木走日記

場末の時事評論

嘘の上塗りと自己弁護に終始する朝日新聞従軍慰安婦特集記事〜「私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」(朝日記事)だと?

 朝日新聞は5日付けと6日付けの紙面にて従軍慰安婦問題を特集するとしています。

 まず最初に5日付けの紙面構成をトレースしておきます。

 合計8本の関連記事から構成されていますがすべてネット上でも確認できますので詳細はリンク先でお読みください。

 1面にて杉浦信之編集委員による「慰安婦問題の本質、直視を」と題する論説が載っております。

慰安婦問題の本質、直視を 編集担当・杉浦信之
2014年8月5日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11284070.html

 そして16面、17面の二面全部を使って7本の記事が掲載されています。

 まず16面には慰安所慰安婦について図付きでQ/A形式で説明記事が載っています。

慰安所慰安婦
http://www.asahi.com/articles/ASG7L5HWKG7LUTIL03L.html

 続いて2面に渡り朝日新聞従軍慰安婦報道が問われている主な五つの疑問について5本の記事で応えています。

強制連行 自由を奪われた強制性あった
http://www.asahi.com/articles/ASG7M03C6G7LUTIL06B.html

済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
http://www.asahi.com/articles/ASG7L71S2G7LUTIL05N.html

「軍関与示す資料」 本紙報道前に政府も存在把握
http://www.asahi.com/articles/ASG7L5Q40G7LUTIL045.html

「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視
http://www.asahi.com/articles/ASG7M01HKG7LUTIL067.html

「元慰安婦 初の証言」 記事に事実のねじ曲げない
http://www.asahi.com/articles/ASG7L6VT5G7LUTIL05M.html

 最後に17面の下に横長で他紙の慰安婦報道についてまとめています。

他紙の報道は
http://www.asahi.com/articles/ASG7L7GGWG7LUTIL05Y.html

 ・・・

 まず1面にての杉浦信之編集委員による「慰安婦問題の本質、直視を」と題する論説を検証致します。

 論説は「慰安婦問題をめぐる両国の溝」が「日韓関係はかつてないほど冷え込んでい」る理由の一つとの書き出しで始まります。

日韓関係はかつてないほど冷え込んでいます。混迷の色を濃くしている理由の一つが、慰安婦問題をめぐる両国の溝です。

 この問題は1990年代初めにクローズアップされ、元慰安婦が名乗り出たのをきっかけに議論や研究が進みました。戦争の時代に、軍の関与の下でアジア各地に慰安所が作られ、女性の尊厳と名誉が深く傷つけられた実態が次第に明らかになりました。

 それから20年余、日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」の見直しなどの動きが韓国内の反発を招いています。韓国側も、日本政府がこれまで示してきた反省やおわびの気持ちを受け入れず、かたくなな態度を崩そうとしません。

 「一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造(ねつぞう)だ」といういわれなき批判が起きています」と嘆きます。

 慰安婦問題が政治問題化する中で、安倍政権は河野談話の作成過程を検証し、報告書を6月に発表しました。一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造(ねつぞう)だ」といういわれなき批判が起きています。しかも、元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者が名指しで中傷される事態になっています。読者の皆様からは「本当か」「なぜ反論しない」と問い合わせが寄せられるようになりました。

 今回慰安婦問題を特集する意図は「読者への説明責任を果たすことが、未来に向けた新たな議論を始める一歩となると考える」からだとします。

 私たちは慰安婦問題の報道を振り返り、今日と明日の紙面で特集します。読者への説明責任を果たすことが、未来に向けた新たな議論を始める一歩となると考えるからです。97年3月にも慰安婦問題の特集をしましたが、その後の研究の成果も踏まえて論点を整理しました。

 「報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました」と朝日の報道に誤りがあったことを認めます。

 慰安婦問題に光が当たり始めた90年代初め、研究は進んでいませんでした。私たちは元慰安婦の証言や少ない資料をもとに記事を書き続けました。そうして報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました。問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は反省します。似たような誤りは当時、国内の他のメディアや韓国メディアの記事にもありました。

 しかし不正確な報道を理由に「「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません」とします。

 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。

 被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っているからです。見たくない過去から目を背け、感情的対立をあおる内向きの言論が広がっていることを危惧します。

 戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

 90年代、ボスニア紛争での民兵による強姦(ごうかん)事件に国際社会の注目が集まりました。戦時下での女性に対する性暴力をどう考えるかということは、今では国際的に女性の人権問題という文脈でとらえられています。慰安婦問題はこうした今日的なテーマにもつながるのです。

 論説は「私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」と結ばれています。

 「過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております」

 官民一体で作られた「アジア女性基金」が元慰安婦に償い金を渡す際、歴代首相はこんな一節も記した手紙を添えました。

 歴史認識をめぐる対立を超え、和解へ向けて歩を進めようとする政治の意思を感じます。

 来年は戦後70年、日韓国交正常化50年の節目を迎えますが、東アジアの安全保障環境は不安定さを増しています。隣国と未来志向の安定した関係を築くには慰安婦問題は避けて通れない課題の一つです。私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます。

 ・・・

一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造(ねつぞう)だ」といういわれなき批判が起きています。

 「いわれなき批判」ですと?

 朝日自身今回「誤報」を認めたんじゃないんですか?

報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました。

 一部ですと?

 あなたがた、吉田「虚偽」発言をシリーズ化して何度も繰り返して取り上げてきたじゃないですか。

 この論説は謝罪にも何にもなっていません。

 ここに書かれていることはほんの口先だけの小さな「反省」と、呆れるほど自己の偏向報道を擁護しまくる「自己正当化」です。

 一面の論説がこの調子ですから個別の記事もまったく信頼できたものではありません。

 5本の記事を読者からの疑問と朝日の回答に絞って検証していきます。

強制連行 自由を奪われた強制性あった

 〈疑問〉政府は、軍隊や警察などに人さらいのように連れていかれて無理やり慰安婦にさせられた、いわゆる「強制連行」を直接裏付ける資料はないと説明しています。強制連行はなかったのですか。

■読者のみなさまへ

 日本の植民地だった朝鮮や台湾では、軍の意向を受けた業者が「良い仕事がある」などとだまして多くの女性を集めることができ、軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません。一方、インドネシアなど日本軍の占領下にあった地域では、軍が現地の女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されています。共通するのは、女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる強制性があったことです。

 嘘です。

 占領地で軍の一部の部隊が暴走して軍規違反の「戦争犯罪」行為に及んだ事実はありますが、日本軍が組織だって現地女性を連行したことはありません。

済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断

 〈疑問〉日本の植民地だった朝鮮で戦争中、慰安婦にするため女性を暴力を使って無理やり連れ出したと著書や集会で証言した男性がいました。朝日新聞は80年代から90年代初めに記事で男性を取り上げましたが、証言は虚偽という指摘があります。

■読者のみなさまへ

 吉田氏が済州島慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになりました。

 やっと捏造報道を認めましたが、最初の捏造記事が報じられてすでに32年も経ってしまいました。

 「覆水盆に返らず」とはこのことです。

「軍関与示す資料」 本紙報道前に政府も存在把握

 〈疑問〉朝日新聞が1992年1月11日朝刊1面で報じた「慰安所 軍関与示す資料」の記事について、慰安婦問題を政治問題化するために、宮沢喜一首相が訪韓する直前のタイミングを狙った「意図的な報道」などという指摘があります。

■読者のみなさまへ

 記事は記者が情報の詳細を知った5日後に掲載され、宮沢首相の訪韓時期を狙ったわけではありません。政府は報道の前から資料の存在の報告を受けていました。韓国側からは91年12月以降、慰安婦問題が首相訪韓時に懸案化しないよう事前に措置を講じるのが望ましいと伝えられ、政府は検討を始めていました。

 嘘です。

 宮沢訪韓一週間前のタイミングを狙った「意図的な報道」そのものです。

「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視

 〈疑問〉朝鮮半島出身の慰安婦について朝日新聞が1990年代初めに書いた記事の一部に、「女子挺身(ていしん)隊」の名で戦場に動員された、という表現がありました。今では慰安婦と女子挺身隊が別だということは明らかですが、なぜ間違ったのですか。

■読者のみなさまへ

 女子挺身隊は、戦時下で女性を軍需工場などに動員した「女子勤労挺身隊」を指し、慰安婦とはまったく別です。当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられたことから、誤用しました。

 「誤用」ですか、そうですか。

「元慰安婦 初の証言」 記事に事実のねじ曲げない
2014年8月5日05時00分

 〈疑問〉元朝日新聞記者の植村隆氏は、元慰安婦の証言を韓国メディアよりも早く報じました。これに対し、元慰安婦の裁判を支援する韓国人の義母との関係を利用して記事を作り、都合の悪い事実を意図的に隠したのではないかとの指摘があります。

■読者のみなさまへ

 植村氏の記事には、意図的な事実のねじ曲げなどはありません。91年8月の記事の取材のきっかけは、当時のソウル支局長からの情報提供でした。義母との縁戚関係を利用して特別な情報を得たことはありませんでした。

 嘘です。

 第一身内の調査だけでつまり記者本人の言い分だけで「義母との縁戚関係を利用して特別な情報を得たことはありません」となぜ言い切れるのですか。

 元慰安婦の女性がキーセン出身の身元を偽って、ある韓国の支援団体の指示のもと日本政府に賠償裁判を訴えた、それを大々的に報じた朝日の記者の韓国人妻の母親が、ありえないくらいの確率で偶然にもその支援団体役員だった、と、こう言いたいのですか?

 一面論説の結語。

私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます。

 はい?

 捏造報道を一部認めた特集記事の中でよくもぬけぬけと「これからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」と言えたものです。

 当ブログでも過去に検証したように、従軍慰安婦問題をここまで国際問題化したのは朝日新聞の一連の捏造報道が原因です。

河野談話」の真の生みの親は朝日新聞である
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20120901

 ・・・

 確かに朝日論説のタイトルどおり、「慰安婦問題の本質、直視を」すべきなのでしょう。

 ただし、それは朝日が主張する「戦時下での女性に対する性暴力をどう考えるか」には留まりません。

 それより先にしっかりと直視すべき「本質」があります。

 この問題の直視すべき「本質」は朝日新聞の一連の捏造報道そのものであります。

 

(木走まさみず)