木走日記

場末の時事評論

無党派層にとって実は選挙は特異点?〜3度のワンサイドゲームはあったが実は超安定している無党派層

 比較的時間がとれる日曜日に、じっくり考えたい時事テーマを[サンデー放談]と題して不定期に連載していくシリーズの第二弾であります。

 お時間のある読者と話題性のあるテーマをともに考察する機会になればと思っています。

 今回のテーマは「メディアの世論調査無党派層の動向」であります。



時事通信社世論調査鳩山内閣の支持率がついに20%割れ

 14日付け読売新聞電子版記事から。

「国民いらだち」支持率20%割れ調査で首相

 鳩山首相は14日夜、時事通信社世論調査鳩山内閣の支持率が19・1%と20%台を割ったことについて、「国民が『政権交代に期待したけれど十分な成果が上がってないじゃないか』といら立ちを強めている。その中に、政治とお金の問題もたぶん大きく影響している」と述べ、首相自身の政策対応や民主党小沢幹事長をめぐる「政治とカネ」の問題が影響しているとの見方を示した。

 首相官邸で記者団に語った。

(2010年5月14日21時56分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100514-OYT1T00992.htm

 時事通信社世論調査鳩山内閣の支持率が19・1%と20%台を割ったわけです。

 支持率20%代が「危険水域」であると呼ばれているのは、この国では内閣支持率が20%を割った政権は「一年以内の倒れる」確率が極めて高いからであります。

 さて今回はこの時事通信社世論調査を取り上げたいと思います。

 ・・・



■RDD方式ではなく面接法を採用する時事通信社世論調査の特徴

 以前のエントリーでも述べましたが、時事通信社内閣支持率を調査開始したのは1960年7月であります、以来50年間、毎月歴代23の内閣の支持率と、そのときの政党支持率を調査して翌月に公表してきました。

 時事通信社から委託され実際世論調査を実施している(社)中央調査社のサイトから。

「時事世論調査」の概要

(社)中央調査社は、1960年(昭和35年)以来、毎月、時事通信社が行う全国世論調査(「時事世論調査」)を実施しております。調査結果につきましては、新聞社をはじめとした報道機関に配信するとともに、時事通信社のホームページにも掲載いたします。

■ 調査の目的
 政治のことや暮らし向き、話題になっている出来事などについて、お考えをお聞かせいただきます。

■ 調査をお願いする方
 全国20歳以上の男女個人2,000人

■ 調査をお願いする方の選び方
 調査をお願いする方々は、国民全体の意見が反映されるように、以下の統計的手法を使って選ばせていただきました。まず、全国の市区町村の中から157か所を選びます。次に、そこにお住まいの方を、選挙人名簿または住民基本台帳の閲覧用リストから無作為に選びます。なお、閲覧につきましては、法律で定められている手続きを経て、各選挙管理委員会または各自治体からの許可を得て行っております。

■ 調査の進め方
 弊社の調査員が、対象者の皆様を訪問し、その場でご意見をおうかがいする方法(面接法)で行います。

■ 調査の時期
 2010年4月〜2011年3月  毎月の初旬〜中旬

■ 調査の謝礼
 図書カード(500円分)

(後略)

http://www.crs.or.jp/oshirase/about_jp.htm

 時事通信社世論調査の特徴はその調査方式にあります、NHKや朝日新聞など今日マスメディアの多くが、経費や時間の節約もあって電話によるRDD方式を採用しているのに対して、「弊社の調査員が、対象者の皆様を訪問し、その場でご意見をおうかがいする方法(面接法)」を採用していることです。

 大手新聞社などが採用している電話によるRDD方式(Random Digit Dialing、コンピュータで乱数計算を基に電話番号を発生させて電話をかけ、応答した相手に質問を行なう)では、短時間で多くの人々の調査が行えること、電話だけなのでマニュアルどおり調査を実施できるのでアルバイトで可能であり経費が軽減できることなどメリットがありますが、固定電話を持っていない人が非対象となってしまう点や、電話を掛ける時間帯で対応する層(年齢、性別、職業の有無)に偏りが生じる、細かい地域の偏りを正すのが難しい等のいくつかの問題点があります。

 対して時事通信社の面接法は、「お住まいの方を、選挙人名簿または住民基本台帳の閲覧用リストから無作為に選び」だした上で調査員が、対象者を直接訪問しその場で調査する方法であり、デメリットとしては調査範囲に限界があり、「全国の市区町村の中から157か所を選」ぶ必要がある点、時間と経費(人件費や謝礼(図書カード(500円分))など)が掛かる点などがありますが、メリットとしては住民基本台帳などを基にした事前連絡の上での対面調査なのでRDD方式が抱えている時間などの要素によるサンプリングによる偏りが生じにくい点、謝礼を伴う面接調査なので回答の質が無償の電話調査に比べておおむね丁寧である点などが挙げられます。

 調査方法として統計的にどちらが精度が高いのかはここでは論じませんが、興味深いのは、RDD方式に比べ時事通信社世論調査では政権支持率が低めに現れやすいという傾向があることです。

 例えば歴代内閣発足時に高支持率だったベスト3、細川内閣、小泉内閣鳩山内閣の発足時の支持率を比較すると次のとおりです。

内閣 毎日新聞 同不支持 共同通信社 同不支持 朝日新聞 同不支持 読売新聞 同不支持 時事通信社 同不支持
細川内閣 75% 9% 75.7% 12.7% 71% 12% 71.9% - 62.9% 11.1%
小泉内閣 85% 5% 86.3% 6.0% 78% 8% 87.1% - 72.8% 6.5%
鳩山由紀夫内閣 77% 13% 72.0% 13.1% 71% 14% 75% 17% 60.6% 15.6%

 細川内閣では最高の支持率である共同の75.7%に対し時事は62.9%と12.8ポイントも低いし、小泉内閣においても87.1%の読売に対し72.8%と14.3ポイント、今回の鳩山内閣においても77%(毎日)に対して60.6%と16.4ポイントも低い支持率に留まっています。

 この傾向は不支持率に有意な差がないことから、ひとつには匿名の電話方式なら安直に支持を表明するところを、実名の面接方式による調査では支持の意思の表明に慎重になっていることがあると思われます。

 実は政党支持率にもはっきりと同様の傾向が見られます、他社のRDD方式に比べ時事の面接方式では傾向として各政党の支持率は低く、その分「支持政党無し」が高くなる傾向が見て取れるのです。

 ・・・



■過去5年分(64ヶ月分)の世論調査結果を政権別に徹底トレースしてみる

 さて、上述の(社)中央調査社のサイトから過去5年分(64ヶ月分)の政権支持率、政党支持率をすべてトレースしてみましょう。

 まずは05年1月から06年9月まで、小泉内閣後期の毎月の調査結果です。

内閣 調査年月 支持 不支持 民主 自民 支持無 公明 共産 社民 国民新党 新党日本 備考
小泉 05/01 40.6 39.1 10.4 24.4 55.7 3.3 2.0 1.7 0.0 0.0
   05/02 36.5 41.4 10.6 22.2 57.5 4.5 1.8 0.6 0.0 0.0
   05/03 37.9 39.4 10.3 22.0 58.9 3.3 1.5 1.5 0.0 0.0
   05/04 39.6 37.7 11.0 23.0 57.4 2.8 1.4 0.6 0.0 0.0
   05/05 42.3 34.4 9.0 22.6 58.7 3.7 1.6 1.2 0.0 0.0
   05/06 40.4 38.5 8.1 21.5 62.0 3.3 1.7 1.1 0.0 0.0
   05/07 38.0 38.3 7.5 22.9 58.9 5.1 2.2 1.0 0.0 0.0
   05/08 39.9 36.6 10.2 24.1 56.4 4.1 1.4 1.0 0.0 0.0
   05/09 53.5 29.7 14.8 31.9 42.1 4.4 2.3 1.6 0.2 0.1 ★郵政総選挙(直後)
   05/10 53.5 28.5 11.4 29.2 51.3 4.2 1.4 1.0 0.1 0.1
   05/11 53.2 29.7 9.1 30.7 51.4 3.5 1.9 0.9 0.0 0.0
   05/12 51.2 31.8 9.7 31.5 50.7 3.3 1.6 1.9 0.1 0.0
   06/01 49.7 31.6 8.4 29.7 52.4 4.2 1.8 0.7 0.0 0.0
   06/02 43.2 34.9 8.0 25.9 57.0 3.3 2.1 1.3 0.0 0.1
   06/03 47.1 35.3 8.8 26.0 55.3 4.1 2.2 1.3 0.1 0.0
   06/04 43.9 34.4 9.1 27.0 55.1 2.8 3.0 1.2 0.1 0.0
   06/05 44.5 36.0 10.0 25.9 55.2 4.1 1.5 0.8 0.0 0.1
   06/06 40.6 38.6 12.1 24.4 55.6 3.3 1.3 1.2 0.1 0.0
   06/07 41.6 38.4 11.0 23.9 57.1 3.4 1.7 1.2 0.1 0.0
   06/08 39.4 42.0 10.2 24.9 56.3 3.4 1.9 1.1 0.0 0.1
   06/09 43.2 38.2 9.2 27.0 55.0 3.7 1.5 1.3 0.0 0.0

【政権支持率】
 まず驚かされるのは政権を安倍氏禅譲する06年09月まで小泉政権支持率が40%を大きく下回ることは一度もないことです。

 その後に続く政権がことごとく時間と共に支持率を大きく不支持率が上回ってしまっていることを考えると、小泉政権がいかに末期まで国民の支持を取り込んでいたのかがわかります。

政党支持率
 ここで興味深いことは、05年09月の総選挙、いわゆる郵政選挙自民党が圧勝するわけですが、ずっと50%代後半当りで推移していた「支持政党無し」層が、選挙前一ヶ月の56.4%から選挙直後42.1%まで激減していることです。

 選挙が間近になり一部の無党派が特定政党支持に移ったことが理解できます、05/09の自民党支持率がこの期間で最高の31.9をマークしている他、大敗した民主党なども実は14.8%とこの期間で最高の支持率をマークしています。

 この後にも確認できますが、一般に「支持政党無し」層は過去5年で見ますと通常は有権者の6割前後を占めていますが、国政選挙がせまるとその割合を減らし一部が特定政党支持者と変わる傾向があります。

 興味深いのは「支持政党無し」層のその後の動きでして、選挙が終わると数ヶ月の間に元の50%代後半に戻っていることが見て取れます。

 この期間での民主・自民各支持率ですが郵政総選挙という特異点を除けば、民主党は10%前後、自民党は25%前後の支持率で推移しており大きな変動を見ることはできません。

 次に06年10月から07年9月の安倍内閣時代です。

内閣 調査年月 支持 不支持 民主 自民 支持無 公明 共産 社民 国民新党 新党日本 備考
安倍 06/10 51.3 15.9 10.8 29.3 52.4 3.0 1.8 1.0 0.0 0.0
   06/11 51.4 19.8 9.2 26.4 55.9 4.2 2.0 0.4 0.1 0.0
   06/12 41.9 27.0 8.1 25.5 56.3 3.9 2.2 1.6 0.1 0.0
   07/01 40.7 30.9 8.3 24.2 60.1 2.7 1.2 0.8 0.3 0.1
   07/02 34.9 39.2 9.7 21.4 60.4 4.0 1.4 1.1 0.2 0.2
   07/03 34.7 39.2 7.8 21.6 62.4 3.2 1.9 1.4 0.1 0.0
   07/04 40.6 34.8 9.1 22.8 59.7 3.9 1.4 1.3 0.0 0.0
   07/05 39.4 33.6 9.5 22.8 58.3 3.7 1.5 1.6 0.0 0.0
   07/06 28.8 48.4 11.0 19.2 61.9 4.2 1.3 0.8 0.1 0.0
   07/07 25.7 53.2 12.8 19.7 59.0 3.6 1.1 1.1 0.1 0.0
   07/08 22.6 61.0 19.0 21.0 51.4 3.3 2.3 0.9 0.1 0.3 参院選挙(直後)
   07/09 25.5 55.8 17.1 20.3 52.3 3.5 2.3 1.2 0.1 0.2

【政権支持率】
 支持率51.3%となかなかの高支持率でスタートした安倍政権ですが発足5ヶ月目には支持不支持が逆転、最終的には7年8月に22.6%まで支持率が落ち込みます。

 その翌月の9月に体調不良を理由に退陣するわけですが、自民党の支持基盤が崩壊する中での参院選挙大敗が主な要因でありましょう、意外かもですが安倍政権は政権の命取りといわれる20%を割ってはいなかったわけです。

政党支持率
 この期間に顕著なのは自民党支持率の後退現象がはっきりと数値で示されていることです、安倍政権発足直後に29.3%あった自民支持率は、07年06月には55年保守合同自民党が誕生して以来史上初めて19.2%と20%を割り込みます。

 一方民主党支持率は逆に政権発足直後の10.8%から長らく伸び悩んでいますが、参院選挙(直後)の07年08月には過去最高の19.0%を記録し自民党(21.0%)と肉薄します。

 07年07月の参院選挙結果はご承知のとおり民主党圧勝となりますが、世論調査で見る限りこの期間では民主党は肉薄したとはいえ一度も支持率を自民党を越えることはありませんでした、このことから参院選出口調査結果からも当時の51.4%の「支持政党無し層」の多くが民主党に投票したことが裏付けられます。

 次に07年10月から08年9月の福田内閣時代です。

内閣 調査年月 支持 不支持 民主 自民 支持無 公明 共産 社民 国民新党 新党日本 備考
福田 07/10 44.1 24.3 16.2 23.4 51.4 4.0 2.0 0.8 0.3 0.1
   07/11 41.3 31.3 16.3 23.4 52.2 3.7 1.2 1.2 0.1 0.0
   07/121 40.1 34.2 15.9 22.2 54.2 2.9 1.4 1.0 0.2 0.0
   08/01 34.5 39.8 15.4 22.9 53.8 3.9 1.3 0.7 0.1 0.0
   08/02 32.5 43.2 15.1 23.0 55.9 2.6 1.2 0.8 0.0 0.0
   08/03 30.9 47.7 13.6 21.8 56.5 3.9 1.8 1.3 0.0 0.1
   08/04 27.6 52.4 13.1 22.9 56.9 2.6 1.7 0.7 0.2 0.1
   08/05 19.9 62.8 15.8 19.5 56.4 3.1 2.3 0.8 0.0 0.0
   08/06 19.1 61.8 14.5 20.3 57.2 3.2 1.7 0.7 0.2 0.0
   08/07 21.1 57.1 15.6 18.1 57.7 3.2 1.8 1.0 0.1 0.1
   08/08 23.6 54.6 15.0 20.7 55.8 3.3 2.1 0.8 0.0 0.0
   08/09 15.6 65.3 12.8 20.9 56.9 3.2 2.2 0.5 0.1 0.1

【政権支持率】
 発足時44.1%と低めのスタートでしたが、最後には15.6%まで落ち込んでの退陣となります。

 この福田政権末期から政権不支持率60%越えの月が目だち始めます、小泉政権では0回、安倍政権においても1回しか出現しませんでしたが、自民党政権に対する有権者の苛立ちが数値となって現れて出したと言えるかもしれません。

政党支持率
 この期間、自民党は発足時23.4%から退陣時20.9%と微減しており、長期低落傾向に歯止めが掛からない状態が続いていることが見て取れますが、興味深いのは民主党支持も発足時16.2%から退陣時12.8%と伸び悩んでいることです。

 その分、「支持政党無し」層が51.4%から56.9%へと暫時増加しています、じんわりと国民の政党不信が進行していた時期と言えるでしょう。

 次に08年10月から09年08月までの麻生内閣時代です。

内閣 調査年月 支持 不支持 民主 自民 支持無 公明 共産 社民 国民新党 新党日本 備考
麻生 08/10 38.6 34.1 14.7 23.4 52.7 4.3 1.4 0.7 0.0 0.0
   08/11 38.8 36.5 14.3 23.8 52.2 4.2 1.4 0.8 0.2 0.0
   08/12 16.7 64.7 13.4 18.6 58.2 4.3 2.0 1.1 0.0 0.0
   09/01 17.8 64.0 15.2 18.7 56.9 3.3 2.0 1.4 0.2 0.0
   09/02 16.4 67.3 16.2 18.4 56.5 3.1 1.6 1.1 0.1 0.0
   09/03 17.6 67.4 13.9 20.8 56.9 3.5 1.7 1.1 0.1 0.0
   09/04 25.2 53.8 14.0 21.4 57.4 3.3 1.3 0.5 0.2 0.0
   09/05 26.3 52.0 14.2 19.9 58.5 3.3 1.7 0.4 0.1 0.0
   09/06 24.1 56.6 15.5 18.4 58.1 3.4 1.3 0.9 0.1 0.0
   09/07 16.3 64.2 18.6 15.1 55.7 4.6 1.7 1.3 0.2 0.0
   09/08 16.7 63.1 18.4 17.1 53.0 4.5 1.9 1.6 0.1 0.0 ★総選挙実施

【政権支持率】
 発足時にすでに支持38.6%不支持34.1%と賛否が拮抗した形の多難な船出となった麻生政権でしたが、発足3ヶ月目の08年12月には早くも支持16.7%不支持64.7%と大きく支持率を落としその後一旦は支持率26.3%まで回復しますが、09年08月には支持率16.7%の低空飛行の中、総選挙をむかえ歴史的惨敗をきし、民主党政権誕生をもたらします。

政党支持率
 この期間で自民党支持率は20%代から10%代へと後退しそれが常態化していくことがわかります。一方、民主党は政権発足時の14.7%から選挙直前の09年7月にはついに、民主18.6%自民15.1%と、史上初めて自民党を逆転して支持率一位の政党となります。

 最後に09年09月から10年04月までの鳩山内閣であります。

内閣 調査年月 支持 不支持 民主 自民 支持無 公明 みんな 共産 社民 国民新党 新党日本 備考
鳩山 09/09 60.6 15.6 29.4 17.7 43.9 3.5 0.0 2.2 1.1 0.1 0.0
   09/10 54.4 22.8 28.4 15.3 46.5 4.7 0.5 2.1 0.9 0.2 0.0
   09/11 46.8 30.3 25.0 15.6 51.7 2.1 0.7 1.7 1.1 0.2 0.0
   09/12 47.1 32.4 26.2 13.1 52.5 4.3 0.4 1.1 0.6 0.1 0.0
   10/01 35.7 44.7 22.8 14.6 53.0 4.3 0.4 1.6 0.7 0.1 0.0
   10/02 30.9 48.5 19.3 15.2 55.5 3.2 1.2 1.5 1.1 0.2 0.0
   10/03 23.7 56.5 17.2 14.2 57.5 3.8 2.1 1.4 1.0 0.0 0.1
   10/04 19.1 64.1 17.0 13.2 57.7 4.0 2.5 1.6 0.7 0.1 0.1

【政権支持率】
 発足時は歴代3位の高支持率60.6%でしたが、発足5ヶ月目の10年01月には支持・不支持が逆転、そしてその3ヶ月後の10年4月に支持率がついに20%割れしました、読売新聞が報じていますがなまじ最初の支持率が高かっただけにこの支持率ダウンのペースは歴代政権でワーストであります。

 支持率低迷もさることながら4月で不支持率が60%を超えたことは過去の政権の行く末を考えると大いなる不安材料でありましょう。

政党支持率
 麻生政権最後月と比較すると実に発足時の各政党支持率が興味深いのです。

 総選挙直後なわけですが民主支持率は18.4%から29.4%に急増、一方自民支持率は17.1%から17.7%と微増、「支持政党無し」層は、53.0%から43.9%に落としています、明らかに多くの無党派民主党支持に移行したことを数字は示しているわけです。

 その後鳩山政権の支持率が落ち込むとともに民主の支持率は発足時29.4%から4月には17.0%へと12.4ポイントもじり貧、一方 「支持政党無し」層は逆に43.9%から57.7%に月を追うごとに増えていることが理解できます。

 また自民党ですが、17.7%から13.2%と支持率ワーストを更新続けていますが、数字から分析するに、みんなの党2.5%、表には載せませんでしたが「たちあがれ日本」が0.7%、「創新日本」が0.1%、これら自民分派新党と合算すると16.5%となりこの期間で低落傾向に歯止めは掛かってはいないものの支持率低下の要因は保守新党の乱立がより大きいことがわかります。

 ・・・



無党派層にとって実は選挙は特異点?〜3度のワンサイドゲームはあったが実は安定している無党派層

 こうして過去5年間(64ヶ月分)のこの国の政権支持率・政党支持率をトレースしてみましたが、改めて気づかされるのはこの国の政党支持率過半数無党派層であり、選挙という特異点でその動向が選挙結果に大きく影響することがわかります。

 05年のいわゆる郵政総選挙では直前に自民党支持率を7.8%押し上げてます。

内閣 調査年月 民主 自民 支持無 備考
小泉 05/08 10.2 24.1 56.4
   05/09 14.8 31.9 42.1 ★郵政総選挙(直後)

 結果は自民党の歴史的圧勝になりました。

 07年の参院選では直前に民主党支持率を6.1ポイント押し上げてます。

内閣 調査年月 民主 自民 支持無 備考
安倍 07/07 12.8 19.7 59.0
   07/08 19.0 21.0 51.4 参院選挙(直後)

 結果は民主党の圧勝であります。

 前回の総選挙では直前に民主党支持率を11.0ポイント押し上げています。

内閣 調査年月 民主 自民 支持無 備考
麻生 09/08 18.4 17.1 53.0
鳩山 09/09 29.4 17.7 43.9 ★総選挙(直後)

 結果は民主党の圧勝であり政権交代となったのはご承知の通りです。

 さらに考察すると例えば民主党が圧勝した参院選挙(直後)の支持率ですが、民主19.0%、自民21.0%と世論調査上は政党支持率の逆転は無かったことになっていますが、結果は民主党圧勝だったわけですが、これは選挙直後の出口調査でも判明していますが、51.4%の世論調査上は「支持政党無し」層の大半が民主党に投票したために大差が生じたと推測できます。

 つまり、これらをまとめるとこういうことがいえそうです。

 過去5年の政党支持率推移から国政選挙の直前(1〜2ヶ月)に「支持政党無し」層はその数を減らし、特定の政党の支持率が急増する。

 そして過去3回の国政選挙の結果はそのように世論調査上「支持政党無し」層が移っていった政党は、世論調査上「支持政党無し」層にとどまった有権者の支持も多く受けて結果的に支持率以上の圧勝をする。

 一方選挙という特異点を無視して、過去5年間の主要政党支持率の推移を年間平均支持率としてまとめてみました。

西暦 民主党 自民党 支持無 公明 共産 社民
05年 10.2 25.5 55.1 3.8 1.7 1.2
06年 9.6 26.3 55.3 3.6 1.9 1.1
07年 11.4 21.8 56.9 3.6 1.6 1.1
08年 14.4 21.3 55.9 3.5 1.7 0.8
09年 19.6 17.6 54.0 3.6 1.7 1.0
10年(1月〜4月) 19.1 14.3 55.9 3.8 1.5 0.9

 この表からは3つの点が注目できます。

 ひとつは一目して自民党の長期低落傾向に全く歯止めがかかっていないことです。

 06年(小泉政権末期)を除いて毎年支持率が減少しています。

 一方、民主党支持率は05年から08年までは暫時増加傾向はありながら自民党とはまだ水をあけられていたことがわかります。

 09年、10年と自民を逆転して支持率一位となっていますが、4月現在は17.0%まで下げ戻しを受けている状態です。

 そして一番興味深いのはこのように選挙を無視して年でフラットに平均を取ると、「支持政党無し」層は55〜56%で一貫して安定した率を保っていることです。 

 この間に国政選挙では3度のワンサイドゲームがあったにも関わらず、「支持政党無し」層の割合は安定していたわけです。

 ・・・

 無党派層という言葉は誤解を招く表現であり、彼ら彼女らは実際は「派」でも「層」でもなく、ばらばらの個々の有権者の漠然とした集合体でありましょう。

 その内実は、政治意識は高いが支持政党は残念ながら現在は無いという人から、ときに「B層」と揶揄されるそもそも「政治に関心が無く」世論に流されやすい人までが含まれているはずです。

 そのような積極的に特定政党を支持しない「支持政党無し」層が、何年にも渡り有権者の5割を超え常態化している現実こそ、この国の政治家達は猛省すべきなのでありましょう。

 支持政党無しが有権者過半数であることが普通であることこそが、なによりも国民不在の政治がもたらせた有権者の政治不信の表れだともいえなくはないでしょう。

 ・・・

 さて。

 現段階では月を追って、民主党支持率が堕ち支持政党無し層が増えている状態です。

 今日の局面は半年前熱情をもって民主党支持にまわり民主党政権を支持した「支持政党無し」層が本来の「支持政党無し」層に回帰しつつあるだけの局面であります。

 彼らが回帰してしまえば「19.1%」という政権支持率、「17.0%」という民主党支持率もコアな民主党支持層に戻りつつだけと解釈すれば、さらなる支持率低下も避けれないかもしれません。

 そして7月に参院選があります。

 過去三回の世論調査と選挙結果から推測すると、過去と同じ傾向をしめすならですが、おそらく来月か再来月には「支持政党無し」層は増加から一転して選挙直前に急落し、特定の政党の支持率がUPするはずです。

 無党派層が流れるのが、民主党か、自民党か、はたして第三の政党となるのか、そこが注目されます。

 もうすぐ無党派層が動き出す国政選挙がまっています。



(木走まさみず)