木走日記

場末の時事評論

安倍政権の長期独裁打倒と日本共産党にエールを送る朝日新聞の無自覚なダブスタ

このタイミングで日本共産党第28回大会を社説で取り上げた日本の新聞は、朝日新聞共産党機関誌『しんぶん赤旗』だけであります。

(参考記事)

しんぶん赤旗社説】
第28回党大会
未来を開く展望と力を示した
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-01-19/2020011904_01_1.html

21日付け朝日新聞は、3年ぶり共産党大会を無事に終えた日本共産党に対し「共闘へ さらなる変化を」とエールを送る社説を掲げます。

朝日新聞社説】共産党大会 共闘へ さらなる変化を
2020年1月20日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S14332694.html?iref=editorial_backnumber

冒頭、今回の共産党大会では「安倍政権を打倒して「野党連合政権」の樹立をめざすとの決議を採択」したことに触れます。

 共産党大会が3年ぶりに開かれ、2004年以来となる綱領の一部改定や、安倍政権を打倒して「野党連合政権」の樹立をめざすとの決議を採択した。16年参院選以来の野党共闘をさらに進め、自公政権に代わる選択肢を示す狙いは明らかだ。

安倍政権は「長期政権のおごりや緩みが次々と明らかになるなか」、「政治に緊張感を取り戻すことは喫緊の課題」だとし、野党「共闘の真価が問われる」と檄を飛ばします。

 長期政権のおごりや緩みが次々と明らかになるなか、政治に緊張感を取り戻すことは喫緊の課題である。先の臨時国会共産党は「桜を見る会」の問題を掘り起こし、立憲民主党や国民民主党などによる統一会派と連携して存在感を示した。この勢いを次の衆院選につなげられるか、共闘の真価が問われる。

「連立政権をめざすのであれば、国の根幹にかかわる基本政策をはじめ、幅広い施策のすりあわせは避けて通れない」と釘を刺しつつ、「安倍政権の暴走にブレーキをかけ、日本の民主主義を立て直すという大きな目標」を見失うな、と再び檄を飛ばします。

 選挙協力から、さらに踏み込んで、連立政権をめざすのであれば、国の根幹にかかわる基本政策をはじめ、幅広い施策のすりあわせは避けて通れない。

 と同時に、安倍政権の暴走にブレーキをかけ、日本の民主主義を立て直すという大きな目標を見失ってはいけない。

「まずは小選挙区での協力態勢の構築や共通の公約づくりから、丁寧に合意を積み上げていくのが現実的ではないか」と野党共闘のあり方を提案し、「昨年の高知県知事選で野党各党が共産党系候補をそろって支援したのは象徴的」と、敗れたとはいえ成功事例を挙げています。

 志位氏は閣外協力の可能性に言及したこともある。まずは小選挙区での協力態勢の構築や共通の公約づくりから、丁寧に合意を積み上げていくのが現実的ではないか。

 野党勢力の間では、「非共産」といわれる、共産党を除く協力の枠組みが長く続いた。転機は安倍政権による安保法制の強行で、「1強多弱」への危機感が追い風となった。敗れたとはいえ、昨年の高知県知事選で野党各党が共産党系候補をそろって支援したのは象徴的だ。

社説は、「共闘の実をあげるには、他の野党の歩み寄りも欠かせないが、共産党自身のさらなる変化が求められる」と共産党に変化を注文し、結ばれています。

 一方で、共産党に対しては、党内の異論や少数意見が表に出にくい「民主集中制」への疑問や批判が根強く残る。開かれた党への脱皮は、「非共産」の枠を乗り越えるだけでなく、退潮傾向が続く党勢回復の足がかりにもなろう。共闘の実をあげるには、他の野党の歩み寄りも欠かせないが、共産党自身のさらなる変化が求められる。

うーん、いつもながら安倍政権打倒への情念(怨念?)をむき出しにしている朝日新聞社説であります、そのための日本共産党へのこの熱きエール論説はいかがでしょう。

安倍政権を打倒して「野党連合政権」の樹立をめざす

長期政権のおごりや緩みが次々と明らかになる

安倍政権の暴走にブレーキをかけ、日本の民主主義を立て直す

「長期政権のおごり」「緩み」「暴走」ですか、確かに、安倍政権は在職日数が2019年11月20日で2887日となり、桂太郎氏を抜き単独で憲政史上最長の政権になりました、現在足かけ8年を超えたところです。

朝日の指摘する「おごり」や「緩み」もありましょう、否定するつもりはありません。

ただ、「長期(独裁)政権」に対するその無自覚な「二重基準ダブルスタンダード)」は、どうにかならないでしょうか。

朝日新聞がたたえる日本共産党の委員長(正式名称は日本共産党中央委員会幹部会委員長)の志位和夫氏は、2000年(平成12年)の第22回党大会から不破哲三の後任として党委員長になられて以来、実に就任21年目を迎えんとしています。

今回大会においても志位和夫氏は委員長続投なのであります。

つまり今世紀に入って以来、ずっと志位委員長なのであります。
民主集中制」の共産党においては一度もその歴史に民主的な代表選挙が行われたことはないのです。

さすが「プロレタリア独裁」「民主集中制」の日本共産党であります、ライバルのいない委員長職は安泰なのであります。

10年前に共産党機関紙「しんぶん赤旗」が「日本共産党民主集中制」について、Q/A方式でわかりやすい解説記事を掲載しています。

日本共産党民主集中制とはどんなもの?
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2009-03-14/2009031412_01faq_0.html

記事より。

 〈問い〉 日本共産党が組織原則にしている民主集中制はどういうものですか。旧ソ連スターリン時代のやり方とどう違うのですか。(兵庫・一読者)

 〈答え〉 民主集中制は、あくまでも日本共産党の内部の規律です。一般社会に押しつけるものではなく、党員が、党の一員としての自覚にもとづいて自発的に守るべきものです。

 その基準は党規約(第3条)に明記されています。

 (1) 党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める。

 (2) 決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である。

 (3) すべての指導機関は、選挙によってつくられる。

 (4) 党内に派閥・分派はつくらない。

 (5) 意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。

この説明興味深いですよね、ポイントは(2)と(4)です、「決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である」、「党内に派閥・分派はつくらない」と上部組織の決定に対して誰も逆らってはいけないと上層部に逆らう少数意見は徹底的に排除されるのです。

これが共産党の「民主集中制」という「プロレリアタート独裁」を実現するための「非」民主的制度なのであります。

そもそも共産党支配下の選挙はどうなるか。

北朝鮮や中国の選挙を見れば理解できます、例えば北朝鮮ではどの選挙区にも政府公認の候補が一人立候補するだけ、それをほぼ100%の投票率で信任するわけです、人民には事実上候補者選択の自由はないわけです。

民主集中制」の日本共産党において、党代表たる中央委員会委員長職は、中央委員会という密室で信任が繰り返されているのが事実なのであって、一般党員には候補者を選択する権利はありません。

一般党員は党代表を民主的な制度で選択する権利はないのです。

結果2000年以来、志位委員長の20年に渡る「長期(独裁)政権」がライバルも出現せず安泰なのであります。

この「民主集中制」、一般人に評判が悪いのは共産党側も承知していて、上記赤旗記事でも「あくまでも日本共産党の内部の規律です。一般社会に押しつけるものではなく」と、みなさんには押し付けませんよと強調しています。

民主集中制は、あくまでも日本共産党の内部の規律です。一般社会に押しつけるものではなく、党員が、党の一員としての自覚にもとづいて自発的に守るべきものです。

まとめます。

朝日新聞社説は「長期政権のおごりや緩みが次々と明らかになってきた安倍政権を打倒せよ」と日本共産党に檄を飛ばします。

しかしです。

現在の自民党の規約では3選までですので、安倍4選を実現するためにはまず党規を改正しなければなりません。

仮に党規改正が成したとしても自民党総裁は党員まで参加が認められている広く開かれた総裁選挙でライバル候補を打ち破り当選しなければなりません。

朝日新聞は「強権的な安倍政治」「安倍独裁政権」などと安倍政権を批判いたします。

しかし少なくとも党内民主主義が確立している自民党において、安倍政権はこれまでもですがこれからも広く党員の意思を吸い上げる公正な党内選挙によって「選挙の洗礼」(党内有権者による厳しい審査)を受けるのであります。

「プロレリアタート独裁」「民主集中制」のもと党内民主主義が保証されていない日本共産党、結果ライバルも存在せず今年21年に及ばんとする志位体制こそ、実は共産党内において「独裁政権」的性質を帯びていることは興味深いことです。

安倍長期政権打倒のためよりによって日本共産党にエールを送る朝日新聞、この「長期独裁」に対する無自覚な「二重基準ダブルスタンダード)」は、どうにかならないでしょうか。

読者のみなさんはいかがお考えでしょうか?



(木走まさみず)