木走日記

場末の時事評論

参院外交防衛委員会で首相にカップラーメンの値段を問う民主党の愚策

 朝日新聞電子版記事から。

首相、カップめんは「400円くらい?」 委員会で答弁

カップラーメンが1個400円?麻生首相の28日の参院外交防衛委員会での答弁が、出席議員らの苦笑を誘った。連夜のようなホテルのバー通いに批判も出ている首相。庶民の金銭感覚とのギャップを感じさせた。

 食品高騰問題を取り上げた牧山弘恵氏(民主)がカップラーメンの値段を質問したのに対し、首相は「最初に日清(食品)が出した時、えらい安いなーと思ったが、あの時何十円か。いま400円くらいします?」と答弁。

 牧山氏によれば、相次ぐ値上げがあったとはいえ、現在の価格は約170円。答弁に対する議員らの反応で首相もズレに気がついたようで、「そんなにしない? 私、最近自分で買ったことないので」と釈明した。

http://www.asahi.com/politics/update/1028/TKY200810280356.html

 そうですか、カップ麺って今170円なんですか、最近買ってなかったので120円ぐらいの感覚でいましたが、ここ一年でずいぶん値上がりしたのですね。

 で、麻生首相の答弁「400円くらい?」ですが、チャーシューとか具とか凝っている高級品でそのあたりの価格帯のもありましたよね、スーパーとかコンビニで普通に売ってませんでしたっけ。

 「そんなにしない? 私、最近自分で買ったことないので」と釈明した麻生首相だそうですが、うんうん、一国の総理大臣たる者、庶民の嗜好にも敏感であるべきで、カップ麺の最新の価格とか、朝ダイエットで微妙に値上がったバナナの価格とか、夕刊フジ日刊ゲンダイが同じこの10月1日に談合して、120円から130円に同時同額の値上げをなかよくしてサラリーマン愛読者達の大顰蹙(ひんしゅく)を買っているとか、しっかり学習して下さいね、っと。

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 アホか・・・

 何で一国の総理大臣が、しかも国権最高機関立法府である国会に置いて、それもこの国の外交と国防という政策の要を論じ合うべき外交防衛委員会という場所で、カップラーメンの値段などを問われなければいけないんですか?

 カップラーメンの値段を総理が知らないことがどうこの国の外交や防衛政策に影響があるというのでしょうか?

 こんな質問するから民主党はダメなんです(キッパリ

 生まれたときからセレブの我らが麻生首相が、カップ麺を買ったことがなかったって、スーパーの視察の後で高級ホテルでディナーとったって、そんなことはどうでもいいんであって、重要なことはこの国の国政をどう司るのか、外交防衛委員会であるならばその方面で、彼の政策を厳しく精査・チェックするのが野党第一党たる民主党のつとめでしょ。
 私は、小麦やとうもろこしの輸入原価の急騰に伴う食品高騰問題を取り上げるのは、ひとつの外交問題でもあり、値上がり急なカップ麺の価格も含めてまじめに麻生政権の政策姿勢を正すことは野党としてその意義を認めるものであります。

 でもこんな嫌みな切り口ではダメダメでしょう。

 メディアでも、揚げ足取りだけの部分が愚問としておもしろおかしく取り上げられているわけです。

 個別の食料品のましてやカップラーメンの今の価格を60過ぎのセレブオヤジ麻生さんが知るわけはないのだし、TVで見ても、なんだか間の抜けたやりとりでしたよね。

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 かねがねどうも日本の国会の論議って中身が薄いような気がしていますが、ただでさえ休会や空転が多く会期が短いのにその上で密度まで薄いとなるとこれはこれで困ったモノであります。

 話は少しづれますが、日本の国会の維持費といいますか国会議員一人当たりの経費ってけっこうお金が掛かっているのですよね。

 ちょっと古い昨年の毎日新聞記事から(たぶんリンクは切れてますが)

国会議員 1人当たり経費3億1078万円なり 政府試算
11月10日9時57分配信 毎日新聞

 政府は9日、国会議員(衆院議員480人、参院議員242人)1人当たり07年度予算で3億1078万円の経費がかかっているとの試算を明らかにした。参院選という「臨時出費」で例年より増えた可能性はあるが、センセイ1人の活動を支えるために議員歳費(約2200万円)の約14倍の国費が必要となる計算だ。果たしてこれは高いのか、妥当なのか−−。

 藤末健三参院議員(民主)の質問主意書に答えた。答弁書財務省によると、議員歳費や秘書給与、議会事務局職員の人件費などを含め衆院の経費が約654億円、参院が約420億円。これに参院選関係費約580億円▽政党助成費約321億円▽議員の活動を補佐する国立国会図書館約229億円−−などを加えた予算総額は2243億8723万円となった。

 国立国会図書館政治議会調査課が05年10月に行った調査によると、日本の議員歳費(約2229万円)は米国(約1779万円)や英国下院(約1176万円)に比べて高い。ただ、米国下院の場合、職務手当と秘書雇用手当の合計額は1億2000万円を超え、日本(約3800万円)を大幅に上回っている。

 質問主意書で藤末氏が「財政再建のためには立法府の支出削減も不可欠だ」と政府の見解を求めたのに対し、政府は「08年度予算についても、国会所管の予算を含め歳出全般にわたり聖域なく見直しに取り組む」と答弁した。議員定数削減については「各党・各会派で議論いただくべきだ」と述べた。

 岩井奉信日本大教授(政治学)は「民主主義にはある程度のコストがかかる。日本は欧州に比べて人口当たりの議員数が少ない。費用が高いから議員を減らせというのは本質論から外れている」と一定の理解を示したうえで、「問題なのは、日本の国会は開会日数が少なく閉鎖的で空転も多い。議員には、議会のチェック機能を強化し、国民の納得を得る努力をしてほしい」と注文を付けている。【坂口裕彦】

最終更新:11月10日9時57分

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071110k0000m010116000c.html

 政府試算によれば1人当たり年間経費3億1078万円だそうであります。

 記事中で岩井奉信日本大教授(政治学)が指摘しているように「問題なのは、日本の国会は開会日数が少なく閉鎖的で空転も多い」ことであり、だからこそ「議員には、議会のチェック機能を強化し、国民の納得を得る努力」をすべき、と指摘されていますが、まさに正論であります。

 ただでさえ少ない貴重な国会質疑の時間は一分一秒無駄にしていただきたくないものであります。

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 麻生首相がいかに庶民感覚からかけ離れた生活をしているのか、例の北海道新聞の記者の高級ホテルのバーの値段についての質問で麻生首相が「決して高くはない」と失言したことを受けての、おそらくこのカップラーメンの値段質問なんでしょうが、意図はわからんでもないのです。

 しかしながら、どうにも狙いが見え透いていて、すこしばかりヒッカケがみえみえであり、民主党にとり逆効果でしょうね。

 どうみても値段を知らなかった麻生さんよりも質問者の陰湿さのほうが私などには鼻についてしまいますもの。

 ましてや外交防衛委員会は、参議院常任委員会の一つで、外交方針や外交政策、安全保障に関する事項を議論する重要な委員会であります。

 食品高騰問題も立派な外交問題であると理屈付けたとしても、こんな揚げ足取りだけの愚問ばかりメディアで取り上げられては、こんな下らないことで貴重な国会の時間を費やすな、という反論がネット上でも多く上がっています。

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 国会議員にはその経費に見合う国民の納得を得る仕事をしてほしいです。

 民主党よ、しっかりして下さい。



(木走まさみず)