木走日記

場末の時事評論

日本共産党に反論する〜「社会主義」と「専制主義」はとても「無縁」とは思えない

日本共産党中国共産党を強烈批判です。

日本共産党機関紙『しんぶん赤旗』記事から。

香港、周庭氏ら逮捕 志位委員長が抗議 釈放要求
社会主義」と無縁の専制主義

 日本共産党志位和夫委員長は11日、ツイッターで次のコメントを発表しました。

 「香港警察が、香港紙創業者・黎智英(れい・ちえい)氏、民主活動家・周庭氏を『国安法違反容疑』で逮捕したことに、強く抗議する。弾圧の即時中止、釈放を強く要求する」「こうした暴圧は『社会主義』とは全く無縁の専制主義そのものだ。人権抑圧は国際問題であり、国際社会が暴挙を許さない声をあげることを訴える」

 志位氏はさらに「中国指導部は、どんな野蛮な手段で香港の民主勢力を弾圧しても、いずれ世界は忘れるだろうと、タカをくくっているのでしょう。ですから、国際社会はこの民主主義破壊の暴圧を決して許さず、批判し続けなければなりません」と述べました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-08-12/2020081201_02_1.html

まず、香港当局による民主活動家10人に対する逮捕(現在は保釈)という蛮行に国際的非難が沸き上がる中で、日本共産党の堂々の中国指導部批判を、素直に肯定的に評価いたします。

さて気になる一点だけ指摘します。

記事のサブタイトル『「社会主義」と無縁の専制主義』のことです、今一度志位委員長の発言を記事より抜粋。

こうした暴圧は『社会主義』とは全く無縁の専制主義そのものだ。

この発言はいかがなものか。

歴史を紐解けば『社会主義』を目指す共産党政権の一党独裁のその政治手法は、多くの場合専制政治そのものでありました。

古くはソビエト共産党の独裁者ヨシフ・スターリンであります。

スターリンは1930年、ソ連に強制労働収容所管理局「グラーグ」を設立します。

のちに社会主義各国はソ連強制収容所を模倣しましたが、それは極端に劣悪な環境と非人道的な待遇で悪名高いものでした。

1930年から1940年にかけて、飢餓や重労働、非人道的な扱いにより50万人以上が強制収容所で死亡したとされています、中には詩人や芸術家、学者そして研究者が含まれていました。

スターリンの時代には800万人以上が餓死する大飢饉も発生した。1930年代の大粛清は党や政治局、軍隊、中央政府そして地方政府に対する全面的な粛清に発展し、死亡者数は200万人とも言われています。

スターリンがここまで独裁専制政治を実践できたのは、そもそも共産党政権のもつプロレリアタート独裁すなわち政治ライバルのいない共産党一党独裁政治があり、さらに一党独裁を実現する手法として党内の派閥・分派を一切許さない『民主集中制』この制度が、極めて専制主義と親和性を有していたわけです。

スターリン以降も、多くの東欧国家や北朝鮮などで、独裁専制政治が生まれてまいりました、ご承知のとおり、北朝鮮は現在も「専制主義」が進行形であります。

共産党による『民主集中制』は、当然ながら一切の「体制批判」を許しませんから、今の中国のように、デモなどの反体制活動や指導部を批判する反体制報道は許されません、厳しく弾圧を受けます。

以下の北京週報記事は中国における「民主集中制」を自画自賛しております。

民主集中制――中共中央政策決定の根本的制度
http://www.pekinshuho.com/jd90/2011-05/13/content_360509.htm

記事より「民主集中制の長所は数多い」箇所を一部抜粋。

民主集中制の長所は数多い

民主集中制にはどんな長所があるのか。換言すれば、民主集中制にはどんな優位性があるのか。簡単に言えば、民主集中制による政策決定を経て、集団の智恵を集め、勝算を強め、過ちを少なくし、しかも即時に実施できることである。鄧小平氏は「民主集中制もわれわれの優越性である。この種の制度は人民を団結させるのに至便であり、西側の民主に比べて長所が多い。われわれがある決定をすれば、すぐに実施することができる」(鄧小平文選第3巻257頁)と指摘。

鄧小平氏は「西側の民主に比べて長所が多い。われわれがある決定をすれば、すぐに実施することができる」と述べています。

一切の反論は認められないので西側に比べて「決定をすれば、すぐに実施することができる」点は確かに「長所」と言えなくもありません。

しかしこの「一党独裁政治」「民主集中制」を確立する影で、一切の体制批判を許さない弾圧、党内の分派活動を認めない弾圧、共産党政治はどうしても「専制主義」的特徴を保持し具現化してしまうと言えないでしょうか。

日本共産党も「民主集中制」を採用しています。

しんぶん赤旗の記事ではQ/A形式で「民主集中制」の説明を試みています。

日本共産党民主集中制とはどんなもの?
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2009-03-14/2009031412_01faq_0.html

 〈問い〉 日本共産党が組織原則にしている民主集中制はどういうものですか。旧ソ連スターリン時代のやり方とどう違うのですか。(兵庫・一読者)

 〈答え〉 民主集中制は、あくまでも日本共産党の内部の規律です。一般社会に押しつけるものではなく、党員が、党の一員としての自覚にもとづいて自発的に守るべきものです。

共産党も「民主集中制」の評判の悪さはよく承知しています、解答でわざわざ「一般社会に押しつけるものではなく」と一般のみなさんには押し付けませんよと断りをいれています。

・・・

まとめます。

日本共産党中国共産党を強烈に批判した事実は強く肯定評価します。

しかしその批判の中の今回の香港当局による民主活動家逮捕を

社会主義」と無縁の専制主義

この、評価はいただけません。

歴史を紐解けば、理想的「社会主義」を目指す多くの現実の共産党政権はプロレリアタート独裁政治実現のため、悪名高き「民主集中制」による、反体制派弾圧を繰り返してきました。
今回の香港における民主活動家逮捕も、一党独裁中国共産党が体現する「社会主義」の現実、つまり「民主集中制」による排他的独裁「専制主義」ととらえるのが素直な見方でありましょう。
世界の過去と現在の共産党政治を見る限り、「社会主義」と「専制主義」はとても「無縁」とは思えません。



(木走まさみず)