最終的に実効支配したものだけが勝利者〜領土問題に絶対正義は存在しない、現実主義で対応するしかない
日韓の外交関係が「親書」を巡ってなにやら興味深い「レベル」の高まり(?)を示してきました。
外務省公式サイトに寄れば、21日(火曜日)、我が国政府は、韓国政府に対して、竹島問題を、国際法にのっとり、冷静、公正かつ平和的に紛争を解決する観点から、同問題について国際司法裁判所に合意付託すること及び日韓紛争解決交換公文に基づく調停を行うことについて提案しました。
竹島問題についての国際司法裁判所への合意付託等に係る韓国政府への提案
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/8/0821_04.html
これを受け取った韓国外交官は、「島根県の竹島」という表現が3回も使われていることに驚きます。
韓国・中央日報記事から。
本部の指針に基づき、封筒を開けた韓国外交官は驚いた。日本語2枚、非公式韓国語翻訳本1枚の手紙には、「李大統領が島根県の竹島に上陸した」という表現が3度も出てきた。外交部当局者は「韓国国民が全文を見ていれば、途方もない公憤を買う内容だった」と伝えた。
野田首相の書簡 「李大統領の竹島上陸」に3度も言及 より抜粋
http://japanese.joins.com/article/129/158129.html?servcode=A00§code=A10
こうして、駐日韓国大使館は23日、手紙を返送し、「私たちがとうてい受け入れられない不当な内容が書かれているため返送する」という趣旨を伝えることにしますが、今度は日本側が受け取りを拒否したため、書留で発送することにした模様。
日本外務省が受け取りを拒否したことで逆に韓国メディアは「日本の門前払い」を「日本が正式な外交文書の受け渡しルートまで遮断したことは非常に遺憾だ。受け取りを望まないのなら、差出人が回収するのが外交慣例以前の常識だ」と非常識と逆切れします。
韓国・朝鮮日報記事から。
外務省の警備員は同日「きょうは特別な日」とし、韓国記者団の立ち入りも認めなかった。日本外務省が親書の返却受け取りを拒否したことから、韓国大使館側はこれを書留郵便で送り返した。
外交通商部(省に相当)当局者は「日本が正式な外交文書の受け渡しルートまで遮断したことは非常に遺憾だ。受け取りを望まないのなら、差出人が回収するのが外交慣例以前の常識だ」と批判している。
韓中日新冷戦: 日本外務省、韓国外交官を「門前払い」 より抜粋
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/08/24/2012082400375.html
やれやれ、なにやら「親書」を巡って外交的に前例を見ない「非礼」「非常識」の応酬と相成ってきたわけですが、
24日付け時事通信電子版速報記事から。
野田首相親書、韓国に送り返さず=「メッセージは伝わった」−玄葉外相
野田佳彦首相が韓国の李明博大統領に送った親書を同国が郵送で返却したことについて、玄葉光一郎外相は24日午前の記者会見で「再び送ることは考えていない」と述べ、親書が外務省に届けば受理するものの、再び送り返すことはしない方針を明らかにした。
韓国政府は、李大統領の竹島上陸などに遺憾の意を示す首相親書の受け取りを拒否。23日に在日韓国大使館を通じて返送しようとしたが、日本側は受け取りを拒んだ。このため韓国側は同日、親書を書留郵便で返送した。
玄葉氏は会見で、韓国側の親書返送について「極めて遺憾だし非礼な行為。通常はあり得ない」と改めて批判。韓国側に再び送り返さない理由については「(日本の)メッセージは伝わっている。親書の送付のやりとりが続くのは、わが国の外交の品位を考えたときに好ましいものではない」と説明した。 (2012/08/24-10:39)
うむ、「(日本の)メッセージは伝わっている。親書の送付のやりとりが続くのは、わが国の外交の品位を考えたときに好ましいものではない」(玄葉外相)との発言で、これ以上この「親書」のやり取りという「レベル」での外交は継続しないとの姿勢を表明いたしました。
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2つの点でこれで良いと思います。
一点は、尖閣、竹島、北方領土の3領土のうち、現時点では日本が実効支配している尖閣で日本から騒ぎを大きくすることは愚策であり、逆に実効支配されている竹島、北方領土に日本の外交の人的資源を集中すべきと考えるからです。
さらに韓国大統領が自ら竹島に上陸し天皇陛下謝罪要求などエスカレートした対応でこの問題を国際的にもクローズアップしてくれている現在、これは日本にとり一つのチャンスなのであり、ここで竹島問題に集中して国際的「領土問題」として韓国に対して今まで以上に強く出ることは日本の国益にかなっていると思います。
2点目は、とわいえ外交は1対1で当事国間だけで解決できるような単純な方程式ではない、理想と現実をしっかり複眼的にとらえて現実主義で対応すべきです、今回の「親書」を巡る低レベルのやり取りはここまでは韓国の非常識な対応を国際的にアピールする点でよいわけですが、いつまでもこの低レベルのいざこざに拘泥していると、日本の外交も韓国と同等レベルであると、海外から共倒れの評価をされかねません。
上記した記事にもあるとおり、韓国政府は「親書」の中身を精読しています、この時点で親書が持つ目的、自国の主張を他国にトップレベルで伝える、というプロトコルは実質的に成就しています、それを韓国が非常識にも送り返したとしてもそれは韓国の「非礼さ」がアピールされるだけであり、このレベルの「非礼」に日本がお付き合いする必要はないと考えます。
「お前のほうがもっと非礼だ」と互いに罵り合う「非礼」合戦で、日本が韓国に勝てるはずがない(苦笑)し、この低レベル外交を韓国と繰り広げてはいけません。
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国際外交とは「理想」と「現実」を複眼的にとらえて、現実主義者として巧みに対応すべきです。
その行動原理は「好き嫌い」や「良し悪し」、ましてや「礼節・非礼」を行動の基準にしてはなりません。
言葉は無機質に聞こえるかもしれませんが、国益に合致しているかどうか、日本の国際的立場が強まるのか弱まるのか、冷静に「損得」で、判断すべきです。
1万年2万年単位で半永久的に正当性が認められる絶対的正義など領土問題にどの国も持ち込むことは不可能です。
たかだか20万年前にアフリカ大陸で生まれた現生人類・ホモサピエンスがユーラシア大陸に展開したのはここ10万年のことで、アフリカ大陸以外で人類に、先祖代々の発祥の土地などありません、そこにあるのはいつその土地にどんな人類がやってきたのか、アメリカ大陸のように後からやってきた白人達が先に住んでいたインディオたちを征服するような事例は掃いて捨てるほどあげることができます。
その意味で人類はアフリカに住んでいる一部の人を除いてみんな「外様」なのです。
最終的に実効支配したものだけが勝利者なのです。
話が脱線しましたが、ようは領土問題に絶対正義は存在しない、現実主義で対応するしかない、ということです。
実効支配している尖閣においては現時点の勝利者は日本です、アメリカを巻き込んで「島嶼防衛能力」を地味に高めつつ、徐々にしかし確実に実効支配能力を高めていけばよろしいと考えます。
一方、実効支配している韓国側が大統領の竹島上陸という自爆行為でそこに「領土問題」が存在していることを国際的にアピールしてくれているわけですから、こんなありがたいことは有りません、今このタイミングでは竹島問題に集中して国際的に竹島に「領土問題」が存在していることを認知してもらうことは日本の国益にかないます。
現状を変えることは至難ですがその可能性を、敵失といえましょう、韓国がチャンスをくれているわけです。
ですので、あくまでも日本らしい礼節をキープしながらですが、国際司法裁判所等を利用しつつ、この問題で韓国がカッカして乗り出してくるまで、日本ができる対策を粛々と繰り出していけば良いと思います。
(木走まさみず)