木走日記

場末の時事評論

東シナ海ガス田〜共同開発という中国の手中にはまる愚策

kibashiri2005-04-22



●日本政府が中国提案の共同開発に応じる方針

 今日の読売新聞から・・・

ガス田の共同開発、中国提案に応じる方針

 政府は東シナ海天然ガス田開発問題で、中国が提案する共同開発の協議に応じる方針を固めた。

 対象海域は東シナ海全体とすることを条件とする。これまでは、中国に一方的な開発を中止させることを優先させてきたが、中国側が応じず、こう着状態に陥っているため、事態を打開する狙いがある。

 22日にインドネシアで開かれる予定の小泉首相胡錦濤国家主席の首脳会談で、この問題の話し合いによる解決を確認したうえで、5月に予定されるガス田に関する日中実務者協議で共同開発を議題にする。

 中国は東シナ海日中中間線に近接する中国側でガス田開発を進める一方、2004年6月に東シナ海でのガス田の共同開発を提案した。日本政府はこれまで「中国が開発を進める中で、共同開発の議論に入ると、時間稼ぎされるだけだ」として、慎重な姿勢を取ってきた。

 しかし、今月17日の日中外相会談で、中国側は日本の求めに応じて、昨年10月以来中断しているガス田の日中実務者協議の再開に同意した。このため、政府としては「双方が突っ張り合うだけでは進展がない。中国側に譲歩を促すため、こちらも共同開発に正面から向き合うべきだ」(外務省幹部)と判断した。

 中国政府が反日デモの統制に乗り出したことから、ガス田問題で双方が歩み寄る環境が整いつつある、とみている。

 輸送コストなどを考慮すれば、日本が単独で開発するよりも、中国と共同開発し中国にパイプラインでガスを運ぶ方が効率的だ。日本政府内には、もともと最終的な解決策として共同開発を支持する意見があった。

 東シナ海では、中国側は自国の大陸棚が沖縄の西側の「沖縄トラフ(海底の溝)」まで延びていると主張し、日本が主張する日中中間線を認めていない。このため、日本政府としては、境界画定を棚上げして、暫定措置としてガス田共同開発の可能性を探る方針だ。

 ただ、具体的な海域をどこに設定するか、利益の分配比率をどう定めるかなど調整の難航も予想される。政府内には、中国側が想定する共同開発は、「中間線から沖縄トラフまでの日本側海域だけではないか」との警戒感も根強い。

 このため、中国との話し合いが決裂する恐れもあるため、日本側地点で民間開発業者に試掘権を与える手続きは予定通り進める方針だ。

2005/4/22/03:02 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050422it01.htm

 これはまずいと思いました。中国のエネルギー開発にかける意気込みを日本政府は正しく理解しているのかどうか、はなはだ不安であります。

 今、安易に中国の共同開発案に乗じてしまうと当然ですが先行開発に着手している中国側が主導権を握ることになり、また、共同開発の対象領域も中国側に有利に話が進められる危険が高いわけです。



●ガス田開発問題は迅速に有効策を打たないと手遅れになる可能性大

 本件は、歴史問題とも国連安保理問題とも一切リンクしない、純粋な外交問題であり、かつ、当ブログの前のエントリーでも指摘しましたが、日本と中国との間の諸問題の中で唯一、先行開発している点で中国が主導権を握っている、日本として喫緊に対応しなければならない問題です。

中国反日デモ〜国際的に日本支持を広めるために
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416

(前略)

 ①日本の安保理常任理事国入り問題
 ②日本の歴史教科書問題
 ③日本の小泉首相靖国神社参拝問題
 ④日本の尖閣諸島領有問題
 ⑤中国の東シナ海ガス田開発問題

 こうして主だったところを並べてみてもその殆どが中国ではなく日本に関わる問題として表出しています。つまり、東シナ海ガス田開発問題以外、ほとんどの主導権は実は日本にあるのです。中国には有効な対抗策がほとんどないようです。

(中略)

 ⑤中国の東シナ海ガス田開発問題

 このガス田開発問題は主導権が中国にあります。その意味で、緊急に対処すべき問題であるといえましょう。日本政府は、必要な実現可能な対抗策をまようことなく実行すべきだと思います。

(後略)

 この東シナ海に眠る資源の推定埋蔵量ですが、原油1000億バレル以上、天然ガス2000億m3以上という試算もあるようです。

【中国】日中境界海域で資源採掘施設 [05/28] まとめサイト

 2004年5月28日、中日新聞にて中国が東シナ海において、日中中間線ぎりぎりの海域で、天然ガスを採掘する施設建設を進めていることが報道されました。
  尖閣諸島周辺を含む東シナ海一帯には豊富なガス・石油資源が存在しており、その埋蔵量は原油1000億バレル以上($39.40/バレル)、天然ガス2000億m3($6.68/mmBTU-100万英熱量単位)と言われています
 そしてこの海域の油井は中間線を越えて日本側に大きく拡がっている可能性が高いことが指摘されております。このように資源が複数国の境界にまたがる場合、埋蔵割合に応じて関係国間で配分する必要が生じます。配分をせず、勝手に採掘することは盗掘にあたる行為であり、中国はわざと日本との境界ギリギリに採掘場所を建設し、日本側の正当な権利までを根こそぎ奪うつもりと疑われます。
 この国家の一大事に日本政府は情けないことに指をくわえて見ているだけ。
このサイトはこの問題を日本国民に深く知り、考えてもらうきっかけを提供する目的で作成されております。
 明かに国の大事です。声出して行きましょう。
http://3.csx.jp/senkaku/


 中国はのどから手が出るほど、一日も早く当ガス田を開発したいはずです。そこにはせっぱ詰まった深刻な事情があるからです。
 おそらく中国は日本の出方を慎重に見据えながらも、国際的に許されるぎりぎりの強攻策を取ってくることでしょう。
 したがって、日本としては、ガス田開発問題は迅速に有効策を打たないと手遅れになる可能性大なのです。



●絶望的な厳しさが続く中国エネルギー事情

 過去最高とも言える高止まりしている原油高は、直接の要因は投機にあるとされていますが、その背景にはイラク戦争やロシアの国内事情のほか、中国の需要増も大きな要因とされています。

 昨年、中国は日本を抜き米国に次ぐエネルギー消費国となりましたが、一方で供給不足が大きな問題となっているわけです。

 昨年夏には、中国の新聞に「電力不足」という言葉が載らない日はありませんでした。北京市ではエアコンを26度に設定する省エネ運動が大々的に展開されました。

 上海市浙江省などの華東地区ではさらに深刻で、大規模な電力の供給停止もあった上海では最高気温が35度を超えた日には市民や観光客に人気のライトアップを停止したり、今後数年間はライトアップの数を増やさないと決定するとともに、節電照明への切り替えを懸命に進めています。

 また、電力不足は企業の生産にも影響を与えています。上海、浙江、広東などでは、多くの企業が生産計画の変更を余儀なくされていますし、また、政府が電力不足への対応として、7月から8月にかけて石炭輸送を最優先とする措置を鉄道部門に指示したため、鉄道貨物の引き受けが拒否されるなど物流面でも影響が出始めています。

 中国では国内の電力の約4分の3を石炭火力発電がまかなっています。後の2割が水力発電であります。

 中国では石炭は埋蔵地域が華北に偏在し、水力資源も西南部に集中しているため、こうした電力資源の不均衡な分布が、北から南への石炭輸送や西部から東部への長距離送電という莫大な投資を必要としているのです。 いわゆる、西部の電気を東部に送る「西電東送」は、「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に送るプロジェクト)とならぶ第10次五カ年計画の大プロジェクトであります。

 こうした大規模プロジェクトにもかかわらず、供給が需要に全く追いつかないのです。



●日本が取るべき道

 中国反日デモ騒動でかき消されそうですが、ガス田開発においては、時間がありません。

 日本政府は、中国が後がないほどエネルギー源確保に血なまこになっていることを冷静に認識し、早急に具体的な対抗策を取るべきです。

 今、中国が試掘している地点は、国際法ぎりぎりのところですが違法行為ではないのです。

 極めて重要なことは、今更中国提案に乗って共同開発を始めたとしても、中国側が採掘権を平等に日本に分け与えるなどとはゆめゆめ考えてはならないでしょう。

 民間調査を早急に行うべきです。国際法に守られている範囲で、速やかに対抗策を打ち出すことが今求められていると思うのです。

 共同開発は、日本が調査等対抗策を進めたその後で、交渉のテーブルについてほうが、まだ日本に取り有利な条件になるのではないでしょうか?


(木走まさみず)