「学力調査最下位の沖縄 元凶は子連れ居酒屋と車通学?」(朝日記事)を別の角度から検証〜興味深い学力順位と給食滞納率順位の逆相関関係
たいへん興味深い、7日付け朝日新聞電子版記事から。
学力調査最下位の沖縄 元凶は子連れ居酒屋と車通学?
2013年11月7日07時59分【泗水康信】子どもを連れて居酒屋で飲食、小中学校へは車で送迎。沖縄では珍しくない光景が、子どもの生活リズムを乱し、学力低下を招いている――。全国学力調査で「最下位」が続く沖縄県が6日、こんな報告書を公表した。
県教委が7〜9月、県内のすべての公立の小学5年と中学2年、その保護者を対象に生活習慣を調べたところ、「家族が車で送ることが多い」と答えたのは小5で26・2%、中2で33・9%いた。「ぎりぎりまで寝てお母さんに送ってもらうのではないか」と報告書は警鐘を鳴らしている。
「家族で外食する際に行く店」という質問では、「居酒屋」という回答が小5で7・3%、中2で6・2%。どちらも8割強は「レストラン・食堂」だったが、報告書は「居酒屋での食事は、夜更かし傾向を助長している可能性がある」と指摘した。
このほかにも、中2で平日の自宅学習が1時間未満の生徒が67・7%にのぼる一方、運動部員で週7日部活をしているのは40・7%と、部活動の比重の大きさも浮かびあがった。
今年度の全国学力調査で、沖縄は小中学校計8科目のうち6科目で全国最下位。同時に行われた調査でも、「規則正しい就寝」をしている率は全国最下位、「夜10時前の就寝」の割合も43位だった。県教委は「調査結果を学力向上の施策に反映させたい」としている。
http://digital.asahi.com/articles/SEB201311060015.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_SEB201311060015
うむ、全国学力調査で「最下位」が続く沖縄県の県教委がその理由として、「子どもを連れて居酒屋で飲食」や「小中学校へは車で送迎」することなどが「子どもの生活リズムを乱し、学力低下を招いている」と報告書で公表したのであります。
なるほど今年度の全国学力調査で、確かに沖縄は学力も全国最下位ながら、「規則正しい就寝」をしている率も全国最下位だったそうですから、元凶は子連れ居酒屋と車通学とする県教委のこの報告もあながち的はずれではないかも知れませんね。
沖縄県教委のこの興味深い分析なのですが、家庭の生活習慣が子供の学力に影響を与えることはそのとおりなのですが、経済指標など客観的なデータに基づいたもう少し深堀した分析もほしいところです。
沖縄県の学力が全国最下位である事由について、少し別の角度から客観的指標を用いた分析を試みてみたいです。
こちらの文部科学省の公式サイトで学力調査の結果は公開されています。
文部科学省 全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/
さて別の経済的指標として都道府県別の給食滞納率を押さえておきましょう。
こちらの長野県教育委員会定例会資料『学校給食費の徴収状況に関する調査について』の最終ページに、平成17年度の学校給食費の徴収状況(都道府県別)の表が掲載されています。
平成17年度の学校給食費の徴収状況(都道府県別)
http://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/kyoiku/goannai/kaigiroku/h18/teireikai/documents/857_10.pdf
ここから都道府県学力順位と給食滞納率順位をまとめて表を起こしてみます。
■表1:都道府県学力順位と給食滞納率順位
都道府県 | 学力順位 | 給食滞納率順位 |
---|---|---|
秋田県 | 1 | 16 |
福井県 | 2 | 43 |
石川県 | 3 | 39 |
青森県 | 4 | 44 |
香川県 | 5 | 38 |
富山県 | 6 | 47 |
広島県 | 7 | 37 |
東京都 | 8 | 23 |
京都府 | 9 | 45 |
山口県 | 10 | 31 |
鳥取県 | 11 | 19 |
愛媛県 | 12 | 40 |
兵庫県 | 13 | 34 |
奈良県 | 13 | 36 |
岐阜県 | 15 | 20 |
茨城県 | 16 | 12 |
新潟県 | 17 | 46 |
愛知県 | 18 | 40 |
熊本県 | 19 | 27 |
山形県 | 20 | 33 |
神奈川県 | 21 | 28 |
千葉県 | 21 | 9 |
徳島県 | 23 | 29 |
岩手県 | 23 | 7 |
長野県 | 23 | 32 |
埼玉県 | 26 | 13 |
群馬県 | 26 | 8 |
宮崎県 | 28 | 15 |
静岡県 | 29 | 35 |
福岡県 | 30 | 5 |
栃木県 | 30 | 21 |
大分県 | 32 | 4 |
宮城県 | 33 | 3 |
鹿児島県 | 34 | 11 |
長崎県 | 35 | 6 |
佐賀県 | 36 | 10 |
福島県 | 36 | 26 |
岡山県 | 36 | 25 |
島根県 | 36 | 18 |
山梨県 | 40 | 24 |
高知県 | 40 | 22 |
和歌山県 | 40 | 30 |
三重県 | 43 | 40 |
滋賀県 | 44 | 14 |
大阪府 | 45 | 17 |
北海道 | 46 | 2 |
沖縄県 | 47 | 1 |
うむ、学力最下位の沖縄県が滞納率1位、学力46位の北海道が滞納率2位であります。
全体として都道府県別の学力と給食滞納率には逆相関の関係が見て取れそうです。
都道府県別学力テストと給食滞納率の相関図を起こしてみます。
■図1:都道府県別学力テストと給食滞納率の相関関係
ご覧のとおり、ほぼ綺麗な逆相関の関係が成立しています、つまり、給食滞納率の高い都道府県ほど学力が低下する傾向にある、といえそうです。
その都道府県の給食滞納率はその都道府県の完全失業率と強い正の相関関係にあることが知られています。
この検証だけですべてを結論付けることはもちろんできませんが、その地域の経済指標と子供の学力の関係には相関が成立するとすれば、地域経済の活性化こそが結果的に子供たちの学力向上に繋がる、とも考えられるかもしれません。
このエントリーが読者のみなさまの参考になれば幸いです。
(木走まさみず)