木走日記

場末の時事評論

検察審査会の結論を否定する愚か者達

 そもそも検察審査会制度は何を目的にしているのか。

 日本においては、事件について裁判所へ起訴する権限は、原則として検察官が独占している、すなわち「起訴独占主義」が採用されているわけです。

 しかしながら検察も無謬ではなく、ある事件が、検察官の判断により不起訴・起訴猶予処分等になり公訴が提起されない場合、検察官が独占する起訴の権限(公訴権)の行使に民意を反映させ、また不当な不起訴処分を抑制するために、検察審査会地方裁判所またはその支部の所在地に設置されているわけです。

 つまり検察官の不起訴判断を不服とする者の求めに応じ、判断の妥当性を「検察」ではなく「国民」が審査するのが、検察審査会の役割であります。

 したがって検察審査会は、弁護士1名の補助を受けつつ、無作為に選出された国民(公職選挙法上における有権者)11人によって議決されます。

 審査するに当たっては、検察が有する非公開の資料(証拠物品、関係者証言等)を参照し、「起訴を相当とする議決」(起訴相当議決)、「公訴を提起しない処分を不当とする議決」(不起訴不当議決)、「公訴を提起しない処分を相当とする議決」(不起訴相当議決)のいずれかを行います。議決は多数決(6人以上)で決しますが、今回のような「起訴相当」とする議決をするには、2/3以上(8人以上)の賛成が必要になります。

 今回は11人全員一致で本件は「起訴相当」議決したわけです。

 「起訴相当」と議決した事件については、再度捜査をした検察官から、再び不起訴とした旨の通知を受けた時、検察審査会は、再び弁護士1名の補助を受けつつ、審査を実施します。

 再び「起訴相当」と判断をした場合は、検察官に検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えたうえで、今度は8人以上の多数で「起訴をすべき議決」(起訴議決)がされ、裁判所が指定した指定弁護士が公訴を提起し、公判が開かれることになります。

 要するに検察審査会は、絶対権力を有するすなわち起訴権限を独占する検察の権限(公訴権)の行使あるいは不行使に民意を反映させる最終装置なのであり、その趣旨からいって、法律の素人である無作為の「国民」が審査するのは当然のことであります。

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 したがって、有罪にできないと判断した検察の判断とは逆の、全員一致で「起訴相当」と議決した検察審査会の判断は、極めて重く受け止められなければなりません。

 彼らは検察しか知りえない「資料」や「証拠」に接することを許された上で「起訴相当」という判断を下したのです。

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 一部の議論で、法律素人の国民である審査員がマスメディアの偏向報道に影響を受け感情的な判断をしてしまう危険性を指摘されていますが、そのような危険性は確かにあるかも知れませんが、それを強調しすぎてはこの制度の持つ「絶対権力を有する検察に対する国民側の抑制装置」という大切な価値をないがしろにしてしまうことになりかねません。

 付け加えれば、今回の議決のベースには、小沢氏ならびに与党民主党が国会喚問も拒否し公的な説明責任をいっさい回避し続けていることが、大きく影響したことは想像に難くはありません。

 小沢氏擁護の論説を唱える有識者は、何かこの「悪徳」政治家に大いなる大志があるなどと勘違いしてないでしょうか。

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 小沢氏は自ら4億円の資金の内訳を語っています。

 89年11月に引き出した本人名義の2億円、97年12月に銀行の家族名義の口座から引き出した3億円、02年4月に銀行の家族名義の口座から引き出した6千万円、これらが原資であると説明しています。

 驚くべき「私物化」です。

 4億の内訳は小沢氏個人名義だけでなく、小沢氏の妻や子息の名義も含まれている、つまり小沢ファミリーの資産ということです。

 これが事実だとすればこういうことになります。

 法人格の無いつまり法人税を免除されている陸山会は4億の不動産購入のために小沢氏から4億のお金を借り入れます。

 その4億のお金は小沢氏ファミリーの原資が含まれています。

 そもそも陸山会は不動産購入をこの国の法律では認められていないにも関わらず、なんと「小沢一郎」個人名義で購入いたします(私はこれを重大な脱法行為として批判してきました)。

 この瞬間、小沢ファミリーの資産は陸山会への貸付金4億と不動産4億、つまり瞬時に8億に倍増しているのです。

 贈与税も含め、この脱法行為は、数々の重大な税法上の疑義があることは、あらためて説明する必要もないでしょう。

 事実として法的には小沢ファミリーの資産が一夜にして倍増したのです。

 自ら明かした狂気の小沢錬金術

 こんなことが許されるはずがありません。

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 検察審査会は「絶対権力を有する検察に対する国民側の抑制装置」という大切な役割があるにもかかわらず、一部小沢支持者はあれほど既得権益擁護の官僚支配を批判しておきながら、自分達に都合の悪い議決がされたら手のひらを返すように国民による検察審査会の議決を批判し始めます。

 愚かなことです。

 小沢氏にこだわる意味など何もありはしません、彼はアンチ権力のヒーローでもなにもなくただの小悪人政治家にすぎません。

 今回の検察審査会の結論は、小悪人政治家の疑惑を公開の場で正すべきだとする正論があるのみです。

 検察審査会の結論を否定し小沢氏を擁護しようとする有識者は民主主義を否定する愚か者だと思います。 

 

(木走まさみず)