木走日記

場末の時事評論

マスメディアが表立って取り上げないパチンコホールのリスク

厚労省により専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の見解」の資料が公開されています。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」
2020 年3月9日
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000606000.pdf

ここで、集団感染が確認された場に共通する3条件が明確化されました。

これまで集団感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間であった、②多くの人が密集していた、③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという 3 つの条件が同時に重なった場です。こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。そのため、市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。

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新型コロナウイルス感染症対策専門家会議資料より『木走日記』作成

専門家会議は、一定条件を満たす場所として厚労省サイトで具体的に「ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等」と列挙しています。

(2)一定条件を満たす場所からの感染拡大

これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。
一方で、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。 具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等です。このことから、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生する可能性が示唆されます。そして、患者集団(クラスター)が次の集団(クラスター)を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html

確かに、ライブハウスや屋形船、卓球スクールなどクラスタが発生したとされる場所の多くは、3条件が揃っているわけです。

10日夕には、安倍晋三首相が、文化イベントの自粛期間延長を要請しました。新たな「政府方針」が発表され、多くのイベントが中止へと動かざるを得なくなりました。

さて、日本高野連は11日、大阪市内で第92回選抜高校野球大会の臨時運営委員会を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、19日に兵庫・甲子園球場で開幕予定だった同大会を中止することを決めました。

(関連記事)
選抜高校野球は中止 史上初 無観客での開催断念
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56659080R10C20A3UU8000/

無観客の甲子園球場が上記3条件にあてはまるのか議論のある所でしょうが、主催者・日本高野連は「苦渋の決断」と表現していました。

さて、厚労省がサイトで、危険な場所と列挙した「ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等」でありますが、何故か3条件が最も綺麗に揃っている場所が抜け落ちているわけです。

パチンコホールです。

パチンコホールはみなさんよくご承知のように、北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々にまで市街地や郊外に立地しております。

その数は、1月末時点の全国パチンコホール営業店舗数は業界紙によれば8802軒とのことです。

(関連記事)
組合加盟店舗実態調査
https://amusement-japan.co.jp/article/detail/10001596/

パチンコホールは、ほぼ例外なく騒音対策のため入口は2重ドアで仕切られており、ホール内にはやはり騒音対策のため開閉可能の窓はほとんどありません。

つまり①換気の悪い密閉空間で②多くの人が密集し③互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われている、という 3 つの条件が同時に重なった場所、それがパチンコホールなわけです。

業界紙によれば、大阪府堺市では新型コロナウイルス感染者が来店し休業に追い込まれたホールも発生しています。

パチンコホール「ザ・チャンス8」が臨時休業、新型コロナウイルス感染者が来店
遊技日本2020年3月7日

パチンコホール「ザ・チャンス8」(大阪府堺市)が3月7日(土)より、新型コロナウイルス感染者が来店したとしてしばらくの期間、臨時休業とすることを発表。3月6日にP-WORLD上の同店サイトとTwitter公式アカウントで3月6日に告知した。

同店の説明によると、感染者は2月29日(15時~21時の間)に来店。保健所からの連絡で発覚したという。感染予防に万全を尽くすため臨時休業に加え、店内の消毒作業を実施する。

また、従業員には現在感染の症状はないものの経過観察期間が過ぎるまでは出勤を停止し、自宅待機とする処置がとられている。「お客様にはご迷惑をお掛けしますが、何卒事情をご賢察いただき、ご理解のほどよろしくお願い致します」と理解を促した。営業再開に関しては店頭やP-WORLD、Twitter上でアナウンスするとしている。

https://www.p-world.co.jp/news/12985/nippon

この局面で、最も換気の悪い密閉空間であるパチンコホールがまったく問題されないのは、与野党に蠢(うごめ)く、パチンコチェーンストア協会政治分野アドバイザー、いわゆる「パチンコ」議員の暗躍があったのではないか、いや間違いないと、個人的に私は穿っております。

当ブログでは繰り返し「パチンコ」議員の問題を取り上げてきたからです。

関連エントリー
この局面で韓国擦り寄り発言が止まらない「パチンコ」議員岩屋毅防衛相
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2019/05/20/162447

また経営者に在日韓国・朝鮮人のオーナーが多く、なおかつ国内最大の「警察利権」と化しているパチンコ業界問題は、なぜか政治家やマスメディアがタブーとしていることも、10年以上前から問題提起してまいりました。

関連エントリー
政治家やマスメディアが絶対触れない深刻でダークなパチンコ業界問題
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/20120527/1338106493

いつもは触れないことが常のマスメディアですが、さすがに本件(危険な場所からパチンコホールが外れている件)では毎日新聞記者が菅義偉官房長官に「パチンコ店が自粛する場所に入らないことに対し我々の中で疑念がある」と質問しています。

これに対し官房長官は「警察庁において、政府の基本方針を踏まえ、パチンコ業界で適切な対応を取られるよう指導するだろう」と答えになっていない回答をしています。

業界紙の記事より。

官房長官が記者からのパチンコ営業自粛質問に回答、業界の感染拡大防止対策を説明
2020/3/11

菅義偉官房長官は3月10日に行われた会見で、パチンコ業界に対して営業自粛要請を行っているのかという記者からの質問に回答。業界が取り組んでいる感染拡大防止対策について説明する一幕があった。

質問を行った毎日新聞の記者は、「今、様々な自粛の要請が行われているが、パチンコ店が自粛する場所に入らないことに対し我々の中で疑念がある。北海道など一部地域では、営業時間の短縮をしている例があるようだが、業界に対して営業の自粛要請は行っているのか」と質問した。

これに対し菅官房長官は、「すでに警察庁は、感染拡大防止の観点から業界に対し、従業員に感染拡大しないような職場の整備についての特段の配慮、遊技機のハンドル等不特定多数の人が触れる場所を消毒するなど感染防止措置を要請している。引き続き警察庁において、政府の基本方針を踏まえ、パチンコ業界で適切な対応を取られるよう指導するだろう」と回答。3月6日の衆議院内閣委員会で武田良太国家公安委員長が答弁した、業界の感染拡大防止に向けた取組状況をあらためて説明するなどした。

https://www.yugitsushin.jp/news/etc/%E5%AE%98%E6%88%BF%E9%95%B7%E5%AE%98%E3%81%8C%E8%A8%98%E8%80%85%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B3%E5%96%B6%E6%A5%AD%E8%87%AA%E7%B2%9B%E8%B3%AA%E5%95%8F%E3%81%AB%E5%9B%9E/

・・・

私はこの局面での行き過ぎたイベント中止や一部業種の行き過ぎた営業の自制を、とくに経済的な側面から大変憂慮する側の人間であります。

従ってパチンコホール営業も他業種と同様、続ければよろしい、行きたい人は自己責任で行けばよろしいと考えます。

ただ、カラオケボックス雀荘やスポーツジムなどが政府から名指しで危険な場所と列挙される中で、3条件が綺麗に揃っているパチンコホールのそのリスクが取りこぼされていることに、大いに疑問に思うわけです。

この無視できないリスクを表立って取り上げようとしないマスメディアの報道姿勢の問題も大きいです。

その店舗数、利用者数は列挙された他の場所を圧倒しています、従ってパチンコホールからクラスタ(集団感染)が発生する可能性は科学的に考えて否定できません。



(木走まさみず)

日本の感染者数の状況は予断を許さない〜「日本の感染者数」を関数に例えればその一次導関数は明らかにプラス

さて現在日本の新型コロナウイルスの感染状況について、国際比較をしつつ検証してまいりたいと思います。

現在、各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況の正確な情報が公開されているのは外務省の以下のサイトです。

外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/

まずは中国を含めて国別感染者数推移を外務省サイトより見てみます。

■図1:新型コロナ国別感染者数推移①(3月11日現在)
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※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

中国、イタリア、イラン、韓国の感染者数が突出していることが確認できます、イタリアも1万人を超えてしまったのですね。

イタリア、イラン、韓国をグループAとします。

グラフの縦軸に着目してください、感染者数8万の中国までグラフに入れると日本(568人)はほぼフラットな線に見えます。

次に、上記4国を除いた各国の感染者数推移はこちらです。

■図2:新型コロナ国別感染者数推移②(3月11日現在)
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※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

やはりグラフの縦軸に着目すると、最大が1900人と拡大されていますので、明らかに2つのグループが存在していることが見て取れます。
感染者数および伸び率から、上位のフランス、スペイン、ドイツ、米国をグループB、日本、スイス、オランダ、英国をグループCとします。

このように国際比較すると、日本は中国を除けば感染者数とその伸び率は比較的低い第三グループCに位置づけられます。

この状況を見て、医師の中村ゆきつぐ氏は「新型コロナウイルス対処 日本は上手くいっている」とBLOGOSにエントリーしています。

中村ゆきつぐ
2020年03月11日 09:32
新型コロナウイルス対処 日本は上手くいっている
https://blogos.com/article/442023/

中村氏も指摘していますが、WHOも日本とシンガポールを名指しで「封じ込めに成功している」と評価しています。

WHOは日本やシンガポールなどは封じ込めに成功しているとし、「勇気づけられている」(緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏)と対策の成果を評価した。

日経新聞記事 新型コロナ「パンデミックが現実味」 WHO事務局長 より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56596050Q0A310C2000000/

ここまで異論ありません、日本政府は中国からの観光客を長く受け入れてしまった初動の遅れや、クルーズ船対策などいくつかの対応にミスがありましたが、ここまでよく抑えていると思います。

しかしながらです。

上述の2つのグラフの縦軸は万人単位、千人単位と、粗いですので、当然ながら日本のグラフも傾きが低く抑えられます。

当ブログで集計してきた、感染者累計のグラフをご覧ください。

■図3:日本国内の感染状況(3月11日現在)【発生数累計】
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※クルーズ船・チャーター機を除く(ただし帰宅後の感染確認は含む)
※『木走日記』作成

縦軸を600人とすれば、日本の感染者数は明らかに総数、伸び率共に増しています。

指数関数的とまでは言えませんが、二次関数的に増えているとは言えそうです。

次に感染者の【日別発生数】の推移をグラフ化してみます。

■図4:日本国内の感染状況(3月11日現在)【日別発生数】
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※クルーズ船・チャーター機を除く(ただし帰宅後の感染確認は含む)
※『木走日記』作成

明らかに増大傾向にあるわけで、この事実を数学的に表現すれば、「日本の感染者数」を関数に例えればその一次導関数は明らかにプラスだと思われます、つまり、残念ながら日本の感染者数は拡大しつつあることをグラフは示しています。

この【日別発生数】の増大率がマイナスに転化(数学的には二次導関数がマイナス)すれば、結果として元の感染者のグラフは収束に向かうことでしょう。

しかしもし、【日別発生数】の増大が当面止まらないとしたら(数学的には二次導関数がプラスもしくはゼロ)ならば、結果として元の感染者のグラフは、最悪、指数関数的な増大、つまり中国やグループA国のように、拡散に向かうことでしょう。

日本の現在、この局面はまさに分岐点なのだと思います。

数学的には日本の感染者数の状況は予断を許さないものと考えます。



(木走まさみず)

「新型コロナウイルスに感染力に差がある2つの型が存在」(中国論文)について検証(訂正あり) 

新型コロナウイルスについて、最新の話をご提供いたします。

中国の研究チームは、新型コロナウイルスが大きく2つのタイプに分類できて感染力に差があるとの研究結果を発表しました。

北京大学の研究者らは新型ウイルスの遺伝子分析を行い、論文を発表しました。

発表された論文はこちら。

On the origin and continuing evolution of SARS-CoV-2
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwaa036/5775463#supplementary-data

24ページの論文本文はPDFファイルで公開されています。

これは大変興味深いです。

論文によりますと、103個のサンプルを分析した結果、新型ウイルスが「L型」と「S型」と呼ばれる大きく2つのタイプに分類できるということです。2つのうち全体の約7割を占めるL型の方が感染力が強いとされ、一方のS型はコウモリから検出されたコロナウイルスの遺伝子と似ていることから、より古くから存在していたとみられます。

論文本文の21ページの図5(Figure 5. )に注目してください。

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論文によれば、図の下に赤く示されている"S Type"(「S型」)は、コウモリから検出されたコロナウイルスの遺伝子と似ていることから、より古くから存在していたと推測されています。

<ここから訂正 2020/03/09>
初期の武漢で蔓延したタイプを新型のLタイプではなく旧型のSタイプと読み間違い、また重症性など間違った前提の推測をしてしまいました。

推測部分は全面的に削除し、以下のように論文の概要の説明にとどめておきます。

<ここから追加 2020/03/09>
論文によれば、その後、遺伝子の変異により図の上に青く示されている"L Type"(「L型」)が生まれました。

この"L Type"(「L型」)は、発生初期の武漢周辺で重篤な症状を多く発生させました、武漢で多くの死者が発生したのはこの「L型」によるものだと推測されます。

L型は発生の初期段階で現在より一般的でした

現在ではLタイプ(〜70%)はSタイプ(〜30%)とあり、武漢では、L型の頻度は2020年1月初旬以降減少しました。

感染拡大を阻止するための人的介入により、より攻撃的で、より速く広がるLタイプにより厳しい選択圧力がかかった可能性があります。

Sタイプは進化的に古く、攻撃的ではないため、比較的弱い選択圧のもとで、相対頻度が増加した可能性があります。

<ここから削除 2020/03/09> 
この"S Type"(「S型」)は、発生初期の武漢周辺で重篤な症状を多く発生させました、武漢で多くの死者が発生したのはこの「S型」によるものだと推測されます。

"S Type"(「S型」)は、感染者を早い段階で重い症状にするために、感染者が移動して他者にウイルスを拡散する可能性は低かった、つまりその感染力は弱かったと推測されます。

論文によれば、その後、遺伝子の変異により図の上に青く示されている"L Type"(「L型」)が生まれました。

この"L Type"(「L型」)は、症状が無症状であったり軽症であったりするために、強い感染力を示していると推測されています、武漢以外の中国国内の致死率が低いのは、主にこの"L Type"(「L型」)が流行しているためと推測されます。

論文によれば、現在は感染力は弱いが重症化しやすい旧タイプの"S Type"(「S型」)は30%、感染力は強いが症状は軽い傾向にある新タイプの"L Type"(「L型」)は70%と主流になっています。

ここからは論文の内容から推測できる将来についてです。

将来の予測として、致死率が高く感染力が弱い"S Type"(「S型」)は、かつてのSARS、MERSのようにやがて収束する可能性が高いと思われます、感染者の致死率が高いためでもあります。

一方、症状の軽い(しかし感染力が強い)"L Type"(「L型」)は、収束はせず広範囲に流行を続け、やがてこれまでのインフルや感冒と同様に多くの人が抗体を保有するようになり、おそらく毎年流行るウイルスの一種として残ると思われます。

図に示します。

図は削除
※中国論文より『木走日記』作成

もし、このレポートの内容が正しいとすれば、これは我々にとって、対策をとるための指標になる朗報となりましょう。

新型コロナウイルスに二つのタイプがあることを前提にすれば、致死率が高く感染力が弱い"S Type"(「S型」)こそを徹底マークして収束すべく対処していくことが重要になります、そしてそれはSARSなどの過去事例からほぼ短期間で実現できるでしょう。

一方、症状の軽い(しかし感染力が強い)"L Type"(「L型」)は、流行を阻止することは不可能です、長期的に流行を繰り返すでしょう、やがて毎年流行する感冒やインフルなどに、一種類このウイルス由来の風邪が増える程度の存在となることでしょう。

この論文は、暗中模索であった新型ウイルス対策に、具体的な対策を科学的裏付けを持ってもたらす可能性が十分にあると思います。

このエントリーが読者の皆様の参考になれば幸いです。

大変失礼いたしました。


(木走まさみず)

この局面で韓国メディアよりも突出する朝日新聞の日本政府・安倍政権批判

前回のエントリーの続きです。

中国には沈黙し日本には激しく干渉し報復する韓国〜ここまで来るとこれはもう心の問題なのかもしれない
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/03/06/141823

日本政府は5日、中国・韓国からの入国者(国籍問わず)に対し指定場所での2週間の待機を要請することや中国人・韓国人に対する査証(ビザ)免除制度の一時停止、入国拒否の対象地域の拡大といった水際対策強化を発表しました。

これに対し中国は日本政府の水際対策強化に理解を示します。

対して韓国はこれに猛反発、早速日本に対して報復措置に出ました。

今回は本件に関し、日韓メディアの論説を検証いたします。

まず、韓国左派メディアの代表であるハンギョレ新聞は、「[社説]安倍政府「韓国からの入国制限」撤回を」を掲げます。

[社説]安倍政府「韓国からの入国制限」撤回を
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/35958.html

社説は「問題解決のために日本が先に韓国からの入国制限措置を撤回するのが正しい」と主張します。

 日本政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡散防止のためとしたが、韓国政府と事前協議や予告なしの一方的な措置だ。安倍政権が初期防疫に失敗した責任を無理やり押し付けようとする意図と見られる。ただでさえ悪化していた韓日関係により一層の悪影響を及ぼすことが明らかだ。問題解決のために日本が先に韓国からの入国制限措置を撤回するのが正しい。

社説は、「韓国の透明かつ体系的な防疫システムは国際社会でも高く評価されている」と自画自賛し、上から目線で「日本も今回少なくない弱点を見せた」が「日本政府の前向きな措置をあらためて促す」と日本政府から入国制限を撤回せよと主張して、結ばれています。

 韓国国内の感染者は6千人を超えたが、累積検査数が16万余り件に達するなど、韓国の透明かつ体系的な防疫システムは国際社会でも高く評価されている。日本も今回少なくない弱点を見せたが、優秀な防疫システムを備えているという評価を受けている。韓日両国は臨床経験や情報共有などで緊密に協力して共に感染病退治に立ち向かう姿勢を整えることが必要だ。日本政府の前向きな措置をあらためて促す。

左派文在寅ムン・ジェイン)大統領政権を支持する左派ハンギョレのこの社説は、ほぼ韓国政府の言い分をなぞっていると言ってよろしいでしょう。

そこには中国政府が同様の措置を韓国にしたときは沈黙を守ったのに、日本政府の措置にだけ感情的に激しく反発するという韓国政府のダブスタには、一切触れられていません。

一方、韓国保守メディアの代表・朝鮮日報は「【社説】日本はやっと中国を遮断、世界から孤立する韓国は日本にだけ憤怒」を掲げます。

【社説】日本はやっと中国を遮断、世界から孤立する韓国は日本にだけ憤怒
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/07/2020030780012.html?ent_rank_news

社説は、「韓国が間違っている」と左派政権を断罪します。

 感染者が多い国に対する入国制限は、防疫の次元からどの国も検討することは可能であり、それを非難することはできない。中国人の入国を遮断しない韓国が間違っているのだ。

日本の措置は問題があると指摘したうえでですが、「中国に対して一言も言えない政府が、ただ日本に対してだけは激しい怒りを表出している」と「世界100カ国以上の国から入国制限を受けている韓国政府」を嘲笑いたします。

 注視すべきことは中国の態度だ。中国共産党の宣伝機関はこの日、日本による中国人の入国制限について「理解できる」との考えを示した。日本と事前の交感があったようだ。ところが世界100カ国以上の国から入国制限を受けている韓国政府はこれまで一度も対抗措置について言及しなかった。今も韓国国民800人が中国で強制隔離されている。この中国に対して一言も言えない政府が、ただ日本に対してだけは激しい怒りを表出している。青瓦台と政府が総動員し「その意図が疑われる」という非外交的な言辞まで使った。選挙を前に「反日竹槍歌」をもう一度歌うチャンスとして活用するだろうか。

左派文在寅ムン・ジェイン)大統領を激しく批判してきた保守メディアだけあって、広い視点から政権批判をしているのが印象的です。

最後に日本の朝日新聞の社説を取り上げましょう。

(社説)中韓入国制限 説明なき転換、またも
https://www.asahi.com/articles/DA3S14393335.html?iref=pc_rensai_long_16_article

社説は冒頭から結びまで全編、日本政府・安倍政権を徹底的に批判しています。

冒頭、「またも唐突な方針転換である。その必要性や効果について、納得のいく説明もない」と今回の措置の批判から始まります。

 またも唐突な方針転換である。その必要性や効果について、納得のいく説明もない。「国民の不安感の解消」を目的に掲げながら、これではかえって混乱を助長しかねない。

「中国では武漢以外での感染拡大の勢いが弱まり、韓国は全土に感染が広がっている状況とはいえない」のに、「どれほどの意味があるのだろうか」と批判します。

 政府はこれまで、中国については感染源となった武漢市を含む湖北省など、韓国では集団感染が発生した大邱やその周辺などに限って、入国を拒否してきた。中国では武漢以外での感染拡大の勢いが弱まり、韓国は全土に感染が広がっている状況とはいえない。

 にもかかわらず、いま両国の全域を一律に対象とすることに、どれほどの意味があるのだろうか。感染者が急増しているイタリアやイランの扱いとも整合性がとれない。

安倍首相の「科学的な根拠に基づかない「政治判断」は、大規模イベント自粛や全国一斉休校の要請に続く」ものだと批判します。

 それでも、首相が事前に専門家会議の意見を聞いた形跡はない。科学的な根拠に基づかない「政治判断」は、大規模イベント自粛や全国一斉休校の要請に続くものだ。

今回の措置が「首相の支持基盤である保守層」つまり「支持層を意識したアピールだとしたら、不見識」だと批判します。

 また、首相の支持基盤である保守層からは、「中国全土からの入国拒否」を強く求め、首相の対応を「中国に甘い」と批判する声もでていた。中国の習近平(シーチンピン)国家主席の訪日延期を発表した直後というタイミングでの、支持層を意識したアピールだとしたら、不見識である。

朝日社説は最後に、「合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相」と安倍首相を痛罵して結ばれています。

 新型コロナウイルスを対象に加える新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が成立すれば、人権の制限を伴う措置が可能となる緊急事態宣言を首相ができるようになる。しかし、合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相に、その判断を委ねるのは危ういと思わざるを得ない。

・・・

ハンギョレ朝鮮日報朝日新聞と、日本と韓国主要3紙の、3月7日付けの社説を読み比べて検証いたしました。

検証したとおり、冷静に韓国政府を批判しているのは朝鮮日報だけであり、左派ハンギョレ朝日新聞は韓国政府批判には全く触れられてもいません。

一方日本政府批判は濃淡はあるものの3紙全てその論説で取り上げられていますが、朝日新聞社説は韓国左派ハンギョレ社説よりも、強烈に日本政府を批判しており、特に「合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相」と安倍首相を痛烈に罵(ののし)っているところが非常に目立ちます。

この局面で、韓国メディアよりも、視野狭く日本政府・安倍政権だけを痛罵する日本の朝日新聞社説なのでした。



(木走まさみず)

中国には沈黙し日本には激しく干渉し報復する韓国〜ここまで来るとこれはもう心の問題なのかもしれない

日本政府は5日、中国・韓国からの入国者(国籍問わず)に対し指定場所での2週間の待機を要請することや中国人・韓国人に対する査証(ビザ)免除制度の一時停止、入国拒否の対象地域の拡大といった水際対策強化を発表しました。

これに対し中国は日本政府の水際対策強化に理解を示します。

中国はすでに韓国と日本からの入国者に対して韓国人と日本人だけでなく、自国民にも無条件に2週間の隔離措置を取っているので、冷静に受け止めているようです。

さて韓国です。

韓国は「例によって」猛反発しています。

韓国の丁世均(チョン・セギュン)首相は6日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて日本政府が韓国からの入国を大幅に制限する方針を示したことに対し、日本に対し行き過ぎた不合理な措置を即刻撤回するよう促すとともに韓国政府も適切な対応措置を講じると強調します。

(関連記事)
韓国首相「対応措置講じる」 日本の入国制限に遺憾表明
聯合ニュース
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/06/2020030680059.html

さっそく日本に対する報復措置が検討されます。

青瓦台のキム・サンジョ政策室長は「日本の発表を見て本当に失望した。深い遺憾の意を表する。6日、政府の公式見解を発表するだろう」と述べます。

別の政府当局者は「日本からの入国者の隔離や、日本から来た航空機の着陸制限などを検討している」とし、韓国外交部は同日夜、駐韓日本総括公使を呼んで抗議いたしました。

(関連記事)
日本、事実上韓国人の入国禁止…韓国外交部「日本人の隔離推進」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/06/2020030680002.html

なぜ自国民の生命を守るために各国が必要と判断して採用した防疫政策に対して、韓国政府は日本に対してだけ、「報復」とか「対抗」とか感情的反発を示すのでしょうか?

日本に先行して中国が韓国と日本に対して同様の措置をとったとき、韓国政府は完全に沈黙していたのにです。

(関連記事)
中国には一言も言えず、100カ国に拒まれる韓国外交部…日本にだけは対抗
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/06/2020030680008.html

この朝鮮日報記事によれば、日本には「対抗」、中国には「制限していない」と、韓国政府の対中国弱腰外交を批判しています。

さて韓国がおかしな論理を立てて自国を擁護し日本を批判し始めます。

日本輸出規制対策を総括してきた青瓦台(チョンワデ、大統領府)の金尚祖(キム・サンジョ)政策室長はこの日午後、KBS(韓国放送公社)に出演して「一日1万3000人を検査し、その結果を透明に公開しているが、日本が韓国と同じくらい透明か、この部分は疑わしい」とし「日本がそのような過激な措置を取ったことについて、甚だ遺憾だと考える」と話します。

「日本が韓国と同じくらい透明か、この部分は疑わしい」、すなわち日本は真の感染者数を隠しているのではないかと韓国政府は言い出したのです。

(関連記事)
「韓国から来たら2週間隔離」 日本へ行く道が塞がれた(1)
https://japanese.joins.com/JArticle/263353

この考えはどこからきたのか、どうやら韓国の国民健康保険公団理事長の発言からのようです。

韓国の国民健康保険公団理事長である金容益(キム・ヨンイク)氏が3日、日本の新型コロナウイルス新型肺炎)対応に関連し、「日本がオリンピック(五輪)を控えて診断と防疫をしないで隠蔽戦略の方向に進んでいる」としながら「韓国より(日本の感染者数が)はるかに多い可能性があるが、非常に政治的な判断をしている」と主張しています。

(関連記事)
「日本、新型肺炎を隠蔽…韓国より感染者数多い可能性」 韓国の国民健康保険公団理事長が発言
https://japanese.joins.com/JArticle/263250?sectcode=200&servcode=200

韓国としては、本当は韓国よりはるかに多い感染者を隠蔽しているくせに、日本から先に韓国人入国拒否とは生意気だ、というところでしょうか。

国民の命を守るために各国政府が必死に防疫対策をこうじているわけです。
なぜ自国民の生命を守るために各国が必要と判断して採用した防疫政策に対して、韓国政府は日本に対してだけ、「報復」とか「対抗」とか感情的反発を示すのでしょうか?

そして日本は新型肺炎感染者を隠蔽していると言い出す始末です。

日本に先行して中国が韓国と日本に対して同様の措置をとったとき、韓国政府は完全に沈黙していたのにです。

国を選んで沈黙したり報復したり、何たるへたれ政策なのでしょう。

そこまで他国の防疫政策に干渉するならば、中国にも抗議してみろと言いたいです。

ここまで来るとこれはもう心の問題なのかもしれません。

読者のみなさん。

この隣国の日本にだけの感情論剥き出しの過剰反応、いかがお感じでしょうか。

ふう。



(木走まさみず)

安倍政権の初動の遅れはインバウンド政策が背景にあったことは明らかだが、安倍批判を繰り返す朝日新聞が実はYouTubeで便乗商売してる件

WHOのテドロス事務局長は2日、スイスのジュネーブの本部で開いた会見で、感染が広がっている韓国、イタリア、イラン、そして日本について非常に懸念していると述べました。

あわせて、「8か国ほどでは最初の感染確認から2週間以上新たな感染が確認されておらず封じ込めができている」と、封じ込めは可能だという見方を示しました。

WHO「韓国 日本など非常に懸念」も「封じ込め可能」
2020年3月3日 7時15分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200303/k10012310821000.html

たしかに、3月4日現在、中国以外の感染者の多い国を列挙しますと、韓国5328人、イタリア2502人、イラン2336人、日本1001人(クルーズ船除くと296人)、フランス212人、ドイツ196人、スペイン165人、アメリカ122人、シンガポール110人、香港100人と、この10ヵ国・地域が100人以上の感染者が発生しています。

WHOのテドロス事務局長はこの状況を見て、中国を除いて感染者数の多い4ヵ国を名指しして懸念を示したのでしょう。

一方現時点で「感染確認から2週間以上新たな感染が確認されておらず封じ込めができている」国があるのも事実であります、例えばベトナムは感染者数16人(すでに全員完治退院)で封じ込めています。

ジャーナリストの木村正人氏は、BLOGOSでベトナムの成功事例を日本と対比して分析しています。

木村正人
新型コロナウイルスベトナムはなぜ封じ込めに成功し、日本はドタバタしてしまうのか
https://blogos.com/article/440074/

木村正人氏がエントリーの中で、ベトナム政府と日本政府のウイルス対策を時系列でその対比をまとめています、失礼して日本部分を抜粋してご紹介。

1月
15日武漢滞在歴がある患者から新型コロナウイルス確認
21日中国全土を感染症危険情報レベル1(注意喚起)に
23日武漢便を運休
24日湖北省感染症危険情報レベル3(渡航中止勧告)に
29日武漢市在留邦人家族計828人の退避始まる
30日WHOが緊急事態宣言
30日新型コロナウイルス感染症対策本部初会合
2月
1日湖北省に滞在していた外国人の入国拒否
1日新型コロナウイルスを指定感染症
3日クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の検疫開始
6日中国便の運休拡大
13日浙江省滞在歴のある外国人の入国拒否
16日初の専門家会議
19日クルーズ船からの下船始まる
24日専門家会議で「今後1~2週間が瀬戸際」と見解
25日新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
25日一部地域で小規模な患者クラスター(集団)が発生
27日首相が全国の小中高に臨時休校を要請
27日韓国・大邱周辺に滞在していた外国人の入国拒否

中国で大型連休が始まる1月21日時点で、日本は中国人に対する入国拒否はしませんでした、注意喚起(中国全土を感染症危険情報レベル1に)(注意喚起)のみで、結果として多くの武漢出身も含まれる中国人旅行者を国内に受け入れてしまいました。
日本政府が「湖北省に滞在していた外国人の入国拒否」したのは2月1日でした。

この政府の初動の遅れが日本で感染者数をここまで増やしてしまった主要な要因であることは否定できません。

少なくとも韓国と日本の感染者増大は、両政府の中国武漢周辺からの入国拒否対策が大きく遅れたことが主因でしょう。(もっとも、早くから中国人の全面入国拒否をしたアメリカが上述したように122人と感染者がここにきて増え始めていますことも留意が必要ですが)

日本はこれまで国を挙げてインバウンドすなわち年間訪日外国人4000万人を目指していたわけです。

今年東京オリンピックを迎えることもあり、あるいは中国の習近平国家主席国賓として迎えることもよぎったか、安倍政権にとり中国の春節大連休の前に、武漢周辺からの中国人旅行者入国拒否の決断はできなかったのでありましょう、今の事態を招いた判断ミスがそこにあったのは、結果論ですが明らかです。

しかしです。

この新型ウイルス騒動が起こる前、少なくとも昨年12月までは日本は国を挙げて、東京も地方も自治体も民間も、外国人ウエルカム政策にひた走っていたことを忘れてはいけません。

東京オリンピックもにらみ日本政府は中国人旅行者を中心にしたインバウンド政策を強力に推進していました、年間訪日外国人4000万人を目指していたわけです、東京だけでなく、多くの自治体・民間企業も積極的に加わり、潤ってきたわけです。

安倍政権の今回の初動の遅れなどウイルス対策のもたつきを、ことごとく野党や一部メディアは批判しています。

たとえば、朝日新聞は連日のように社説にて安倍政権のウィルス対策を批判しています。

(社説)新型肺炎対策 不安拭えぬ首相の説明
https://www.asahi.com/articles/DA3S14387256.html?iref=pc_rensai_long_16_article

この社説は冒頭から「国民の不安を拭い、納得を得るためには、説明も対策もまだまだ不十分だ」と批判しています。

 国民の不安を拭い、納得を得るためには、説明も対策もまだまだ不十分だ。自らの政治決断だという以上、安倍首相には先頭にたって、きめ細かな対応に努めてもらわねばならない。

社説は、最後に「これまでの安倍政権に欠けていた謙虚さを発揮しろ」と結ばれています。

 国民のいのちと暮らしを守るために与野党が協力するのは当然だ。その前提は、政権与党の側が野党の指摘や提案に虚心に耳を傾けることだろう。与野党を超えて政治の責任を果たせるか。これまでの安倍政権に欠けていた謙虚さを発揮できるかにかかっている。

このたびの一連の政府の対応は、初動の対策やクルーズ船への対応、はたまた全国一律の学校休校措置など、後日しっかり検証が必要なのは当然のことでしょう。

大きく俯瞰(ふかん)すれば、日本政府の初期(特に1月21日から始まった中国大連休(春節))の対応、つまりほぼ無条件に大量の中国人観光客を受け入れたことに起因していることは明らかです。

そして日本政府が後手を踏んでしまった背景には、官民挙げて外国人訪日客を増やす、中国人旅行者を中心にしたインバウンド政策を強力に推進してきたことが、日本政府の初動の遅れにつながっていたことは明らかです。

従って政府のインバウンド政策を支持し積極的に参加してきた、自治体・民間企業は、この事態を招いたことを安倍政権のみの責任と批判することは倫理的に許されることではありません。

たとえば、朝日新聞社はグループを挙げてインバウンドで積極的に商売をしていたではありませんか。

朝日新聞社とグループ会社の朝日アドテックは、「インバウンド向けPR映像の制作・配信事業を開始」し「YouTubeで配信!」開始したわけです、記事によれば「2社の実績を結集したPR事業」です。

昨年5月19日の『訪日ラボ』の記事より。

YouTubeで配信!朝日新聞社がインバウンド向けPR映像の制作・配信事業を開始

第一弾、静岡県のPRを配信

株式会社朝日新聞社は5月7日、株式会社朝日アドテックと共同で訪日客向けPR映像の制作・配信・販売事業を開始したと発表しました。第一弾として静岡県の動画をYouTubeで配信しています。

地元の魅力を外国人にわかりやすく

両社は自治体や企業のインバウンド施策として、PR映像制作・配信を行います。今回プロジェクトの第一弾として、静岡県の春夏秋冬を映像化した「Inspiring SHIZUOKA」をYouTubeで配信しました。

映像は約4分間で、世界的に有名な富士山を筆頭に、沼津魚市場、清水魚市場河岸の市、由比の桜えび干場、グリンピア牧之原、大淵笹葉、田牛海岸、寸又峡「夢の吊橋」など、名所の魅力ある風景を映像で届けています。

またキャンプ場や地元の祭り、伝統的な工芸や産業など、人々の暮らしにつながる映像を紹介しており、外国人に地元での体験を訴求できる内容となっています。

2社の実績を結集したPR事業

同社は自治体や企業向けにインバウンド施策としてPR事業をサポート。一方朝日アドテックは、ドローンや4Kカメラを活用したPR映像制作を行っています。

同事業では両社がノウハウを結集し、日本の魅力を発信していきます。制作した映像は、訪日客向けの情報サイト・SNSYouTubeで配信することになります。

https://honichi.com/news/2019/05/13/youtube-de-haish/

・・・

私は、今回の安倍政権の初動の遅れは、それまで官民挙げて積極的に展開してきたこの国のインバウンド政策がオリンピックも睨んで背景にあったことは間違いないと思っています。

積極的に外国人旅行者を受け入れる政策を展開していたまさにこのタイミング(よりによって中国大連休直前)で、後手を踏み大量の中国人旅行者を受け入れてしまったことが、今日の事態を招いた主因なのであります。
積極的なインバウンド政策と入国禁止など排他的な防疫政策は真逆であり、新型ウイルスの感染力など中国からの当初の情報不足もあり、初動時に日本政府が180度方針を転換することは非常に難しい判断だったのだと思われます。

安倍政権の初動の遅れはインバウンド政策が背景にあったことは明らかですが、YouTubeでインバウンド便乗商売してるくせに、ただただ安倍政権のみの批判を繰り返す朝日新聞社のその報道姿勢はいかがなものでしょう。



(木走まさみず)

中国モデルで日本の新型コロナウイルス感染者数を予測(訂正有り)

大変興味深い医学研究レポートが中国で報告されましたので、今回はこれを取り上げたいのです。

今後の日本の新型コロナウイルス感染者数を予測しているのです。

レポートはこちら。

CoVID-19 in Japan: What could happen in the future?
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v2.full.pdf+html

レポート自体PDFファイルで公開されています。

この論文はプレプリントであり、まだ正式な評価がされていないため、臨床診療の指針として使用すべきではないレポートであることをお断りした上でですが、この予測モデルは膨大な中国の実データを用いて、武漢や北京など中国各地(主要9都市)に適用して予測モデルの精度を高めています。

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https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v2.full.pdf+html

中国各地の感染者数を精度良く予測できるこのモデルを用いて、日本に適用して今後感染者数が増加することを予測しています。

この論文の興味深いところは、どのようなモデルで予測に必要なパラメータである感染率や隔離率がどのような値を用いたのか、すべて公表されていることです、上の表も9都市の感染者数を予測する上で採用した各パラメータです、これらを調整して予測値を実測値に限りなく近づけ予測モデルの精度を向上させたわけです。

モデルが採用した数式はこちら。

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https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v2.full.pdf+html

式の詳細などはどうでもよろしいのですが、ここで三つの式の左辺が重要です。
第一式:I(t+1)は「感染者累積数」、第二式:J(t+1)は「確認された感染者の累積数」、第三式:G(t+1)は「未確認の孤立した感染者の瞬間(累積ではない)の数」、またtは日数を意味します。

このモデルにおけるI、J、Gの関係は図のようになります。

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https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v2.full.pdf+html

確認も隔離もされていない感染者の式は上記式I、J、G、を用いて、I0(t):= I(t)-J(t)-G(t)で予測します。

重要なパラメータ、r:成長率、l:隔離率、f2(t):発症率、f4(t):入院率をどのような値をセットして予測するかで当然予測結果は大きく変動しますが、繰り返しますがこの論文の強みは中国9都市の実データを用いて予測精度を挙げたことです。

ではこのモデルで日本の感染者数(未確認者含む)を予測いたしましょう。

予測にはAIや機械学習で最近注目されているPython(パイソンと読みます)でプログラムしてそれを実行して結果をグラフ化してみます。

幸いこちらのサイトでPythonプログラムが公開されていますので利用させていただきましょう。

中国の最新論文の方式で日本のコロナウィルスの感染者数を予測してみた
https://qiita.com/KEN_KEN2/items/a1aae5eb4129e5fbd91f

プログラムで採用した各パラメータは次の通り。

r = 0.3 # 成長率
tl = 15 # 隔離開始日
l1 = 0.1 # 隔離開始日以前の隔離率
l2 = 0.5 # 隔離開始日以降の隔離率
j[0] = 21 # 2020/2/14
i[0] = j[0] * 10
g[0] = 0
# 発症率
t < 14:0.0〜0.2
t>=14:0.2
# 入院率
t < 14:0.0〜0.05
t>=14:0.05

結果のグラフです。

f:id:kibashiri:20200303031554p:plain
Pythonプログラム実行結果のCSVファイルより『木走日記』作成

3月2日現在の予測数値を見てみましょう。

f:id:kibashiri:20200303031613p:plain
Pythonプログラム実行結果のCSVファイルより『木走日記』作成

Jは「確認された感染者の累積数」ですが、423.5564人とあります。

NHKの速報値と比べてみると、980人とあります。

新型コロナウイルス 国内の感染確認980人(クルーズ船含む)
2020年3月2日 23時18分

各地の自治体や厚生労働省によりますと、2日はこれまでに、北海道、神奈川県、新潟県大阪府愛媛県高知県、それにクルーズ船の乗員1人の
合わせて19人の感染が新たに確認されました。

国内で感染が確認された人は、2日午後11時の時点で、
▽日本で感染した人や中国からの旅行者などが260人、
▽クルーズ船の乗客乗員が706人、
チャーター機で帰国した人が14人の合わせて980人となっています。
(後略)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200302/k10012309381000.html

ただし、クルーズ船の乗客乗員が706人とありますので、980人からこれを除くと、国内感染者数274人となります。

予測モデルによれば、3月2日現在、日本における感染者累計は6719.631人と予測しています。

そして8日後の3月10日(グラフの最下行)には、確認済み感染者数が1945名、感染者累計が1万5638名と予測しています。

・・・

・・・

さて3月2日現在の「確認された感染者の累積数」ですが、モデル予測値423.5564人(≒424名)と、実測値274名の差に着目します。

この差を埋めるには、モデル予測値を下げる必要があります、「確認された感染者の累積数」を下げるには、そのひとつの方法として、現在0.05の入院率を下げれば確認する感染者数も下がります、そこで最適解をプログラムで求めて実行した結果、0.05を0.0315に、0.0185ポイント下げると、実測値274名に近い276.8988名が得られました。

この補正を行ったプログラムの実行結果、新しいグラフと3月2日現在の予測数値を見てみましょう。

f:id:kibashiri:20200303045438p:plain
f:id:kibashiri:20200303042640p:plain
Pythonプログラム実行結果のCSVファイルより『木走日記』作成

現実の実測値に合わせてモデルの予測を補正いたしました。

補正前には、8日後の3月10日(グラフの最下行)には、確認済み感染者数が1945名、感染者累計が1万5638名と予測していましたが、補正後は確認済み感染者数が1275名に減少、感染者累計が1万8043名に予測が増加していることが確認できます。(入院率が下がれば、病院で確認できる感染者数は減少し、未確認を含めた感染者累計は逆に増加することになります)

まとめます。

もとのレポートでは、日本の感染者数の予測を(A)〜(H)の8通りの予測をしています。

f:id:kibashiri:20200303061153p:plain
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v2.full.pdf+html

Figure 7の(A),(B),(E)3パターンは、日本における感染爆発を予測しています、指数関数的に増えるグラフに注目してください、
一方、他の(C)(D)(F)(G)(H)の5パターンは、対策を取って収束した場合のピークは3,000 - 20,000人程度 と収束を予測しています。

指数関数的に発散するか、1万人〜2万人前後で収束するのか、現段階で断定はできませんが、この予測モデルでも理解できるのは、現段階が今後の感染者数推移の動向に関して、時系列的に見て大きな分岐点であるだろうことです。

・・・

これはあくまで参考までにご紹介した、中国の数学者らによるモデル予測であり、上記サイトでも明確にうたわれていますが、予測結果を科学的に保証するものではありません。

ただ中国9都市の実データでモデルの精度を高めた上で、日本にモデルを適用している点が興味深かったのです。

本エントリーが読者の皆様の本件に関する考察の一助になれば幸いです。



<ここから訂正 2020.3.3>
プログラムの式に一ヶ所誤りがありました。プログラムを訂正して再予測いたしました。

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f:id:kibashiri:20200303160717p:plain
Pythonプログラム実行結果のCSVファイルより『木走日記』作成

Koku Yoshinaga様
>当方でも確かめてみたのですが(VBA)、微妙に数が合いませんでした。
リンク先のコードを調べてみたのですが、Gの式の2項目を、間違って加算してないですか?

はい、間違って符号がーが+になっていました。訂正して再実行しました。
貴重なご指摘ありがとうございました。


(木走まさみず)