木走日記

場末の時事評論

日本の中小企業を救え!〜民主党は党利党略で審議遅延をするな!!

●中小・小規模企業等企業活力向上、金融対策

 読売新聞電子版記事から。

首相、追加景気対策を発表…年内の衆院選は見送りに

 麻生首相は30日夕、首相官邸で記者会見し、世界的な金融危機に対応するため、総事業規模26兆9000億円の追加景気対策を発表、景気対策優先の立場から、衆院解散を先送りすることを事実上、表明した。

 経済状況次第で、3年後に消費税率の引き上げを行う考えも示した。記者会見に先立つ公明党の太田代表との党首会談で、首相はこうした方針に関して了解をとりつけた。年内投票の衆院選は見送られる見通しとなった。

(後略)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081030-OYT1T00551.htm

 総事業規模26兆9000億円の追加景気対策の中身ですが、官邸発表のPDFファイルから。

平成20年10月30日
「生活対策」 −国民の経済対策の概要−

1.生活者対策
1.定額減税等(給付金方式) 2兆円
2.介護・子育て
・ 介護報酬 月2万円アップ・介護人材を10万人確保
・ 3歳未満児の保育サービス利用率5割増
・ 第二子から、年間3.6万円の「子育て応援特別手当」
・ 妊婦健診の無料化(14回分)
3.雇用
雇用保険料を大幅引下げ (標準世帯で年約2万円還元[21年度])
・ 雇用強化対策
- 年長フリーター正規雇用を奨励
- 新規雇用を創出(地場産品販売、高齢サービスなど)
4.住宅ローン減税等
・ 過去最大級(控除可能額)の住宅ローン減税、リフォーム減税
・ 省エネビル建設などに容積率緩和
5.電気・ガス料金の引上げ幅圧縮・平準化の要請

2.中小・小規模企業等企業活力向上、金融対策
1.資金繰り対策 総額30兆円のセーフティネット
・ 緊急信用保証 6兆円→20兆円に拡大
・ 政府系金融緊急融資 3兆円→10兆円に拡大
2.成長力強化税制
・ 新エネ・省エネ投資の即時全額償却
・ 中小企業法人税引下げ
・ 海外所得(17兆円)の国内への還流促進
3.金融機関への資本参加枠(現行2兆円)の拡大
4.株式配当等について軽減税率を延長

3.地方
1.高速道路料金引き下げ
・ 「休日はどこまで行っても1,000円」、「平日昼間も3割引」
2.道路特定財源一般財源化に際し、1兆円を地方に
3.「地域活性化交付金」で、きめ細かな地域のインフラ整備

4.財源及び財政の中期プログラム
1.対策の財源は、赤字国債なし。特別会計積立金等を活用。
2.中期プログラムの基本骨格
・ 3年以内の景気回復期中は減税等を時限的に実施。
・ 経済状況好転後に、財政規律、安心な社会保障のため、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始。2010年代半ばまで段階的に実行。
・ 本年末に、税制全体について「抜本改革の全体像」を提示。

以 上

http://www.kantei.go.jp/jp/asophoto/2008/10/081030taisaku.pdf

 一部に『定額減税等(給付金方式) 2兆円』などが効果の薄いバラマキじゃないのかといった批判もあるようですが、総論はともかく、当ブログとしては、私自身も深く関わっている中小企業対策に絞って議論したいと思います。

2.中小・小規模企業等企業活力向上、金融対策
1.資金繰り対策 総額30兆円のセーフティネット
・ 緊急信用保証 6兆円→20兆円に拡大
・ 政府系金融緊急融資 3兆円→10兆円に拡大
2.成長力強化税制
・ 新エネ・省エネ投資の即時全額償却
・ 中小企業法人税引下げ
・ 海外所得(17兆円)の国内への還流促進
3.金融機関への資本参加枠(現行2兆円)の拡大
4.株式配当等について軽減税率を延長

 この部分について麻生首相の会見コメントを官邸公式サイトより抜粋いたしましょう。

麻生内閣総理大臣記者会見

平成20年10月30日

(前略)

第二に、中小企業・金融対策であります。

  これから年末にかけて、中小企業の資金繰りは苦しくなります。第一次補正で、緊急信用保証枠を6兆円としましたが、その後の国際金融情勢が、より厳しいものとなっております。中小企業、小規模企業の資金繰りをより万全なものとするために、私の指示で20兆円までこの枠を拡大します。
また、政府系金融のいわゆる緊急融資枠を、3兆円と前回しましたが、これを10兆円まで拡大します。合わせて約30兆円の対策となります。

  省エネ・新エネ設備を導入した場合に、即時償却、すなわち初年度に全額償却できるようにします。
金融対策につきましては、金融機関への資本参加枠の拡大を行わせていただきます。株式に対する配当課税など、現行10%しております軽減税率を延長させていただきます。

(後略)

http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2008/10/30message.html

 基本的に総額30兆円の緊急信用保証枠拡大と政府系金融の緊急融資枠拡大ですが、施策としては歓迎いたします。

 しかし問題はその実施時期であります。

 首相は「年末にかけて、中小企業の資金繰りは苦しくなり」とおっしゃっていますが、私が知る限り、事態はもっと悪化しているのでありこのままでは資金繰りが年末までもたない企業が続出する事態が発生する可能性が大なのであります。

 中小零細企業への支援は一日を急ぎ実施すべきであり、ことは急を要するのです。

 ・・・

 で、今回の融資枠拡大の詳細ですが以下の記事が詳しいです。

 フジサンケイビジネスiの記事から。

年末の資金繰り支援拡充
2008/10/31

(前略)

≪中小企業対策≫

 中小企業が民間金融機関から融資を受ける際に、全国52の信用保証協会が元利金の返済を保証する枠を拡大した。政府系金融機関の貸し付けと合わせて、前回の補正予算で設定した9兆円から30兆円への大幅な拡充となった。

 支援を受けられる業種は従来の185業種から、すでに545業種に広がっており、企業数で全体の6割以上が利用できるようになっている。通常の保証枠とは別に2億8000万円(うち無担保で8000万円)の融資まで保証する。

 経済産業省が発表した7〜9月の鉱工業生産指数は、前期比1.2%マイナスで、3四半期連続で下落した。同省は基調判断を「緩やかな低下傾向」と下方修正した。一方で、金融市場の混乱が続く中、財務体質の健全性維持を図りたい民間金融機関の融資姿勢は厳しい。

 中小企業庁金融庁が今月上旬から全国150カ所で実施している中小企業経営者からの聞き取り調査でも、不安は高まっている。倒産件数は増加傾向にあり、資金需要が高まる年末を控え思い切った支援拡充が必要と判断した。

(後略)

http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200810310077a.nwc

 「通常の保証枠とは別に2億8000万円(うち無担保で8000万円)の融資まで保証する」とは、ありがたい話であり多くの企業がこの融資を受けることができれば、苦しい資金繰り状態からひとまず一服することができることでしょう。

 しかし、問題はその実施タイミングと、メガバンクをはじめとした金融機関の姿勢にあります。

 ・・・



貸し渋りに中小企業悲鳴

 私は自身も零細IT企業を経営しておりますし、いくつかの中小企業の経営コンサルもさせていただいてます関係で、中小企業が置かれている厳しい現状をリアルに見聞きしております。

 中小企業の業況は昨年春以降、「危機的状況」(日本商工会議所の岡村正会頭)にあり、特にメガバンク等による貸し渋り貸しはがしによる影響が深刻さを増しているのです。

 産経新聞記事から抜粋。

貸し渋りに中小企業悲鳴 全銀協が積極融資方針

(前略)

 日本屈指の中小企業の集積地、東京都大田区。軒を連ねる町工場には、シャッターが閉ざしたままの建屋も目につく。金型製造の町工場を営む社長は「(運転資金をまかなう)つなぎ融資が受けられないとの話をよく聞く。昨年夏から同業者の自己破産も目立ってきた」と打ち明ける。

 日本商工会議所の「早期景気観測調査」(9月分)によると、経営状況が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いた全産業の業況DIは、前月から2・4ポイント悪化しマイナス61.2と、平成14年2月以来最悪の水準。資金繰りDIもマイナス37.9と低水準だった。

 大阪府内の中小企業団体9団体は21日、橋下徹大阪府知事と懇談。繊維関連の中小企業で組織する大阪船場繊維卸商団地協同組合の尾池良行理事長は「地方銀行メガバンクも『中小企業にはリスクが高すぎて貸せない』という。融資をするよういってほしい」と要望した。また、大阪府トラック協会の吉田正則理事も「銀行に融資を願い出ても拒否される例が相次いでいる」と窮状を訴えた。

 
 大阪の中小企業ではすでに「卸業などで、黒字倒産の話が出ている」(中小企業幹部)など、金融機関の融資姿勢が中小企業の命運を握る状況。大阪府にある食品会社の財務担当者は「全銀協が融資積極化の姿勢を打ち出しても、個別の金融機関は『総論賛成、各論反対』となる。今後もシビア(厳格)な対応が予想される」と先行きの不安をぬぐえない。

 こうした状況を踏まえ、岡村会頭は21日、麻生太郎首相との会談で、改めて中小企業への金融支援を要請。麻生首相も「資金繰りについて、今以上の支援策を考えたい」と述べた。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081021/biz0810212209006-n1.htm

「(運転資金をまかなう)つなぎ融資が受けられないとの話をよく聞く。昨年夏から同業者の自己破産も目立ってきた」(東京都大田区・金型製造町工場社長)

地方銀行メガバンクも『中小企業にはリスクが高すぎて貸せない』という。融資をするよういってほしい」(大阪船場繊維卸商団地協同組合の尾池良行理事長)

「銀行に融資を願い出ても拒否される例が相次いでいる」(大阪府トラック協会の吉田正則理事)

「卸業などで、黒字倒産の話が出ている」(大阪府・中小企業幹部)

全銀協が融資積極化の姿勢を打ち出しても、個別の金融機関は『総論賛成、各論反対』となる。今後もシビア(厳格)な対応が予想される」(大阪府・食品会社財務担当者)

 これらの悲痛な声は決して例外なのではなく、私のクライアントの中でも黒字にも関わらず、融資が受けられず経営危機に陥ってしまっている会社が複数あります。

 守秘義務もあり具体的な内容は控えますが、実際にメガバンクなどは、対中小企業に対しては、赤字転落した会社ではなく黒字会社をターゲットにして貸し渋り貸しはがしをしていることが多いのです。

 なぜか?

 赤字会社を貸しはがし不良債権化してしまうより取れるところから回収したほうがリスクが少ないからです。

 黒字会社から貸し剥がされている実態を産経記事から。

「このままでは年越せぬ」…メガバンク非情貸しはがし
10/23 03:30更新

 金融不安が深まるなか、メガバンクの非情な「貸しはがし」が加速している。特にターゲットになっているのは、返済余力がある黒字の中小企業。今のうちに取れるところから取ってしまえとばかりに、融資の一括返済などを迫っている。専門家は「このままでは、12月15日から20日ごろにかけて、不渡りを出す中小企業が続出することになる」と警告する。

 貸しはがしとは、金融機関が融資先企業に対し、返済期限がまだ来ていないのに融資の返済を迫ったり、融資条件の変更を求めたりすることなどをいう。

 業界団体の全国銀行協会は21日、政府・与党の意向を受けて中小企業への積極融資を申し合わせたが、産業界は「申し合わせはまったくの茶番劇。言っていることと、やっていることが違う」(中小企業経営者)とあきれ返っている。

 中小企業の再生やコンサルティング業務を手掛けるセントラル総合研究所の八木宏之代表は、「最近になって、経営状態のいい会社への貸しはがしが顕著に増えている」と明かす。

 例えば、黒字経営で余剰資金もたまっているアパレル関係の企業は、あるメガバンクから5000万円の融資を受けていた。5年で返済する予定だったのが、「約定(契約時に取り決めた返済などの条件)を切るから一括で返してほしい」と迫られたという。

 また、ある飲食店は、メガバンクから融資契約の変更を迫られ、3億円の融資を3年で返すところを2年に短縮せざるを得なくなったという。

 中小企業の駆け込み寺的存在のセントラル総研では最近、貸しはがし問題などで企業からの相談が急増。通常、新規顧客は月40〜60件ほどだが、9月末から10月10日までの約10日間で32件も相談があったという。

 9月15日に米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻しており、その余波で金融不安や景気の先行き不安が深まり、貸しはがしの動きが活発化したとみられる。

 不良債権処理を終え、欧米の金融機関と比べても経営体力があるはずの日本のメガバンクだが、危機感は強いようだ。

 貸しはがしの特徴について、八木氏は「2000年代前半のデフレ不況を乗り越えた、体力のある企業が貸しはがしに遭っている。4期連続黒字の企業や業界で上位10社に入る企業も含まれている」と指摘。「赤字企業には触らず、黒字で現金を持っている企業から回収している」という。

 中小企業は金融機関から融資を受けて原材料などを購入、製品を販売して得たお金を融資返済に回す−というサイクルを繰り返す。貸しはがしをやられると、「経営自体が順調でも資金繰りが厳しくなり、黒字倒産の危険性が高まる」(八木氏)という。

 「このままでは危ない企業は年を越せない。12月15日から20日ごろにかけて不渡りを出す中小企業が続出することになる」と八木氏は警鐘を鳴らす。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/other/189188/

 この記事にあるとおり、多くの中小企業が「経営自体が順調でも資金繰りが厳しくなり、黒字倒産の危険性が高まる」など、異常な事態に追い込まれているのです。

 ・・・



●日本の中小企業を救え!〜民主党は建設的に審議をし、早急に予算を通過させていただきたい

 今この国の中小企業は苦境に置かれています。

 大企業の工業出荷額が140兆円なのに対し、中小企業は122兆円とほぼ拮抗し、この国の産業のすそ野を担うのは中小企業であるのにであります。

 しかしながら、この国の政策は、例えば農業人口320万人で2兆6000億円の予算が付けられているの比し、中小企業は2800万人の雇用を抱えながらも予算は1740億円と、軽視されています。

 今回の措置は一過性の非常事態対応ですが、将来の重点予算の配分の変更も求めたいです。

 ・・・

 今回の総額30兆円の緊急信用保証枠拡大と政府系金融の緊急融資枠拡大ですが、施策としては大歓迎いたします。

 しかし問題はその実施時期であります。

 深刻な資金不足に喘いでいる中小零細企業への支援は一日を急ぎ実施すべきであり、ことは急を要するのです。

 民主党は建設的に審議をし、民主党案と与党案をすり合わせていただきたい。

 そして早急に予算を通過させていただきたいです。

 もし民主党が党利党略で下らぬ政局として審議を遅らせ、補正予算の実行を結果的に遅らせるとするならば、その結果多くの企業が倒産することになることを覚悟しなければなりません。

 そのような事態を招くならば、民主党は国民から痛烈な批判を受けることになるでしょう。



(木走まさみず)