木走日記

場末の時事評論

村上ファンドVS阪神フアン〜全く価値観の合わない二つの集団

kibashiri2005-10-13




阪神ファンはお怒りのようです(苦笑。

 タイガースのことならデイリースポーツということで・・・

村上氏 近日中にも回答

 阪神タイガースの株式上場問題で、ファンの賛否投票を阪神電鉄本社に要求した村上世彰氏(46)率いる投資ファンド村上ファンド)は12日、本紙の取材に対して、スポーツ紙などメディアのファンアンケート結果を集計参考に近日中にも見解を示す意向を明らかにした。この日、大阪・野田の阪神電鉄本社では対応策を協議したが、阪神公式ファンクラブの会員を対象にしたアンケートを実施するかどうかの結論は出なかった。

 村上ファンドがメディアのアンケート結果を、タイガース上場案を推し進めるか取り下げるかの重要な参考資料にするという。

 村上ファンドは11日に大阪・野田の阪神電鉄本社で行われた初のトップ会談で西川恭爾社長(66)にファンの賛否投票などを要求。これを受けて本紙を含む新聞各紙が球団上場の賛否アンケートを開始した。現時点では上場反対意見が圧倒的多数を占めている。

 特に本紙では11日午後10時30分の集計で「反対92%」、12日の集計分でも反対は9割を超えている。この数字について、村上ファンド広報担当者はこの日夕、「それらに関する答えはもう少し待っていただきたい」と話した上で、本紙をはじめ新聞各紙のアンケートを集計、チェックしていることを明らかにした。

 さらに同広報担当者は「他の各紙などの(アンケート)結果をできるだけ、たくさん集めたい。(集計期間の)メドは今のところ分からないが、しかるべき時点で村上なりがきちんとコメントさせていただくことになると思います」と話した。

 この集計期間は未定だが、数字のメドは1万人と推測される。前日、村上氏は「デイリースポーツさんでやってみてください。例えば、今日、緊急調査1万人とやりますと、明日めちゃくちゃ売れるかもしれませんがな」と話していた。2日間の本紙アンケート集計は約3千人。今後、各紙の集計結果を合わせると、今週中にも1万人に到達する可能性が高い。

 一方、阪神電鉄本社サイドでは提案のあったファン投票に関して検討する会議を開いたが、この日は阪神公式ファンクラブの会員約15万人を対象にした賛否投票を実施するかどうかの結論は出せなかったもようだ。

 「ファンの賛同がなければ(上場案の)取り下げもあり得る」とする村上ファンドは、球団が実施するファンへの賛否投票を一番の判断材料とする考えと思われる。だが当面、メディアのアンケート結果などを参考に検討していく方針のようだ。

 いずれにせよ、ファン投票を実施のした場合でも上場賛成となる自信をのぞかせていた村上氏がどんな反応を示すのか。近日中にも出される回答に注目が集まる。

デイリースポーツ 10月13日 
http://www.daily.co.jp/baseball/2005/10/13/190647.shtml

 で、「特選虎デイリー」での緊急アンケートの結果はこちら。

“反対派”勢い止まらず

 本紙では携帯サイト「特選虎デイリー」での緊急アンケートを、11日に引き続いて実施。「どっちだ!バトル」コーナー(iモードのみ)で「阪神タイガースの株式上場に?」という質問に対して「賛成」「反対」の投票を受け付けた。

 11日午後10時30分の時点でも、賛成143票(8%)に対して「反対」が1712票(92%)と一方的な情勢だったが、12日になっても“反対派”の勢いは増すばかり。12日午後10時30分の時点で賛成が264票(8%)。反対は、3000を超えて3209票(92%)となった。

デイリースポーツ 10月13日
http://www.daily.co.jp/baseball/2005/10/13/190648.shtml

 うーん、90%超える人が「阪神タイガースの株式上場に?」反対なわけですね。

 ・・・

 阪神ファンはだいぶお怒りのようでありますね(苦笑

 今回の「阪神電鉄株大量取得」と、タイガース上場を提案する村上ファンドの「真の狙い」は、いまだ不明でありますが、阪神電鉄本社だけでなく、関西の雄阪神タイガース球団及びそのフアンを巻き込んでの大騒動なのであります。

 先行きは不透明でありますが、日本一過激で熱狂的な阪神フアンVS村上ファンドという図式はなかなか興味深いモノがありますね。



●黒船来襲〜秩序破壊者としての村上ファンド

 一昨日の毎日新聞の記事はことの経緯をわかりやすくまとめてあり、なかなか良記事であります。経済部の後藤逸郎記者の記名記事です。

阪神電鉄株大量取得 タイガース上場を提案する村上ファンドの「真の狙い」
2005年10月11日 毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kinyu/ekabu/report/news/20051011org00m020034000c.html

 この記事によれば今回の村上ファンド阪神電鉄株大量取得が、かなり周到に準備されていたモノであることがよく理解できます。

 先ほども述べましたが、村上ファンドの「真の狙い」は、いまだ不明なのでありますが、全く無防備無警戒であった阪神電鉄サイドのあわてふためきようは、先のライブドア堀江氏のニッポン放送株買い占め問題の時の、フジサンケイグループの醜態を彷彿とさせるモノであります。

 前回は堀江氏が秩序破壊者として役回りを演じたわけであります。

ホリエモン考〜最適化された秩序破壊者
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050302/1109743613

 前回の上記エントリーでも私は述べましたが、当時の堀江氏のとった行動に対する評価は、その立場により2分されたのであります。

 堀江氏は最適化された秩序破壊者である。

 その評価は、読者がこの問題を考察する際に破壊される側にたつか、破壊する側にたつかで2分されるのであろう。

 今回は村上ファンドがまさに黒船来襲さながらの秩序破壊者としての役回りを演じていることは、デイリースポーツのアンケート結果を見ても容易に想像できるわけであります。



阪神フアンの反応に見るフアン心理とナショナリズムの類似性

 サッカーでも野球でもそうですがフアン心理というのは実に興味深いモノがありまして、特に熱狂的フアンの心理は、これはもうお金とか自己利益とかを超越して働いているわけですよね。
 別に阪神が優勝しても個々のフアンに一銭の利益も還元されるわけもないことは百も承知の上で、彼らは身銭を払って球場に足を運び、一生懸命応援するわけです。そこには利己的動機は全くなくただ阪神が勝って後でおいしいビールを飲みたいだけかも知れませんが、美しい自己犠牲にも似た献身的なストイックな感情だけが行動原理であるようです。
 彼ら阪神フアンの行動原理は間違いなくお金ではありません。

 甲子園の熱狂を知っている人間ならば誰しもが感じることでしょうが、彼らが求めているモノはある種の連帯と陶酔なのであり、危険な喩えは承知な上で例に出せば、偏狭なナショナリズムが昂揚した時の群集心理にその類似性を見ることが出来ます。

 かたや純粋に贔屓の球団を愛しそのためなら自己犠牲をもいとわないぐらい激しく応援し、かたや純粋に自国を愛しそのためなら過激なデモもいとわないのです。特に今回のような敵対する(少なくとも敵対すると感じる)「黒船」がやって来た時には、ほとんど同様の排他的でネガティブな反応を引き起こすことも似ているのでしょう。



●価値観の合わない二つの集団の妥協点はあるのか?

 言うまでもなく村上ファンドは利潤追求集団です。彼らの資金は潤沢とはいえ、投資家から依託された預かり金なのであり、限られた期間で利益を絞り出し投資家に還元しなければ商売になりません。いかに村上氏がきれい事を述べようとも、今回彼に与えられた時間は有限なのです。
 しかるべきタイミングで利益を捻出しなければならないのが彼のつとめであり彼を信じて莫大なお金を投資したスポンサーへの使命なのです。

 お金が全ての利潤追求集団である村上ファンドと、日本一熱狂的であろうストイックなアツイ集団である阪神フアンとは、これは価値観が180度違うわけであります。

 村上氏がどのような妥協点を見出すのか興味深く見守っていきたいですが、この一件、お金だけでは解決できない集団を相手にしてしまったことは、村上氏の「想定内」のことだったのでしょうか、あるいはこのアンケート結果は「想定外」だったのでしょうか。

 村上氏のお手並みを拝見しましょうか。



(木走まさみず)