木走日記

場末の時事評論

「木走はいよいよネトウヨ化してきた」に反論しておく〜朝日新聞の世論調査のように「賛成」か「反対」の二項対立選択では、「反対意見に反対」という微妙なスタンスは表出不可能

 BLOGOSにて木村正人氏のエントリーが興味深いです。

首相の靖国参拝 朝日の世論調査でも6割賛成
http://blogos.com/article/76988/

 「朝日新聞世論調査は次の通りだ。」と紹介しています。

Q日本の首相が靖国神社を参拝することに賛成ですか。反対ですか。
賛成 20代60% 30代以上59%
反対 20代15% 30代以上22%

 朝日新聞世論調査でさえ6割が靖国参拝を支持しているのを踏まえた上で、木村氏は「しかし、アジア諸国英米にとって日本は間違いなく「加害国」なのだ」と指摘し、エントリーを「国内と国外でパーセプションギャップがこれだけ広がっているのは極めて危険な兆候」と結んでいます。

米歴史家ジョン・ダワーが『敗北を抱きしめて』でいみじくも指摘したように、国内にとどまった多くの日本人にとって、あの戦争は悲惨な「被害の歴史」として記憶された。しかし、アジア諸国英米にとって日本は間違いなく「加害国」なのだ。

領海侵犯力づくで尖閣の現状を変更しようとしている中国や、中国と急接近する韓国とうまく折り合うのは難しいとしても、安倍首相は自分の取った行動について同盟国の米国や、欧州諸国にはっきりと伝わるメッセージを発しなければならない。

中国が尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏ADIZ)を設定し、一段と地域の緊張が高まる中、国内と国外でパーセプションギャップがこれだけ広がっているのは極めて危険な兆候だ。

 もうひとつBLOGOSから評論家の田原総一朗氏のインタビュー記事が興味深いです。

富国」から「富国強兵」への転換を目指す安倍内閣田原総一朗さんに「2014年の政治」を聞く
http://blogos.com/article/76869/?axis=&p=2

 エントリー中田原氏は安倍首相の唱える「戦後レジームからの脱却」の意味するところを「朝日新聞毎日新聞は、「戦争する国」になる危険性があるというが、それはちょっと違うと思う」と指摘しています。

戦後レジームからの脱却」とは何か。それは、「富国」から「富国強兵」への転換ということだ。これまでの戦後日本は、「富国」の一点張りでやってきた。しかし、戦後レジームを転換するということは、戦前の日本のように、「富国」に加えて「強兵」も入れるということ。自衛隊を強くするということだ。安倍首相にしてみれば、「日本を『普通の国』にするだけだ」と言うのだろうが・・・。

そのために、憲法も改正しようとするし、集団的自衛権も認めようとする。安倍さん流にいうと、これまでの日本は「戦えない国」だったが、これからは「戦える国」にするのだ、と。この姿勢について、朝日新聞毎日新聞は、「戦争する国」になる危険性があるというが、それはちょっと違うと思う。

日本を「戦争する国」にするのではなくて、「戦える国」にするということだ。これまでは自衛隊が法律でがんじがらめになっていて、何もできなかったが、その呪縛を解いて「戦える国」にしようというわけだ。ただ、非常に微妙な問題であることは確かで、かつてのような「戦争する国」になってしまう危険性がないわけではない。

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 当ブログでは前回のエントリーでこの国のメディアの現状を「安倍首相大批判一色のメディアスクラム状態を憂う」として批判しました。

2013-12-27まるで呪詛(じゅそ)のような醜悪な朝日新聞社説〜安倍首相大批判一色のメディアスクラム状態を憂う
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20131227

 当ブログも最近のエントリーの論調で「木走はいよいよネトウヨ化してきた」とか「激しく右傾化して向こうにいっちゃった」などとご批判いただいていますが、自身では「右傾化」の自覚はまったくありません。

 木村氏のエントリーでは国内は靖国参拝支持が多数を形成しつつあることを憂いていますが、おそらくネット言論空間でも参拝支持の論説が多く見られますしその傾向は顕著なのでありましょうがもう少し掘り下げた分析が必要でしょう。

 例えば当ブログのスタンスは、昔から靖国参拝は純粋に国内の問題、他国にどうこう言われることはない、個人の自由である、誰がいつ行こうがご本人の勝手、ただ現職首相の間は行くのは「凍結」していたほうが無難でしょ、という極めて中庸(ちゅうよう)なものです。

 当ブログでは過去に一度も今に至るまで現職首相の靖国参拝に対し「支持」という言葉を使用したことはありません。

 首相の靖国参拝に賛成なのではなく、海外やメディアなどの単純な靖国参拝絶対反対の意見に反対しているだけなのです。

 朝日新聞世論調査のように「賛成」か「反対」の二項対立選択では、「反対意見に反対」という微妙なスタンスは表出不可能です。

 世論調査上「靖国参拝賛成」の国民の中には少なからずの私と同意見の中庸なスタンスが含まれていると感じます。

 田原氏が指摘する朝日や毎日が主張する「戦争する国」と、そうではなくて「戦える国」にするのだ、という議論にも同様の中庸なスタンスが表出されにくい現象が見られます。

 一連の安倍氏が唱える戦後レジーム脱却を支持することが、それすなわち「戦う日本にする」ことにより軍国主義復活を支持することに直結している支持者は多数とは思えません。

 戦後70年間も平和主義を貫いてきて善し悪しはあってもここまで民主主義が成熟している今の日本が「軍国主義」に復活するなど有り得ない、可能性としてゼロです、もちろんそれを望んでいる人はいるかもしれませんが少数派です。

 多くの支持者は、もっと常識的に「戦える日本」を構築し、それをもって国際紛争に対するこの国の抑止力に高めようと考えているだけだと思えます。

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 本年もご愛読ありがとうございました、どうかよい年をお迎えください。



(木走まさみず)