木走日記

場末の時事評論

小沢Gの敗因〜鹿野陣営寝返りは自業自得

 民主党の新代表が野田佳彦氏に決まりました、おめでとうございます。

 当ブログとしては、野田氏の勝利そのものが想定外でありまして、前々回、「前原首相で決まり」と題して、「野田さんは梯子を外されてかわいそう」という内容のエントリーをしたわけですが、大はずれとあいなったわけです。

[政治]梯子外された野田さんがカワイソすぎる件〜「はい、これにて前原首相で決まり」(民主党関係者)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110824/1314163344

 このエントリー、結果的にトバシ記事みたいになってしまいまして申し訳ございませんでした。

 で、赤っ恥(?)をかいた恨み(苦笑)ではないですが、今回は野田氏の勝因ではなく、「政局の人」小沢一郎氏の今回の敗因を中心にこの代表選を振り返ってみたいと思います。

 京セラの稲盛氏の仲介で前原氏と小沢氏が接近、小沢・仙谷会談があったのが23日夜、次の24日夜には小沢・前原会談が実現します。

 この段階で、人事の条件が合えば小沢Gが前原氏を推す、という憶測がメディアでも大々的に報じられてしまいます。

 実際には人事、具体的には幹事長人事を前原氏側が提示しなかったこともあり小沢氏側は別の候補を推すことになりますが、しかし、この前原・小沢接近報道が体制側、反体制側、双方の2つのグループの反発を呼んでしまいます。

 体制側では菅グループが前原氏の動きに反発、結果的に菅グループは大半が野田氏を押すことにつながります。

 一方、反体制側では鳩山氏がこの動きに激しく反発、原口氏擁立を小沢氏に持ちかけます。

 こうした流れの中で小沢氏は、参議院議長である西岡氏擁立を考えますが、小沢氏・鳩山氏の話し合いの結果、第三の候補として海江田氏に決まったというわけです。

 まず一つ目の敗因。

 海江田氏という第三の候補に妥協の末落ち着いたわけですが、海江田氏といえばかつて、ボクは小沢さん的手法が大嫌いなんだい、といったタイトルの小沢批判本を出版したこともあるわけで、小沢グループ全体で推すにはちょっとタマが悪いというか、筋が悪かったということです。

 結果論ですが、海江田氏では小沢グループの士気が上がりづらかった面はあったのではないでしょうか。

 そうはいっても120+50票の大票田を抱えている小沢・鳩山グループからの推薦を得て、海江田氏の数的有利は疑う余地もなく、小沢氏は途中から戦略を変えて決選投票無しで過半数、つまり200票越えを1回目で達成しようと試みます。

 下手に決選投票すると反小沢票がまとまってしまう、「政局の人」小沢氏が1回目で決着を付けようとしたのは間違いではなかったでしょう。

 前原氏を除く3陣営をターゲットに猛烈な切り崩し工作が行われます。

 このあたりの動きは以下の読売記事が詳しいです。

海江田陣営、作戦変更「1回目で過半数取る」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110829-OYT1T00103.htm

 特にターゲットを鹿野陣営に絞っていたようです。

海江田陣営幹部は28日、作戦を変更したことを明かした。1回目の投票で当選を決めれば、支援の中核となった小沢一郎元代表や鳩山前首相の思い通りに人事を行い、菅政権からの政策転換も主導できるためだ。

 鹿野陣営幹部は「小沢グループがすさまじい『引きはがし』を始めた。議員が何人か、全く顔を出さなくなった。ポストで釣っているのか何か分からないが、うちを狙い撃ちにしている」と強く反発した。

 投票日前日での作戦変更の背景には、2位に鹿野氏が食い込む可能性が出てきたことがあるようだ。元代表の周辺は「党内で反発が強い前原氏が2位なら、決選投票になっても、野田、鹿野陣営の一部を取り込める。だが、鹿野氏が2位だと、前原、野田陣営が『反海江田』で結束し、票の大半が鹿野氏に流れてしまう」との読みだ。

 鹿野陣営幹部は「小沢グループがすさまじい『引きはがし』を始めた。議員が何人か、全く顔を出さなくなった。ポストで釣っているのか何か分からないが、うちを狙い撃ちにしている」発言が妙に生々しいです。

 ここで小沢陣営は2番目の、そして致命的な敗因を自ら作ってしまいました。

 中間派でありこれまで小沢グループと親和性を有していた鹿野陣営を敵に回してしまったのです。

 第一回投票結果を見てみましょう。

海江田万里 鹿野道彦 野田佳彦 前原誠司 馬淵澄夫
143 52 102 74 24

 やはり海江田氏では集票力が弱かったのか143票にとどまります、二位の野田氏の102票は善戦といっていいでしょう。

 で、決選投票となるわけですが、決戦投票を前に、産経新聞電子版が小さな記事をトバシます。

「野田氏、逆転勝利」の観測広まる
2011.8.29 14:21

 民主党代表選は29日、決選投票が行われているが、1回目の投票で2位だった野田佳彦財務相が、1位の海江田万里経済産業相に逆転で勝利する公算が大きくなった。鹿野道彦農水相の陣営が、決選投票で野田佳彦財務相に一致して投票する方針を確認したため。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110829/stt11082914210025-n1.htm

 うむ、決戦では鹿野陣営が一致して野田氏に投票する方針を出したのです。

 第一回投票結果から、野田+前原(この両者ははじめから決選投票では協力することが決まっていました)の176票に鹿野票52票が加われば軽く過半数の200票越え可能なわけです。

 決選投票の結果はほぼこの足し算に近いものでした。

海江田万里 野田佳彦
177 215

 天下分け目の関ヶ原の戦いで、小早川秀秋は豊臣側を裏切り徳川側に寝返りました。

 今回の民主党代表選の結果は、決選投票で野田氏側に寝返った鹿野陣営が鍵を握っていました。

 しかし鹿野陣営を野田氏側に追いやったそもそもの主因は、選挙期間中に小沢グループが鹿野陣営にしでかした強引な引き剥がし工作という、ひどい仕打ちにあるわけです。

 いわば自業自得といえましょう。



(木走まさみず)