木走日記

場末の時事評論

報道倫理にまつわる読売新聞の恥ずかしいダブルスタンダード

 本日は報道倫理にまつわる読売新聞のダブルスタンダードの話です。



●「TBS盗用問題」を激しく糾弾する13日読売社説

 昨日(13日)の読売新聞社説から・・・

[TBS盗用問題]「報道倫理に対する背信行為だ」

 盗みとウソ――。二重の背信行為に、怒りを通り越して、あきれてしまう。

 TBSが公式ホームページに掲載しているコラム「DUGOUT(ダッグアウト)」の多くが、読売新聞夕刊1面の「よみうり寸評」など、新聞のコラムや記事を盗用したものだった。

 最初に発覚した「よみうり寸評」からの盗用では、全40行の「寸評」のうち約30行分を、同一、または酷似した表現で無断転載していた。

 盗用は著作権を侵害する行為だ。報道倫理の観点からも、非難を免れない。

 本紙からの指摘に、TBSは盗用を認め、問題のコラムを書いたのは「30代の男性フリーライター」で、直ちに契約を打ち切った、などと説明した。本紙への謝罪と、問題のコラムのホームページからの削除も行った。

 だが、TBS側の説明は、全くの虚偽だった。盗用コラムを書いていたのはフリーライターではなく、編成制作本部スポーツ局の「担当部長」の肩書を持つTBS社員だった。
 本紙の調査で、毎日新聞朝日新聞からの盗用もあることがわかった。指摘を受けたTBSは急ぎ綿密な調査を行い、11日夜、担当部長が本紙からの5件以外にも毎日から11件、朝日から1件の計17件の盗用をしていた、と発表した。

 TBSの最初の説明を記事にした本紙は、結果的に誤った情報を読者に伝えてしまった。担当部長の行為は言うに及ばず、事実が発覚した後のTBSの社内調査もあまりにお粗末ではないか。

 担当部長は、盗用について「(コラムにする)話題が乏しくなって、魔が差してしまった」と弁明しているという。

 二度、三度と盗用を重ねるうちに常態化してしまった。それをチェックする体制がTBS社内にはなかった。きちんとした再発防止策を講じてほしい。

 放送、新聞、雑誌など、メディアで働く人間が、盗用の誘惑にかられることは皆無ではない。

 原稿の締め切り時間が迫る中、パソコンで新聞記事のデータベースにアクセスし、過去の記事を参考に急ぎ原稿を仕上げる、といった作業が行われる。書物など関係資料にあたって、それを横目に記事を作成する際も同様だ。「ほんの数行程度なら……」と考えてしまうこともないとは言えないだろう。

 過度の引き写しは、盗用にほかならない。元の記事やコラムの下地となった筆者の取材、創意工夫、ジャーナリズム精神までをも踏みにじることになる。

 私たちも、自戒したい。

5月13日付・読売社説(2)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050512ig91.htm

 まあ、TBSのメディアとしての自覚の無さは、呆れて何も言えないのですが、このあたりの詳しい情報は、例によって『愛・蔵太の気ままな日記』で愛・蔵太さんがしっかり押さえております。

『愛・蔵太の気ままな日記』
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050514#p2

 話を読売社説に戻しますが、「盗みとウソ――。二重の背信行為に、怒りを通り越して、あきれてしまう。」という強烈なTBS糾弾の冒頭文から始まり、「TBSの最初の説明を記事にした本紙は、結果的に誤った情報を読者に伝えてしまった。担当部長の行為は言うに及ばず、事実が発覚した後のTBSの社内調査もあまりにお粗末ではないか。」と、TBSのうそのお陰で誤報してしまったと嘆いています。(苦笑

 社説の結語では、「 過度の引き写しは、盗用にほかならない。元の記事やコラムの下地となった筆者の取材、創意工夫、ジャーナリズム精神までをも踏みにじることになる。」と、「ジャーナリズム精神」を持ち出して、最後に「私たちも、自戒したい。」と結んでいます。

 まあ、記事を盗まれた側の読売新聞としては被害者として、言いたい放題なわけでありますが・・・



●何とも情けないTBSの謝罪のお知らせ

 同じく昨日、TBSホームページでも通常の編成を中断してTOPで謝罪のお知らせを載せました。

TBSホームページにおける新聞記事盗用について
当サイト内のスポーツ関連ページにおける新聞記事の盗用についてお知らせします。

弊社では11日の調査に引き続き、12日は、新聞記事データベースに検索をかける方式で問題となったコラム「DUGOUT」147本すべてについて、より細かなキーワードを設定し、改めてチェック致しました。それを踏まえて執筆者の担当部長にも確認致しました。

その結果あらたに18本について盗用があることが判明しました。その内訳は読売新聞から10件、毎日新聞から8件、朝日新聞から4件です。合計が18本を上回るのは、1回のコラムで複数の新聞から盗用しているケースがあるためです。

これで問題となったコラムの新聞記事の盗用は合計35本となりました。

あらたな18本について11日の調査で捕捉することができなかったことについてお詫びいたします。

また、こうした結果になったことにつきまして、視聴者の皆様、TBSのホームページをご覧いただいている皆様、それに読売新聞社毎日新聞社朝日新聞社をはじめ関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。

記事の盗用というあるまじきことを繰り返し行い、しかも当初は自らの責任を転嫁する虚偽の説明を行っていたことはまことに遺憾なことであり、弊社といたしましては、今後、厳正に対処いたします。
http://www.tbs.co.jp/

 なんだかなあ、情けないのひとことであります。

 日本のマスメディアは身内に甘すぎます!!

 「まことに遺憾なことであり、弊社といたしましては、今後、厳正に対処いたします。」と結んでいますが、愛・蔵太さんも指摘されていましたが、せめてジャーナリストの集団としての最低限の責任として、文責のある「執筆者の担当部長」の名前ぐらいは公表すべきであります。

 メディアリテラシーうんぬん以前のジャーナリズムのマナーでしょう。



脱線事故会見巡る不適切発言でおわび…読売・大阪本社

 しかしです。読者のみなさん、この話はここで終わらないのが、今の日本のマスメディアの情けない状況なのであります。
 あれだけ社説まで使ってTBSに「報道倫理」を説教した読売新聞ですが、その社説を載せた同じ日(13日)に、なんとも奇妙な報道倫理に関する「お詫び」を掲載しているのであります。

脱線事故会見巡る不適切発言でおわび…読売・大阪本社

 読売新聞大阪本社は12日、尼崎脱線事故記者会見での同社記者の不適切な発言について、社会部長名で談話を出した。

          ◇

 脱線事故をめぐるJR西日本幹部の記者会見で、読売新聞大阪本社の社会部記者に不穏当・不適切な発言があり、読者の読売新聞およびジャーナリズムに対する信頼を傷つけたことはまことに残念です。読者や関係者に不快感を与えたことに対し、深くおわびします。大阪本社は事実を確認した段階で、ただちに当該記者を厳重注意のうえ、既に会見取材から外すなどの措置を取っています。

 本社は日ごろから、日本新聞協会の新聞倫理綱領、読売新聞記者行動規範にのっとり、品格を重んじ、取材方法などが常に公正・妥当で、社会通念上是認される限度を超えないよう指導してきました。今回の事態を重く受け止め、記者倫理の一層の徹底を図ります。
 JR西日本の記者会見は記者クラブ員のほか、新聞、テレビ各社から常時100人から50人の記者が出席して事故発生の4月25日から連日開かれています。

 当該記者は、5月4日から5日未明の幹部の会見で、事故直後の対応や天王寺車掌区の社員がボウリング大会や懇親会を開いていた問題の説明を求め、「あんたら、もうええわ、社長を呼んで」などと声を荒らげたり、感情的発言をしたりしていました。

 JR側の説明が二転三転したため、会見は全体として詰問調になったようですが、当該記者の発言の一部は明らかに記者モラルを逸脱していました。

 この模様がテレビや週刊誌で報道されると、読者から叱責(しっせき)や苦情が寄せられました。使命感や熱心さのあまりとはいえ、常に心がけるべき冷静さを欠いたと言わざるを得ません。日ごろの指導が生かされなかったことに恥じ入るばかりです。

 脱線事故報道では今も、社会部などの記者70人前後が取材を分担、遺族らの声に耳を傾け、事故原因やその背景など、惨事の真相に迫る努力を続けています。引き続き全力で取材に取り組みます。

 大阪本社社会部長 谷 高志

2005/5/13/03:09 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050513ic01.htm

 「あんたら、もうええわ、社長を呼んで」などと声を荒らげた、例の無礼で不遜な態度で物議をかもしたおひげの記者のことで、読売新聞がお詫びしているのであります。



●報道倫理にまつわる読売新聞の恥ずかしいダブルスタンダード

 しかし、読売はなんという間の悪さでしょう(苦笑。

 社説でTBSに「報道倫理」を説いた同じ日に、読者に「今回の事態を重く受け止め、記者倫理の一層の徹底を図り」などと、自社の「報道倫理」をお詫びしているわけであります。(苦笑

 なんとも恥ずかしい報道倫理にたいするみごとなダブルスタンダードではありませんか。

 だったら、読売はTBSのこと、批判する資格など無いでしょう。

 さんざん、JR職員に対し、誹謗中傷・罵詈雑言にも近い言葉を浴びせ続けた社会部記者を擁していて、批判されたら「お詫び」のお知らせですませるのでしょうか?

繰り返しになりますが、日本のマスメディアは身内に甘すぎます!!

 このお詫びでも、社会部記者の氏名すら公表されていません。

 ・・・

 ふう。

 なんだかなあ、今日は報道倫理にまつわる読売新聞のなんとも恥ずかしいダブルスタンダードの話でした。

 読者のみなさまは、いかがお感じになられましたでしょうか?



(木走まさみず)

<関連テキスト>
●報道倫理にまつわる読売新聞の恥ずかしいダブルスタンダード(追記)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050514