木走日記

場末の時事評論

蓮舫二重国籍問題に見る甘すぎる擁護派の論説〜このネットの時代に情緒的な脇の甘い擁護など役には立たない


 さて、民進党蓮舫代表代行が「二重国籍」問題で台湾籍が残っていることを認め、謝罪会見と相成りました。

 本件を受けて、朝日新聞社系のハフポストで蓮舫氏のインタビュー記事が掲載されています。

「ネットの怖さを痛感した」蓮舫氏「二重国籍」騒動を語る 【UPDATE】
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/12/renho-interview_n_11971430.html

 このインタビューで氏は、「ネットの怖さを直接的に痛感して、正直、すごく悲しかった」と述べています。

 インタビューの当該箇所を抜粋。

——「二重国籍」騒動をどう受け止めていますか

うーん。私個人に責めるべき点があるとしたら、自分で防戦をしないといけないし、対応すべきであると思います。ですが、今回の場合は愛する父の否定であったり、あるいは私の双子の息子・娘に直接的な攻撃的な言葉がネットの書き込みにあったものですから。ネットの怖さを直接的に痛感して、正直、すごく悲しかったですね。

——今回批判が寄せられたのは、主にネット上でですか?

そうです。Twitterとか、匿名性の高いSNSです。

 確かに本件はそもそも池田信夫氏主宰のネット言論サイト「アゴラ」の記事がきっかけでありましたし、その後の彼女の過去の発言もネット上で例によって徹底的に検証されてきた経緯があります。

 もちろん、「今回の場合は愛する父の否定であったり、あるいは私の双子の息子・娘に直接的な攻撃的な言葉がネットの書き込みにあった」(蓮舫氏)とありますが、ネット上で一部の行き過ぎた人権を無視したような過激な発言は言語道断、許されることではありません。

 さて、本件においてネット上の一連の蓮舫氏に対する批判に対して、「蓮舫個人は特に悪いことはしてない」、「排外主義的」、「ヘイト」的狭量なイジメ」であるとの、批判が起こっています。

 例えば小林よしのり氏は「蓮舫を叩く弱虫の方が嫌い」と痛烈です。

小林よしのり
2016年09月13日 22:55
蓮舫より蓮舫を叩く弱虫の方が嫌い
http://blogos.com/article/190396/

 「蓮舫は特に悪いことはしてないじゃないか」とご立腹です。

 失礼して当該部分を抜粋。

蓮舫二重国籍問題は、蓮舫個人は特に悪いことは
してないじゃないか。

17歳で日本国籍を取得したことは間違いないし、20歳に
ならないと台湾政府は国籍離脱を申請しても門前払いに
するようだし、蓮舫としてはその後、日本国民として生きてきた
だけじゃないか。

 「「排外主義」の動機で、イジメたいというだけのネトウヨ暴力」と断じます。

蓮舫が意図的に台湾国籍を持っていたわけでもなさそうだし、
ただ民進党の代表になりそうな女性を「排外主義」の動機で、
イジメたいというだけのネトウヨ暴力だろう。

 このような「弱虫根性が大嫌い」と結んでいます。

ただ、常日頃から民進党をバッシングしたいと思っている
連中が、「民進党の女」となると、より一層バッシングしたくなる
という、その根性が気色悪い。
安倍政権という勝ち馬に乗って、弱い方を叩きたくなる
その弱虫根性が大嫌いなのだ。
分からんだろうな、弱虫には。

 また、批判派としては、おおさか維新の足立康史議員が繰り返し、蓮舫氏並びに民進党の対応を批判しております。

蓮舫疑惑の幕の引き方に違和感 ー国益に反する民進党の曖昧戦略−
http://blogos.com/article/190395/

 これに対して擁護派として、深沢明人氏は「こんなものに公党が与するべきではない」と批判しています。

日本維新の会が国会議員の二重国籍禁止法案を検討との報道と足立康史議員のブログ記事を読んで
http://blogos.com/article/190344/?p=2

 「国会議員の出自を暴いていこうということ」ならば「恐ろしいこと」だと批判します、失礼して当該箇所を抜粋。

「今回の騒動を機に、国籍をタブー視する空気を一掃できればと思う」とは、蓮舫氏に限らず、同様に外国の国籍離脱が確認できない国会議員をあげつらっていこうということだろうか。
 帰化したり、外国人をルーツに持つ国会議員の出自を暴いていこうということだろうか。
 恐ろしいことを言うものだと思う。
 こんな人物が、私も選挙人である衆議院比例区近畿ブロック選出の維新議員だったのか。

 「個人の出自を理由に批判するのは良くない。出自は本人の責任ではない」、「外国の国籍離脱は法律で義務づけられていないのだから、蓮舫氏が問題ないと考えていてもおかしくない」と擁護しています。

 政治家としての蓮舫氏や民進党に批判すべき点があるというならそれは批判すればよい。だが、個人の出自を理由に批判するのは良くない。出自は本人の責任ではないからだ。
 外国の国籍離脱は法律で義務づけられていないのだから、蓮舫氏が問題ないと考えていてもおかしくない。にもかかわらず、池田氏や八幡氏はそれを「違法」と称し、ネット上では違法性にとどまらず蓮舫氏の出自それ自体を非難する発言(足立議員が挙げた「“二重スパイ”云々といった非難」とはまさにそういったものだろう)がまかりとおっている。

 こんなものに公党が与するべきではない。

 ・・・

 一連のネットで展開されている蓮舫批判は、これら擁護派のみなさんの意見を私なりに集約すると、『弱虫たちによるところの個人の出自を理由に批判する理不尽な「排外主義的」なその「根性が気色悪い」バッシングである』といったところでしょうか。

 なるほど、「イジメたいというだけのネトウヨ暴力」(小林氏)だというわけですね。 

 ・・・

 ふう。

 本件に関する当ブログの考えるところを述べておきます。

 擁護派は相変わらず「甘い」のですね。

 今起こっていることは、「弱虫どもによる排外的なネトウヨ暴力」では断じてありません。

 ネットで起きている事象を自らの感情にゆだねて表層的に判断することは状況判断を間違えてしまいます。

 ネットという媒体の特性に対して理解できていないことが、このような情緒的な誤った反応を招いてしまっているのかもしれません。

 ひと月前のエントリーでも指摘したことですが、ネットという媒体は善し悪しはともかく、公人たる立場の人物の説明責任の放棄には、極めて不寛容です、決してそれを許すことはありません。

(参考エントリー)

2016-08-13 鳥越さんの「僕は知らない」は、ネットでは全く通用しない
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20160813

 既存マスメディアとは異なり、これまでだったら追求されずに放置されてきたような公人の、無責任と思われる発言や「ごまかし」に対して、不特定多数が情報発信者に成りうるネットというメディアはその特性から、公人の発言を過去にさかのぼり徹底的に検証し始めることになります、トレースをして、真実を追求するわけです。
 その原動力は、公人が放棄した説明責任を補い本当のことを知りたいという知的欲求なのであり、結果「不実はいっさい見逃さない」という徹底した検証作業が発生するわけです、それは外部から見れば当然不寛容なものに見えることでしょう。
 「弱虫」とか「個人の出自を理由に批判するのは良くない」とか情緒的な反論はいかにも「甘すぎる」脆弱な論説です、このネットの時代に情緒的な脇の甘い擁護など役には立たないでしょう。
 かつては許されたであろう公人の自己都合によるあいまいさ(説明責任の放棄)は、もはや見逃されない、ということなのだと思います。
 時代は大きく変わったのです。



(木走まさみず)