木走日記

場末の時事評論

官房機密費と巨大広告代理店に操られるマスメディア

 内閣官房機密費とは内閣官房長官に一任される年間12億の報償費のことであります。

報償費

報償費(ほうしょうひ)とは、支出の内容を明らかにする必要がなく、機密の用途に充てる費用予算に計上される経費。機密費とも呼ばれる。

内閣官房報償費

内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。内閣官房機密費とも呼ばれる。会計処理は内閣総務官が所掌(閣議決定などに基づく各本部等については当該事務局が分掌)する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されている。原則、使途が公開されることはない。1947年度から予算計上されるようになった[1]。2002年度予算で前年を10%下回る14億6165万円になって以来、2009年現在まで同額が毎年計上されている。そのうち12億3021万円が内閣官房長官に一任され、残りは内閣情報調査室の費用にあてられている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E9%96%A3%E5%AE%98%E6%88%BF%E5%A0%B1%E5%84%9F%E8%B2%BB

 内閣官房機密費でありますが、官房長官に一任される額は年間12億、月1億でありまして、支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されているのでその使途は不明であり野党時代の民主党は、機密費流用防止法案を国会に提出するなど、機密費の公開を時の政権に求めていたのに、いざ政権に就くと「オープンにしていくことは考えていない」として公開しないことになったいわく付きの予算であります。

 官房機密費といえば自民党政権時代のその使途を一昨年4月に野中広務官房長官がTV報道で暴露したことは記憶に新しいわけですが、TBS公式サイトには今でも当時の報道動画を確認することができます。

シリーズ官房機密費(1)「野中元長官が語る機密費の真実」2010年4月19日(月)

外交などの情報収集などを目的とした内容が公開されることのない機密費、毎年14億6千万円が計上されている。しかし非公開ゆえに国会対策など、本来の目的とは別の用途に流用されているのではとの疑惑がささやかれてきた。

かつて小渕内閣官房長官を務めた野中広務氏がNEWS23クロスの独占インタビューに答え、その実態を初めて証言した。
http://www.tbs.co.jp/news23x/feature/f201004190000.html

 官邸の金庫から毎月、首相に1000万円、衆院国対委員長参院幹事長にそれぞれ500万円、首相経験者には盆暮れに100万円ずつ渡していたといい、さらには衆参の国対関係者に野党工作として機密費を渡していたといいますから、このお金が野党にも及んでいたことになります。

 で、マスメディア対策にも使用されていたことが明らかになり、TVの政治評論家で当時「毒饅頭」を食らったのは誰だ的な騒動になったわけですが、「世論操作のため複数の政治評論家にもカネをばらまいた」という事実であります、「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。持って行って断られたのは、田原総一朗さんただ1人」と生々しく発言しているわけでありますが、ここで大手広告代理店が絡んでくるところがこの話のミソなのであります。

 内閣官房は巨大広告代理店と正規の広報コンサル契約を結びます、その費用を機密費から捻出、マスメディア工作を代理店に一任する手法は、政府からダイレクトに「毒饅頭」を渡すよりも効果的なわけですね、一種のマネーロンダリングというやつです。

 図にすると以下のとおり。

 こんな巨大広告代理店を使って偏向報道に機密費を利用するなんてことまさか民主党政権はしないよねと思っていたら、週刊ポスト最新号(9月2日号)でスクープ記事が出ました。

民主党次期代表 広告代理店に意見求め野田佳彦氏の案出る
2011.08.19 07:00

新聞・テレビの報道によると、野田佳彦財務相という目立たない政治家が次期首相最有力で、民主党代表選の焦点は自公との「大連立」だそうだ。だが、見逃してはならないのは、この反国民政権の“火事場泥棒”である。
内閣が代わる際、常に話題に上るのが官房機密費の処理だ。機密費は毎月1億円ずつ現金で官邸の金庫に収められ、内閣交代時には、官房長官が使い切り、金庫を空にして出ていくのが政界の不文律だ。
昨年秋の代表選では、現職総理の菅陣営が多額の機密費を流用して多数派工作やメディア工作を展開したことを以前本誌は報じた。
今回の代表選でも同様に“軍資金”が飛び交っている。現在、官房機密費を握っているのは党内で野田氏と同盟を組む枝野幸男官房長官仙谷由人官房副長官凌雲会前原グループ)である。
菅首相が退陣を明言してからほどなく、民主党の広報戦略にかかわる広告代理店関係者に、官邸スタッフの一人から連絡が入ったという。
菅総理が辞める前に、いまある機密費を使い切りたい。こちらに有利な世論を喚起できるようないいアイデアを出して欲しい」
機密費の支出権を持つ枝野長官ら官邸中枢が、自分たちに都合がいい新首相をつくるため、メディア工作に機密費を投入する相談だったというのである。
それと軌を一にして、大新聞には連日、「野田本命」の記事が躍り始めた。代表選から小沢氏を排除せよという論調には、ますますエンジンがかかった。
〈菅、小沢両氏に鳩山由紀夫前首相のトロイカは今回、行動を慎むべきだ〉(11日朝日社説)
〈近く刑事裁判の被告席に座る小沢が、新首相決定の主導権を握るとすれば、異常なことである〉(13日毎日『近聞遠見』)
―昨年秋の代表選そっくりの脱小沢キャンペーンが繰り返されている。
その結果、今回の民主党代表選は、「総理大臣を野党が選ぶ――という議院内閣制を逸脱した前代未聞の手続きで進められようとしている。
“本命”の野田氏は自民、公明に「救国連立」を呼びかけた。大メディアも、〈自民、公明両党は民主党代表選候補の政策や公約を見極め、どの候補なら連携できるのか、表明することを検討してはどうか〉(12日読売社説)と、野党が与党の党首を“逆指名”することを提案してバックアップしている。

週刊ポスト2011年9月2日号
http://www.news-postseven.com/archives/20110819_28940.html

 なんでしょうか、このポスト記事の内容が真実とすれば、巨大広告代理店を利用してメディア工作に機密費を投入って、自民党時代のやり方そのものではないですか。

 官房機密費と巨大広告代理店に操られるマスメディアなのであります。

 ふう。

 民主党政権もダメダメですが、一番情けないのはこの国のマスメディアであります。

 政治権力に批判的に対峙するべきジャーナリズムは欧米では「第四の権力」と呼ばれるわけですが、権力にこうも癒着していて、なおかつこうも広告代理店の圧力に弱くては、日本のマスメディアはジャーナリズムを放棄しているとしかいえません。

 クロスオーナシップの禁止、電波自由化、抜本的なマスメディア改革が必要なのだと思います。



(木走まさみず)