木走日記

場末の時事評論

猛烈な劣勢に立たされたときにモチベーションを維持する「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」

 本日は与太話です。



●「木走さんのガッツとドイツ語力の無さのお陰」〜感謝の言葉としては微妙なのですがとても嬉しかったお客様の言葉(苦笑)

 先日、さるメーカー系お客様の製造ラインの入れ替えに関わるシステム提案書を納品しました。

 新たに導入する新ラインがドイツ製だったので、マニュアルも全部ドイツ語だったので、これが難儀でありまして、不肖・木走の場合、学生の時の第二外国語はドイツ語ではあったのですが、もうですね、ドイツ語などゲルマン語系特有の記号、アルファベットの上部に付される横並びの2点「¨」ウムラウト(Umlaut)記号を見ただけで、学生時代の追再試験を思い出しちゃって心臓がバクバクしちゃうのであります(汗)
(↑毎回追再試を受ける身であった事実をして、私のドイツ語力の悲しいレベルをお察し下さいませ(苦笑))

 まあ技術系の文章だったので構文自体は平易なのですが、とにかく単語がねえ、で、お客様の担当者が幸いにもドイツ語が読み書きできる人だったので、どうしても翻訳できないところや訳に自信がないところは何回もメールで添削してもらいました。

 お手数掛けました。

 お陰で何とかドイツ語のマニュアルを読み解くことができ、それを制御するソフトウエアの仕様を現行システムに比し、どう改良・改修すればよいのか300ページのボリュームの提案書を無事納期通り納品できたのであります。
 (↑こっちは本業なのでお客様にお手数・ご迷惑は掛けないはずでしたが、こっちでも現行仕様のよく解らないところはいっぱいヒヤリングしちゃいました(汗))、

 お手数をかけた担当者のYさんには、心よりダンケシェーンなのであります。

 納品の時、Yさんの上司からは、「よくこの期間にこれだけまとめられましたね」と、お褒めの言葉をいただきましたが、私は苦笑いするしかありませんでした。

 上司の横に座っていたYさんの顔を見たらニヤニヤ笑っています、そりゃそうですね、この提案書は事実上Yさんとの共同作業のようなものでありまして、ていうかYさんの協力なしでは手も足も出なかったわけで、私一人の手柄じゃまったくないわけです。

 でもですね、言い訳がましいですが、その日の夜、ささやかにYさんと2人だけで居酒屋で提案書完成を祝ったのでありますが、その席でYさんからは感謝の言葉をいただけたのですよ。

 「今回の提案書作成は本当に僕にも勉強になりました。木走さんのしつこい質問に応えるためにドイツ語とシステムの両方を私自身再勉強する機会になりました。ひとえに木走さんのガッツとドイツ語力の無さのお陰です」

 私の「ドイツ語力の無さのお陰」ってとこが、感謝の言葉としては微妙なのですが(苦笑)、まあ共同で努力して何か達成できたこの達成感をささやかにですが、お客様と味わうことができたことは、モノ作りしている職業人としてもっとも嬉しい瞬間なのでありますよね。

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 ふう。

 考えてみれば今回も私の仕事の仕方は反省ばかりなのであります。

 仕事を受けるか受けないかを判断するとき、新ラインの機械が外国製であることは聞いていましたが、ドキュメントはどうせ英語のものが用意されているに違いないと勝手に安直に思い込んでいたのでありますよ、迂闊なことにです。

 でマニュアルがドイツ語しかないことを知ったときには、すでに仕事を引き受けた後だったのであります。

 その事実を知ったときの愚かな不肖・木走の絶望感をどうか想像して下さいまし(汗

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 ときに人は猛烈な劣勢に立たされることがございます。

 自分の能力を100%発揮しても困難な状況を打破できる保障が何もないとき、自分自身を奮い立たせる必要があります、中途半端なモチベーションでは状況に圧倒され成果を得ることは不可能なのであります。

 私は何度か迂闊にも能力以上の仕事を引き受けて、とても苦労した過去の経験がございます。

 今回も正にそうでありました。

 読者のみなさまに参考になるかどうか自信はありませんが、そのような苦境に立ったときこの凡人木走オヤジがどう苦境を乗り越え危機を脱出してきたか、今回の場合も用いたこういうとき私のモチベーションを高める小技を今日はお話しいたしましょう。



●ときに「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」が現実を達観した大局観のような余裕をもたらす

 猛烈な劣勢に立たされたとき、まず私はモチベーションを高めることに努めます。

 だって、「能力」に問題があったら「根性」しかないじゃないですか(爆

 最近読ませていただいた興味深いブログエントリーがありました。

モチベーションアップは楽しさ創造から
頭がパニクった時に、再起動する為の5つのTIPS
http://d.hatena.ne.jp/favre21/20070707#1183761252

 失礼してエントリー冒頭を引用。

私達のモチベーションアップや「楽しい気持ち」を邪魔するものの一つがストレスだ。

ストレスの原因は、たくさんあると思うが、その大きなものが頭がパニくった時(頭の中の混乱)ではないだろうか?

・たくさんの仕事、やらないといけない事
・思ってもいなかったようなトラブル、出来事
・次から次に沸き起こる不安
・まとまらない考え

等々、様々な頭の混乱がストレスを発生させている。

 で、頭が混乱して、イライラする。不安で不安で仕方がない。そんな時のお薦めは「頭を空っぽにする事」だそうであります。

 「瞑想をする」とか5つの例をあげられておりましてとても参考になりました。

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 私の場合はですが、モチベーションを高める方法として「妄想」を用いるのであります。

 徹底的に自己肯定・自分を励まし自信を持てると自分に言い聞かせるような「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」をするのでございます(苦笑

 日本人は一般に自己否定評価は慣れていますが自己肯定評価は得意とは言えません。

 がしかし、自分の頭の中だけで勝手に「自分を褒めちぎるような妄想」をするのでありますから、誰に迷惑を掛けるわけでもないのであります。

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 徹底的に自己肯定・自分を励まし自信を持てると自分に言い聞かせるような「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」をするのでございます。

 で、こつとしては、困っている現実世界での絶望的状況よりより厳しい悪化している「妄想」環境を設定するのです。

 その妄想の中の自分は、絶望的な状況の中でストイックに全力を尽くすかっこいい主人公なのであります。

 そしてまず、その「妄想」の中の自分のモチベーションを高めます。

 「妄想」の中ですからこれは簡単です、何の現実的努力もいりません(苦笑

 そうすると不思議なことに妄想の中の絶望的な状況でもモチベーションを高めれている自分から、意識を現実に戻すと、現実を達観した大局観のような余裕が生まれるのであります。

 だって現実のほうがまだ「まし」に思える厳しい状況を「妄想」してるから当然なのであります。

 現実の自分の置かれている状況や現実の自分自身を客観視できるようになるのです。

 現実の自分自身を客観視できるようになる。

 これが実に大きい。

 困っている自分を客観視し、なおかつ勘違いかも知れませんがすっかりポシティブシンキングになっているわけでありますから、これはありがたいのであります。

 自暴自棄になることなく、状況を打破する方法を冷静に考えそして前向きに対処する精神力がもたらされるのです。

 冷静に善後策を考えそれに向けて自己努力が可能となるのであります。

 そしてハイテンションのまま目標に向かい猛烈に努力をいたします。



●厳しいまでのストイックな自己肯定マインドコントロールなのでございます(爆

 具体的にまいりましょう。

 アホな「妄想」するのに最も容易な方法は、みなさまご承知のように、自分の好きな偉人や、架空の小説やアニメや映画などの主人公に感情移入することであります。

 今回のドイツ語マニュアルを目の前にして絶望感で脂汗をだらりだらりとかいて途方に暮れてしまったとき、「妄想」のシチュエーションには、娘と見て私も大好きなディズニー映画『Pirates of the Caribbean』を利用させていただきました。

 どんな素材でも「妄想」可能、「感情移入」可能ならなんでもよろしいですが、ただ一つの条件は自分が抱えている現実よりも、妄想の中の主人公の抱えているほうがより困難で厳しい状況でなければいけません。

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 ぜんぜん読めないドイツ語のマニュアルを横に置き、夜中に『Pirates of the Caribbean』のDVDを満喫いたしました。(←バカか(苦笑))

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 そしてDVDを見終わったらベッドの中で「妄想」をいたします。

 「妄想」の中の私は、絶望的な状況の中でもふさがずに前向きに行動しときに少しばかりだらしないがカリスマ性がある周りのみんなに信頼されている海賊の船長になったのであります、そして海賊の船長として時にドジをふむ荒くれ男達を束ねながら、『Pirates of the Caribbean』の主人公、スパロー船長のようにどんな絶望的な状況の中でもたとえ死に直面していても、鼻歌を歌いながら、しかし知恵を働かせて問題を解決していきます。

 ちなみに今回の「妄想」のテーマ曲ですが、映画の中でスパロー船長が歌っていた海賊の歌、実はディズニーランドの「カリブの海賊」のテーマソングなのであります(苦笑)が、『Pirates of the Caribbean Theme Park Song』という歌であります。

We're devils and black sheep - really bad eggs
Drink up me hearties yo ho
俺たちゃ悪魔さ 黒い羊(はぐれ者の意)さ 本当に腐った卵(鼻つまみ者・役立たずの意)さ♪
しこたま飲もうぜ ヨーホー♪

 なんか歌詞自体はどうしようもないのですが、この歌がまたいいのですよ、海賊っぽくて。

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 次の日、私は池袋のでっかい本屋で独和辞典と「はじめてのドイツ語(初級編)」を購入します。

 恥じも外聞もありません、すっかりドイツ語の文法忘れているのですしそもそも忘れていなくてもほとんど理解していなかったので脳の中にドイツ語の財産はほとんどなかったのであります。

 最初のページをめくり一文字一文字のアルファベットのドイツ語発音が載っているのですが、当たり前ですがそのレベルからならよく理解できます。

 「うむ、ドイツ語のABCDはあーべーつぇーでーだったか、うむ、わかるぞ、すべてわかる」

 これからドイツ語の専門書を訳して理解しなければならないのに、そんな低レベルで満足していいのか、ってお思いかもしれませんが、これは重要なのであります。

 だって、最初からマニュアルに取り組んだらできるわけないのであって、せっかく「妄想」でテンション高めたモチベーションが、自分のドイツ語能力の悲しい低さと言う現実に直面して、完膚なきまで下がっちゃうじゃないですか(苦笑

 家庭教師をご専門でしている方のブログでも次のようにおっしゃっています。

私は問題集に取り組むとき、
自分にとって「解りきった問題」から始めます。

「これは解る!」
「これも出来る!」
「これも何とか出来そう・・・」

そうやって少しずつ勢いをつけながら、
徐々に難しい問題にチャレンジするようにしています。
スポーツで言う「ウォーミングアップ」といったところでしょうか。

最初から、難しい問題をやって躓いていては、
やっぱりやる気を失いますからね。(笑)

勉強にも仕事にも、勢いは必要だと思います。

サクラサケ
解りきった問題
http://sawayoshi.exblog.jp/5811576/

 そのとおりでございますよね。

 勉強も仕事も「勢い」です。

 求められるのは、厳しいまでのストイックな自己肯定マインドコントロールなのでございます(爆

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 で、何日も徹夜でドイツ語の読解だけを集中して徹底的に(でも会社のみんなに内緒で(苦笑))勉強しながら、ころあいを見て私は、映画の中のスパロー船長がそうしたように、有能な周りの人々を自分の目的のために利用することを考えます。

 スパロー船長がときに敵までもその力を利用したように、私はドイツ語が堪能でかつ機械の専門知識もあるお客様のYさんに協力を仰いだのであります。

 仕事を発注したお客様のその担当者に、仕事を受注した業者が仕事の協力を依頼するなんて、常識的にはありえないことかもしれませんが、海賊の船長ならそのぐらいの知略を練るわけで、海賊は注意してことに当たらないと命がなくなりますが、現実の私はYさんにご協力をいただくのも命がけであるわけではありません。

 つとめて普通に担当者と業者として技術者同士のコミニュケーションを蜜に取っているだけな雰囲気をかもしだしながら、私は徐々にメールにてドイツ語の添削までしていただくところまで、あつかましくもご協力いただいていったのであります。

 もちろん、快く添削していただくための努力は私は惜しみませんでした。

 最初のうちは1ページを訳すのに一晩掛かり、その中で添削いただかなきゃならない箇所が10箇所以上も発生したりしてたのでありまして、もぅ朝方にはげんなりしてしまったのであります。

 でも、苦労していくそのうちに慣れてきたら一晩で10ページぐらいは訳せるようになり、メールにて確認いただく箇所も1ページ当たり一箇所あるかないかぐらいにまで進歩したのであります。

 これは技術書なので出てくる文法が平易でありかつ同じ文法や単語が繰り返し使われることが多いのが大きかったことは言うまでもありません。

 でも人のやる気など現金なものですね、こうなると気持ちもますます乗ってきます、"We're devils and black sheep - really bad eggs♪ Drink up me hearties yo ho♪"、「海賊の歌」を口ずさみながら、後半はバリバリと訳していったのであります(苦笑

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 結果、納期を守り、お客様からも評価いただき、担当のYさんからも感謝いただいたのであります。

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●猛烈な劣勢に立たされたときにモチベーションを維持する「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」

 もちろん、このやり方で絶えず難局が乗り越えれてきたわけでは当然ありませんでしたし、ときに現実に圧倒され残念ながら失敗してしまうことも多々ありました。

 ただ、この自己肯定マインドコントロールを身に付けてからはいざというときに踏ん張りがきいて困難な状況を打破する力が増したという実感が私にはあるのです。

 たとえ失敗したときでも、より前向きにモチベーションを維持できたという自負心はありますです。

 人間のモチベーションなんてものはけっこう単純に浮き沈みするものであり、どうせ苦境に立たされてしまって努力することが求められているのなら、「自己否定」よりアホなほど徹底的な「自己肯定」、「自分を褒めちぎるようなアホな妄想」で突っ走るのもひとつの有効な手段なのだと思います。

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 私のような凡人は奇跡を起こす能力など持ち合わせていません。

We're devils and black sheep - really bad eggs
俺たちゃ悪魔さ 黒い羊(はぐれ者の意)さ 本当に腐った卵(鼻つまみ者・役立たずの意)さ♪

 でもね、モチベーションを高めて努力することはできます。

 そして気分よく一仕事がんばったら、

Drink up me hearties yo ho
しこたま飲もうぜ ヨーホー♪

 なのでございますよ。

 ここちよい達成感が待っているのであります。

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 ジャンジャン。



(木走まさみず)