木走日記

場末の時事評論

零細企業の経営者は孤独な「ワンマン」でいい〜GIGAZINE【求人募集】を読んで

【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100802_gigazine_job/

 ネットで話題になっている山崎氏の決起文調「求人募集」であります。

 うーん、「この募集に至るまでの経緯について恥をしのんでここに公開し、記録しておくこと」にしたと前置きしての山崎氏の説明文ですが、一読して、どちらかといえばおとなしくてまじめな社長が現状に耐えられなくなってついにキレたのか、といった印象を持ちました。

 山崎氏の精神的・経済的追い込まれた感がよく出ているのが以下の記述です。

正直、GIGAZINEの中は今、ガタガタです。手が足りないのにもかかわらず、人を雇えば雇うほど私の負担が増していき、ほかの編集部員の給料を出すために月給も何もかも私が一番低いワーキングプア状態で、もう心身共に限界に達して倒れかけました。

この現状を立て直すため、本日付でついに編集部員一名を手始めに解雇しました。

 いや「手始めに解雇」ってそうとうな表現だと思いますよ、おそらく山崎氏は従業員の大多数の入れ替えも視野に入れてるのでしょう。

 不肖・木走はIT関連零細業を起こして10数年になります、また経営コンサルとして関わった企業も延べ50社ほどになります、この山崎氏の異色の「求人募集」を読んで率直な感想は、ベンチャー企業の経営者の姿勢としては、「これでいい」と評価します。

 GIGAZINEの経営内容・財務状況がわからないのでこの「求人募集」の文章に対する評論はこれ以上避けたいと思います、ここからはGIGAZINE規模の10名前後の零細企業の経営者のあるべき姿勢について、私の持論を開陳してみたいと思います、読者の参考になるかはさだかではないですが・・・

 ・・・

 私の経験では、10名前後の零細企業の経営者は「ワンマン」なほうがいい、いや「ワンマン」じゃないと多くの場合もたないと考えています。

 理由は3つです。

 ひとつは社会的「責任」の問題です。

 日本の場合、事業を立ち上げて軌道に乗るまで事業資金を準備するのは経営者個人の力量と責任です。

 銀行から借金する場合もほぼ例外なく経営者の連帯保証が求められます。

 会社が倒産すれば経営者一人が借金を背負います、へたすれば自己破産です。

 今回の「文章」にもこの経営者の孤独な「一人責任」の苦悩がにじみ出ています。

 この規模では「民主的」な経営は成り立ちづらいのです。

 二つ目はこの規模の組織がこれ以上人数を増やすときに必ずぶち当たる壁を突破するには経営者は「ワンマン」のほうが成功例が多いと言うことです。

 業態にもよりますが一人の経営者が面倒を見れる従業員数はせいぜい20名止まりです。

 これ以上人数が増えると当然ながら目が届きづらくなりガバナンスが緩くなってきます。

 ここを突破するには経営者の強力なリーダーシップが必要です。

 会社の方針・ポリシーがたとえ社長がそばにいなくても行き渡っているような強力なリーダーシップを発揮する経営者ほど、この壁をうまく突破して、50人、100人規模の会社へと成功するケースが多いです。

 三つ目は実は経営者がワンマンなほうが従業員にとっても働きやすい職場であることが多いことです。

 私が経営コンサルしていて思うことは、零細企業の起業者で成功している人はほぼワンマンですが、決して職場環境は悪くはない、むしろいかに従業員が働きやすい職場にするか、知恵を絞っている経営者が主流です。

 ワンマンであるがゆえ情熱を持って経営する結果、会社を成長させるとともに多くの経営者が経営者自身成長していきます。

 企業が成功するために従業員を大切にすることの重要度を深く理解していきます。

 もちろん例外もありますがただ暴君のような経営者だったら会社は持ちません、みんな去って行くだけでしょう。

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 零細企業の経営者は孤独な「ワンマン」でいいのだと思います。

 日本の場合、起業した会社の盛衰は経営者がその全人格をもって背負うということだと思います。



(木走まさみず)