木走日記

場末の時事評論

「しんぶん赤旗」VS「日刊ゲンダイ」論争〜「共産党は司法権力の片棒担ぎ」(ゲンダイ)VS「小沢氏を権力による弾圧の被害者と同一視するな」(赤旗)

 最近の日刊ゲンダイの小沢氏擁護の論調が実に常軌を逸していて興味深いです。

 前回のエントリーでもご紹介しましたが、5日付けでは「小沢大逆襲」と大見出しのもと、今後小沢氏に報復として「司法・検察は徹底的に攻撃される」と、とんでもない話を載せていました。

 日刊ゲンダイ風に表現すれば「暴走検察敗北小沢勝利」(5日付け日刊ゲンダイ見出し)なのであり、「周辺3人を逮捕し本人を2度聴取し世論を反小沢に煽り立てながら小沢一郎に完敗」(同見出し)したのであります。

 日刊ゲンダイは大見出しで「小沢大逆襲」と打っており、「小ネズミ3匹起訴で終わる今回の検察捜査はやっぱり政権交代民主党政権つぶしが狙いだった」(同見出し)とし、「検察人事に大ナタか」(同見出し)と、「司法・検察は徹底的に攻撃される」(同見出し)と言い切っています。

2010-02-05 小沢氏の脱法行為こそ罪刑法定主義に対する脅威 より抜粋。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20100205

 いやいや、これを機会に検察のあり方を見直すのなら大いに議論を深めればよろしいですが、この記事のまるで小沢氏の「報復」人事を奨励しているがごとくの書き方には呆れてしまいました。

 で、翌6日付けには、「今回、とくにおかしいのが共産党だ」と、「共産党司法権力の片棒担ぎ」だと大批判を展開します。

 「共産党までが、戦前・戦中、特高警察に嫌というほど痛めつけられた歴史があるのに、自民党などと歩調を合わせ、検察権力の味方になっていた。非常に残念です。ガッカリした人が多いと思いますよ」という、ジャーナリストの大谷昭宏氏のコメントを掲載、こんなことでは共産党は国民の支持を失うと続きます。

 はて?国民の支持を失っているのはいったいどちらなんでしょうか(苦笑)という点はおいといて、それにしても小沢批判をする勢力みな「司法権力の片棒担ぎ」だとするこの強引な論法は、興味深いですな。

 この論法では確かに良くも悪くも日本の政治史上歴史的に「権力」と最も対峙してきたはずの日本共産党も権力の「犬」認定なのであります。

 いくらなんでもちょっとなあと思っていたら、普段は夕刊紙などのくだらない批判など相手にしないはずなのに、日本共産党、今回はさすがに腹に据えかねたのでしょう、強烈に反撃に出ました。

 7日付け「しんぶん赤旗」記事から。

2010年2月7日(日)「しんぶん赤旗

金権政治を擁護するのか

“検察の片棒担ぎ”の暴論

 東京地検特捜部が民主党小沢一郎幹事長を不起訴にしたことにかかわって、疑惑を追及してきた日本共産党にたいして「検察権力の片棒を担いできた」などと非難する議論が一部に出ています。

 たとえば、夕刊紙「日刊ゲンダイ」6日付は、「…共産は司法権力の片棒担ぎか」との見出しで、「今回、とくにおかしいのが共産党だ」として、「共産党までが、戦前・戦中、特高警察に嫌というほど痛めつけられた歴史があるのに、自民党などと歩調を合わせ、検察権力の味方になっていた。非常に残念です。ガッカリした人が多いと思いますよ」という、ジャーナリストの大谷昭宏氏のコメントを掲載しています。

(後略)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-02-07/2010020704_02_0.html

 このあとこの記事は日刊ゲンダイ記事を詳細かつ断固とした筆致で反論していきます。

 まずそもそも小沢氏の疑惑は「前代未聞の事態」なのであり追求されて当然なのであるとしています。

前代未聞の事態

 今回の小沢氏の資金管理団体陸山会」の土地取引疑惑をはじめとする事件で問われたものは、いったいなんだったのでしょうか。

 刑事事件として問われたのは、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪です。小沢氏の現・元秘書3人が起訴され、虚偽記載の総額は実に21億7000万円にものぼるという前代未聞の事態です。

 政治資金規正法は、第1条で「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」とし、政治資金の収支の公開、授受の規制を通じて「民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」とうたっています。20億円超の巨額の虚偽記載は、国民を欺く犯罪であり、決して軽微な罪ではありません。

 「20億円超の巨額の虚偽記載は、国民を欺く犯罪であり、決して軽微な罪ではありません」と言い切ったうえで、「疑惑追及は当然」なのであるとします。

疑惑追及は当然

 小沢氏をめぐる疑惑は、それだけにとどまりません。土地取引購入の原資にゼネコンからの闇献金がふくまれている疑惑があり、さらに小沢事務所がいわゆる「天の声」として東北地方の公共事業の受注に決定的な力をもっていたのではないかという疑惑も提起されています。政治のあり方の根本、国民の税金の使い方にかかわる大問題です。

 日本共産党は、検察の捜査とは別に、それ以前から、小沢氏と岩手県の胆沢(いさわ)ダムをめぐる疑惑を追及してきたのをはじめ、「しんぶん赤旗」が小沢氏をめぐる「政治とカネ」の疑惑を独自に調査・追及してきました。

 今回の事件にかかわる中堅ゼネコンの水谷建設からの闇献金疑惑についても、「しんぶん赤旗」が独自に詳細な証言を得たものです。日本共産党がこうした大問題、疑惑を追及するのは当然のことです。

 それを“検察の片棒担ぎ”と非難するような立場は、結局のところ、金権政治擁護に通じるものといわなければなりません。

 さらにいえば、戦前・戦中の日本共産党への弾圧と、金権腐敗の摘発・追及を同列に置くような「日刊ゲンダイ」などの主張は、非常識きわまりないものです。

 戦前・戦中の日本共産党への弾圧と、金権腐敗の小沢の摘発・追及を同列に置くな、非常識きわまりないとおかんむりです。

 最後に、このような論法は「意図的こじつけ」であると喝破します。

意図的こじつけ

 戦前・戦中に、ありとあらゆる政党とメディアが侵略戦争礼賛へなびくなかでも、侵略戦争反対、主権在民を掲げてたたかったのが日本共産党です。当時、特高警察などは、日本共産党のこうしたたたかいを不法なものとして弾圧したのです。当時の日本共産党と、現在の小沢一郎氏とを、権力による弾圧の“被害者”として同一視するような見方が、意図的なこじつけ以外のなにものでもないことは明白でしょう。(松田繁郎)

 要は、小沢一郎氏を崇高なかつての日本共産党のような「権力による弾圧の被害者」と見なすなど、失礼であり、それは「意図的なこじつけ」じゃないかというわけです。

 ・・・

 うむ、日刊ゲンダイなどに代表される一部小沢支持者によるかなり強引な小沢氏「権力による弾圧の被害者」説ですが、恐ろしいところは、この論に与しない者は共産党であろうと“検察の片棒担ぎ”と認定してしまうという今回の日刊ゲンダイ記事のようなこの説の信者達がとる単純な二元論であります。

 つまり小沢氏を批判するものはすべて結果として既得権益擁護派つまり権力側の“片棒担ぎ”をしていると。

 なんだかそれこそ恐ろしい論法であります。

 当ブログも場末で小沢氏批判を繰り返してきましたが、たしかにこのような反論を少なからずいただいてきました。

 「しんぶん赤旗」VS「日刊ゲンダイ

 なんだか共産党員でも共産党支持者でもなんでもないですが、この件に関しては私はもちろん「しんぶん赤旗」を応援します。

 はたしてどっちが暴論なのでしょうか。



 (木走まさみず)