木走日記

場末の時事評論

中国の民に真実を伝え覚醒させるべき〜彼らは暴動があったことすら知らされていない

 多くの中国人は、今回の反日デモ日本大使館・領事館への投石行為だけでなく、日系工場や料理店・スーパーに対する投石・放火・器物破壊・商品略奪といった犯罪行為が大規模に発生していたことを、知らされていません。

 メディアは共産党政府により完全にコントロールされているので反日デモは報道されても当然ながら犯罪行為はカットされています。

 中国のネット民たちも中国メディアの報道規制によりこの「事実」を日本からの報道で後追いで知ったようです。

 17日付けサーチナニュース記事は、中国大手検索サイト百度掲示板に「日本メディアが報道した反日デモがスゴイことになっているんだけど」というスレッドが立てられ、日本の報道を写真入りで伝えたことを報じています。

 【中国BBS】中国で報じられない暴徒化した反日デモ、中国の声は
【社会ニュース】 2012/09/17(月) 12:48
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0917&f=national_0917_033.shtml

 記事より抜粋。

 中国では理性的なデモを行うよう呼びかけつつ、報道規制が行われているが、スレ主は、破壊行為の様子について写真入りで紹介し、日本メディアの報道を見て恐ろしくなったと述べたところ、中国のネットユーザーから次のようなコメントが寄せられた。

・「これは3代続く金家の統治下で反米を叫ぶ朝鮮人よりもアホだな」
・「一部の中国人の“高い民度”には本当に吐き気がする」
・「愚かな暴徒、これこそ中国の非劇だ。内部での混乱を日本人がもっとも望んでいることなのに!これが愛国と言えるか?中国人よ、目を覚ましてくれ!」

 暴徒化を非難するコメントが多い中でこれは日本の捏造だと反論する声もあったようです。

 このように、暴徒化したことに対しては非難するコメントが比較的多かった。しかし、スレ主は日本メディアの報道をソースにしているため、「これ中国では見られないんだけど」、「日本の宣伝を信じるのか?」、「この写真は日本人によるでっち上げだろ」といった反論もあった。

 こうしてネットを通じて一部の人たちが暴動の事実に触れたわけですが、すぐにこの暴動を扇動したのは中国語に堪能な日本人留学生によるものだ、彼らは中国の国際イメージを貶めるための日本のスパイだったのだという、とんでもないデマゴギーがネット上で広まります。

 18日付けexciteニュース記事が報じています。

【中国】反日暴動を扇動してるのは日本人2名との情報が拡散
http://www.excite.co.jp/News/net_clm/20120918/Rocketnews24_249148.html

 記事より抜粋。

広州公安が発表したところによると、デマの発端になったのは9月16日ごろに『Weibo』(中国版Twitterのようなもの)に掲載された写真と書き込み。その内容は以下のとおり。
 
「暴動を先導していたのは中国語を学ぶ日本人留学生2名だ。2名は流暢な中国語でデモ隊に混じり、破壊や略奪など不法行為を行っている。その2人に盲目的についていく者もおり、結果、我々同胞に甚大な損失を与えた。元をたどれば日本人スパイの陰謀だったのだ。市民は決して日本人スパイに騙されてはいけない。デモ行進には理性と品位を。正しく日本製品ボイコットしよう。この書き込みを見た人は拡散してください。国民に注意喚起を!」

 もちろんこの情報は完全なる事実無根の捏造であり、ネットで広まった日本人留学生の顔写真が英国人講師殺害事件で逮捕・服役中の市橋達也受刑者のものであるというお粗末なものでした。

 しかしこの情報はネット上ものすごい勢いで拡散していきました、ネット上の発言や情報を厳しく監視している中国当局もさすがにこのデマはまずいと判断したのでしょう、翌日には当の広州警察がデマを完全否定いたします。

反日デモ>広州警察がデマを否定=破壊活動を行なった日本人はおらず―中国メディア
配信日時:2012年9月19日 8時12分
http://www.recordchina.co.jp//group.php?groupid=64772&type=0

 上海在住の中国に詳しい知人と電話で裏取りをしましたが、やはり、例えば彼が在住する上海でも多くの人は、今回の反日デモで日系工場や料理店・スーパーに対する投石・放火・器物破壊・商品略奪といった犯罪行為が大規模に発生していたことを、知らない様子なのだそうです。(彼によると上海のデモはそもそもそれほど激しくはなかったことも要因としてあるかもしれないと補足していましたが)

 多くの中国人が共産党政府の報道統制のもと、真実を知らされていない、あるいは事実が間違って報道されている、この状況で根拠のない悪質な反日的デマが拡がる、いやはやなんともです。

 まったくこの21世紀のインターネットに代表される情報国際化時代に時代はずれの情報統制をしている国家の醜態と言ってもいいでしょう、よその国のことだからと笑って済ませるわけにいかないのがこのやっかいな隣国と隣り合わせである日本の地政学的「悲劇」といってもいいでしょう。

 間違った情報の元で反日デモが「官製」とはいえ、多くの地方出身の貧しい若年労働者が動員されていた事実を考えるとき、我々日本にとしてこの状況はもはや看過できるものではありません。

 ・・・

 今回の中国反日デモで国際外交面では日本にとっては、プラマイゼロ、イーブン(引き分け)であると現在のところ私個人は見立てています。

 プラスの面は、もちろん今回の異常なデモの暴動行為が世界中で報じられ多くの国に中国脅威論が発生、国際的にイメージをそこね孤立化したのは官製デモを行った中国であることです。

 一方日本にとってマイナスだったのは、当然ながら日本が実効支配しており日本国として「領土問題はいっさい存在しない」はずだった尖閣諸島に中国・台湾との間に帰属問題が実質的に存在していることを、改めて全世界が再認識してしまったことです。

 電撃的ともいえる石原都知事の東京都による土地買取方針に野田民主党政権がそれに先んじて地主から国が買い取ることを決め、外交的根回しも不十分なまま、中国国家主席との会談で中国側が反対を表明したその直後、それを実行したことで中国国家主席の面目が丸つぶれといった外交的稚拙さが、今回の「官製」反日デモを招いた一面もあるでしょう。

 それにしても実効支配している尖閣では日本からことを起こす必要は現状ではまったくなかったにも関わらず、中国にきっかけを与えてしまったことは残念に思います。

 野田政権に確たる外交戦略があったとはとても思えません。

 しかし、起きてしまったことはしようがない、状況がこのようなステージに変わってしまった以上、日本は尖閣が歴史上・国際法上まごうことなき我が国固有の領土であることを国際的に宣伝外交活動を強化していく必要があるでしょう。

 もう「尖閣には領土問題は存在しない」とお経のように唱えてればいいステージは終了したと見るべきです。

 これからは徹底的な中国との外交宣伝戦になります。

 本来なら日本の限られた外交資源は不法占拠され韓国に実効支配されている竹島に集中させるべきですが、北方領土問題もありますが、ここは外交戦をうまくこなしていくしかありません。

 そしてこの際、彼の国と我が国の民度の違いを国際的に堂々と示すべきです。

 日本国民は愚かな暴力的デモや在日華人への嫌がらせなどを絶対にしてはなりません。

 まったく違う知的レベルで、すなわち尖閣諸島が日本に帰属するその正確な事実と史実を堂々と海外に発信していけばよろしいのです。

 そもそも日本の領土たる尖閣諸島の領有権について、中国政府及び台湾当局が独自の主張を始めたのは、尖閣周辺に資源があることが判明した1970年代以降です。それ以前には、サンフランシスコ平和条約第3条に基づいて米国の施政権下に置かれた地域に尖閣諸島が含まれている事実に対しても、何ら異議を唱えていません。

 また、中国共産党機関紙『人民日報』でさえ53年の記事で、尖閣諸島が日本国の沖縄に属することを明確に認めています。

【参考:1953年1月8日人民日報記事「琉球諸島における人々の米国占領反対の戦い」】(抜粋・仮訳)

 「琉球諸島は,我が国(注:中国。以下同様。)の台湾東北部及び日本の九州南西部の間の海上に散在しており,尖閣諸島先島諸島大東諸島沖縄諸島,大島諸島,トカラ諸島,大隈諸島の7組の島嶼からなる。それぞれが大小多くの島嶼からなり,合計50以上の名のある島嶼と400あまりの無名の小島からなり,全陸地面積は4,670平方キロである。諸島の中で最大の島は,沖縄諸島における沖縄島(すなわち大琉球島)で,面積は1211平方キロで,その次に大きいのは,大島諸島における奄美大島で,730平方キロである。琉球諸島は,1000キロにわたって連なっており,その内側は我が国の東シナ海(中国語:東海)で,外側は太平洋の公海である。」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html

 残念ながらこれらの事実を多くの中国人は知りません。

 これらの万人が否定不能の事実を海外に堂々と発信していくべきです。

 そして重要なことは、ネット等を通じて政府による情報統制下何も真実を知らない中国の人々に何よりも真実を伝えていくことです。

 国際的にはあらゆる機会を通じて尖閣諸島が日本固有の領土である正当な真実を拡散し外堀を埋め、合わせて今回の反日デモで暴動があったことすら知らされていない多くの中国の人々にネット等を通じて真実を伝えていく、日本政府は無論国際法に則った正当な方法で中国の内側より情報戦を仕掛けるべきです。

 尖閣諸島を巡る外交ステージは大きく変わりました。

 情報戦です。

 日本政府は、アメリカ・オーストラリア等の同盟国の理解と協力をあおぐなり、インドやベトナム・フィリピン・ブルネイなど中国と領土問題を抱えている諸国と連携を深めるなり合法的なあらゆる戦略を検討すべきです。

 そのうえで暴動があったことすら知らされていない多くの中国の人々に真実を伝えるために、中国語のサイトを立ち上げるなりして中国市民に今まで以上に直接情報を発信すべきです。

 もはや中国市民に真実を伝えることに躊躇する必要はありません。

 日本政府は、暴動があったことすら知らされていない中国の民に真実を伝え覚醒させるべきです。



(木走まさみず)