木走日記

場末の時事評論

神田真秋知事よ、お前は神か、ヒトラーか!?〜「生き物の宿命として、弱い悪い遺伝子も中にはある」

 新規採用職員の入庁式の訓示で、いろいろな知事がいろいろな失言をしてメディアに批判されているようです。

 まずは宮崎県の東国原英夫知事。

タミフルで異常行動に」 東国原知事が発言後、撤回
2007年04月02日18時47分

 宮崎県の東国原英夫知事は2日、インフルエンザでの入院から復帰して臨んだ新規採用職員の入庁式で、服用者に異常行動が指摘されているインフルエンザ治療薬「タミフル」を服用したことを話し、「異常言動に走るかもしれない」などと発言した。直後に「不快に思われている方がいるのは事実。申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 知事は新規採用の44人を前に、「5日間タミフルを飲み放題飲んだ。異常行動、異常言動に走るかも知れないが、広い心で受け止めてほしい」と発言。人件費削減のため「部長はいらない」と話した際も、「タミフルのせいだと思ってください」と付け加えた。幹部職員約200人を前にした訓示でも、タミフルと異常行動を結びつけるような発言をした。

 知事はその後の記者会見で、「タミフルと異常行動についての因果関係は科学的に実証されていない。ブラックユーモアを交えて社会風刺したつもりだった」と切り出し、「本質が十分に伝わっていなかった」と釈明した。

 知事は3月28日にインフルエンザのために入院し、公務に復帰したばかりだった。
http://www.asahi.com/politics/update/0402/SEB200704020005.html

「異常言動に走るかもしれない」
「5日間タミフルを飲み放題飲んだ。異常行動、異常言動に走るかも知れないが、広い心で受け止めてほしい」
「部長はいらない」
タミフルのせいだと思ってください」

 ・・・

 うむ、どうでしょか、何が問題なのかよくわかりませんが、自治体の長としては「タミフルと異常行動についての因果関係は科学的に実証されていない。ブラックユーモアを交えて社会風刺したつもりだった」と釈明してますが、販売元の中外製薬風評被害と怒るならまだ理解できますが、メディアが批判できますかね、この発言。

 人心を不安がらせるという意味では、一部メディアのタミフル服用者異常行動をセンセーショナルに取り上げている扇情報道の方がよっぽどひどいと思うのですが・・・

 続いて、埼玉県の上田清司知事。

上田知事が「人殺し」発言で謝罪 県に意見786件
2007年04月03日22時21分

 埼玉県の新規採用職員の就任式で「自衛官は人殺しの練習をしている」と発言したことについて、上田清司知事は3日、「自衛隊関係者に不快な思いをさせ、心から申し訳ない」と謝罪した。発言について、埼玉県庁には電子メールなどで計786件の意見が寄せられた。「言葉が軽率」「元自衛官だが、これ以上の侮辱はない」などほとんどが批判的な意見で、支持する意見は数件だった。

 上田知事は定例会見で「極めて誤解を招きやすい表現で、自戒する」「自衛隊、警察関係者に心から申し訳ない」と話した。前日に「殺傷とかそういう言葉を使えば良かった」と訂正したことについても、「適切ではなかった」とし、「『平和を守るための厳しい訓練』という表現が妥当だった」と再び訂正した。

 上田知事は2日の就任式で、「自衛官の人は、平和を守るために人殺しの練習をしている。警察官も、県民の生命や財産を守るために、人を痛めつける練習をする。だから我々は『偉い』と言って褒めたたえなければならない」と話した。

 県庁に寄せられた発言への県民や自衛隊、警察関係者からの意見は、3日午後5時現在、電子メール625件、電話159件、FAX2件。「自衛隊への無理解、言葉が軽率」「不適切な言葉以外の何ものでもない」など批判が大半で、「知事の真意は理解できる」といった好意的な意見は数件だった。
http://www.asahi.com/politics/update/0403/TKY200704030328.html

自衛官は人殺しの練習をしている」
自衛官の人は、平和を守るために人殺しの練習をしている。警察官も、県民の生命や財産を守るために、人を痛めつける練習をする。だから我々は『偉い』と言って褒めたたえなければならない」

 ・・・

 えっと、何か問題でもあるんでしょか?

「言葉が軽率」
「元自衛官だが、これ以上の侮辱はない」
「不適切な言葉以外の何ものでもない」

 県庁に寄せられた発言への県民や自衛隊、警察関係者からの意見は、批判が大半だったそうですが、自衛官からの批判は当事者だから認めるモノですが、どうして一般市民がクレームするのかなあ、よく、わかりませんが。

 世界中どこの国の軍隊だって「人殺しの練習」をしない軍隊なんてありません。

 世界中の警察官も、市民の生命や財産を守るために、「人を痛めつける練習」をするのは当然です、治安の悪いアメリカなんか、警察官だって射撃場で「人殺しの練習」をたっぷりしてるし。

 上田知事はそういう人の嫌がる仕事に従事している自衛官や警察官は『偉い』といってるわけで、当事者から反感買うのはまだわかるけど、一般市民にとって何が問題なのかなあ。

 で、最後は愛知県の神田真秋知事。

愛知・神田知事が「弱い悪い遺伝子」発言、後に弁解
2007年04月02日20時58分

 愛知県の神田真秋知事が2日、同県自治センターで開かれた新規採用職員の入庁式の訓示で、行政の役割について触れるなか、障害などハンディキャップのある人について「弱い遺伝子、悪い遺伝子を持った方」と表現した。神田知事は、その後の記者会見で指摘を受け、「もうすこしいい表現を使えば良かったかもしれない」と釈明した。

 神田知事は訓示で、「全体の奉仕者の考え方」として、「生き物の宿命として、弱い悪い遺伝子も中にはある。そういう弱い遺伝子、悪い遺伝子を持った方、(遺伝子が)表へ出た方にも、やはりきちんとした対応をしなければいけない」と発言した。

 この発言について、記者会見で問われた神田知事は「ハンディや、困難をやむなく持ってしまった人、避けられなかった人にも目を向ける心を持ってほしいという気持ちを伝えたかった」と説明。表現については「どういう表現だったら良かったのか。もうすこしいい表現を使えば良かったかもしれないが」と話した。

 神田知事の発言について、重度障害者の自立を支える活動をしているAJU自立の家(名古屋市昭和区)の山田昭義常務理事は「行政のトップが障害者に対して使う言葉としては、余りにも不適切だ。知事の発想の根っこには、優生思想につながる側面があるのではないか」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0402/NGY200704020009.html

「弱い遺伝子、悪い遺伝子を持った方」
「全体の奉仕者の考え方」
「生き物の宿命として、弱い悪い遺伝子も中にはある。そういう弱い遺伝子、悪い遺伝子を持った方、(遺伝子が)表へ出た方にも、やはりきちんとした対応をしなければいけない」

 ・・・

 こいつは強烈でありますね。

 遺伝子を何を基準に「強い」とか「弱い」とか評価しているのか?

 遺伝子を誰がどんな基準で「良い」とか「悪い」とか選別できるのか?

 神田真秋知事よ、お前は神か、ヒトラーか!?

 だいたい障害などハンディキャップのある人をすべて先天的因子・遺伝子でくくってしまうこの論法自体が全くの事実誤認でありまして、事故等の後天的因子で障害などハンディキャップを背負ってしまった人々はどうなんだよ、と突っ込みたくなります。

 間違いなく神田真秋知事は普段からこういう優生思想的発想の持ち主なんでしょうねえ。

 ・・・

 並べてご紹介した3人の知事の新規採用職員の入庁式の訓示でありますが、メディアは一本調子でどれも「言葉じり狩り」みたいに批判的に取り上げられているのでありますが、同列に扱うのはちょっと違うような気がしますです。

 私的には「タミフルのせいで異常言動に走るかもしれない」という宮崎県の東国原英夫知事発言は、わざわざマスコミが取り上げて大騒ぎするほどの問題じゃないと思うわけです。

 厚生省だってその因果関係を再調査するといってるわけだし。

 で「自衛官は人殺しの練習をしている」という埼玉県の上田清司知事の発言ですが、これも私的には別に問題ないでしょ、と思うのですが、私がおかしいのかなあ。

 自治体の長として関わる公務の人々である自衛官や警察官の職務を批判したり蔑視したりするならばこれは問題なんでしょうけど、言葉はきつかったかもしれないけど、彼自身は「我々は『偉い』と言って褒めたたえなければならない」としてるわけですし。

 まあ自衛官の仕事は人殺しばかりじゃないという批判はありでしょうが、それほどの失言とは私には思えないのであります。

 で、愛知県の神田真秋知事の失言ですが、これは一番たちが悪い批判されても仕方が無い失言だと思います。

「生き物の宿命として、弱い悪い遺伝子も中にはある。そういう弱い遺伝子、悪い遺伝子を持った方、(遺伝子が)表へ出た方にも、やはりきちんとした対応をしなければいけない」

 まず、だれが強い遺伝子と弱い遺伝子、良い遺伝子と悪い遺伝子の線引きをするのか、できるのか、神田真秋知事よ、お前は神か、ヒトラーか!?

 根本的にこの発言は生命の尊厳に対して不遜で不勉強であります。

 百歩譲って、一部の先天的因子に起因する障害を指して発言していると認めるにしても、事故等の後天的因子で障害などハンディキャップを背負ってしまった人々を無視した暴言であると言えましょう。

 何が「生き物の宿命として」ですか?

 ・・・

 各地で知事の失言がメディアにて「言葉じり狩り」にあって批判されていますが、この神田真秋知事の発言はもっともたちが悪い批判されて当然の暴言だと私は思います。

 みなさまはいかがお考えでしょうか。



(木走まさみず)