木走日記

場末の時事評論

田中真紀子大臣がかましたバカな処置〜教育行政にもっともあるまじきアンフェアな排外主義的愚策

 田中真紀子文部科学相が2日、大学設置・学校法人審議会が来春の開学認可を答申していた秋田公立美術大(秋田市)▽札幌保健医療大(札幌市)▽岡崎女子大(愛知県岡崎市)の3大学を、当事者にとって「寝耳に水」唐突と申してよいでしょう、独断で不認可といたしました。

秋田公立美術大
http://www.amcac.ac.jp/aua/index.htm
美術学部美術学科・入学定員100人,3年次編入学定員10人。※ 短大を廃止し,4年制大学新設。

札幌保健医療大
http://www.sapporo-hokeniryou-u.ac.jp/
看護学部看護学科・入学定員100人。※ 専門学校を廃止して,4年制大学新設。

岡崎女子大
http://www.okazaki-c.ac.jp/kaigaku/
子ども教育学部子ども教育学科・入学定員100人。※ 短大の定員を減らし,新設の4年制大学に充てる。

 時間と予算をつぎ込んで開学準備を進めていた各校の現場はまさに大混乱であります。

 毎日新聞記事から各校の混乱振りを抜粋。

 ●札幌保健医療大

 「教員の数など、大学設置基準を超える手厚い態勢で開校準備に当たってきたのに『今ごろなぜ』という気持ちだ」。札幌市東区看護学の単科大を開設予定だった札幌保健医療大の鈴木隆・大学設置準備室長は憤りを隠さない。同大は、札幌市で専門学校9校を運営する学校法人「吉田学園」(札幌市中央区、吉田松雄理事長)が専門学校「北海道保健看護大学校」の大学化を目指し、約4年前から準備を進めてきた。

 校舎の改築工事は済んでおり、約30人の専任教員や数十カ所の実習病院も確保。3日には学生募集のオープンキャンパスを開き、募集要項を配布する予定だったが、「不認可」で中止せざるを得なくなり、職員が参加希望者一人一人に連絡するなど対応に追われた。

 鈴木室長によると、文部科学省から連絡があったのはこの日午前10時ごろ。不認可の理由をただすと「大学の置かれている現下の状況から」と言葉少なだったという。鈴木室長は「看護師養成の社会的なニーズは高まっており、設置の方針は間違っていない。教員就任予定者の中には現在の職場に退職願を出した人もいる。一日も早い認可を待ちたい」と話した。

 ●秋田公立美術大

 秋田市の穂積志(ほづみもとむ)市長は2日、緊急記者会見を開き「大臣の考え方一つで方針が変えられるのは行政の継続性を逸脱している。到底承服できない」と田中文科相への憤りをあらわにした。

 09年の市長選で初当選時、穂積市長は現在の秋田公立美術工芸短大を4年制化して秋田公立美術大にする構想をマニフェストに掲げた。背景に短大生の就職率の低迷などがあった。今年度予算では開学を見越した校舎の新設費として約5億1912万円を計上、工事は10月末現在で36%が完了。新大学の3年次に編入(定員10人)を希望している短大生32人の進路も白紙となる。

 ●岡崎女子大

 岡崎女子大(愛知県岡崎市)を開学する予定だった学校法人清光学園は2日、運営している岡崎女子短大で記者会見を開いた。長柄(ながら)孝彦理事長は厳しい表情で「条件をクリアしていたのに理不尽。憤りを感じる」と語った。

 同大は子ども教育学科の1学科(定員100人)で開学予定。約2億7000万円をかけて設備改修や備品購入を進め、新たに雇用する12人の専任教員も内定していた。

http://mainichi.jp/area/hokkaido/news/20121103ddr041040009000c.html

 新校舎建設や新設備設置、必要教員の確保等、各校とも数年の歳月と巨費を投入して準備してきた様子がわかります。

 そして3月の申請から7ヶ月に渡る精査の末に、今回の文科省(設置審)の認可答申がやっと出たのです、各校は文科省が定めた大学設置基準などに基づく教育体制や財務計画に関して「認定」を受けたその翌日に、田中真紀子文部科学相の「日本の大学は増えすぎている」という鶴の一声というか総論的政治判断のもとで、一転、大学設置不認可と相成ったのであります。

 いや、これでは教育現場はたまらないですね。

 確かに少子化の中での大学乱立で定員割れの大学も続出しています、教育水準も劣化が激しいと言われてきました、田中真紀子文部科学相が日本の大学の現状に危機感をお持ちで一石を投じるつもりで「大学新設不認可」と判断したのかと思われます。

 その危機感は理解はできますが、そのような中・長期的課題はそれなりの機関でしっかりと議論していくべきであり、現行体制で長い期間準備をし審査を受けてきた3校を個別事由説明も一切なしでいきなり「不認可」では、これではこの3校はスケープゴートではありませんか、具体的理由説明なく一方的に不認可にされた彼らが強く憤るのもよくわかります。

 最大の問題点は、田中真紀子文部科学相の取った今回のバカな処置がとてもアンフェアで公正さのかけらもないことです。
 
 同審議会は11月1日に実は上記新設3校以外に,既存大学の学部増設16件、大学院開設13件も認可する答申を出しています、実は田中文科相はこれら既存大学の学部増設等には答申通り全て認可しているのです。

 たかだか各校100名3校合わせても300名の新設の単科大学は認めず、既存大学の学部・大学院新設29件はなぜセーフなのか、どう説明を付けるつもりなのでしょうか。

 例えばこの女子大学では不認可となった札幌保健医療大と同じである看護学部の新設が今回認可を受けているのです。

http://www.kyoritsu-wu.ac.jp/hus/koho/201211021/index.html

 これではアンフェアです。

 今回の3校は、2校が「短大」の「4大化」、1校が「専門学校」の「大学化」を目指していました。

 少子化の中で魅力が落ちてきた「短大」や「専門」を、「4大化」してサバイバルを目指していたわけです。

 これはすでに4年制学部を有する既存大学が併設の短大を4大化するのと同様の流れです、なのに既存大学の学部新設がフリーで短大や専門学校の「大学新設」は不認可とは、まるで既得権益だけ優先させているようなバランスを欠いた処置と言うほかありません。

 大学教育の劣化は新設大学だけがその責を負うものではありません。既存大学側の問題も問われて当然でしょう。

 田中真紀子文部科学相の取った今回のバカな判断は、現場を無視した異常で乱暴で稚拙な処置であるだけではありません。

 極めて公正性に欠ける不平等な偏向行政であり、新規参入を無条件で拒むという教育行政にもっともあるまじきアンフェアな排外主義的愚策と結果的になっているのであります。

 機会平等思想のかけらもない教育担当大臣としてまったくそぐわない資質の田中真紀子大臣は、速やかに退陣いただくのがよろしいかと思います。



(木走まさみず)