木走日記

場末の時事評論

安倍政権の初動の遅れはインバウンド政策が背景にあったことは明らかだが、安倍批判を繰り返す朝日新聞が実はYouTubeで便乗商売してる件

WHOのテドロス事務局長は2日、スイスのジュネーブの本部で開いた会見で、感染が広がっている韓国、イタリア、イラン、そして日本について非常に懸念していると述べました。

あわせて、「8か国ほどでは最初の感染確認から2週間以上新たな感染が確認されておらず封じ込めができている」と、封じ込めは可能だという見方を示しました。

WHO「韓国 日本など非常に懸念」も「封じ込め可能」
2020年3月3日 7時15分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200303/k10012310821000.html

たしかに、3月4日現在、中国以外の感染者の多い国を列挙しますと、韓国5328人、イタリア2502人、イラン2336人、日本1001人(クルーズ船除くと296人)、フランス212人、ドイツ196人、スペイン165人、アメリカ122人、シンガポール110人、香港100人と、この10ヵ国・地域が100人以上の感染者が発生しています。

WHOのテドロス事務局長はこの状況を見て、中国を除いて感染者数の多い4ヵ国を名指しして懸念を示したのでしょう。

一方現時点で「感染確認から2週間以上新たな感染が確認されておらず封じ込めができている」国があるのも事実であります、例えばベトナムは感染者数16人(すでに全員完治退院)で封じ込めています。

ジャーナリストの木村正人氏は、BLOGOSでベトナムの成功事例を日本と対比して分析しています。

木村正人
新型コロナウイルスベトナムはなぜ封じ込めに成功し、日本はドタバタしてしまうのか
https://blogos.com/article/440074/

木村正人氏がエントリーの中で、ベトナム政府と日本政府のウイルス対策を時系列でその対比をまとめています、失礼して日本部分を抜粋してご紹介。

1月
15日武漢滞在歴がある患者から新型コロナウイルス確認
21日中国全土を感染症危険情報レベル1(注意喚起)に
23日武漢便を運休
24日湖北省感染症危険情報レベル3(渡航中止勧告)に
29日武漢市在留邦人家族計828人の退避始まる
30日WHOが緊急事態宣言
30日新型コロナウイルス感染症対策本部初会合
2月
1日湖北省に滞在していた外国人の入国拒否
1日新型コロナウイルスを指定感染症
3日クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の検疫開始
6日中国便の運休拡大
13日浙江省滞在歴のある外国人の入国拒否
16日初の専門家会議
19日クルーズ船からの下船始まる
24日専門家会議で「今後1~2週間が瀬戸際」と見解
25日新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
25日一部地域で小規模な患者クラスター(集団)が発生
27日首相が全国の小中高に臨時休校を要請
27日韓国・大邱周辺に滞在していた外国人の入国拒否

中国で大型連休が始まる1月21日時点で、日本は中国人に対する入国拒否はしませんでした、注意喚起(中国全土を感染症危険情報レベル1に)(注意喚起)のみで、結果として多くの武漢出身も含まれる中国人旅行者を国内に受け入れてしまいました。
日本政府が「湖北省に滞在していた外国人の入国拒否」したのは2月1日でした。

この政府の初動の遅れが日本で感染者数をここまで増やしてしまった主要な要因であることは否定できません。

少なくとも韓国と日本の感染者増大は、両政府の中国武漢周辺からの入国拒否対策が大きく遅れたことが主因でしょう。(もっとも、早くから中国人の全面入国拒否をしたアメリカが上述したように122人と感染者がここにきて増え始めていますことも留意が必要ですが)

日本はこれまで国を挙げてインバウンドすなわち年間訪日外国人4000万人を目指していたわけです。

今年東京オリンピックを迎えることもあり、あるいは中国の習近平国家主席国賓として迎えることもよぎったか、安倍政権にとり中国の春節大連休の前に、武漢周辺からの中国人旅行者入国拒否の決断はできなかったのでありましょう、今の事態を招いた判断ミスがそこにあったのは、結果論ですが明らかです。

しかしです。

この新型ウイルス騒動が起こる前、少なくとも昨年12月までは日本は国を挙げて、東京も地方も自治体も民間も、外国人ウエルカム政策にひた走っていたことを忘れてはいけません。

東京オリンピックもにらみ日本政府は中国人旅行者を中心にしたインバウンド政策を強力に推進していました、年間訪日外国人4000万人を目指していたわけです、東京だけでなく、多くの自治体・民間企業も積極的に加わり、潤ってきたわけです。

安倍政権の今回の初動の遅れなどウイルス対策のもたつきを、ことごとく野党や一部メディアは批判しています。

たとえば、朝日新聞は連日のように社説にて安倍政権のウィルス対策を批判しています。

(社説)新型肺炎対策 不安拭えぬ首相の説明
https://www.asahi.com/articles/DA3S14387256.html?iref=pc_rensai_long_16_article

この社説は冒頭から「国民の不安を拭い、納得を得るためには、説明も対策もまだまだ不十分だ」と批判しています。

 国民の不安を拭い、納得を得るためには、説明も対策もまだまだ不十分だ。自らの政治決断だという以上、安倍首相には先頭にたって、きめ細かな対応に努めてもらわねばならない。

社説は、最後に「これまでの安倍政権に欠けていた謙虚さを発揮しろ」と結ばれています。

 国民のいのちと暮らしを守るために与野党が協力するのは当然だ。その前提は、政権与党の側が野党の指摘や提案に虚心に耳を傾けることだろう。与野党を超えて政治の責任を果たせるか。これまでの安倍政権に欠けていた謙虚さを発揮できるかにかかっている。

このたびの一連の政府の対応は、初動の対策やクルーズ船への対応、はたまた全国一律の学校休校措置など、後日しっかり検証が必要なのは当然のことでしょう。

大きく俯瞰(ふかん)すれば、日本政府の初期(特に1月21日から始まった中国大連休(春節))の対応、つまりほぼ無条件に大量の中国人観光客を受け入れたことに起因していることは明らかです。

そして日本政府が後手を踏んでしまった背景には、官民挙げて外国人訪日客を増やす、中国人旅行者を中心にしたインバウンド政策を強力に推進してきたことが、日本政府の初動の遅れにつながっていたことは明らかです。

従って政府のインバウンド政策を支持し積極的に参加してきた、自治体・民間企業は、この事態を招いたことを安倍政権のみの責任と批判することは倫理的に許されることではありません。

たとえば、朝日新聞社はグループを挙げてインバウンドで積極的に商売をしていたではありませんか。

朝日新聞社とグループ会社の朝日アドテックは、「インバウンド向けPR映像の制作・配信事業を開始」し「YouTubeで配信!」開始したわけです、記事によれば「2社の実績を結集したPR事業」です。

昨年5月19日の『訪日ラボ』の記事より。

YouTubeで配信!朝日新聞社がインバウンド向けPR映像の制作・配信事業を開始

第一弾、静岡県のPRを配信

株式会社朝日新聞社は5月7日、株式会社朝日アドテックと共同で訪日客向けPR映像の制作・配信・販売事業を開始したと発表しました。第一弾として静岡県の動画をYouTubeで配信しています。

地元の魅力を外国人にわかりやすく

両社は自治体や企業のインバウンド施策として、PR映像制作・配信を行います。今回プロジェクトの第一弾として、静岡県の春夏秋冬を映像化した「Inspiring SHIZUOKA」をYouTubeで配信しました。

映像は約4分間で、世界的に有名な富士山を筆頭に、沼津魚市場、清水魚市場河岸の市、由比の桜えび干場、グリンピア牧之原、大淵笹葉、田牛海岸、寸又峡「夢の吊橋」など、名所の魅力ある風景を映像で届けています。

またキャンプ場や地元の祭り、伝統的な工芸や産業など、人々の暮らしにつながる映像を紹介しており、外国人に地元での体験を訴求できる内容となっています。

2社の実績を結集したPR事業

同社は自治体や企業向けにインバウンド施策としてPR事業をサポート。一方朝日アドテックは、ドローンや4Kカメラを活用したPR映像制作を行っています。

同事業では両社がノウハウを結集し、日本の魅力を発信していきます。制作した映像は、訪日客向けの情報サイト・SNSYouTubeで配信することになります。

https://honichi.com/news/2019/05/13/youtube-de-haish/

・・・

私は、今回の安倍政権の初動の遅れは、それまで官民挙げて積極的に展開してきたこの国のインバウンド政策がオリンピックも睨んで背景にあったことは間違いないと思っています。

積極的に外国人旅行者を受け入れる政策を展開していたまさにこのタイミング(よりによって中国大連休直前)で、後手を踏み大量の中国人旅行者を受け入れてしまったことが、今日の事態を招いた主因なのであります。
積極的なインバウンド政策と入国禁止など排他的な防疫政策は真逆であり、新型ウイルスの感染力など中国からの当初の情報不足もあり、初動時に日本政府が180度方針を転換することは非常に難しい判断だったのだと思われます。

安倍政権の初動の遅れはインバウンド政策が背景にあったことは明らかですが、YouTubeでインバウンド便乗商売してるくせに、ただただ安倍政権のみの批判を繰り返す朝日新聞社のその報道姿勢はいかがなものでしょう。



(木走まさみず)