木走日記

場末の時事評論

議事進行が下手な日本の国会〜有能なリーダーの資質は会議を議事進行させればすぐわかる

●有能なプロジェクトマネージャーの資質は社内会議を議事進行させればすぐわかる。

 零細IT企業を経営させていただいている不肖・木走でありますが、職務上、いろいろな会議に出席することが多いのであります。

 社外の会議にしろ、社内の会議にしろ、私はだらだら会議が大嫌いであります。

 そうですね、議題や会議の性格にもよりますが、1時間を超えるともうイライラしてきます。

 たくさんの頭数を並べて無駄に時間ばかりが経過するだらだら会議ほど、時間と人件費の無駄はないのであります。

 なんでも算盤勘定するのが零細企業経営者の悲しい性(さが)なのでしょう(苦笑)が、この前も社内の会議に関わるこんな話がありました。

 会社の書庫が足らないので書庫を申請するという会議を6人の技術者が2時間会議して決定した申請書を私に持ってきました。

社員「社長、今日の会議で、会社の書庫が満杯で専門書や技術書、またドキュメント納品物(技術設計書やマニュアル類)の保管場所が不足しているという問題が提起されました」
木走「ほほう」
社員「そこで、現状の書類や書籍を整理した上でですが、会社に新しい書庫を購入いただくという申請をすることを決めまして、ここに物品申請書と会議の議事録を提出いたしますので、ご検討をお願いいたします」

 もうこの報告を聞いた瞬間、木走の脳の奥で「プチン」と何かが切れた音がしたのでございます(苦笑)が、そこは大人木走でございます。ぐっと我慢して冷静を装います。

木走「どれどれ、事務用書庫、ほほう、2万7千円ね。以外と安いじゃないですか・・・」
社員「はい、みんなで一番使いやすくリーズナブルな価格のモノを選定しました」
木走「ほほう、みんなでね(プチン)、2時間掛けてね(プチプチン)、リーズナブルな価格のモノを選定ね(プチプチプチン)、スバラシイじゃないですか(ニコニコ)」
社員「はい(ニコニコ)」
木走「バカモーン!!(ドン←つくえを叩く音)」
社員「・・・(驚)」
木走「うちは何の会社ですか?IT関連の技術屋集団ですぞ」
社員「・・・」
木走「うちを工場に喩えれば、君達技術者一人一人は工場の大切なラインです。製品を生産して売上げをたてるもっとも重要な役割を持っているはずです」
社員「・・・」
木走「考えてみたまえ、君達6人がこの貴重な2時間を製品の生産に当てていたとしたら、いったいいくらの売上げになっていることか、一人時間当たり5000円と低く計算しても、6人が2時間で6万円ですぞ!」
社員「ハア・・・」
木走「貴重な生産ラインを6本も2時間止めて、会議の成果が2万7千円の書庫の購入申請だけなのですか」
社員「ハア・・・」

 何もこんな大人げない言い方で叱らなくてもと、逆に読者からお叱りを受けるかも知れませんが、ここで私が社員に伝えたかったのは何も書庫を購入するなと言うことではなく、「会議という名目で意味のない無駄な時間を消費することの愚かしさ」を知りなさい、ということなのであります。

 どうにもこうにもこのコスト意識が欠落しているうちの社員の会議を聞いてしまって、不肖・木走の脳内はもう(プチプチプチン)とビニール梱包剤をプチプチ潰す状態で血管が切れまくったのでありました(爆)

 ・・・

 ビジネスは「タイム イズ マネー」なのであります。

 キャバクラだって1時間延長したらお金がかかるのでございます。
 (↑また余計なひとことを・・・)

 ・・・

 中規模なシステム開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーのスキルが開発の成否に大きく影響いたします。

 この場合プロジェクトリーダーに求められるスキルとしては、専門の技術力は言うまでもないですが、顧客との折衝能力(コミュニケーション能力)、開発工程を作成し維持する管理能力(スケジューリング能力)、開発メンバーに対する管理能力、問題解決能力、と多様な能力です。

 リーダーの選定はいつも悩みの種なのでありますが、私は長年の経験でこれらの能力を一目で見抜く一番いい方法を見つけました。

 それは社内会議の議事進行をその人間に任せてみればよろしいのです。

 あるテーマ(どんなテーマでもよろしいでしょう)と時間(1時間ぐらいが適当でしょうか)と参加メンバー(5,6人で十分でしょう)を会議前日に本人に伝えます。

 で時間内に全員の意見を集約する形でテーマに対し何かしらの提言をまとめるためにうまく会議の議事を進行するように、本人に指示します。

 限られた時間内に参加者の人的パワーをうまく利用しかつ何らかの結果をしっかりと得る、これ実はプロジェクトリーダーに求められるスキルがすべて入っているのです。

 ある技術者は、自分のアイディアに固守し参加者の意見集約をろくにしようとしません。

 エンジニア・ファッショ(技術独裁者)に陥ってしまいます。

 当然会議参加者からは不協和音が出てしまいへたをすると子供のケンカのような議論になってしまいます。

 またある技術者は参加者の意見ばかり聞いてしまい、いっこうに結論を出すことができません。

 まるでおばさんどおしの井戸端会議のように「だらだら」と無駄な話がループするのであります(苦笑)

 いずれにしても予定の時間内に結論は出すことができないわけです。

 正しい議事進行の手本など何もないですが、少なくとも有能な技術者は事前に議事進行のシナリオを充分に脳内で検討してくるものです。

 さらに優秀な人間は、他の参加者の反応がどのように展開するか、いくつかのケースを想定して、参加者の意見がろくに出ない場合、参加者の意見がてんでバラバラの場合、それぞれの場合の対処方法も用意して、ちゃんとリスク管理までして備えてきます。

 唯我独尊ではなく日和見主義にも陥らず、しっかりとしたシナリオのもとになんとか議事を進めようと努めるモノです。

 結果はともかく会議の過程を見てみればその人間のリーダーとしてのスキルがよくわかるのです。

 よいプロジェクトリーダーは、よいコンダクター(指揮者)としての資質を有しているはずであり、その意味でよいチェアーマン(議長)としてふるまう力を持っているのだと私は思っています。



●民間は利益を出すのが仕事、国会は法律を作るのが仕事のはずなのに・・・

 本日(6日)の産経新聞記事から・・・

安倍官房長官「経営者は倫理観も備わっていないといけない」

 安倍晋三官房長官は6日午前の記者会見で、「村上ファンド」代表の村上世彰容疑者が証券取引法違反インサイダー取引)の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたことについて、「経営者は利益のみを追求するのではなく、社会的地位にふさわしい社会に対する責任がある。当然、倫理観も備わっていないといけない」と述べた。
 その上で、安倍氏は株の取引について、「公正かつ透明な市場であることが極めて重要だ。国会で審議されている金融商品取引法案の速やかな成立が必要だ」と述べた。

(06/06 11:21)
http://www.sankei.co.jp/news/060606/sei050.htm

 「経営者は利益のみを追求するのではなく、社会的地位にふさわしい社会に対する責任がある。当然、倫理観も備わっていないといけない」のはその通りなのでしょうが、少し反論させていただければ、「倫理観も備わっていないといけない」のは国会議員の先生方も同じでしょと言っておきます。

 まあ、村上世彰容疑者の件はひとまずおいときますが、民間企業が利潤を追求するに当たっては寸暇を惜しみ知恵を絞り必死に経営しなければならないのでありまして、「経営者は利益のみを追求するのではな」いのはそれはそうとして、経営者は従業員やその家族の生活を支える責任があるわけですから、やはり利潤追求は必要であり、きれい事で商売などできないのもまた現実ではあります。

 ところで、民間企業が利潤を追求するのが使命なら、国会の使命はまさに、国会だけに託された「立法府」としての役割、法律を作るということでしょう。

 安倍晋三官房長官が「国会で審議されている金融商品取引法案の速やかな成立が必要」と言うように、必要な法案を必要な時期に成立させる、それこそが国会議員の先生方に科せられたお仕事の筈です。

 昨日(5日)の産経新聞記事から・・・

小泉首相、会期延長容認発言を否定

 小泉純一郎首相は5日、首相が当初は今国会の会期延長を容認していたとする自民党片山虎之助参院幹事長の発言について、「そういう話はしていないはずだ。もとから延長は考えていない」と強く否定した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 首相は、5月8日の自民党青木幹雄参院議員会長との会談について、「延長するかしないかを判断するのは会期末でいいじゃないか」と発言したと強調。「人によって思い込みがあるから、どう取られるかはわからない」と述べた。青木、片山両氏に誤解があったのかとの記者団の問いにも「そうだ」と答えた。

 片山氏は今月4日、首相が青木氏との会談で教育基本法改正案の今国会成立をめざす方針を確認し、「延長は土壇場でもう一度、相談しよう」と述べたと記者団に明らかにしていた。当時でも会期延長なしに同法改正案の今国会成立は困難な情勢で、片山氏は首相のハラは会期延長だと受け取ったが、5月30日になって首相は「状況が変わった」と翻意したという。

 片山氏は5日夕の党役員会で首相に「お騒がせしまして」と話しかけ、首相も「いやいや。私はどうとでも解釈できるよう話すんです」と応じた。

(06/05 19:11)
http://www.sankei.co.jp/news/060605/sei082.htm

 なんだかなあ、教育基本法改正案などの重要法案をろくに審議しないで会期延長もしないで先延ばしとは、小泉首相も何を考えているのでしょう。

 国会は国民に必要な法案を審議して法律を成立させるのがお仕事なのに、会期延長も単なる政争の具のように報道されるのは、私たち国民にとってはあまり気分のいいものではありません。

 民間会社では結論先延ばしのだらだら会議は百害あって一利無しの御法度ですが、我が国の国会では、議論することが仕事の筈の国会議員の先生方が何の悪びれることもなく重要法案を先送りして平然としているのは、少し納得がいかないのであります。

 日本の国会、はっきり言って、議事進行が下手ですよね。



(木走まさみず)