木走日記

場末の時事評論

日本シリーズ初戦地上波中継無しの衝撃〜クライマックスステージに立たされた日本プロ野球のジレンマ

 23日付けスポーツ報知記事から。

日本シリーズ、地上波での全国中継行われず

 中日―ロッテで30日に開幕するプロ野球の日本シリーズで、ナゴヤドームで開催される第1戦と31日の第2戦は地上波での全国中継が行われないことが23日、分かった。複数の関係者が明らかにした。11月4日に予定されている第5戦(千葉)も中継がない可能性があるという。

 プロ野球界の最高峰イベントである日本シリーズで、地上波での全国中継がされないのは極めて異例。第1戦と第2戦は地上波のローカル放送とBS、CSで中継される予定となっている。

 日本シリーズのテレビ中継は、出場する球団から推薦された局が全国中継するのが慣例となっていた。しかし、今年出場する中日の試合は全国的な高視聴率を望めない状況にあり、中日が推薦した局と、シリーズ主催者の日本野球機構(NPB)との交渉がまとまらなかったという。

http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/npb/news/20101023-OHT1T00256.htm

 うーむ、日本シリーズが第一戦から地上波での全国中継行われず、ですか、プロ野球人気の凋落が言われて久しいですが、ついに事態はここまできたのか、昭和の時代、秋の国民的お祭りのようだったプロ野球日本シリーズが、地上波TV中継がない試合が発生する日がくるとは実に寂しいのであります。

 このプロ野球人気の凋落がビジネスとしてのプロ野球経営を圧迫しているのでしょうか、親会社TBSの本業赤字による横浜の球団身売り話もあり、どうもプロ野球というスポーツの取り巻く環境はかなり厳しいようなのですが、ちょっとプロ野球球団の経営状況を検証したくなりました。



●腐っても鯛、年間2200万を動員するプロ野球は今でも日本最大のスポーツ興行

 プロ球団の収入は、まずはベースになる球場入場料収入、次にTVなどの放映権料金、広告料金、グッズ販売やロイヤリティ料金などが続くわけですが、肝心の入場料収入はどうなんでしょう、各球団の観客動員数から検証していきましょう。

 「プロ野球freak」さんのサイトで今年のレギュラーシーズンの各球団の観客動員数が速報されていますのでご紹介。

■ホームゲーム観客動員数ランキング

チーム 1試合平均 試合数 合計
阪神 41,745 人 72 試合 3,005,633 人
巨人 41,203 人 72 試合 2,966,626 人
中日 30,460 人 72 試合 2,193,124 人
ソフトバンク 30,062 人 72 試合 2,164,430 人
日本ハム 27,027 人 72 試合 1,945,944 人
広島 22,224 人 72 試合 1,600,093 人
西武 22,101 人 72 試合 1,591,303 人
ロッテ 21,474 人 72 試合 1,546,105 人
オリックス 20,049 人 72 試合 1,443,559 人
ヤクルト 18,513 人 72 試合 1,332,928 人
横浜 16,800 人 72 試合 1,209,618 人
楽天 15,856 人 72 試合 1,141,640 人
合計 25,626 人 864 試合 22,141,003 人

10月10日終了時

プロ野球freak ホームゲーム観客動員数 より
http://baseball-freak.com/audience/

 2004年まではプロ野球の観客動員数なんてアバウトだったんですよね、昔は空席が目だっても東京ドームの巨人戦はいつでも「5万」を超えていたものですが、2005年からJリーグに影響され1桁単位までシビアな動員数発表が義務化されましたら、東京ドームの固定座席数が45600席しかなかったなど、各球団とも動員数をひどく「水増し」していた実態が赤裸々にばれてしまったわけですが、それはともかく2005年以来正確な動員数が発表されていますが、今年もトップはやはり器の大きい甲子園球場を有する阪神でして昨年に続いての300万人越えでありました。

 観客動員数は人気のバロメータなわけですが、上の順位ですがざくっと見ますとほぼ球場の器の大きさと相関しています、参考まで上の順位の順で各球団の定員数をまとめてみましたのでご紹介。

阪神甲子園球場・・・・・46229人
(昨年までは50454人だったが、改修工事に伴い減少。)

東京ドーム・・・・・45600人

ナゴヤドーム・・・・・40500人(野球開催時は38414人。)

ヤフードーム・・・・・35695人
(野球開催時は35773人。2005年〜2007年の改修工事によって増設。)

札幌ドーム・・・・・最大収容人数は53845人。
固定客席数に関しては、野球開催時が40572人、サッカー開催時が41580人。
(ただし、立ち見を含めた場合は42222人が最大定員数。)

新広島市民球場・・・・・30,350人(観客席数でこの他に芝生席など有り)

西武ドーム・・・・・33229人
(最大収容人数は35,879人。だが、改修工事に伴い減少。)

千葉マリンスタジアム・・・・・30011人(消防法上の定員は30200人。)

京セラドーム・・・・・36477人

明治神宮野球場・・・・・消防法上の定員は35650人
(昨年までの収容人数は36011人だったが、改修工事によって減少。)

横浜スタジアム・・・・・30000人(消防法上の定員は30730人。)

クリネックススタジアム宮城・・・・・22187人
(昨年度までは23000人だったが、改修工事によって減少。)

参考:yahoo知恵袋「プロ野球12球団各ホーム球場の正確な収容人員を(おおよその数ではなく1の桁まで..」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1018294870

 とにかく腐っても鯛、地上波放送が激減して落ち目だなんだといわれていても12球団で今年も年間2214万人も動員しているわけで、動員数総数で言えばプロ野球は今でも日本最大のスポーツ興行なのではあります。

 特にパリーグは躍進著しいものがあります、2214万の内訳はセが1231万、パは983万でありますが、微減のセに対しパは今季も昨季から増員しております。

 共同通信記事から。

昨季より増の983万人 パ・リーグの観客動員

 パ・リーグはレギュラーシーズンが終了した1日、交流戦を含む今季の観客動員数を発表し、総観客数は983万2981人で、1試合平均は前年比1・3%増の2万2762人だった。
 リーグ優勝したソフトバンクは1試合平均で前年比3・6%減だったが、216万4430人で1位。終盤まで3位争いに加わった5位オリックスはアップ率トップで12・3%増。昨季2位から最下位に転落した楽天は5・1%減だった。
 平均試合時間(9回)は昨季より3分多い3時間12分。

[ 共同通信 2010年10月1日 22:25 ]
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/all/headlines/20101001-00000057-kyodo_sp-spo.html

 2005年以前の「水増し」時代に1000万を越えてた時期があるので、「過去最高」との言葉が使えないのでしょうが、実質、パの観客動員は2005年以来、825万、852万、904万、955万、970万、983万と毎年増やしております、事実上過去最高を毎年更新していると見ていいでしょう。

 少なくと観客動員数からはプロ野球はまだまだ凋落していないことがわかります、特にパ・リーグに限って言えば逆にここ6年動員数を伸ばし続けているわけです。



●今世紀に入り20%超えがなくなり特に凋落が目だつプロ野球巨人戦ナイター中継

 で、次に球団経営で第二の収入源とも言われているTV放映権に関して検証してみましょう。

 黄金時代には一試合1億超と呼ばれた巨人戦中継料金(読売系列の日テレは半額の5000万だったとか)でありますが、BS・CS以外では阪神ソフトバンクの地域ローカル放送などを除いては、もともと地上波全国中継はほとんど巨人戦しかありませんでした。

 1990年代まではゴールデンタイムでも常時平均20%の視聴率は確保、30%越えも決して少なくない巨人戦中継は、スポンサーは引き手あまたであり中継料が1億だとしてもTV局にとってドル箱だったわけですが、そんなことは今は昔、巨人戦の視聴率はここ10年急降下してきたのは事実であります。

 ビデオリサーチ社のサイト、ここにプロ野球巨人戦ナイター中継の過去22年間の平均視聴率が月別で表になっています。

 表から年別の中継試合数と平均視聴率を表にまとめてみました。

■【関東地区】過去22年プロ野球巨人戦ナイター中継視聴率の推移(2010年10月1日現在)

中継試合数 平均視聴率
2010 27 8.4
2009 32 10.0
2008 61 9.7
2007 74 9.8
2006 106 9.6
2005 129 10.2
2004 133 12.2
2003 132 14.3
2002 134 16.2
2001 140 15.1
2000 131 18.5
1999 129 20.3
1998 134 19.7
1997 128 20.8
1996 128 21.4
1995 125 19.8
1994 128 23.1
1993 119 21.5
1992 125 19.3
1991 118 17.2
1990 122 20.6
1989 121 22.7

ビデオリサーチ社
プロ野球巨人戦ナイター中継 より
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/07giants.htm

 うーむ今世紀に入り20%超えがなくなり特に凋落が目だつわけですが、2005年までは巨人戦は130試合前後とほぼすべてが中継されていたのが、ここ6年中継試合数が毎年減り、今年はついに27試合という中継数となってしまいました。

 1試合一億の相場も高い視聴率が取れるという裏付けからスポンサー需要があってこそ成立していましたが、現在では中継数そのものも激減さらに中継があっても料金は半額以下(一説には四分の一)になったといわれています、巨人戦の視聴率低迷は各球団の経営(特にセリーグ)に深刻な収入減をもたらしているようです、とくに横浜などの器の小さい球団にとり深刻なようです、今回の身売り話の背景にもこの巨人戦放映権料の急減が指摘されています。

 昭和の時代、お茶の間で巨人戦ナイターを家族で見るのはひとつの風物詩でありましたが、娯楽も増えスポーツもJリーグをはじめ多様化する現在、夜家族でナイターをTV観戦する習慣を持つ家庭が激減したと言うことでしょうか。

 いずれにせよもともと全国放送はほぼ巨人戦だけでしたので、統計で検証できるのも巨人戦の視聴率だけなのですが、統計で見る限りプロ野球中継というコンテンツの凋落は否定しようがないようです。

 ゴールデンで放映しても視聴率は2桁にのらない魅力のないコンテンツになってしまったわけです。



プロ野球球団は儲かっているのか〜年間動員数300万人を誇る関西の人気球団阪神で検証してみる

 でははたして現在のプロ野球球団は儲かっているのか、核心部分を検証していきましょう。

 12球団で唯一年間動員数300万人を誇る関西の人気球団阪神で検証していきましょう。

 阪神球団の年間売り上げはいかほどなのか、ここに少し古いですが検証のヒントになる大阪ニッカンの記事がありましたので、ご紹介。

阪神決算報告で強気の見積もり

 阪神電鉄は28日、大阪市内で決算報告会を行い、2001年度の各部門の業績を報告した。席上、阪神電鉄・藤井純専務(63)は、快進撃を続ける阪神球団の今季、02年度の業績見通しも報告。売上高は球団史上初めて100億円を超える105億円(前年比19%増)、主催試合の観客動員数は過去最多の285万3000人(92年)に迫る280万人と予想した。

 星野虎の快進撃は、親会社・阪神電鉄の決算報告でも注目だった。4年連続最下位に終わった01年度の決算では、球団の売上高は88億円(前年比5・6%減)となったが、02年度は105億円と予想された。「シーズンの最後にならないとわからないが、7月までいい順位にいれば理想的。希望的観測だが、見通しとしては過去最高の額」と藤井専務は説明した。

 ただ、02年度の営業利益予想は2億8000万円と、01年度の5億6000万円から半減する見通し。売上高が大幅増加しながら利益が下がる予想に、藤井専務は「片岡、アリアスら強くなるための投資を行ったため。阪神球団の利益が下がっても、波及効果が電鉄や百貨店に出れば」と話した。ただ、02年度の見通しは主催試合の観客動員が280万人でのもの。主催20試合を終えた現在、阪神の観客動員は87万2000人で300万人を超えるペース。300万人動員なら、01年度と同じくらいの営業利益も見込めることになる。
http://osaka-nikkan.com/lib/otr02/p-otr-0529-10.html

 記事によれば、02年度では観客動員数280万人と予想、売り上げは過去最高の105億円、営業利益予想は2億8000万円を予想しています。

 今期の観客動員数が300万ですから、巨人戦の放映料が少なくなったとしても今年の売り上げは、やはり100億前後といった数字の範囲当たりでありましょう。

 球団の売り上げは、入場料収入、放映権料、広告収入、グッズ販売などで構成されますが、大半は入場料収入などお客さんが球場で落としてくれるお金ですから、球場に来てくれたお客さんが1人入場券も含めて飲食など併せて平均2500円相当落とすとすれば、球界一の人気球団阪神の場合、75億ぐらいが直接収入と試算できます。

 23日付け日経新聞記事によれば昨年09年度の阪神球団の最終損益は3億9700万の黒字とあります、上記の9年前の記事でも2億から5億の黒字という数字がありますことから、どうやら球界一の観客動員をほこる阪神球団でも収支は赤字ではないですが、とんとんといったところなんでありますね。

 プロ球団の支出のメインは、選手年俸総額、球場使用料、球団運営費の3つが中心であります。

 09年時点で阪神の年俸総額は12球団一の高額でありました。

 公表された球団別の年俸総額と平均年俸は次のとおり。

プロ野球 球団別年俸総額ランキング

1位 阪神 (35億3,410万円)
2位 ソフトバンク (32億6,940万円)
3位 中日 (27億1,610万円)
4位 ロッテ (26億8,170万円)
5位 巨人 (26億6,506万円)
6位 西武 (22億8,840万円)
7位 ヤクルト (20億6,090万円)
8位 日本ハム (20億4,940万円)
9位 横浜 (19億9,800万円)
10位 オリックス (16億9,160万円)
11位 楽天 (16億1,010万円)
12位 広島 (14億2,460万円)

次に球場使用料についてなんですが、これが甲子園球場の使用料についてはほとんどお手上げです。

 以下のサイトが詳細を調査されていて参考になりますが、甲子園に関しては使用料無料から阪神電鉄への上納金60億まで、諸説あってよくわかりません。

球場使用料について
http://on-the-way.org/archives/000176.html

 他球団の例、例えば札幌ドーム1試合800万円、東京ドーム1試合1750万円とありますので、ざっくりと主催72試合で10億円前後が相場のようです。

 最後の費用が球団運営費ですがこれはまったく情報がありません。

 年間72試合はビジターとして他球場でゲームをするわけですが、選手25人を含めた約50人の移動代(飛行機・新幹線・宿舎から球場までの貸し切りバス代)と宿泊代、一人当たり一泊10万以上掛かります、500万円*72日と単純計算しても3億5000万という費用が発生します。

 球団職員の給与(50人*1000万として5億円)、春のキャンプ運営(約一月の諸経費)でも億単位のお金はかかります。

 また以外に経費が掛かるのが2軍の運営費です、2軍の場合興行収入はほぼ当てになりませんから、存在自体が財務的には経費負担のみであります、やはり年間億単位の費用が発生していることでしょう。

 おおざっぱですが、阪神球団の場合09年では、年間100億前後の売り上げがあり、35億を選手年俸に使い、残りの60億で球場使用料、球団運営費に使い、5億前後が利益計上されている、と見ていいでしょう。

 球界一の観客動員数を誇る阪神を例に球団の売り上げと利益について検証していきました。

 ここから推測できることは、球団の年間維持費は、だいたい「60億+選手年俸」あたりであり、その辺が日本のプロ野球球団の損益分岐点であろうということであります。



●実質黒なのは巨人・阪神と広島の3球団だけ

 12球団の収支はどうなっているのか、20日付けの日経新聞紙面記事(ネット上でリンク無し)によれば、12球団のうち9球団までが実質赤字であると報じられています。

 記事の内容をわかりやすく表にまとめてみました、検討しやすいように観客動員数ランキング順にしました。

(09年度)

チーム 球団の最終損益 親会社の支援 実質赤黒
阪神 3.97 無し 黒字
巨人 15.40 無し 黒字
中日 2.00 数億円規模 赤字
ソフトバンク 12.22 50.00 赤字
日本ハム 3.29 30.00 赤字
広島 4.01 無し 黒字
西武 ▲0.29 数十億円規模 赤字
ロッテ 0.51 数十億円規模 赤字
オリックス 損益均衡 損失すべて穴埋め 赤字
ヤクルト ▲0.21 広告費として支援 赤字
横浜 ▲5.03 20.00 赤字
楽天 ▲6.17 損失すべて穴埋め 赤字

(単位は億円)

23日付け日本経済新聞紙面13頁記事より作成

 人気球団の巨人・阪神を除いては多くの球団が親会社からの支援無しでは黒字を保てないことが一目瞭然です。

 身売り話のでている横浜など親会社TBSから20億の支援を受けているにもかかわらず5億超の赤字計上しています、本業が赤字のTBSにとって重荷であることがわかります。

 結局、実質黒なのは巨人・阪神と広島の3球団だけであります。

 素晴らしいのは広島ですね、親会社がない市民球団の面目躍如といいますか、親会社の支援はないのですから自力で黒にしていることがうかがわれます、年俸ランキングでも広島は最下位の14億2,460万円(トップ阪神の3分の1強)に押さえていましたしね。
  
 どうやら、日本の球団は「60億+選手年俸」あたりの損益分岐点を自力でクリアできているのは巨人・阪神の人気2球団と、そもそもたよりたくても親会社のない広島のセ・リーグ3球団だけであり、後の球団はすべて実質赤字であるわけです。

 ソフトバンク楽天など親会社にしてみると、毎年何十億も支援して球団を維持することの価値は、これは宣伝効果を狙ったものであり、この費用を広告費と見なしているのでしょう。



●クライマックスステージに立たされた日本プロ野球のジレンマ

 ここまで検証してきたことをまとめてみましょう。

 1.年間観客動員数は2214万人でありプロ野球は今でも日本最大のスポーツ興行である、特にパ・リーグはこの6年実質「過去最高」の動員数を記録し続けている。

 2.プロ野球巨人戦ナイター中継視聴率の推移を見れば、すでにプロ野球がゴールデンタイムで2桁の視聴率すら獲得できない魅力のないコンテンツになったのは事実である。

 3.プロ野球球団は年間動員数300万人を誇る関西の人気球団阪神ですらギリギリの黒字計上であり、12球団のうち9球団は実質赤字である。親会社はこの赤字を広告費と見なして支援している。

 ここから読みとれるのは企業名を球団名に掲げるこれまでどおりの企業広告としての球団経営が限界に来ているのではないか、ということです。

 パ・リーグでは、日本ハムの札幌移転での動員数激増に代表されるように「北海道日本ハム」「千葉ロッテ」「福岡ソフトバンク」と球団名の先頭に地名を掲げることで、地域色を全面に出すことで観客動員増に成功してきました。

 サッカーJリーグの地域密着運営方針に大きく影響を受けたのでしょう。

 これからのプロ野球の発展を考えると、企業中心から地域中心に運営していく方向性は正しいと言えましょう。

 将来はJリーグのようにチーム名から企業名が無くなり「北海道ファイターズ」とか「福岡ホークス」という呼称になる可能性もあります、セリーグでも「東京ジャイアンツ」とか「名古屋ドラゴンズ」というふうになるかも知れません。

 しかしここに旧態依然の経営に甘んじてきた日本のプロ野球のジレンマがあります。

 「企業色」を弱めると親会社の広告効果は当然弱まります。

 親会社が宣伝効果の弱い球団に年間数十億も支援することを親会社の株主が認めるはずはありません。

 親会社の支援が打ちきられるならば、収入の急増など無い限り、球団は選手の年俸を大幅に下げるしか生き残る道はありません。

 そうなれば巨人や阪神など人気があり自立可能な球団にますます有力選手があつまる傾向が強まることになり、スポーツ興行としての魅力は薄れてしまいかねません。

 現在ですら、巨人や阪神はカネにモノを言わせて財力のない球団から有望選手をかき集めている傾向にあるわけですが、親会社の支援が打ちきられればこの「貧富の差」はますます拡大してしまうというジレンマがあるわけです。

 巨人というガリバーに頼っていびつな形で興行してきた日本のプロ野球は、巨人戦ナイター中継視聴率の凋落とともに、今、後のないクライマックスステージに立たされていると言っていいでしょう。

 Jリーグ並にプロ野球選手の年俸を抑制し身の丈にあった経営を目指すのか、旧態依然の親会社依存の経営を甘んじて続けるのか、ついに日本シリーズの地上波中継が無くなる今年は、後年日本プロ野球のターニングポイントだったと言われることになるかも知れません。



(木走まさみず)