にある新タイプの"L Type"(「L型」)は70%と主流になっています。

ここからは論文の内容から推測できる将来についてです。

将来の予測として、致死率が高く感染力が弱い"S Type"(「S型」)は、かつてのSARS、MERSのようにやがて収束する可能性が高いと思われます、感染者の致死率が高いためでもあります。

一方、症状の軽い(しかし感染力が強い)"L Type"(「L型」)は、収束はせず広範囲に流行を続け、やがてこれまでのインフルや感冒と同様に多くの人が抗体を保有するようになり、おそらく毎年流行るウイルスの一種として残ると思われます。

図に示します。

図は削除
※中国論文より『木走日記』作成

もし、このレポートの内容が正しいとすれば、これは我々にとって、対策をとるための指標になる朗報となりましょう。

新型コロナウイルスに二つのタイプがあることを前提にすれば、致死率が高く感染力が弱い"S Type"(「S型」)こそを徹底マークして収束すべく対処していくことが重要になります、そしてそれはSARSなどの過去事例からほぼ短期間で実現できるでしょう。

一方、症状の軽い(しかし感染力が強い)"L Type"(「L型」)は、流行を阻止することは不可能です、長期的に流行を繰り返すでしょう、やがて毎年流行する感冒やインフルなどに、一種類このウイルス由来の風邪が増える程度の存在となることでしょう。

この論文は、暗中模索であった新型ウイルス対策に、具体的な対策を科学的裏付けを持ってもたらす可能性が十分にあると思います。

このエントリーが読者の皆様の参考になれば幸いです。

大変失礼いたしました。


(木走まさみず)