木走日記

場末の時事評論

しごく真っ当なことをインタビューで答えたら解任された副幹事長の悲喜劇〜「国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ」(生方幸夫副幹事長)

 19日付け日経新聞電子版記事から。

首相「党内規律守れない」 生方氏解任で執行部判断支持

 鳩山由紀夫首相は19日午前、民主党執行部が小沢一郎幹事長への批判を繰り返してきた生方幸夫副幹事長の解任を決めたことについて「党の中では黙っていて、党の外で様々な声を上げることになれば、党内の規律がなかなか守れない」と、執行部の判断を支持した。首相公邸前で記者団に語った。
 だが、枝野幸男行政刷新相は「直ちに辞めなければいけない事態がどこにあったのか、首をかしげている」と解任に疑問を呈した。そのうえで「民主党や政権の支持率にプラスに働かないのは間違いない」と強調した。
 前原誠司国土交通相は「言論封殺のようなことがあってはならないが、ものの言い方も大事だ。組織人として一定のルールはあるだろう」と指摘。直嶋正行経済産業相は「支持率も低下して非常に厳しい状況だ。慎重に発言すべきではないか」と、それぞれ生方氏に批判的な姿勢を示した。(15:17)

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100319ATFS1900E19032010.html

 うーむ、小沢批判で解任された生方幸夫副幹事長の件に関して、鳩山首相は「「党の中では黙っていて、党の外で様々な声を上げることになれば、党内の規律がなかなか守れない」と執行部の判断をあらためて支持しました。

 なんだかなあ、将軍様の批判がタブーの北朝鮮じゃあるまいし、内向きだろうと外向きだろうと秘書3人も逮捕されている小沢氏なんかどう批判したって当然政治家としてあってしかるべきだし、と思いますが、不肖・木走は最近このような民主党のおかしい動きがあると、ある実に信頼できるメディアの記事を参考にすることが癖になっております。

 最新の19日発行(3月20日号)の日刊ゲンダイ記事から。

生方問題「内紛の始まりと騒ぐ大マスコミの期待外れ〜コップの中の個人造反

 小沢幹事長批判をした民主党生方幸夫副幹事長(62)が解任された。どの組織でもそうだが、内輪で上司批判のグチを言うのは勝手。だが、外部で言うのなら、それなりの覚悟が必要だ。役職を解かれても仕方ない話である。それに逆上するのなら、組織を飛び出して、つまり離党してから騒ぐしかない。
 だが、案の定、大マスコミは「待ってました」とばかり、生方発言を大きく取り上げ、小沢批判に結び付けている。「この内紛は大きくなりそうです」なんて真顔で流しているテレビもあった。
 だが、民主党内の空位は冷めたものだ。ある議員は言った。
「生方議員はマスコミにチヤホヤされて、調子に乗ってしまっただけでしょ。新聞インタビューで幹事長批判したら話題になった。日の当たる場所に出たことがうれしかったので、マスコミが期待することをしゃべった。そういうレベルの話ですよ。村越議員と同じです」
 村越議員とは、若手ながら同じくメディアで小沢批判をして、「たった一人の反乱」などといわれた民主党議員。が、それっきりである。
「生方議員は”小沢辞めろが党内の多数派”と言っていたが、本当にそうなら、民主党内でもっと大きな動きが起きていますよ、小沢嫌いのマスコミ記者がいくら突っついても、誘導尋問しても、渡部恒三さんなど、決まった議員しか小沢批判はしてくれない。多くの議員は、小沢は好きではないが、民主党には必要な核だと考えている。内紛なんかに発展するわけがありませんよ」(報道関係者)
 執行部が生方議員をスパッと解任したのも、反小沢派がごく少数だと分かっているからなのだ。

日刊ゲンダイ3月20日 3面記事より

 なるほど、そうか所詮生方問題なんか「コップの中の個人造反」であり、「生方議員はマスコミにチヤホヤされて、調子に乗ってしまっただけ」で、「執行部が生方議員をスパッと解任したのも、反小沢派がごく少数だと分かっているから」なのか。

 うむ、最近の日刊ゲンダイ記事を読めば、小沢支持者が物事を世間一般と乖離してどう考えているのか、実によく理解できるのでたいへんありがたいですね、日刊ゲンダイはその意味で実に信頼できるメディアですな。

 ・・・

 ふう。

 おかしいでしょ、絶対。

 そもそも問題になった17日付け産経新聞インタビュー記事から。

【単刀直言】生方幸夫民主副幹事長「党の“中央集権”、首相は小沢氏を呼び注意を」
2010.3.17 00:40

 与党に政策部門がないのは絶対におかしい。民主党に元気がなくなったのは、自由に議論する場がなくなったからです。政策調査会と、その下の部会を再び作って、みんなが自由な意見をいえるように戻さないといけません。
 衆院選マニフェスト政権公約)の実行が思うようにできていません。それに対する十分な説明を民主党がしきれていないのは、党に政策責任者がいないからです。説明を一つ一つしていれば、民主党への信頼が今のように落ちることはなかった。
 鳩山さん(由紀夫首相)は約10年前に「1人1政策作ろう」と、仲間たちに呼びかけたはずです。政権交代で、それを実現しようと思ったら、議員立法も制限されてしまった。政治主導にはほど遠い。
 われわれは自民党政権がやってきた中央集権はダメだと言ってきた。地方分権にしようといってきたのに、民主党の運営はまさに中央集権です。今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている。下に権限と財源が与えられていない状況はおかしいでしょ。党の代表である鳩山さんは、小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい。
 1年生議員は民主党に入ったときから、強度の管理体制下に置かれているから、しゃべっていいものかどうかすら分からないんじゃないでしょうか。

 民主党への信頼が低下している要因には「政治とカネ」の問題もあります。小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い。小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかないです。
 国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ。おそらく説明できないんでしょうね。小沢さんは前よりだいぶ権威づけられてきたというか、権力者になってきましたね。
 北海道教職員組合の問題は、これも一番上は(出身母体が日本教職員組合の)輿石さん(東・参院議員会長)ですからね…。(民主党議員は)組合からあまりお金をもらっちゃいけない。組織内候補といわれる方の献金額は常識的な額ではない。参院選への影響は、政治ですから何があるか分かりませんけど、要するに言い訳から入る選挙は勝てませんよ。
 公明党とどうするかは党の方針の問題です。議員の意見を聞かないといけません。国会運営をうまくするためにとか、味方が一人でも多けりゃいいと思って連携するなら大間違い。誰かの思いつきでやっていいことではない。選挙で公明党がイヤだから応援してくれた人だっていっぱいいたわけですから。(坂井広志)
    ◇
 うぶかた・ゆきお 衆院千葉6区選出。当選4回。横路孝弘衆院議長のグループに所属。昭和22年、東京都生まれ。47年、早大卒。読売新聞記者を経て経済評論家に。平成8年の衆院選で初当選。今年3月、民主党有志でつくる「政策調査会の設置を目指す会」世話人に就任。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100317/stt1003170045000-n1.htm

 このインタビューで問題とされるポイントは1点目はココ。

 今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている。下に権限と財源が与えられていない状況はおかしいでしょ。党の代表である鳩山さんは、小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい。

 「小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい」と言っているのが、どこがいけないのか私にはよく理解できませんが、「民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている」って、本当のことを指摘しているだけじゃないですか。

 で、問題とされるポイントの2点目はココ。

 民主党への信頼が低下している要因には「政治とカネ」の問題もあります。小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い。小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかないです。
 国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ。おそらく説明できないんでしょうね。小沢さんは前よりだいぶ権威づけられてきたというか、権力者になってきましたね。

 「小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い」のも世論調査が示す事実だし、「小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかない」のも極めて真っ当なご意見ですよね。

 「国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ」とありますが、このインタビューのどこが副幹事長の解任理由にあたるのか、私には理解できません。

 しごく真っ当なこと言っているだけじゃないですか。

 なんだかなこの末期的悲劇は・・・

 いや喜劇か?



(木走まさみず)