木走日記

場末の時事評論

経団連に言いなりの不公平な高年齢者雇用安定法案〜これでは中小零細企業に「ジジ捨て山」のように老人がふきだまるゾ!


 BLOGOSに公明党さんの高らかな記事が掲載されています。

希望者全員65歳まで

高年齢者雇用法案を可決
生活保護の自立へ 就労収入の積立制度提案
衆院厚労委で 坂口、古屋氏

衆院厚生労働委員会は1日、60歳で定年に達した社員のうち希望者全員を65歳まで雇用するよう企業に義務付ける、高年齢者雇用安定法改正案の修正案を民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決した。

民主、自民、公明3党が共同提出した修正案では、高齢者の過剰保護にならないよう、健康状態や勤務態度が悪く就労に支障をきたす社員などは雇用継続の対象から外せることとした。

(後略)
http://blogos.com/article/44213/?axis=g:0

 「高齢者の過剰保護にならないよう」ですか、よく言えましたね、この国民無視の民主・自民・公明の談合密会政治の茶番国会において。

 1日付け産経新聞電子版速報記事から。

高年齢者雇用安定法案、成立へ
2012.8.1 17:06

 衆院厚生労働委員会は1日、60歳で定年に達した社員のうち希望者全員の65歳までの雇用確保を企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案を民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決した。健康状態や勤務態度が解雇事由に該当する労働者は除外できる修正を3党で加えた。今国会で成立する見通し。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120801/plc12080117080016-n1.htm

 60歳で定年に達した社員のうち希望者全員の65歳までの雇用確保を企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が、衆議院で賛成多数で可決されました。

 男性の厚生年金の受給開始年齢が来年4月から段階的に65歳へ引き上げられるのに伴う措置で、基準によって離職した人が無収入に陥るのを防ぐための措置であります。

 うーん、国民の目がオリンピックのサッカーや競泳や柔道の日本選手の活躍に釘付けである間に、極めて重要な法案が十分な議論もなく、少なくても国民的議論の深まりはなく、民自公による密室的談合により決定されてしまいました。

 これですね、私も零細企業とはいえ経営者の端くれとして一言もの申したいのですが、高年齢者を過剰に保護すると若年者の雇用縮小につながるのは100%必定です、その点での議論が全く尽くされていません、非常に不満です。

 この国の労働者の就業者の8割以上を支えているのは中小零細企業です。

 社員の65歳までの雇用確保を義務付けられた場合、中小零細企業の新規雇用枠に影響が出ることは、火を見るより明らかです。

 年金政策を破綻させたのは政府・行政の長年の無策によるもので若者の責任ではないのに、そのしわ寄せをまたしても若年層に押し付けようとしているわけです。

 特に問題だと思うのは、今回の改正が経団連の主張を巧みに取り入れている点です。

 厚労省資料によれば、今回の改正案のポイントは4つ。

1.継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止

2.継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大

3.義務違反の企業に対する公表規定の導入

4.「高年齢者等職業安定対策基本方針」の見直し等

 1では今まで60歳以上を継続雇用するかどうかは人によって会社側が判断できたのが廃止となり、2では大企業では子会社や孫会社など関連企業が受け入れることをこれからは認め、3.では守らない企業は懲罰的に企業名を公表する、という全ての高齢者の継続雇用を会社側の義務化するという厳しい内容であり、なおかつ経団連の希望に従って大企業は子会社や関連会社に高齢者を飛ばすことを法律で例外的に認めた内容になっています。

 ただでさえ、大企業と中小零細企業の労働者所得の格差が拡がっていることが問題視されているのに、大企業にだけは子会社・孫会社に飛ばすことを「継続雇用」と認めるならば、子会社を持たない中堅・中小零細企業では抱え込むしかないわけで、これでは中小企業が老人だらけの「ジジ捨て山」になってしまう懸念が、現実味を帯びてしまうことでしょう。

 これでは今回の法改正は経団連の言いなりの改悪としか思えません。

 この国の労働者の8割以上が中小零細企業で雇用されていること、この国の労働者の生活の多くが中小零細企業が支えていることを忘れてはなりません。

 このような不公平な法改正では、中小零細企業に「ジジ捨て山」のように老人がふきだまり、中堅企業は活力を失い、多くの中小零細企業の若年層採用の余力を奪いかねない事態を招くことでしょう。

 国民がオリンピックで夢中になっている間に、とんでもない法律がろくに議論もされず次々成立しようとしています。



(木走まさみず)