木走日記

場末の時事評論

日本の在京マスメディアの横並び偏向報道体質を警戒せよ


 
 今年ほど日本の在京マスメディアの横並び偏向報道体質を目の当たりにさせられた年は近年ないでしょう。

 当ブログのエントリーで振り返ってみましょう。

 まず8月には露骨な「韓流押し」でネット上でフジテレビ批判が吹き荒れついにはお台場デモまでが行われましたが、これらの動向を在京マスメディアがいっさい報道しない、できないというチキンな現象が生じました。

2011-08-03 ネット上のフジテレビ批判をマスメディアがまったく報道できない理由
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110803/1312360869

 これは日本のメディアのクロスオーナーシップに基くチキン体質にあると指摘したこのエントリーはネット上で話題となり3000ツイートを超える支持をいただきました。

 しかし、今のネット上の騒動は、ひとつの社会的動きであり社会問題として十分に報道する価値があるにもかかわらず、日本のマスメディアがこれをいっさい無視している点に注目したいのです。

 日本のメディアはクロスオーナーシップのせいで馴れ合い相互批判をしませんから、メディアからの圧力は掛かりません。

 彼らに掛かる圧力は主に三つです、一つ目はTVなら電波の免許制度、新聞なら再販制度で、許認可権を有している政府(官僚)からの圧力、株主や広告主としての大企業ならびにその広告を一手に扱う大手広告代理店からの圧力、最後に読者・視聴者からの批判圧力です。

 図示すると以下のとおり。

 

 政府(官僚)の権限者やスポンサー企業(代理店)からの圧力は非常に強く、逆に読者・視聴者からの圧力は、彼らには弱く感じられて来ました。

 彼らは圧力を受けた(あるいは受けると彼らが想像した)場合、ある種の事実を曲げて偏向報道するか、最悪の場合、「沈黙」すなわち報道をすることを放棄します。

 今回のネット上でのフジテレビ批判騒動も、TVや新聞などの既存マスメディアしか情報源がない人々には一切情報が伝達されていません。

 一種の偏向報道と考えていいでしょう。

 スポンサー企業まで批判され始めているこのネット騒動をチキンな彼らは社会記事として取り上げれないのです、フジサンケイだけでなくすべてのマスメディアグループが沈黙しています。

 今までならば沈黙をしばらく続ければそれで解決でした。

 しかしマスメディアではなく第二の公共圏として「ネット」が今日の状況を一変しました。

 マスメディアが沈黙している情報が、ネットでは本人のブログや掲示板での情報交換、あるいは独立系ネットメディアからあふれんばかりに提供されています。

 もちろん情報精度は玉石混合淆なのですが、ネット上ではフジテレビの外国人株主比率まで議論され始めています、そしてもちろんクロスオーナーシップの弊害にも話題が向き始めています。

 ある種の圧力によりマスメディアがフィルターを掛けて偏向報道していた、あるいは報道しなかった事象に対して、ネットメディアが国民に真実を知らせる機能を代行し始めたといえるでしょう。

 また、在京マスメディアの財務省経団連の走狗ぶりも見事に現れたのは、税金で破綻から守る東電救済スキームの出鱈目ぶりを一紙として批判しないことで理解できました。

2011-12-21 放射能巻き散らかした会社が責任も取らず「国有化」という不条理
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20111221/1324451034

 東京電力ステークホルダー達が誰一人責任を問われない中での税金投入にマスメディアは無批判に受け入れました。

 経営陣、投資家(株主)、債権者、従業員(社員)は、当然ながら国民よりも重い責任を有しているはずです。

 東京電力は破綻するべきです。

 投資家が所有する東電の株券は紙切れになりましょう、債権者である金融機関は債権放棄となります、これら東電で利益を得てきたステークホルダーたちがリスクを負うのは当然なのです。

 破綻処理をして資産を整理縮小、人件費も圧縮、1円まで搾り出しその金額は賠償費用に当てさせればいいのです。

 経営陣、従業員も応分の負担を負うべきです。

 その上で、それでも足らない分をはじめて消費者・国民が広く負担するべきです。

 そんなことをしたら日本経済が混乱する、電力の安定供給ができなくなるといった意見が経団連などからありますが、JAL破綻の前例があります、経済は混乱しませんし、飛行機の運用も何も支障はでませんでした。

 今問われているのは、原発事故を起こし広範囲の放射能汚染により国土に取り返しのつかないキズを付け、海洋汚染を含め国内外からの膨大な賠償請求が予想されるこの重大な問題を起こした企業の、その責任を消費者・国民以外のスーテクホルダーが誰一人責任を負わず逃げおおそうとしていることです。

 また原発事故で放射能を撒き散らした企業をその責任追及もなさずただ国が延命するという行為は内外に間違ったシグナルを送っていることを政府は気づくべきです。

 「放射能を漏らしてもつぶれない」「責任を問われない」ということがあってはなりません。

 あらためて、「国営化」というモラルハザードを断固認めるわけにはいけません。

 東京電力は破綻するべきです。

 東京電力の経営陣、投資家(株主)、債権者、社員、これら重要なステークホルダーの責任追及無しに、消費者や国民が平等に負担する、このようなモラルの無い不条理を認めてはいけません。

 原発事故を起こした会社のステークホルダー達の責任をいっさい問わず、責任を「国営化」という形式ですべて税負担で国民のみに押し付ける。

 民主党政府によるこの東電救済スキームは愚かで間違っています。

 そんなに経産省利権のかたまりである東京電力を守りたいのか?

 そしてTPP参加問題では在京マスメディア挙げて経団連の旗振り役を買っていました。

2011-11-10 やっぱりただの経団連の走狗だった在京マスメディア
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20111110/1320909311

 在京マスメディアが露骨にTPP参加推進にメディアスクラムいたしました。

 地方紙がアツくTPP交渉参加反対を社説で唱えている中で、大変興味深い現象として、在京大手メディアのTPP旗振りメディア化が道化じみていて興味深いです。

朝日新聞
どうするTPP―交渉参加で日本を前へ
http://www.asahi.com/paper/editorial20111108.html
【読売新聞】
民主TPP結論 首相は参加へ強い決意を示せ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111110-OYT1T00059.htm
毎日新聞
社説:TPP反対論 米国陰謀説は的外れ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20111031ddm004070013000c.html
産経新聞
TPP 首相は迷わず参加決断を
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111110/plc11111002550003-n1.htm
日経新聞
首相は環太平洋経済協定に参加決断
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E4EAE4EBE6E4E2E0E1E3E2E0E2E3E28297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
東京新聞
TPP交渉を決断へ ルールづくりは戦いだ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011111002000035.html

 なんでしょう、朝日から東京まで、バカの一つ覚えのように野田首相に「参加決断」を訴えています。

 これらの論説は国民に訴えるのではなく恥も無く首相に直接訴えている点も気持ち悪いぐらい共通しています。

 系列在京キー局のTV報道もTPP参加旗振りに偏向しており気持ち悪いのですが、この朝日、読売、毎日、産経、日経、東京の社説そろい踏みも、愚かで見苦しくそして気味が悪いです。

 特にフジ・産経グループの偏向は目に余るものがあります。

 しかし何が愚かだといえば、もしTPP参加して放送の自由化が求められれば、朝日・TV朝日グループや読売・日テレグループ、フジ・産経グループなど、この国のマスメディアの大問題であるクロスオーナーシップの問題がクローズアップするのは必至なのであり、本来なら在京マスメディアこそTPPには大反対であるのが本音であろう点であります。

 ではなぜ在京メディアだけが愚かなTPP参加旗振りをそれが結果的に自分の首を絞めることがわかっていてもするのでしょうか。

 答えはいたく簡単であり、それは巨大広告代理店を通じて彼らのスポンサーである大企業の意向をチキンなマスメディアが無視できず、その代弁者として、まるで経団連会長と同じような主張を民意を無視してメディアスクラムしているわけです。

 ・・・

 今、また在京マスメディアのスクラムが始まりました。

 ここ一両日の主要紙社説から。

【朝日社説】首相と増税―豹変して進むしかない
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】民主の消費税案 首相は年末決着を次へ生かせ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111230-OYT1T00036.htm
【毎日社説】消費増税案 ギリギリで合格点だ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20111231k0000m070077000c.html
【産経社説】民主消費増税決定 歳出削減にも指導力示せ
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111231/plc11123103140005-n1.htm
【日経社説】消費増税の合意を実現につなげよ
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E5E5E2E6EAE7E2E1E3E3E0E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D

 野田首相の消費税増税案(14年4月から8%、15年10月から10%)に全紙がもろ手を挙げて支持しています。

 ここにはこのタイミングでの増税に対する反論も異論もありません。

 逆に各紙は野田首相の決断を積極的に評価しまくっています。

 首相は厳しい現実をみつめ、突き進むしかない。(朝日社説)

 その通りだ。社会保障と税の一体改革の与野党協議を実現し、断固として関連法案を成立させねばならない。(読売社説)

 今後、最終案や法案に仕上げる過程で、これ以上後退のないよう、首相のリーダーシップを望みたい。(毎日社説)

 少子高齢化が進む中で、社会保障の安定財源を確保するための消費税率引き上げは避けて通れない課題であり、年内の決着にこぎつけた首相の手腕は評価したい。(産経社説)

 反対派の抵抗に屈せず、増税の時期と幅を明示したことを評価したい。(日経社説)

 ・・・

 日本の在京マスメディアはある種の国策に対して一斉に無批判になったり無視したり、その不気味な体質は大変危険だと思われます。

 ある種の問題で異論・反論がマスメディアから消滅してしまうのです。

 私達国民は、在京マスメディアがメディアスクラムで報道姿勢が一斉に偏向したときは特に注意が必要です。

 今年ほど日本の在京マスメディアの横並び偏向報道体質を目の当たりにさせられた年は近年ないでしょう。

 在京マスメディアがメディアスクラムするとき、私達はその報道姿勢の裏側にいかなる力が作用しているのか、十分な警戒が必要です。



(木走まさみず)



※本年も「木走日記」をお読みいただきありがとうございました。
 どうかよいお年をお迎えくださいませ。