木走日記

場末の時事評論

ヘタクソな朝日社説とプチ偏向な産経記事とプチダブスタな赤旗社説

●はっきり言って日本語として「へたくそ」だと思った今日の朝日社説の冒頭(苦笑)

 今日(3日)の朝日新聞社説から。

政党紙配布 釈然とせぬ公務員の有罪

 政党の機関紙などを発行、編集、配布してはならない。違反したら3年以下の懲役か10万円以下の罰金に処する。

 国家公務員法と、それに基づく人事院規則はこう定めている。これに違反したとして逮捕、起訴された社会保険庁の職員に対し、東京地裁は罰金10万円、執行猶予2年という判決を言い渡した。

 2年間、罪を犯さなければ、1円も払わずにすむ。ほとんど無罪に近い異例の判決である。罰しなければならないほどの事件なのかどうか。裁判官が判断に悩んだ跡がうかがわれる。

 しかし、有罪は有罪である。警察の捜査も検察の起訴も、お墨付きをもらったことになる。こうした判決で、言論の自由が狭まり、公務員が萎縮(いしゅく)するのではないかと心配だ。

 有罪とされたのは、3年前の衆院選共産党機関紙の号外を東京都内のマンションなどの郵便受けに入れた行為だ。

 こうした文書の配布は公務員の政治的中立性を損なう恐れが強い。放任すれば、所属する行政組織全体に波及する。地裁はこう判断した。

 理屈としてはそうかもしれない。しかし、判決は次のようにも述べている。

 配ったのは休みの日で、場所も自宅の周りだった。受け取った住民はだれが配っているのかも知らない。だから、ただちに行政の中立性と国民の信頼を損なうものではなかった。

 判決は、公務員の政治活動の自由について「一定の制約を受ける」と指摘する一方で、「公務員も一市民としてこの自由がある」とも述べている。

 休みの日に自宅の周りで、人知れずビラなどを配る。それは一市民としての自由の範囲ではないのか。判決を読んでも、そうした疑問が消えない。

 判決が有罪を導き出す根拠として引用したのは、32年前の最高裁判決だった。衆院選社会党候補のポスターを張ったり配ったりした郵便局員が、有罪となった。今回の起訴は、実にそれ以来だ。

 30年以上摘発しなかったのに、なぜ起訴にまで至ったのか。釈然としない。

 一方で、官僚が選挙に立候補し、出身官庁の影響力を利用して資金や票を集めている。官公庁の労働組合が職場で候補者を紹介するビラを回す。こうしたことがまかり通っている実情を考えると、判決にはいっそう違和感が募る。

 今回の判決を読むと、捜査のやり方も気になる。公安警察が1カ月にわたり、社保庁の職員を尾行し、監視した。大量の捜査員を投入するという大がかりなものだった。警察は尾行の様子をビデオで撮影していた。

 判決は、撮影した一部については必要がなかったとして行きすぎを認めたものの、全体としては捜査方法に誤りはなかったと判断した。

 今回の判決が、尾行や撮影の野放図な拡大を許すことにつながらないか。それも心配だ。

【社説】2006年07月03日(月曜日)付
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 しかしなあ、内容の評論をする前に、朝日新聞論説委員室の方々に、一言苦言を呈してよろしいですかね。

 なんでこんなにわかりづらい冒頭の文章なんですか(爆笑)

 この社説の冒頭の数行の駄文ぶりはなんなんですか。

 要は「3年前の衆院選共産党機関紙の号外を東京都内のマンションなどの郵便受けに入れた行為」が「国家公務員法と、それに基づく人事院規則」に「違反したとして逮捕、起訴された社会保険庁の職員」に対し、「東京地裁は罰金10万円、執行猶予2年という判決を言い渡した。」わけですよね。

 それを事実関係を妙に倒置しちゃったり法制の文言を混ぜちゃったりして本当にわざとじゃないかと思うぐらいわかりづらくしてませんか。

 政党の機関紙などを発行、編集、配布してはならない。違反したら3年以下の懲役か10万円以下の罰金に処する。

 国家公務員法と、それに基づく人事院規則はこう定めている。これに違反したとして逮捕、起訴された社会保険庁の職員に対し、東京地裁は罰金10万円、執行猶予2年という判決を言い渡した。

 2年間、罪を犯さなければ、1円も払わずにすむ。ほとんど無罪に近い異例の判決である。罰しなければならないほどの事件なのかどうか。裁判官が判断に悩んだ跡がうかがわれる。

 しかし、有罪は有罪である。警察の捜査も検察の起訴も、お墨付きをもらったことになる。こうした判決で、言論の自由が狭まり、公務員が萎縮(いしゅく)するのではないかと心配だ。

 有罪とされたのは、3年前の衆院選共産党機関紙の号外を東京都内のマンションなどの郵便受けに入れた行為だ。

 一番強調したかったのだろうけど最初に人事院規則の引用文から入っちゃって、その後に何の話か読者にはまだ見えてこないのに、いきなり「罰しなければならないほどの事件なのかどうか」などと読者に疑問を投げかけちゃってます。

 当該の有罪行為の説明が後回しになってるからわかりづらいんです(キッパリ

 倒置的表現は強調したい物事をはっきりさせるのにとても便利ですし、「お前は臭いんだよ」っていうよりも「臭いんだよ、お前は」って倒置したほうが強烈(苦笑)なんですが、この朝日社説の冒頭箇所は倒置のしかたが難解すぎます。

 今日の朝日社説の冒頭のくだりは、はっきり言って日本語として「へたくそ」だと思います(キッパリ
 (↑いつも誤字脱字だらけで慣用句の使い方もでたらめで読者のみなさまからしょっちゅう指摘されて訂正ばかりしている木走に言われては「天下の朝日社説」も泣くぞ(苦笑))

 ・・・(汗

 失礼しました。

 繰り返しますが、要は「3年前の衆院選共産党機関紙の号外を東京都内のマンションなどの郵便受けに入れた行為」国家公務員法と、それに基づく人事院規則」「違反したとして逮捕、起訴された社会保険庁の職員」に対し東京地裁は罰金10万円、執行猶予2年という判決を言い渡した。」わけですよね。

 それに対し朝日社説としては「配ったのは休みの日で、場所も自宅の周りだった。受け取った住民はだれが配っているのかも知らない。だから、ただちに行政の中立性と国民の信頼を損なうものではなかった」だろうから、 「休みの日に自宅の周りで、人知れずビラなどを配る。それは一市民としての自由の範囲ではないのか」と判決結果に疑問を呈しているわけです。

 「こうした判決で、言論の自由が狭まり、公務員が萎縮(いしゅく)するのではないかと心配」した上で「30年以上摘発しなかったのに、なぜ起訴にまで至ったのか。釈然としない」「今回の判決が、尾行や撮影の野放図な拡大を許すことにつながらないか。それも心配」だというわけです。

 ・・・

 なるほどね、ここでこの社説のキーワードのひとつは「休日」であります。

 公務員とはいえ「休日」の活動にまで踏み込んで「中立性」が求められるのかということですね。

 あとマスメディア批評家の不肖・木走のツッコミとしては、何だよしんぶん赤旗まで「無代紙」を利用した拡販活動してんのかよ、だから新聞特殊指定見直し騒動の時に共産党までヘナチョコに日本新聞協会寄りになっちゃたんだな(苦笑)、ってトンチンカンな赤旗批判をしておきます。

参考エントリー
腐臭放つ日本新聞協会の対公取勝利宣言
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060603

 もっともそうか朝日社説によれば「号外」とあるのは「号外」だったら無料配布が前提だから免罪されるって寸法なんだな、きっと。

 しかしなあ、衆院選期間中の「共産党機関紙の号外」って、ずいぶん胡散臭い「号外」ですよね(苦笑

 まあこの社説の主張そのものの是非はここで論じませんが、やっぱ公務員てのは優雅でいいよなあ、休日に趣味で新聞配りできちゃうんだもんなあ、こちとら貧乏ヒマ無しで土曜から徹夜仕事で昨日の日曜だって起きたら会社の簡易ベッドだったんだぜ、と零細企業オヤジとしてはひがんでおきましょう(爆



●冒頭からお怒りだがプチ偏向は忘れない産経新聞記事(苦笑

 で、こういう少し偏向気味(と私が思っただけですが)の朝日社説を検証するには、やはり真反対に偏向気味の産経記事で検証するのが、ネットメディアリテラシーの王道でございます(笑)

 29日の産経記事から。

共産党機関誌配布の公務員に罰金10万円 執行猶予2年の判決

 国家公務員であるにもかかわらず、共産党の機関誌「しんぶん赤旗」を配ったとして、国家公務員法違反罪に問われた社会保険庁職員、堀越明男被告(52)の判決公判が29日、東京地裁で開かれた。毛利晴光裁判長は「公務員の政治的中立性を著しく損なう行為で、刑事責任を軽くみることはできない」として、罰金10万円、執行猶予2年(求刑罰金10万円)の有罪判決を言い渡した。
 国家公務員が政治活動をして同法違反罪に問われたのは、昭和42年以来37年ぶり。

 堀越被告の機関誌配布は、尾行していた警視庁の捜査員に目撃され、ビデオ撮影されていた。被告側は配布の事実は争わず、捜査の違法性や国家公務員の政治活動を禁じた同法を違憲と指摘し、無罪を主張していた。

 毛利裁判長は捜査員の尾行を捜査の一環として容認される範囲内と判断。同法の違憲性については「公務員の政治的中立性は国民全体の利益で、公務員の表現の自由を一定の範囲で制約することは、憲法上容認される」と述べ、堀越被告側の主張を退けた。

 判決によると、堀越被告は平成15年10月から11月にかけて、東京都中央区内のマンションなど約130世帯にしんぶん赤旗を配布した。

(06/29 17:38)
http://www.sankei.co.jp/news/060629/sha067.htm

 おお、もういきなり冒頭から「国家公務員であるにもかかわらず」ってお怒りの産経新聞記事なのであります(爆笑)

 しかしやはり朝日だけではなく産経記事も比較して読むことは大切ですよね。

 被告の名前・年齢とか「平成15年10月から11月にかけて、東京都中央区内のマンションなど約130世帯にしんぶん赤旗を配布した」とか、読みづらい朝日社説ではわからなかった具体的な詳細が産経記事を読めば新たに知ることができてよいのであります。

 もちろん産経記事だけ読んじゃうと、新たに得ることもあれば失うこともある(爆)わけで、この人の活動が「休日」だけだったとか、配布されたのは正確には「しんぶん赤旗」じゃなくて「しんぶん赤旗の号外」だったとか、産経特有のプチ偏向によりいくつかのキーワードが喪失してしまうのであります(苦笑)



●「二十一世紀のこの時代に、まだこんな判決が存在するのか!」とお怒りだが良く読むとプチダブスタ赤旗社説(苦笑)

 朝日社説、産経記事と検証したならば、ここは本件の大元である、日本共産党しんぶん赤旗の主張をぜひ押さえなければなりません。

 6月30日のしんぶん赤旗社説から。

国公法弾圧事件
時代錯誤の不当判決に抗議

 二十一世紀のこの時代に、まだこんな判決が存在するのか!

 判決を聞き、思わず自らの耳を疑いました。国家公務員法弾圧堀越事件で、東京地裁が出した判決です。

 国家公務員から政治活動の自由を奪った憲法違反の法律をたてに、警備公安警察の筋書きに沿って、犯罪をでっち上げる。日本共産党や国民の活動への政治弾圧の拡大をねらう政権与党におもねった、時代錯誤の、とんでもない判決です。

当たり前の活動が

 社会保険庁の職員である堀越明男さんが「しんぶん赤旗」の号外を配布したのは、休日で、職場や職務とはまったく関係ない、自宅近くでのことです。国民のだれが見ても当たり前としかいいようのない活動が、違法な捜査を続けていた警備公安警察によって国公法違反事件とされ、裁判にかけられました。なぜ罪に問われるのか、堀越さんが公訴そのものの不当性を問い、裁判で争ったのは当然です。

 国家公務員から政治的自由を奪っている国家公務員法一〇二条や人事院規則は、終戦直後の一九四八年、連合国軍総司令部(GHQ)が公務員労働者を弾圧するため、国会審議も抜きに日本に押し付けた占領期の負の遺産です。

 日本国憲法は、思想・信条、集会・結社、言論・表現の自由をすべての国民に保障しています。国家公務員に限ってそれを認めないというのは、この憲法に違反します。いまだにこんな弾圧法規があること自体、許されることではありません。

 判決は、市民ならだれでもできる政党の機関紙号外の配布という言論表現活動を、国家公務員には許されない「政治的偏向の強い典型的な行為」と決めつけています。

 判決が全面的に依拠したのは、一九七四年の最高裁判決です。国公法を「合憲」としたこの最高裁判決は、憲法学会や法曹界から強い批判を受けました。そのため、判決は出されたものの、堀越さんが起訴されるまでの三十七年間、ただの一人も国公法違反で起訴されたものはありませんでした。今回の判決は、事実上「死に体」だった判例に新たな息を吹き込む点でも重大です。

 裁判を通じて浮き彫りになったのは、堀越さんの事件をきっかけに過去の弾圧法規を蔵から出そうと、異常な執念を燃やした公安警察の姿です。多数の公安警察官を動員し、堀越さんの日常生活を長期間にわたり尾行、違法な盗撮を繰り返しました。戦前の特高警察のような野蛮な人権侵害の捜査が横行しています。

 さすがに判決も、こうした捜査について「一部違法なところがなくはないが」といわざるを得ません。しかし判決は、「そのほかはすべて適法」と認めて有罪を認めたのです。警察の違法捜査を抑止する、裁判所としての責任を投げ捨てたものというしかありません。

世界の流れに反する

 国家公務員から政治活動の自由を奪った国公法は、国際社会のルールにも反しています。表現の自由を定めた国際自由権規約一九条、「(公務員は)他の労働者と同様に、結社の自由の正常な行使に不可欠な市民的及び政治的権利を有する」としたILO(国際労働機関)一五一号条約がそれです。国家公務員の市民としての政治活動の自由は当たり前というのが世界の流れです。

 世界に通用しない不当判決は許せません。堀越さんの無罪と市民的政治的自由拡大のために、大きな世論と運動をひろげることが重要です。

2006年6月30日(金)「しんぶん赤旗」主張
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-06-30/2006063002_01_0.html

 おお、これまたさすが我らが「しんぶん赤旗」でありますね、社説タイトルからし「国公法弾圧事件 時代錯誤の不当判決に抗議」ですよ(苦笑)

 もう冒頭から「二十一世紀のこの時代に、まだこんな判決が存在するのか!」とは気分がいいですねえ、主張がはっきりしていて、何言いたいのかよみづらい日本語がヘタクソな朝日社説とは段違いです(爆

 で興味深いのは国家公務員法についての批判箇所なのであります。

 国家公務員から政治的自由を奪っている国家公務員法一〇二条や人事院規則は、終戦直後の一九四八年、連合国軍総司令部(GHQ)が公務員労働者を弾圧するため、国会審議も抜きに日本に押し付けた占領期の負の遺産です。

 日本国憲法は、思想・信条、集会・結社、言論・表現の自由をすべての国民に保障しています。国家公務員に限ってそれを認めないというのは、この憲法に違反します。いまだにこんな弾圧法規があること自体、許されることではありません。

 なるほど「国家公務員から政治的自由を奪っている国家公務員法一〇二条や人事院規則は、終戦直後の一九四八年、連合国軍総司令部(GHQ)が公務員労働者を弾圧するため、国会審議も抜きに日本に押し付けた占領期の負の遺産だったのか、いや勉強になりますです。

 それなら日本国憲法は、思想・信条、集会・結社、言論・表現の自由をすべての国民に保障しています。国家公務員に限ってそれを認めないというのは、この憲法に違反します。いまだにこんな弾圧法規があること自体、許されることではありません」もごもっともかもでありますね。

 ・・・

 なるほどねえ、国家公務員法は「連合国軍総司令部(GHQ)が」「日本に押し付けた占領期の負の遺産」の法律だったわけでこんな法律改正すべきなのかあ・・・

 ・・・

 ん?

 「連合国軍総司令部(GHQ)が」「日本に押し付けた占領期の負の遺産」の法律って、その代表格は、日本国憲法じゃありませんでしたっけ?(爆笑)

 ・・・

 そうか、同じ「連合国軍総司令部(GHQ)が」「日本に押し付けた占領期の負の遺産」の法律でも、憲法は守るべきであり国家公務員法は潰すべきなんですね、日本共産党としては。

 ・・・

 クスクス、かわいいプチダブスタですね(苦笑)



(木走まさみず)