木走日記

場末の時事評論

野田政権の支持率を支えているのは実は消費税増税賛成の自民党支持者

 実に摩訶不思議な現象といえましょう、今年に入り野田政権の内閣支持率が下げ止まり、報道各紙の直近の世論調査では微増とはいえ反転してきているのであります。

野田改造内閣支持率、微増の37.9% | 日テレNEWS24
http://www.news24.jp/articles/2012/01/15/04198173.html
内閣支持率 微増:Mプラス:テレビ東京
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/mplus/news/post_17794/
内閣支持は微増 本社・FNN世論調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120327-00000083-san-pol

 うーむ、これはいかなる理由からなのか興味深いことであります。

 で、思わず苦笑してしまったのが産経新聞の阿比留瑠比記者のこの記事です。

政治部・阿比留瑠比 ダメな政治に慣れるより
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120325/plc12032503270003-n1.htm

 野田内閣の支持率がこのところ、理由も見当たらないのに微増傾向に転じているのは、阿比留記者の見立てでは「ひとつには、ここ数年の政治の体たらくに国民がすっかり政治への関心を失い、感覚が麻痺(まひ)している」のだとしています。

 で、私が苦笑したのがもう一つの理由のほうです。

 野田内閣の支持率が下げ止まったもう一つの理由には、「前々任者の鳩山由紀夫元首相や前任者の菅直人前首相よりはマシだ」という国民の実感もあるのだろう。

 実際、産経新聞が昨年12月に実施した世論調査では、「(歴史上の人物も含めて)リーダーにしたくない人」の第1位が鳩山氏で第2位が菅氏だった。

 米国の著名コラムニストに「ルーピー」とあだ名された鳩山氏と、その鳩山氏に「ペテン師」と呼ばれた菅氏の特異なキャラクターと比べると、腰が低く奇矯な言動の少ない野田首相はずっと普通の人間にみえる。

 内閣支持率が3割を切ったころに「とはいえ前の2人よりはまともなのだから」という国民のバランス感覚が働き、支持率微増につながったとしてもおかしくない。

 ただ、これは規格外の2人との比較対照によるもので、野田首相の正当な評価とは違うはずだ。

 「「ルーピー」とあだ名された鳩山氏と、その鳩山氏に「ペテン師」と呼ばれた菅氏」って、ちょっとお下品で辛らつで産経らしくて笑わしていただきましたが、ようするに「規格外の2人との比較対照によるもので、野田首相の正当な評価とは違う」のであって、政治のダメさに慣れ、あきらめてしまってはいけないと記事は結んでいます。

 前任者2人に比較したら野田さんのほうがまだまし、という感覚は理解できますね、確かに3人の中で一番普通に見えますもの。

 ちょっとここで歴代民主党政権の就任以来の月別内閣支持率を比較して見ましょう。

 データはNHK放送文化研究所の政治意識月例調査からです。

■表1:民主党政権内閣支持率推移

月数 鳩山 野田
72 61 60
70 39 53
65 41 45
56 65 37
52 48 30
47 31 31
38 25 33
32 29 -
21 21 -
10 - - -
11 - 27 -
12 - 28 -
13 - 25 -
14 - 16 -
15 - 18 -

NHK放送文化研究所 政治意識月例調査 より
http://www.nhk.or.jp/bunken/yoron/political/index.html

■図1:民主党政権内閣支持率推移

 うむ、70%を越える異常な高支持率で発足した鳩山政権は月別では右肩下がりで支持率を落とし続け最後21%まで下げて9ヶ月で辞任、一方の菅政権ですがやはり9ヶ月目21%まで落ち、辞任寸前まで追い詰められていたものの、ここで震災が発生してそれからの6ヶ月は脅威の粘り腰で政権にしがみついて最後は10%台の支持率にて辞任に追い込まれたのはみなさんもご承知の通りであります。

 さて、両者と比べると発足時に支持率は60%と一番低かった野田政権ですが、30%割れるかと思われた今年に入り下げ止まっており、わずかですが微増しているわけです。

 不思議なのは今年の1月、2月、3月で内閣支持率が30、31、33%と微増しているにもかかわらず、民主党支持率は18.5、17.6、18.1%とあいかわらずの低迷振りなんですよね。

 もっとも、自民党も18.3、16.9、17.2%とドングリの背比べの体たらくなわけです。

 では野田政権内閣支持率は30%を割らず下げ止まったのはなぜなのか。

 産経記事の規格外の前任者2人との比較対照という見立ても捨てがたいですが、私はズバリ消費税増税法案を支持している自民党支持者にあると読んでいます。

 前述のFNNの世論調査では、消費税増税関連法案の今国会成立について59・1%が「させるべきではない」と答えいるものの、いまだ「させるべき」(38・2%)と国民の約4割が増税支持しているわけです。

 20%を割っている民主党政党支持率からして、おそらく民主党支持者ではないが増税支持の国民の何割かが、ここにきて野田政権支持を鮮明にしてきているのだと考えます、でそのかなりの割合が自民党支持者だと読みます。

 元々全政党の中で、自民党支持者には消費税増税支持の割合が一番高いわけで、実際、私の周りの幾人かの経営者にも消費税増税の一点で野田政権を支持している自民党支持者がおります。

 現在の野田政権の支持率を支えているのは実は消費税増税賛成の自民党支持者であると、私は穿って考えております。



(木走まさみず)