木走日記

場末の時事評論

ブログと文春と公職選挙法と報道の自由について考察する

 以下のエントリーの追記です。

ライブドアのバカなブログ言論統制について、みなさま教えて下さい。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050830/1125401873

●けなげに、選挙関連エントリーを自粛している木走

 えーっと、けなげに選挙期間に入り、選挙関連エントリーを自粛している木走であります(苦笑
 しかしどうにも納得がいかず、ここ数日、公職選挙法を勉強したり、東京都選挙管理委員会に問い合わせたりいくつかのサイトの情報をかき集めたりして、出来の悪い頭をうんうんと回転させて考えておりました。

 で、木走なりに結論を得ましたので、読者のみなさまにその経緯をご報告しながら、この問題をご一緒に考察したいと思います。

 まずきっかけになったライブドアの自主規制はこちらです。

【重要】公職選挙法に関する対応に関して
平素よりlivedoorをご利用いただき、誠にありがとうございます。
弊社サービスご利用上の注意事項につきまして、ご案内申し上げます。

平成17年9月11日に第44回衆議院議員総選挙が行われますが、特定の候補者、政党に関する表現等につきましては、livedoor利用規約第8条(禁止事項)第1項(9)「選挙運動又はこれに類似する行為、公職選挙法に違反する行為」に抵触する恐れがございますので、弊社にて削除させていただく場合がございます。

あらかじめ、上記をご理解いただき、サービスをご利用くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

livedoor Blog 開発日誌
http://blog.livedoor.jp/staff/archives/50132365.html

 まあ、これは堀江氏の立候補にともなう防衛措置のようなものであり、一般ブロガーにまで過剰反応する必要もないじゃんというのが、前回のエントリーでの私の立場でしたが、コメント欄での皆様の意見を参考にしつつ、少し調べてみました。

 まず、東京都選挙管理委員会のサイトから

インターネットで政治活動はできる?

 選挙運動にわたらない純粋な政治活動として、インターネットのホームページを利用することは自由にできます。
 しかし、純粋な政治活動として使用するホームページであっても、選挙運動期間中に開設したり、又は書き換えをすることは、新たな文書図画の頒布とみなされ、選挙運動の禁止を免れる行為として公職選挙法に違反することがあります。

選挙Q&A(目次)> 選挙Q&A(選挙運動と政治活動 )
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/qa/qa03.html

 つまりですね、「選挙運動期間中に開設したり、又は書き換えをすることは、新たな文書図画の頒布とみなされ、選挙運動の禁止を免れる行為として公職選挙法に違反することがあります。」ということなんですね。

 で、この選挙運動なんですが、同じページで定義されています。

選挙運動と政治活動の違いは?

 政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。
 ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。

【選挙運動】
 特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること。

【政治活動】
 政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
選挙Q&A(目次)> 選挙Q&A(選挙運動と政治活動 )
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/qa/qa03.html

 つまり【選挙運動】とは、「 特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること。」なのだそうです。

 そうすると、もちろん選挙運動とは候補者のみが行う行為ではないわけで、上記の行為を行う全ての人間が対象者となり、よって一般の人間が特定の選挙で特定候補者の話題についてブログで触れること自体が選挙運動と捉えられる可能性があり、その結果選挙運動をインターネットで行ったと判断され公職選挙法違反になる可能性があるということらしいのです。



●ゲエエー! 2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する

 しょうがないので公職選挙法について少し勉強しました。

公職選挙法
http://www.houko.com/00/01/S25/100.HTM

 で、公職選挙法では、政党や候補者に関わる文書や図面に対し、こと細かく規制しているのですが、ブログで不特定多数の人に選挙関連エントリー掲示する行為は、第142条(文書図画の頒布)、第142条の2(パンフレット又は書籍の頒布)、第143条(文書図画の掲示)、この辺りに抵触するようなのです。

 で、違法とみなされた場合、公職選挙法第147条(文書図画の撤去)が適用されて、撤去(インターネット等の場合削除)されるようです。

(文書図画の撤去)
第147条 都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、次の各号のいずれかに該当する文書図画があると認めるときは、撤去させることができる。この場合において、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、あらかじめ、その旨を当該警察署長に通報するものとする。
1.第143条(文書図画の掲示)、第144条(ポスターの数)又は第164条の2(個人演説会等の会場の掲示の特例)第2項若しくは第4項の規定に違反して掲示したもの
2.第143条第16項に規定する公職の候補者等若しくは後援団体が当該公職の候補者等若しくは後援団体となる前に掲示された文書図面で同項の規定に該当するもの又は同項の公職の候補者等若しくは後援団体に係る同条第19項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間前若しくは期間中に掲示したポスターで当該期間中において同条第16項の規定に該当するもの
3.第143条の2(文書図画の撤去義務)の規定に違反して撤去しないもの
4.第145条(ポスターの掲示箇所等)第1項又は第2項(第164条の2第5項において準用する場合を含む。)の規定に違反して掲示したもの
5.選挙運動の期間前又は期間中に掲示した文書図画で前条の規定に該当するもの

公職選挙法
http://www.houko.com/00/01/S25/100B.HTM#s13

 で、痛いのはその際の罰則でして、公職選挙法 第243条(選挙運動に関する各種制限違反、その1)により『2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。』とされています。

(選挙運動に関する各種制限違反、その1)
第243条 次の各号の一に該当する者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
1.第139条の規定に違反して飲食物を提供した者
1の2.第140条の2第1項(連呼行為の禁止)の規定に違反して連呼行為をした者
2.第141条第1項又は第4項の規定に違反して自動車、船舶又は拡声機を使用した者
2の2.第141条の2第2項の規定に違反して乗車し又は乗船した者
2の3.第141条の3の規定に違反して選挙運動をした者
3.第142条の規定に違反して文書図画を頒布した者
4.第143条又は第144条の規定に違反して文書図画を掲示した者
5.第146条の規定に違反して文書図画を頒布し又は掲示した者
5の2.第147条の規定による撤去の処分(同条第1号、第2号又は第5号に該当する文書図画に係るものに限る。)に従わなかつた者
6.第148条第2項又は第149条第5項の規定に違反して新聞紙又は雑誌を頒布し又は掲示した者
7.第149条第1項又は第4項の規定に違反して新聞広告をした者
8.削除
8の2.第164条の2第1項の規定に違反して立札若しくは看板の類を掲示しなかつた者又は同条第2項若しくは第4項の規定に違反して文書図画を掲示した者
8の3.第164条の3の規定に違反して演説会を開催した者
8の4.第164条の5第1項の規定に違反して街頭演説をした者
8の5.削除
8の6.第164条の7第2項の規定に違反して選挙運動に従事した者
9.第165条の2の規定に違反して演説会を開催し又は演説若しくは連呼行為をした者
10.第166条の規定に違反して演説又は連呼行為をした者

公職選挙法
http://www.houko.com/00/01/S25/100C.HTM#s16

 タイーホなんて、ブルブルブルなのですが、50万円もイタイですね(苦笑



●不肖・木走、東京都選挙管理委員会に電話で確認ス!

 東京都選挙管理委員会のサイトにはお問い合わせのページがありました。

都選管 お問い合わせ

東京都選挙管理委員会事務局
〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1
都庁第一本庁舎 N39階

tel: 03-5320-6911  選挙全般
03-5320-6912  選挙執行の助言・相談
03-5320-6913  選挙啓発、明るい選挙
03-5320-6907  政治団体、政治資金

http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/toiawase01.html

 上記内容を直接確認すべく、選挙全般(03-5320-6911)の番号に早速掛けましたですよ。以下はそのやり取りです。担当の方はとっても親切なオジサンでありましたよ。

木走「あのう、インターネットでブログを公開しているモノなんですが、公職選挙法について伺いたいのですが」
担当「何でもどうぞ」
木走「個人のサイトでも、選挙期間中に特定の政党や候補者の話題を載せると公職選挙法に違反すると聞いたのですが、本当でしょうか?」
担当「はい、その可能性がありますね。」
木走「選挙活動とか選挙支援とかではなくてですね、時事性のある話題として取り上げるだけでもいけないのでしょうか」
担当「話題として取り上げるだけでも選挙活動として見なされる可能性があります」
木走「えーっと、悪意がなくとも逮捕されちゃうんですか」
担当「ここの違法性の判断は警察の専任事項ですから、我々はコメントできませんねえ」
木走「解せないことがあるんですが、新聞なんかも今インターネットで無料でニュース配信してるじゃないですか。あれはいいんですか」
担当報道の自由は担保されていますからね。もちろん著しく公平性に欠ける悪意ある報道は問題になると思いますよ。」
木走「週間文春なんか酷い報道しているじゃないですかあ」
担当公職選挙法第148条に、選挙期間中の(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)が保障されているのですよ。」
木走「・・・ そうなんですか、あとで勉強します。」
担当いづれにしても、なるべく選挙関連の話題は遠慮していただくほうがいいですね」
木走「でも実際公職選挙法ってインターネット想定してない古い法律ですよね。こんな古い法律すぐに直さないとダメですよね」
担当「フフフ(苦笑 そうですね。」
木走「丁寧に回答いただきありがとうございました」

 うーっむ、個人のブログでもやはり公職選挙法に違反する可能性があるようですね。



公職選挙法で保障されている新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由

 で、選挙期間中の(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)が保障されている下りは以下のところですね。

(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)
第148条 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第138条の3(人気投票の公表の禁止)の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。

2 新聞紙又は雑誌の販売を業とする者は、前項に規定する新聞紙又は雑誌を、通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において、定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については、有償でする場合に限る。)で頒布し又は都道府県の選挙管理委員会の指定する場所に掲示することができる。

3 前2項の規定の適用について新聞紙又は雑誌とは、選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、次に掲げるものをいう。ただし、点字新聞紙については、第1号ロの規定(同号ハ及び第2号中第1号ロに係る部分を含む。)は、適用しない。

1.次の条件を具備する新聞紙又は雑誌
イ 新聞紙にあつては毎月3回以上、雑誌にあつては毎月1回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであること。
ロ 第3種郵便物の承認のあるものであること。
ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前1年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては、6月)以来、イ及びロに該当し、引き続き発行するものであること。

2.前号に該当する新聞紙又は雑誌を発行する者が発行する新聞紙又は雑誌で同号イ及びロの条件を具備するもの

公職選挙法
http://www.houko.com/00/01/S25/100C.HTM#s16

 ほほう、なるほど。

この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第138条の3(人気投票の公表の禁止)の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。

 しかしなあ、文春にしたって新潮にしたって、ろくでもない記事ばっか書きまくっていて、「但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。」ってところに抵触しまくりのような感じですよね。

 いつもは温厚な荏原さんもお怒りなのであります。

荏原仲信のブログ
文春を見過ごしていいのか
http://ebara.air-nifty.com/ebara/2005/09/post_21d2.html

 なんか、不平等だよなあ。



●木走的結論・・・遵法闘争型エントリーでカマしていきます(爆笑

 考えてみたならば、週刊誌だけでなく日刊ゲンダイ夕刊フジも公正中立な報道など全くしていないわけでありますが、メディアは公職選挙法に逆にしっかり守られているのでありますね。

 まあ私が調べた範囲では、個人ブログに関しては、おそらくよほど悪質なモノでもない限り、タイーホなどの処罰対象にはならないのではないかという感触を得ました。

 なんていいますか、道路交通法みたいなもので、都内で制限速度守って走ってなんかいたら、後ろの車にクラクションならされちゃう、みたいな法律は法律で守らなければならないけれどあんまり厳格に適用しちゃうわけにも、実際問題いかないのだと感じます。

 うん、道路交通法とは、我ながら良いたとえだな。
 私の市民記者登録しているインターネット新聞JANJANなんか、特定政党批判なんかてんこもりの記事がバシバシ掲載されていますが、そうか、さしずめ、シュウダンボウソウコウイみたいなものか(爆笑

 ・・・

 まあ勉強してみて理解したことは、本当に、現在の公職選挙法がインターネットの存在を全く意識できていない古い法律であり、法解釈の拡大で無理矢理制限しているようなのですね。

 この点では、木走は民主党の主張するインターネット選挙の解禁に同意します。
 だって選挙期間中に政党や候補者の話題がいっさいできないなんてナンセンスではありませんか。

 で、当ブログとしては今後も選挙関連のエントリーはメディア記事引用を中心に遵法闘争型エントリーでカマしていきますです(苦笑

 時々速度違反しちゃうかもしれませんが・・・



(木走まさみず)



●追記:木走よりお知らせ

 お知らせするのが遅れましたが、昨日、インターネット新聞JANJANにて、記事が掲載されました。

朝日はいくつ委員会をつくるつもりか〜社会の公器として落伍メディアだ
http://www.janjan.jp/media/0509/0508311813/1.php

 うーん、あちらのコメント欄で誰もコメントしてくれませんです(苦笑