木走日記

場末の時事評論

残念!「永田謝罪会見」は不合格です〜「謝罪文評論家」が各紙速報から読み解く永田謝罪会見のミス


●永田議員謝罪会見を速報する各紙記事

 各紙電子版が速報を伝えています。

【朝日速報】民主・永田議員、送金メール問題で「おわび」会見
http://www.asahi.com/politics/update/0228/007.html
【読売速報】申し訳ございませんでした…永田議員が謝罪会見
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060228it11.htm?from=top
【毎日速報】堀江メール:永田議員が謝罪会見 半年間の党員資格停止
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20060228k0000e010098000c.html
【産経速報】永田氏が陳謝 メールの真偽は言及避ける
http://www.sankei.co.jp/news/060228/sei062.htm
【日経速報】永田議員「まことに申し訳ない」・立証できずと陳謝
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060228AT1E2800828022006.html

 で、全速報を検証しておきましょう。

【朝日速報】民主・永田議員、送金メール問題で「おわび」会見

 民主党永田寿康衆院議員は28日、国会内で記者会見し、メールをもとに、不確かな裏取りで追及したことについて「誠に申し訳ありませんでした。国会を混乱させたことをおわび申し上げます」と深々と頭を下げた。

 自らの処分については衆院懲罰動議には「真摯(しんし)に従わせていただく」とする一方で、議員の身分は「鳩山由紀夫幹事長と、衆議院にお任せする」と述べた。

 会見で、永田氏は「仲介者に全幅の信頼を置いていた」とし、元のメールの提供者はライブドアの関係者で送金にもかかわっているとしていることや、銀行口座を示していることなどから信用したと説明した。

 しかし、現在は、「メールの信憑(しんぴょう)性を立証できない」とし、先週半ばから立証を断念していることを明らかにした。

【読売速報】申し訳ございませんでした…永田議員が謝罪会見

 「送金指示」メール問題を国会で指摘した民主党永田寿康衆院議員(比例南関東ブロック)は28日午後、国会内で謝罪の記者会見を行った。

 「誠に申し訳ございませんでした」と深々と一礼した永田議員は、2月16、17日の予算委員会で質問に至った経緯を説明。「情報提供者から提供されたメールを見て、間違いなく真正なものと思った」とし、その理由として、<1>仲介者は元記者で全幅の信頼を寄せていた<2>仲介者によれば今回の情報提供者は本件の送金にもかかわっている<3>銀行口座の情報を提供された――ことを挙げた。

【毎日速報】堀江メール:永田議員が謝罪会見 半年間の党員資格停止

 民主党永田寿康衆院議員は28日午後、ライブドア事件をめぐる「送金メール」問題について、国会内で記者会見した。永田氏は「しんぴょう性について十分な調査が進まないまま質問に至った」と認めたうえで「私の質問で迷惑をかけ、国会を混乱させお詫び申し上げる」と謝罪した。自らの進退については「鳩山由紀夫幹事長に一任しており、判断に従う」と述べた。党は永田氏に議員辞職は求めず、半年間の党員資格停止処分とする方針。

 永田氏は、ライブドア前社長の堀江貴文被告が武部勤幹事長の二男への送金を指示したと指摘されるメールを国会で取り上げたことについて「間違いなく真正と確信した」と釈明。理由として(1)情報提供者との間を仲介した記者に全幅の信頼を置いていた(2)記者によると、情報提供者はライブドア関係者で送金にかかわっていた(3)銀行口座情報も記者から提供されたの3点を挙げた。

 経過については2月1日にメールの情報を聞き、6日にメールのコピーを入手。8日ごろに野田佳彦国対委員長、11日に前原誠司代表に報告し16日に衆院予算委員会で取り上げたと説明した。メールに記されている送信者と受信者が同じということは「質問当時知らなかった。仲介者からfromは堀江氏のアドレス、toは情報提供者のアドレスと説明を受けた」と認めた。「情報提供者は困惑しており、面談するには至らなかった」と述べ、直接の接触はしていないと明かした。

 また、武部氏や武部氏の二男への謝罪については「十分な調査もなく質問し、名前を挙げて追及したことを大変申しわけなく思っている」と述べ、謝罪した。しかし、虚偽情報と認めるかについては「全くの事実無根か、一定の事実を含んでいるのかは現在も調べが残されている」と述べ、明言を避けた。議員の進退についてはいったん辞意を伝えたと説明したが、今後については「鳩山氏に一任」と繰り返した。

【産経速報】永田氏が陳謝 メールの真偽は言及避ける

 民主党永田寿康衆院議員は28日午後、国会内で記者会見し、ライブドアの送金指示メール問題について、メール情報の入手経路などを説明し「最終的に情報の信ぴょう性の立証ができなかった。非力を恥じ、迷惑を掛けたことをおわびする」と述べた。メールの真偽については「内容が全くの事実無根であるのか、一定程度の事実を含んでいるのか、さまざまな調べが残っている」と述べ、言及を避けた。

 永田氏は会見の冒頭で「多くの皆さんにご迷惑を掛け、国会を混乱させたことをおわびする」と陳謝。また自らの進退問題については、鳩山由紀夫幹事長の判断に一任し、与党が提出した懲罰動議には「国会の論議、審議の結果に従う」と述べた。

(共同)

【日経速報】永田議員「まことに申し訳ない」・立証できずと陳謝

 民主党永田寿康議員は28日午後、「送金メール問題」で記者会見し「情報の信ぴょう性を立証できなかった」と正式に表明。「まことに申し訳ありませんでした」と陳謝した。自身の進退については鳩山由紀夫幹事長に一任する考えを表明した。 (15:03)

 今回はこの各紙速報を読み解きながら、永田謝罪会見の徹底検証をしてみましょう。



●各紙速報の発言引用箇所を徹底的に分析してみる

 分析するに当たり、TV報道と各紙記事から今回の永田謝罪会見でのポイントを以下の6つに整理してみます。

【1.謝罪主文】
【2.懲罰動議に対して】
【3.議員の身分に対して】
【4.経緯の詳細】
【5.武部氏らへの謝罪】
【6.虚偽情報と認めるか】

 また各紙速報の鍵かっこ付き永田氏発言引用数は以下のとおりです。

【朝日速報】民主・永田議員、送金メール問題で「おわび」会見
 5カ所
【読売速報】申し訳ございませんでした…永田議員が謝罪会見
 2カ所
【毎日速報】堀江メール:永田議員が謝罪会見 半年間の党員資格停止
 8カ所
【産経速報】永田氏が陳謝 メールの真偽は言及避ける
 4カ所
【日経速報】永田議員「まことに申し訳ない」・立証できずと陳謝
 2カ所

 で、各紙が速報する永田氏発言を上記6つのポイント別に整理するとこうなります。

【朝日速報】民主・永田議員、送金メール問題で「おわび」会見

【1.謝罪主文】
「誠に申し訳ありませんでした。国会を混乱させたことをおわび申し上げます」
【2.懲罰動議に対して】
「真摯(しんし)に従わせていただく」
【3.議員の身分に対して】
鳩山由紀夫幹事長と、衆議院にお任せする」
【4.経緯の詳細】
「仲介者に全幅の信頼を置いていた」
「メールの信憑(しんぴょう)性を立証できない」

【読売速報】申し訳ございませんでした…永田議員が謝罪会見

【1.謝罪主文】
「誠に申し訳ございませんでした」
【4.経緯の詳細】
「情報提供者から提供されたメールを見て、間違いなく真正なものと思った」

【毎日速報】堀江メール:永田議員が謝罪会見 半年間の党員資格停止

【1.謝罪主文】
「しんぴょう性について十分な調査が進まないまま質問に至った」
「私の質問で迷惑をかけ、国会を混乱させお詫び申し上げる」
【3.議員の身分に対して】
鳩山由紀夫幹事長に一任しており、判断に従う」
【4.経緯の詳細】
「間違いなく真正と確信した」
「質問当時知らなかった。仲介者からfromは堀江氏のアドレス、toは情報提供者のアドレスと説明を受けた」
「情報提供者は困惑しており、面談するには至らなかった」
【5.武部氏らへの謝罪】
「十分な調査もなく質問し、名前を挙げて追及したことを大変申しわけなく思っている」
【6.虚偽情報と認めるか】
「全くの事実無根か、一定の事実を含んでいるのかは現在も調べが残されている」

【産経速報】永田氏が陳謝 メールの真偽は言及避ける

【1.謝罪主文】
「最終的に情報の信ぴょう性の立証ができなかった。非力を恥じ、迷惑を掛けたことをおわびする」
「多くの皆さんにご迷惑を掛け、国会を混乱させたことをおわびする」
【6.虚偽情報と認めるか】
「内容が全くの事実無根であるのか、一定程度の事実を含んでいるのか、さまざまな調べが残っている」
【2.懲罰動議に対して】
「国会の論議、審議の結果に従う」

【日経速報】永田議員「まことに申し訳ない」・立証できずと陳謝

【1.謝罪主文】
「情報の信ぴょう性を立証できなかった」
「まことに申し訳ありませんでした」

 ここまでを表として整理してみると各紙速報のコメント分類は以下のとおり。

【各紙速報における永田氏発言ポイント別引用頻度表】

ポイント 【朝日】 【読売】 【毎日】 【産経】 【日経】
【1.謝罪主文】
【2.懲罰動議に対して】
【3.議員の身分に対して】
【4.経緯の詳細】
【5.武部氏らへの謝罪】
【6.虚偽情報と認めるか】
合計

 ふう。

 各紙速報の発言引用箇所をこうして分析してみると興味深いのですが、永田氏は今回の発言の6つのポイントで、謝罪会見としては、1カ所だけ本音を漏らしてしまっているようです。

 それは【6.虚偽情報と認めるか】の質問に対する発言です。

 ここの部分は、毎日と産経が早速速報で食らいついています。

【毎日速報】堀江メール:永田議員が謝罪会見 半年間の党員資格停止
「全くの事実無根か、一定の事実を含んでいるのかは現在も調べが残されている」
【産経速報】永田氏が陳謝 メールの真偽は言及避ける
「内容が全くの事実無根であるのか、一定程度の事実を含んでいるのか、さまざまな調べが残っている」

 これは善し悪しではなく謝罪会見としての受け答えとしては、戦術ミスであるといえます。

 せっかく、他の5ポイントに関しては、真摯に言葉を紡(つむ)ぎ謝罪を繰り返し、反省を示す会見としては完璧に近い模範回答であったのに、【6.虚偽情報と認めるか】だけは、おそらく永田氏の本音なのでしょうが、質問に逆らってしまっています。

 おしい。


 しかし、5紙中2紙が速報段階で早くもツッコミを入れている事実からすると、この安易な発言「全くの事実無根か、一定の事実を含んでいるのかは現在も調べが残されている」は、それが事実だとしても、謝罪会見全体の心証を著しく悪くしたようです。

 ・・・

 これは謝罪文評論家の不肖・木走から言わせていただければ、実にもったいないケアレスミスと言わせていただきます。
(↑いつからお前は「謝罪文評論家」になったんだ?(苦笑))

 ・・・

 実に惜しい。



●残念だけど「永田謝罪会見」は不合格

 零細企業の不肖・木走は、何回も謝罪文を書いてきましたので、ひとを納得させる謝罪の仕方に関しては、少しばかりうるさいのですよ。
(↑自慢になっていませんよ(苦笑))

 以前のエントリーから抜粋します。

●良い謝罪文作成は人を成長させる by 不肖・木走

 まあ零細企業の経営者などは「人に謝るのが仕事」みたいなところがあります。

 で、私は謝罪文を何度か作成するうちに自分なりの「良い謝罪文の作成テク」をいつしか身につけました。

 ちょっとご披露しましょう。

■テク1:邪念を捨てる〜悪いのは100%私だと心より覚悟する

 どうせ謝罪文を書くことを決意したならば中途半端な決意では文章に誠意がこもりません。

 そこで心を鬼にして(私だって悪くないとこもある)とか(先方にだって落ち度はあるじゃないか)といった邪念を一切捨てきります。

 この件で悪いのは100%自分であると言い聞かせます。

 人の世の厄介な点は、実は人様に謝らなければならない羽目になったときでも、こちら側にも何分かの正当な言い分があり、先方にも何分かの指摘し得るような問題点があるモノであります。

 しかし、そんな邪念をもっていたらいつまでも誠意ある謝罪文を作成することなどできないわけであります。

■テク2:先方の目線で自分の悪いところを批判する。

 テク1で邪念を捨てたなら、出来る限り冷静な自分を取り戻した上で、先方の視線にたって、謝罪しなければならない内容を考えてみます。

 なぜ相手が私を怒っているのか、自分が相手の立場だったらどう感じるか、冷静に分析します。

 そして、ここが重要なのですが、たしかに失礼な謝らなければいけない振る舞いをしてしまったことを、心から自覚し反省します。

 そしてウソ偽りのない素直な気持ちとして心からの謝罪の文をしたためます。


■テク3:建設的な改善策を提示する。

 自分が今回の失敗で得た教訓を冷静に考えます。

 そして、二度とこのような間違いをしないようにするために、自分としてできる改善策を建設的に相手に示し、そのように努力していくことを誠意を持って約束します。

 ここでも重要なのは心から失敗から得た教訓を納得していなければ文章自体に誠意はこもらないことです。

 うわべだけの反省など相手は何も望んではいないからです。

 ・・・

 もちろんいつもうまく謝罪文が書けたわけでもなく、ときに余分なことを書いてしまいかえって相手の反発をもらってしまったこともあります。

 ただ、出来の悪い私が実感するのは、相手からも一定の評価をいただけたような「良い謝罪文」が作成できたときは、不思議と自分自身も精神的に成長できたような気がするのでした。

 「謝罪するという行為」は、ときに人を成長させるのではないでしょうか。

 ・・・

■[メディア]良い謝罪文作成は人を成長させる仮説〜朝日新聞の返事を読んでの一考察
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060119/1137668532

 今回の永田氏の謝罪会見で、一点ミスであると私が指摘したのは、正に

【6.虚偽情報と認めるか】だけ、おそらく永田氏の本音なのでしょうが、質問に逆らってしまい、「全くの事実無根か、一定の事実を含んでいるのかは現在も調べが残されている」と語ってしまっている点です。

 これはいただけません。

 人の世の厄介な点は、実は人様に謝らなければならない羽目になったときでも、こちら側にも何分かの正当な言い分があり、先方にも何分かの指摘し得るような問題点があるモノであります。

 しかし、そんな邪念をもっていたらいつまでも誠意ある謝罪文を作成することなどできないわけであります。

 心から謝罪する場合の心得を民主党幹部は永田氏に指導していなかったのでしょうか。

 おしい。

 実に惜しいなあ。

 ・・・

 残念だけど「永田謝罪会見」は不合格ですね。



(木走まさみず)