木走日記

場末の時事評論

報知記事にクオリティで負けている読売記事の不思議

 昨日のエントリーの追記です。



●どうでもいいけど読売新聞のプチウソ報道

 昨日の東京新聞から・・・

北京五輪 ヒトラー五輪と同じ』
石原知事、英紙に発言
 【ロンドン=岡安大助】一日付の英紙タイムズは、石原慎太郎東京都知事のインタビュー記事を掲載し、尖閣諸島(中国名・釣魚島)に関して「中国が占領しようとするなら、北京五輪をボイコットすべきだ」と述べた知事発言を見出しにとって紹介した。また知事は「領土を守るため英国のフォークランド紛争のような小規模な戦争も辞さない」とも述べたという。

 石原知事は、昨年のサッカー、アジア・カップでの中国人観衆の反日行動にも言及し「北京五輪は、一九三六年にベルリンで開催されたヒトラーの五輪と同じ意味を国際政治的に持つ」とも指摘した。

 同紙は、石原知事を「過激な国家主義者で知られる一方、世論調査で首相にしたい政治家のトップに指名された」と紹介した。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050602/mng_____sya_____009.shtml

 同じく読売新聞から・・・

北京五輪ボイコットを」石原都知事が英紙に
 【ロンドン=飯塚恵子】東京都の石原慎太郎知事は1日付の英紙タイムズのインタビューで、「日本は2008年の北京五輪をボイコットすべきだ」と主張した。

 知事はその理由として、中国で昨夏開かれたサッカー・アジアカップでの反日騒ぎを取り上げるとともに、「中国にとって北京五輪は、ヒトラー時代の1936年ベルリン五輪と同じ意義を持つ。ヒトラーは軍事力を背景に示威行動をしたもので、北京も同じ構えを目指している」と述べた。

 知事はまた、日本の領有権に中国が異議を唱える尖閣諸島沖縄県)を中国が占拠しようとすれば、1982年に英国がフォークランド諸島をめぐってアルゼンチンと戦ったように、中国との「小規模戦争」も検討するべきだと語った。

(2005年6月1日22時20分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050601i113.htm

 昨日検証したタイムス記事なのですが、なんだかなあ、扱いが地味ですよね。(苦笑

 あと、読売新聞はプチウソ書いちゃいけません。

 知事はまた、日本の領有権に中国が異議を唱える尖閣諸島沖縄県)を中国が占拠しようとすれば、1982年に英国がフォークランド諸島をめぐってアルゼンチンと戦ったように、中国との「小規模戦争」も検討するべきだと語った。

 「中国との「小規模戦争」も検討するべきだと語った。」とありますが、石原さんは「検討するべき」なんて、一言も語っていませんから・・・残念(苦笑

 昨日、当ブログで検証したとおり、石原さんは、「I would not hesitate to fight a minor war to protect our own territory 」、つまり、検討するべきなどという曖昧な言い方ではなく「戦争を起こすのをためらわない」とはっきり言っちゃってます。



●日本メディアは「クオリティ」の意味をはき違えている

 日本の大新聞はだいたい「クオリティペーパー」を目指しているらしいですが、なにか勘違いしているのではないでしょうか?

 週刊誌や夕刊紙などのようにセンセーショナルな見出しで大衆を煽るような書き方をしろなどとは言いませんが、事実を歪曲してまで地味に報道することは、「上品」でも「クオリティ」が高いのでもなんでもなく、ただのダメ記事であります。

 上の読売記事にしても確信犯的なんですよね。だって、同じ日の同じ読売グループのスポーツ報知では、同じネタで詳細記事が載っています。

慎太郎都知事北京五輪ボイコット」
中国を糾弾 英紙に語る
 石原慎太郎東京都知事(72)が1日付の英紙タイムズのインタビュー記事で、「2008年の北京五輪ボイコット」を呼び掛けた。小泉純一郎首相(63)の靖国神社参拝などで、日中関係が悪化するなか、今回の発言が新たな火種となるのは確実だ。一方で知事は、この日行われた都議会で、側近の浜渦武生副知事(57)の辞職については何も語らず。傍聴席からは「説明しろ」「おまえが辞めろ」の怒声も飛んだ。

 中国側が「Mr. Notorious」(最も悪名高い人物)と呼んでいることに対し「名誉なことですな」と感想を漏らした石原知事。記事のタイトルにも使われた「悪名高き男」はインタビューで、日中関係をさらに悪化させそうな、過激な発言を連発した。

 タイムズ紙によると石原知事は、中国が国の威信を懸けて総力を挙げて取り組んでいる2008年の北京五輪に、ボイコットを呼び掛けた。理由として、中国で昨年夏行われたサッカー・アジアカップでの中国人観客による反日行動に言及。

 「北京五輪は国際政治の文脈でみると、1936年にベルリンで開かれたヒトラーの五輪と同様の意味がある」と指摘。平和の祭典ではなく「ベルリン大会は軍事力を背景とする示威行動だったが、北京も同じような姿勢を示そうとしている」と北京五輪=軍事デモンストレーション説を展開した。

 さらに発言はエスカレート。日本と中国が領有権を争っている尖閣諸島(中国名・釣魚島)を中国が占拠するような動きを見せた場合について、英領フォークランド諸島をめぐる1982年の英国とアルゼンチンの紛争に触れ「あなたがたがしたように、小規模戦争も辞さない」とまで語った。

 小泉首相靖国神社参拝をめぐる反日行動が激化するなか、先月末には中国の呉儀副首相が首相との会談を当日になってドタキャンする事態に発展。日本にとっては9月に国連安保理での常任理事国入りするため、中国との関係は重要になるが、今回の石原発言が悪影響を与える可能性は大きい。

 中国問題で雄弁だった知事だが、都政では状況が一変。30年来の側近、浜渦副知事を事実上更迭した件について、この日開会した定例都議会の所信表明演説では、全く触れないまま。

 これに対し、傍聴席から「説明責任、任命責任があるだろっ」など怒号が浴びせられ「石原おまえが辞めろ」の紙も掲げられたが、知事はだんまり。記者の質問にも「必要があれば議会に報告する」とだけ答え、自らの問題については口を閉ざした。
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/news/index.htm

 すっごく、切れ味がいい記事だと思いました。
 内容の評価は読者の皆様に判断いただきたいですが、はっきり言って、読売記事は報知記事にクオリティで負けていると思います。

 なんだかなあ、系列のスポーツ新聞では詳細な記事を載せて、クオリティペーパーを目指す本体の記事は無害な毒抜き記事で誤魔化すこの手法は、読売=報知だけではなく、産経=サンスポ、朝日=日刊、毎日=スポニチでもよく見られるのですが、どうなんでしょうねえ。

 どうせ記事にするならもう少し真剣に書いてもらいたいモノです。

 スポーツ紙の社会面のほうが充実しているなんて日本のメディアらしいかも知れませんが、やれやれですね。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●英タイムスで吠えまくった石原都知事の発言内容を検証する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050602