木走日記

場末の時事評論

参院選公約をベストエフォート型に後から改竄した自民党の詐欺的行為

 早いもので今年もあと1日、もう大晦日でありますね。



●ブロードバンド接続はちょっと問題のある不平等条約であるベストエフォートサービス

 現在このブログをご覧のみなさまのパソコンのネット接続環境はどのようなサービスを利用しているのでしょうか。

 おそらくISDNは少数派でありましょう、ADSLかFTTH(光)かCATV(ケーブルテレビ)などの大容量高速通信、いわいるブロードバンド接続サービスを利用している人が多数だと思います。

 私は零細IT企業経営のかたわら、工業系学校や全国の社会人セミナーなどで講師としてIT教育にも関わっているのでありますが、意外と一般の人が理解しておられないのが、みなさんが利用しているADSLやFTTH(光)などのブロードバンド接続サービスが、実はベストエフォートサービスというかなり特殊な契約になっているという事実なんですね。

 ベストエフォートサービスとは、文字通りベストエフォートつまり最善の努力をするといった意味のサービスなのですが、ようするに『最善の努力はしますが結果は保証できません』、『ベストは尽くすがダメだったとしても怒っちゃダメよ』っていう、きわめて無責任なサービスなのであります。

 例えばあなたが回線業者と30M(メガ)BPSの通信速度をうたっているADSL回線サービスを契約したとしましょう。

 曲がり間違ってもあなたの家のPCにADSLでインターネットと接続したら契約書に書かれているとおりの30M(メガ)BPSの通信速度が実現してサクサク高速でインターネットが利用できるなんてことは考えてはダメなのです。

 契約書に書かれている30M(メガ)BPSという速度は『理論値』として『最善をつくして目指す速度』であって、決して実現を保証するものではないからです。

 ADSLの場合旧来のアナログ電話回線を利用して高周波数の帯域をデータ通信に利用している技術的制約で、距離特性つまり最寄りの電話中継基地局との距離が長ければ長いほど通信速度が減速してしまうという弱点があります。

 従って場所によっては実測してみると契約した速度の半分も出ていないということもざらであります。

 100M(メガ)BPSのFTTH(光ファイバー回線サービス)を契約したとしても、FTTHもやはりベストエフォートサービスにはかわりはありませんので、せいぜい契約速度の5割から7割といった実測値であります。

 もっともFTTHの場合、ADSLとちがい距離よりも共同回線の混雑時のシェアつまり混雑度に由来する減速が主因なのであります。

 つまりベストエフォート型サービスというのは、『最大の結果を得られるよう努力するが、結果を保証しない』サービスなのであります。

 ・・・

 私は一人のIT専門家として、ブロードバンド接続などで技術的に結果が保証できないのは理屈ではとても納得していますし、もし逆に結果保証サービスなどを業者に義務付けたらそれを技術的に保証するためにおそらくべらぼうな使用料金になってしまうことでしょうから、ある程度この形式のサービスにも納得しています。

 ただ、かねがねこのベストエフォートサービスという業者有利のサービス形態には少なからず不満をもっています。

 一言で言えば『本当に最善を尽くしてる』のか、契約には企業側の努力が全く一言も担保されていないからであります。

 結果を保証する義務のないベストエフォートサービスだからといって、通信事業者による意図的な回線品質の低下、オーバーなこと言えば回線が常時不通でも許されうるという訳ではもちろんありますまい、最低限の事業者としての義務は当然あるはずです。

 つまり私が不満なのは、今のブロードバンド接続のベストエフォートサービスの契約というのは、『ベストは尽くすがダメだったとしても怒っちゃダメよ』のユーザー側に科せられる『ダメだったとしても怒っちゃダメよ』の点ばかり同意させられてしまい、事業者側の『ベストは尽くす』という約束事が一行も担保されていないのであります。

 少なくとも契約書上は事業者側には何ら守るべき最低ノルマがないのであります。

 ユーザー不利という意味でちょっと問題のある不平等条約であるとかねがね思っている木走であります。

 ・・・

 ん?

 なんだかこっちでも無責任なベストエフォートの乱用する輩(やから)がおるようですが。



自民党「約束します」から「全力を尽くす」に公約変更〜産経社説より

 今日の産経社説(31日付け)は、『「偽」は必ず見破られる 取り繕う政治からの脱却を』というタイトルで2007年を回顧しています。

【主張】回顧2007 「偽」は必ず見破られる 取り繕う政治からの脱却を
2007.12.31 02:14
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071231/trd0712310214002-n1.htm

 いつもは2本掲げる社説ですが、大晦日でもあるからでしょう一本にまとめて力を入れている産経社説でありますが、それはさておき私が関心を持ったのは年金問題に関する次の記述箇所。

 つい最近も、宙に浮いた5000万件の年金記録への対応で「最後の1人、最後の1円まで」という政府や自民党の公約が、実現不可能なものだったことが表面化した。

 「公約違反というほどではない」と福田康夫首相は不用意に口にし、内閣支持率を2ケタ落とした。焦った自民党の機関紙では、参院選公約の文言が「約束します」から「全力を尽くす」に書き換えられたという。偽りに偽りを重ねる行為には、謝罪会見で企業トップらが立ち往生するシーンがオーバーラップする。

 うーむ、最近になって自民党は「参院選公約の文言が「約束します」から「全力を尽くす」に書き換えられた」そうであります。

 「書き換えられた」って上品なモンじゃなくてこれって自民党自身による公約改竄(かいざん)でしょ。

 しかしなあ、「約束します」から「全力を尽くす」に公約変更ですか?

 ・・・

 「全力を尽くす」って、つまり自民党の公約ちゅうのはベストエフォートサービスだったわけですね。

 ・・・



●契約時の約束したサービスの内容が全く保証されない、これを普通、詐欺商法という

 うむ、最新のブロードバンド接続サービスと自民党参院選公約に意外な共通項を見出しました。

 どちらもベストエフォート型だったのですね。

 『最大の結果を得られるよう努力するが、結果を保証しない』わけですね。

 なるほど、どちらもユーザー(有権者)としては『ベストは尽くすがダメだったとしても怒っちゃダメよ』と約束させられてしまうのですから、いかに不平等だと思えても契約書に同意したらしかたありません。

 しかしです、ブロードバンド接続サービスの場合は、契約を結ぶ前に注意深く説明書を読めばこの契約がベストエフォートサービスであることが明記されています。

 しかしながら、自民党の場合、契約(参院選)時には「約束します」(結果保証サービス)としていながら、問題となった後で「全力を尽くす」(ベストエフォートサービス)と契約書(選挙公約)を変えてしまっています。

 これでは駅前留学をうたい文句に『いつでもだれでも予約OK』などと嘘の宣伝をしていたどこぞの詐欺英語塾とおんなじですよね。

 契約時の約束したサービスの内容が全く保証されない、これを普通、詐欺商法といいます。

 ・・・

 ブロードバンド接続サービスと自民党参院選公約に意外な共通項、結果が保証されないベストエフォートサービスを見つけました。

 が似ているのはここまでで、かたや契約時から明文化してユーザーの同意を求めているのに対し、かたや後から改竄(かいざん)してベストエフォートサービスにしちゃったという詐欺的行為なわけです。



(木走まさみず)



<追伸>
 本年もご愛読ありがとうございました。
 どうかよいお年をお迎えください。