婚姻率全国1位で出生率全国最下位の首都東京の不思議〜平成23年人口動態統計徹底検証
5日付け時事通信記事から。
初産、30歳超える=婚姻・出産は戦後最少−出生率横ばい1.39・厚労省
厚生労働省は5日、2011年の人口動態統計で、第1子を産んだ時の母親の平均年齢が初めて30歳を超え、30.1歳になったと発表した。婚姻件数は3年連続で減り、戦後最少の66万1899組。昨年生まれた赤ちゃんは105万698人で、05年の約106万人を1万人下回り、戦後最少となった。
厚労省は「晩婚化や育休の都合、経済的理由など、さまざまな要因が絡んで女性が産みにくい環境になっているのではないか」とみている。
1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値(合計特殊出生率)は10年と同じ1.39。過去最低は05年の1.26で、06〜08年にかけ1.37まで回復したが、09年は横ばいだった。
都道府県別の出生率は、沖縄(1.86)が最も高く、最低は東京(1.06)だった。同省の担当者は「女性の人口が減少しており、今後も減る傾向にある」としている。(2012/06/05-19:58)
うーん、厚生労働省の発表によれば、第1子を産んだ時の母親の平均年齢が初めて30歳を超え、婚姻件数は3年連続で減り、戦後最少の66万1899組、昨年生まれた赤ちゃんの数も105万698人でやはり戦後最少となったそうです。
以下のサイトから資料はダウンロードできます。
平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai11/index.html
また以下のサイトで政府は平成24年版「子ども・子育て白書」(平成24年6月5日閣議決定)を公表しています。
平成24年版子ども・子育て白書 全文(PDF形式)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2012/24pdfhonpen/24honpen.html
今回はこの最新の統計資料を徹底検証いたしましょう。
まず、「生涯未婚率」の推移を確認しておきます。
■図1:生涯未婚率推移
「生涯未婚率」とは世代別未婚率の中で50才の未婚率を指し示す統計指標ですが、平成22年においてついに男子の生涯未婚率が20.1%となり5人に一人が生涯独身、女子も10人に一人が生涯独身という時代を迎えたわけです。
グラフでも明らかですが、50年前の1960年には男子1.3%、女子1.9%と、日本の生涯未婚率は2%に届かず、すなわち国民の98%以上が結婚をしていたわけですが、近年急激に「生涯未婚率」が上昇しているわけです。
各都道府県別に、婚姻数|離婚数|婚姻率|離婚率を表にまとめます。
■表1:都道府県別婚姻数と離婚数と1000人当りの割合
都道府県 | 婚姻数 | 離婚数 | 婚姻率 | 離婚率 |
全 国 | 700214 | 251378 | 5.5 | 1.99 |
北海道 | 28389 | 12596 | 5.2 | 2.30 |
青森 | 5924 | 2679 | 4.3 | 1.96 |
岩手 | 5724 | 2327 | 4.3 | 1.76 |
宮城 | 11972 | 4667 | 5.1 | 2.00 |
秋田 | 4281 | 1795 | 4.0 | 1.66 |
山形 | 5159 | 1887 | 4.4 | 1.62 |
福島 | 9582 | 3965 | 4.7 | 1.96 |
茨城 | 15044 | 5693 | 5.1 | 1.94 |
栃木 | 10616 | 3898 | 5.4 | 1.97 |
群馬 | 9679 | 3865 | 4.9 | 1.96 |
埼玉 | 39160 | 14325 | 5.5 | 2.02 |
千葉 | 34785 | 12391 | 5.7 | 2.02 |
東京 | 91196 | 26335 | 7.1 | 2.05 |
神奈川 | 54203 | 17830 | 6.1 | 2.00 |
新潟 | 11018 | 3438 | 4.7 | 1.46 |
富山 | 4928 | 1569 | 4.6 | 1.45 |
石川 | 5829 | 1817 | 5.0 | 1.57 |
福井 | 3705 | 1233 | 4.7 | 1.55 |
山梨 | 4221 | 1693 | 5.0 | 1.99 |
長野 | 10318 | 3636 | 4.9 | 1.71 |
岐阜 | 10087 | 3395 | 4.9 | 1.66 |
静岡 | 20323 | 7241 | 5.5 | 1.96 |
愛知 | 45039 | 14253 | 6.2 | 1.97 |
三重 | 9396 | 3461 | 5.2 | 1.90 |
滋賀 | 7691 | 2466 | 5.5 | 1.78 |
京都 | 13664 | 4964 | 5.3 | 1.91 |
大阪 | 51242 | 20752 | 5.9 | 2.39 |
兵庫 | 29752 | 10738 | 5.4 | 1.95 |
奈良 | 6595 | 2602 | 4.7 | 1.87 |
和歌山 | 4771 | 2077 | 4.8 | 2.08 |
鳥取 | 2834 | 1141 | 4.8 | 1.95 |
島根 | 3283 | 1110 | 4.6 | 1.56 |
岡山 | 9894 | 3626 | 5.1 | 1.88 |
広島 | 15402 | 5472 | 5.4 | 1.94 |
山口 | 6966 | 2531 | 4.8 | 1.76 |
徳島 | 3573 | 1445 | 4.6 | 1.85 |
香川 | 4975 | 1928 | 5.0 | 1.95 |
愛媛 | 6922 | 2811 | 4.9 | 1.97 |
高知 | 3328 | 1463 | 4.4 | 1.92 |
福岡 | 29247 | 10952 | 5.8 | 2.18 |
佐賀 | 4210 | 1536 | 5.0 | 1.82 |
長崎 | 6647 | 2515 | 4.7 | 1.77 |
熊本 | 9098 | 3623 | 5.0 | 2.00 |
大分 | 6076 | 2314 | 5.1 | 1.95 |
宮崎 | 5892 | 2415 | 5.2 | 2.13 |
鹿児島 | 8682 | 3328 | 5.1 | 1.96 |
沖縄 | 8892 | 3580 | 6.4 | 2.58 |
婚姻率を横軸に、離婚率を縦軸に、相関を示す図を作成してみましょう。
■図2:婚姻率・離婚率の都道府県分布
図を見ると各都道府県の婚姻率と離婚率は統計的に緩やかな正の相関関係にあることが分かります。
すなわち離婚率の一番高い沖縄県は婚姻率も高く(東京都につぎ2位)、逆に婚姻率の一番低い秋田県は離婚率(40位)も低くなっています。
ただ東京都だけが少し特異点となっていますが、これについては後に考察します。
さて図の中央に全国平均がありますが、47都道府県の中で代表的な特徴を示す、沖縄県、東京都、北海道、秋田県に注目してみたいです。
簡略化して説明しますと「沖縄県」は婚姻率も離婚率もともに高いタイプ、「東京都」は婚姻率は高くそれに相対すれば離婚率が低いタイプ、逆に「北海道」は離婚率が高くそれに相対して婚姻率が低いタイプ、最後に「秋田県」は婚姻率も離婚率も低いタイプといえます。
ここで各都道府県の人口の自然増加率(その年の出生者数から死亡者数を引いた人数の増加する割合)を縦軸に、婚姻率を横軸に相関を示す図を作成してみましょう。
■図4:都道府県における婚姻率と人口増加率の関係
先ほどの図2より、統計的に強い正の相関関係にあることが分かります。
注目したいのは北海道で、離婚率を縦軸にしたときの位置から増加率を縦軸にしたこの図では、大きく下方にシフトしています。
また、この図でも東京都だけは大きく右にずれて特異なポジションをとっています。
ここで考察したいのは、ともに婚姻率が全国で1番と2番の高さの東京都と沖縄県ですが、沖縄県が高い人口増加率を維持しているにも関わらず、東京都は増加率がその婚姻率に比してかなり低い点です。
推測ですが、東京都の婚姻率が全国で一番高いのは、結婚適齢期の人口が他県から東京都に大量に移動流入しているために統計的に高くなっているのではないのかと考えられます。
しかし実際には、大都会東京では男女の出会いが多く結果結婚する組数は多くても、必ずしも子育てがしやすいとは限りません。
ここで女性が生涯で生む子供の数の指標である「特殊出生率」を用いて、縦軸に使ってみましょう。
図を見ると興味深いですが、婚姻率と特殊出生率の関係では正の相関関係は認められません、互いに関連しないのです。
そして特殊出生率においても、沖縄県は全国で一番高いのですが、東京都は全国で最低となってしまっています。
おそらく東京都で起こっていることは他県からの流入者を中心に全国で一番高い婚姻率を維持しているが、その実、子育てしやすい環境ではないため、特殊出生率は全国最低となっており、結果、人口増加率等が婚姻率の高さに相関していないのだと考えられます。
東京都に比べれば沖縄県のほうが、婚姻率も人口増加率も特殊出生率も高く(おまけに離婚率も全国1位ですが(苦笑))、はるかに健全な数値だと言えそうです。
(木走まさみず)