木走日記

場末の時事評論

非常に迷惑な石原都知事「花見は自粛を」発言〜精神論振りかざしてどうするの?

 29日付け時事通信記事から。

花見は自粛を=被災者に配慮必要−石原都知事

 東京都の石原慎太郎知事は29日の記者会見で、東日本大震災に関連し、「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃない」と述べ、被災者に配慮して今春の花見は自粛すべきだとの考えを示した。
 石原知事は「今ごろ、花見じゃない。同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感が出来てくる」と指摘。さらに「(太平洋)戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」とも語った。
 都は既に、花見の名所となっている一部の都立公園について、節電などのため入園者に宴会自粛を呼び掛けている。(2011/03/29-19:12)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011032900919

 「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃない」 

 「今ごろ、花見じゃない。同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感が出来てくる」

 「(太平洋)戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」

 どうしてこうも些細な物事に「戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」などと石原流の余計な一言を付けて世論を煽るのでしょうか。

 この震災による「計画停電」のもとで、私は花見などお上が自粛を呼びかける性質のモノじゃないと思っていますが、大勢の人々が例年のように夜桜の下で宴会をして酔っぱらう図はみっともないとは思います、ですから都が提灯を用意しないのは賛成です。

 仮設トイレも被災地に送って在庫無しなわけですしね。

 もっとも国民の心象からいっても「計画停電」による帰りの足(あし)の問題もありますから例年みたいにたくさんの人が花見で宴会する事はかんがえにくかったですけどね、仮に都の呼びかけがなくてもです。

 だけどです、今時花見をするやつは「非国民」だ、同胞の痛みを分かち合え、連帯しろ、みんな自分を抑えていた太平洋戦争の時を思い出せ、戦時の日本人の連帯感は美しかったじゃないか、こんな調子で上から目線で石原さんに言われると、戦時下でちょっとスカートをはいていた女性が「おい、そこの非国民。この非常時に何をこじゃれた服装をしているのか。国難に対し精神がなっとらん」と憲兵に怒鳴られてあわててモンペをはかされたそうですが、なんかなあ、そんな感じのイヤーな感覚になっちゃうわけですよ、もとは些細な話なのに。

 なんでたかが花見の自粛がこうも全体主義的解釈に発展してしまうのか、私には理解できません。

 私も別な理由で上野公園等例年のどんちゃん騒ぎには反対なので、非常に迷惑な石原発言であります。

 ・・・

 3.11から20日がたとうとしています。

 今もって東北の被災地では被災された方々の支援活動やインフラの復旧活動が急がれていますし、死者・行方不明者の総数が3万にとどかんとしている戦後最大の厄災であり福島第一原発の4つの炉の状態も安定冷却にはほど遠く、まったく予断を許さない状態が続いています。

 首都圏では電力不足のもとで「計画停電」が実施されており、国全体が「自粛」ムードに覆われています。

 被災地救援と原発事故対処を急がなければならないのはそのとおりですが、ボランティアに参加するなど個人的に支援活動をしたり、義捐金に募金したり各人で可能なことから参加するのは大いにすればよろしいとしたうえで、被災地以外の国民が今貢献できることは何か、それは震災前と同様に、一生懸命働きそして一生懸命消費することです。

 経済を萎縮させないために、物、人、金を流動させることこそが、結果的に日本の復興に繋がると考えます。

 必要以上の「自粛」ムードの蔓延は、国の経済を萎縮しかねないと、私は考えています。

 28日付け読売新聞記事から。

花見で宴会、都の公園「自粛を」…区は制限せず

 東京都内で28日、桜の開花が宣言された。

 東日本巨大地震を受け、都が管理する公園が花見宴会の自粛を求める一方、区や国営の公園は例年通り制限はしない方針で、対応が分かれている。

 桜が咲き始めた上野公園では同日夕、花見客がシートを広げ、桜の木を見上げていた。公園には宴会自粛を呼びかける看板が立つ。ホームページなどでも自粛を呼びかけており、例年設置しているゴミ置き場や簡易トイレを置かず、夜間の点灯も行わない。

 花見に訪れた足立区の大学生時田茂さん(21)は、友人2人とお茶で乾杯し、「酒を飲んで騒ぐ気にはならない」と話した。一方、近くの金融機関に勤める男性(34)は、今週末に同僚と花見宴会を予定していたといい、「自粛の呼びかけは知らなかった。何でも自粛することが被災地のためになるのか」と、釈然としない様子だった。

 井の頭公園も23日に看板を設置し、都西部公園緑地事務所は「苦情はなく、逆に『もう少し厳しくやっては』と禁止を促す声があった」と話す。

 一方、区立や国営の公園は静観する構えだ。飛鳥山公園を管理する北区は「24時間自由に使えるのが公園。行動を制限するつもりはない」とし、隅田公園を所管する台東区も「自粛も検討課題に挙がったが、現時点で予定はない」とする。環境省所管の新宿御苑(新宿区)と国土交通省所管の昭和記念公園立川市)は、開園時間が日中ということもあり、例年と同じ対応をするという。

 都公園課は「節電や交通機関の運休も相次いでおり、大勢が集まるイベントは自粛してもらっている」としている。

(2011年3月29日08時23分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110328-OYT1T01203.htm

 桜の開花が宣言された東京なわけですが、東京都が都が管理する公園の花見宴会の自粛を求める方針をだし、上野公園でも「例年設置しているゴミ置き場や簡易トイレを置かず、夜間の点灯も行わない」そうであります。

 私はこの方針には賛成です。

 理由は明快です、井の頭公園などの話を総合すれば、仮設トイレは被災地に送っており例年のように設置ができないことを考えれば、大量の酔っぱらいの糞尿に対処できないわけですし、ゴミの処理などで自治体に負荷を掛けることは今はマイナスであると考えます、それぞれの自治体は職員を被災地に派遣したりして救済支援をしているからです。

 石原氏がいう「すべきじゃない」という精神論ではなく、衛生上と自治体負荷軽減という極めて明確な理由からです。

 なんでも「自粛」「自粛」という風潮は経済が萎縮してしまってそれこそ復興のさまたげになるとは思いますが、今年に限っては花見、とくに夜の「宴会」は自粛したほうがいいでしょう。

 「すべきじゃない」からではなくて仮設トイレが用意できない等の物理的要因によって大勢の人が例年通り「宴会」をすると衛生上の問題もありゴミの処理の問題があるから今年は自粛しましょう、ということです。

 みんなでお酒を飲みたい人達はできれば地元のお店にいってお金を落として上げて下さい。

 飲食店はこの自粛ムードでどこも売り上げが落ちていますので。

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 日本は民主主義国であって北朝鮮のような全体主義国ではないのですから、「すべきじゃない」などの精神論は政治家はあまり振り回さない方がいいと思います。



(木走まさみず)