木走日記

場末の時事評論

中国籍に帰化する「奥特曼(うるとらまん)」

kibashiri2005-03-25


 今日の中国がらみの地味なニュースから。

中国、国防費透明化を拒否 防衛次官級協議で

 訪中した守屋武昌防衛事務次官は24日、北京で中国人民解放軍の熊光楷・副総参謀長と会談、中国の国防費について「主要装備の保有数や調達計画が明らかでない。世界の多くの国はオープンにしている」と透明性向上を要請。中国側は、日本とは社会制度や国防の制度が違うため「同じような透明性を求めることはできない」と拒否した。

 また、中国原潜による日本領海侵犯事件について日本側が「技術的原因と説明を受けたが具体的に何か」とただしたのに対し、熊氏は「軍事的秘密にかかわる敏感な問題。中国としては既にできるだけの説明をした」と回答を拒んだ。

 日本側は、公表されている中国の国防費が少なすぎるのではないかと懸念を表明、中国側は「疑いは根も葉もない」と述べた。

 中国側は2003年に合意しながら実現していない中国艦艇の日本訪問について「06年の防衛交流に組み入れたい」と表明。曹剛川国防相の訪日については「都合のいい時期に実現したい」と述べるにとどまった。

 中国側はまた、日米両政府が「台湾海峡問題の平和的解決」を共通戦略目標に盛り込んだことについて「内政干渉」と批判。日本側は台湾問題の平和的解決の重要性を強調した。次官はまた、防衛大綱について「中国を脅威と見なしていない」と説明した。次官は曹国防相も表敬訪問した。(共同)

(03/25 01:22) 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/050325/kok011.htm

 「中国側は、日本とは社会制度や国防の制度が違うため『同じような透明性を求めることはできない』と拒否した」そうですが、これってどうなんでしょうか?

 木走として、中国関連でひとつ釈然としないのは、この防衛問題や経済問題で垣間見られる中国サイドのアンフェアーな態度であります。これも一種の他国に厳しく自国に甘いダブルスタンダードでありますよね。

 一部嫌中派を支持するわけではないのですが、中国も国際基準のルールを守らないといけないわけでして、前も話しましたが『クレヨンしんちゃん』の商標権などの件も、決してないがしろにできない問題だと思います。

 中国のキャラクター商標権がらみの話題は尽きないのですが、こんな話もあります。

世界に飛翔するウルトラマン

ウルトラマンは、中国では「奥特曼」と書く。発音をそのまま取った表記だ。テレビシリーズは、93年に上海東方テレビで放映されたのが最初というから、中国でも、もう10年以上の歴史を持っていることになる。放映当初から人気が爆発し、同市の上海魯迅公園でイベントを開催したところ、初日だけで10万人もの人が集まり、あまりの多さに1日だけで中止になったほどだったという。

昨年からは「ウルトラマンティガ」が放映され、街に出れば、「杰克・奥特曼」(帰ってきたウルトラマン)、「艾斯・奥特曼」(ウルトラマンA)などのビデオCDが目につく。すでにすっかり定着したヒーローだ。

ウルトラマンは古くから海外展開している。1979年の映画「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」はタイとの合作で、俳優と舞台がタイ。特撮部分を円谷プロが担当するという不思議な作品だった。実質的な主人公は、ウルトラ兄弟ではなく、猿の神様である「ハヌマーン」。日本の作品にはないような残酷な描写もあり、映画を見た子供たちを驚かせた。

その後も、米国の「ウルトラマンUSA」(89年)、オーストラリアで制作された「ウルトラマンG」(91年)、ケイン・コスギ主演の米国制作作品「ウルトラマンパワード」(93年)などの例がある。ウルトラマンシリーズを生んだ円谷プロにとって、国際化は古くからのテーマであり、ウルトラマンは世界中で活躍している。

背景には中国の知財戦略

だが、円谷プロは中国では苦い経験をしてきた。他の日本製品と同様、街で売られているウルトラマンビデオCDやDVDは海賊版ばかり。人形や衣類、文房具などキャラクター商品もあふれているが、これも圧倒的に無許諾品だ。同社は95年から中国での著作権侵害の調査を行い、販売している百貨店などに警告書を送付した。さらに96年には訴訟戦術を開始したが、なかなか思うような成果が得られていない。

さらに、中国のWTO加盟以降、海外の番組の放映についての審査が厳しくなっている。番組の国産化を進めているためとみられ、「ティガ」は長い申請期間の末、ようやく放映にこぎつけたが、今後、新たなシリーズを投入できる時期がいつになるかは見えない状態という。

ところが、昨年11月、中国のテレビ番組制作への国外資本の参加が可能になった。中国側の出資比率が51%以上であるという条件で、テレビ番組製作会社の合弁ができる規定が設けられたのだ。円谷プロが「中国オリジナルのウルトラヒーロー」をつくることを決めた背景には、このことがある。

規定では、合弁会社が制作する番組はドラマやバラエティー、アニメなどに限られ、年間3分の2以上が中国を題材にしたものでなければならない。新番組が中国を舞台にしなければならない事情もあるわけだ。また、「まだ、誰も知らない」新ヒーローにすることで、模倣品に先手を打つことができる。そして、実は肝心の「奥特曼」の商標も中国の企業に押さえられているのだ。

最初のウルトラマンは、東京オリンピックの2年後にあたる1966年に放映が始まり、経済成長の象徴であるコンビナートやビル街で怪獣と戦った。中国のウルトラマンも、上海の超モダンな街で怪獣と戦うのだろうか。

MSNニュース 2月9日http://tenshoku.inte.co.jp/msn/news/0209.html

 我らが「奥特曼」もついに、「中国籍帰化ですか(爆笑)

 裏話しますが、円谷プロの事務方の仕事の大半は、違法商品の管理なのです。で当たり前ですが商品管理はIT化されていまして、画像付きデータベースシステムで何万とある関連商品および関連グッズを管理して違法商品に目を光らせています。ただ、悲しいかな日本国内はおおよそ管制できておりますが、主に中国ですが海外はもう、お手上げの状況なのであります。

 こんな絵本を見てしまうと、我らが「奥特曼」が「中国籍帰化」するのも、やむなしなんですかね。

「奥特曼絵本」http://www.vega.or.jp/~bazil/nigamushi/ultr/ultr01.htm

 ふう。

 特撮物大好きな木走としては中国版ウルトラマンは、北朝鮮製怪獣映画「プルガサリ」のようなレア物としての興味がありますが、この問題、実は今の日本の抱えている深刻な問題が背景にあるような気がしています。

 1966年以来、「ウルトラ」シリーズは長く子供向け特撮番組として人気を博していましたが、近年は徐々に視聴率が下がり、テレビ放映は2002年秋にいったん終了しました。昨年10月からはTBS系で「ウルトラマンネクサス」の放送が始まったものの、東宝の映画「ゴジラ」が打ち切られるなど、特撮そのものの人気にかげりが出てきています。そんな中で円谷プロは戦略の見直しを迫られていたのだと思います。

 木走としては、今回の「ウルトラマン」の「中国帰化」は、日本のコンテンツ制作会社が、少子化の進む日本市場を見切って、13億人の中国市場に新天地を見出そうとする動きととらえています。
 なんか、ふくざつだなあ・・・



(木走まさみず)

<関連テキスト>

ゴジラが見た北朝鮮
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050227
●中国ってすごいですね。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050224