木走日記

場末の時事評論

 「日本国大好き」ではなく「民主党大好き」首相の限界〜輿石幹事長とは盗人に金庫番させるようなもの

 アメリカでは、新しい大統領が就任すると、大統領とメディアの「ハネムーン期間」と呼ばれる100日間のモラトリアムがあると言われています。

 最初の100日間は、メディアは大統領の手腕を暖かく見守る報道にとどめ、批判的報道は慎もう、という慣習であります。

 野田新首相の人事でありますが、輿石東民主党参議院議員会長の幹事長就任には、驚かされました。

 今朝(31日)の各紙社説でも賛否いろいろなことが書かれていますが、ここはまずこの人事をアメリカの「ハネムーン期間」を模してほめ殺しほめちぎって見たいと思います。

 新聞社説風に。

 野田新首相の「いぶし銀」人事

 言うまでもなく新首相が真っ先に直面する政策課題は今年度の3次補正予算案の編成である。

 被災者のくらしと企業再生を支援するのに真に必要な事業に必要な予算は、菅政権は今後5年間の復旧・復興費を19兆円と見積もった。1次、2次補正予算の規模は計6兆円なので3次補正で13兆円の支出を想定されている。

 住宅移転、漁港集約、病院再建など優先度が高い事業を一日も早く予算化し、被災地の「復興」とともに停滞する日本経済の経済の復興のきっかけとなることも期待されている。

 財源については、不要不急の歳出削減を政府保有株の売却など「埋蔵金」や、民間資金を活用する工夫もあるが、それでも足りない分は復興債の発行が避けられない。

 3次補正予算案の編成は、国会が衆参ねじれ国会である以上、野党の協力無しには成立し得ない。

 野田新首相は民主党マニフェスト修正を約束した民自公の3党合意を遵守すると明言しているのも、自公の賛成無しには法案ひとつ国会を通せない現実があるからだ。

 しかし野党におもねればマニフェスト重視を主張する党内の反主流派が収まらない。

 国会運営を円滑にするためにもまず党内融和が前提になることは自明である。

 小沢一郎元代表に近い輿石氏の幹事長起用は、代表選で露呈した「親小沢」「反小沢」の党内対立に終止符を打ち、挙党態勢を構築する、野田氏の言う「ノーサイド」の具体化である。

 「いぶし銀」人事といってよいだろう。

 口先ではなく人事面でこれほどはっきりとしたシグナルを送ったことは評価してよい。

 いつまでも不毛な党内対立を繰り返している時間は民主党にも、この国にももうないのである。

 真の「国民生活第一」の政治を実現するには不毛な党内対立を廃し、野党の協力を得て、優先順位を付けひとつひとつ確実に重要な政治課題を克服していくしか道はない。

 幹事長という要職をライバルの陣営に渡すことは勇気のいる人事である。

 野田氏は協調型政治家といわれてきたが、なかなか頼もしい新首相の船出と評価したい。

 新内閣の閣僚人事も「ノーサイド」といえるバランスを期待したい。

 せいいっぱい肯定的にそして好意的に解釈してみました。

 しかしここ日本では「ハネムーン期間」などという上品な慣習はありませんのでここからは批判的に論じます。

 野田氏の「ノーサイド」の考え方は良く理解できますが、この輿石幹事長人事はあまりに内向き人事であり、国民世論を無視している点でまったく評価できません。

 「日本国大好き」ではなく「民主党大好き」首相の限界かなとも思えます。

 それだけでなく「政治とカネ」にまつわる点では最悪の人事だといえましょう。

 山梨日教組委員長から日本社会党を経て民主党入りした輿石氏はある意味で組合依存の悪しき古い民主党体質のシンボルでもあり、また小沢時代、4回に渡り計4000万もの組織対策費なる使途不明金を小沢氏から受け取っている張本人であり、これまた悪しき「政治とカネ」問題の当事者そのものに、よりによって党の金を管理する幹事長につける政治センスの無さはどうでしょう。

 同じ党内融和を目指すにしてもこの75歳のご老体ではなく幹事長にはもっと若手の生きの良い人材を当てるべきだったのではないでしょうか。

 現在の党内対立の原因をたどれば、小沢氏が20億円を超す党資金をみずからに近い党役員に「組織対策費」としてばら撒き、なおかつ使途が明らかにされないため、不満や疑念が党内に噴き出したことからです。

 「小沢的」カネのばら撒きをたっぷり貰って来た人間を幹事長職に用するならば、資金面を含めた公正な党運営を担保すべきです。

 岡田克也幹事長は、300万円以上の組織対策費を個人に出す場合、外部監査の対象にすると決めました。

 そのルールを明文・義務化し輿石氏に課すべきです。

 でなければこの人事は「いぶし銀」人事でもなんでもなく、「盗人猛々しい」人事であり、亡国人事となりましょう。

 輿石幹事長とは盗人に金庫番させるようなものであります。

 協調派政治家野田氏の限界が早くも露呈したのかも知れません。



(木走まさみず)