木走日記

場末の時事評論

首都圏・東京でメガクラスター(巨大集団感染)が発生する可能性は無視できない

世界でこの10日間で起こっていることをあらためて正確な数値で検証します。

現在、各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況の正確な情報が公開されているのは外務省の以下のサイトです。

外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/

10日前、3月11日時点の各国感染者数を見てみましょう。図は二つになります。

■図1:新型コロナ国別感染者数推移①(3月11日現在)
f:id:kibashiri:20200311154848p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

中国、イタリア、イラン、韓国の感染者数が突出していることが確認できます。

次に、3月11日時点の上記4国を除いた各国の感染者数推移はこちらになります。

■図2:新型コロナ国別感染者数推移②(3月11日現在)
f:id:kibashiri:20200311155737p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

さて、それから世界の感染者数は劇的に増加します。

現在(3月19日時点)の各国感染者数を見てみましょう。図は三つになります。

■図3:新型コロナ国別感染者数推移①(3月19日現在)
f:id:kibashiri:20200320140502p:plain
■図4:新型コロナ国別感染者数推移②(3月19日現在)
f:id:kibashiri:20200320140519p:plain
■図5:新型コロナ国別感染者数推移③(3月19日現在)
f:id:kibashiri:20200320140534p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

欧米諸国で感染者が急増していることがわかります。

9日間で感染者数の推移を見てみましょう。

■図6:新型コロナ国別感染者推移(3月11日〜3月19日)
f:id:kibashiri:20200320142348p:plain
※『木走日記』作成

この九日間の感染者の増加率をグラフ化してみます。

■図7:新型コロナ国別感染者増加率(3月11日〜3月19日)
f:id:kibashiri:20200320140549p:plain
※『木走日記』作成

米国の9倍を筆頭に欧米ではいわゆる感染者爆発(オーバーシュート)が起こっていると推測されます。

欧米で起こっていることは、クラスター(集団感染)がさらなるクラスター(集団感染)を複数発生させ、巨大なるメガクラスター(巨大集団感染)を発生させている状態だと推測されます。

さて、この9日間の感染者数増加率1.609倍の日本についてです。

疫学的に日本は、すばらしく感染者数を抑制していると評価できると思います

そのうえでですが、もし日本でメガクラスター(巨大集団感染)が発生するとすれば、人口密度・日別人口流動を考えれば、間違いなく首都圏・東京が心配されます。

東京で感染者爆発(オーバーシュート)が起こってしまえば、欧米ですでに起こっているように日本全体に感染者が広まってしまう可能性が大です。

あえてこのタイミングで、読者のみなさまに最悪の可能性を提示しておきます。

油断大敵という意味を込めてです。



(木走まさみず)

世界中で「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまう理由

新型コロナウイルスの影響で、日本では根拠もなくトイレットペーパーが品薄なわけですが、興味深いことにこの現象は日本だけではないようです。

(関連記事)
アメリカでも買いだめでスーパーは品薄に トイレットペーパーなど一部商品の販売制限も
2020年3月16日(月)12時02分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/03/post-92752.php

日本の場合、「トイレットペーパーの原料は中国から輸入していたから品薄になる」というフェークニュースがネットで広まり、またたく間にスーパーやコンビニの棚からトイレットペーパーが無くなってしまったのであります。

フェークを信じた情報リテラシーの低い者はおそらく1%もいなかったはずですが、その情報リテラシーの低い者が買い占めに走り出すと、その他99%の「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出す、このような現象が起こり、「トイレットペーパーが品薄になる」というフェークは「現実」になってしまったわけです。

世界中で「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまう、そこにはどのような理由があるのでしょうか。

この現象をゲーム理論を用いて説明している記事がいくつかあり、興味深いです。

(参考記事>

古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」:
トイレットペーパーを「買い占める」ほうが”合理的”であるシンプルな理由 (1/2)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2003/04/news092.html

買い占めに走る消費者は「間抜け」なのか?
ゲーム理論「協調ゲーム」で考える消費者行動の合理性
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/030900081/?P=1

トイレ紙買いだめ理にかなった行為か ゲーム理論だと…
https://www.asahi.com/articles/ASN3J5SVYN3JUPQJ00Q.html

なぜ「在庫は十分」なのにトイレットペーパーが買えなくなるのか
御田寺 圭 2020/03/13 11:15
https://www.msn.com/ja-jp/money/business/%E3%81%AA%E3%81%9C%EF%BD%A2%E5%9C%A8%E5%BA%AB%E3%81%AF%E5%8D%81%E5%88%86%EF%BD%A3%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AB%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%81%8C%E8%B2%B7%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/ar-BB117uKQ

それぞれ大変興味深い考察です。

私は、ゲーム理論を学校で学生相手に今も講義をしています。

なぜ「まともな人たち」も雪崩をうって買い占めに走り出してしまうのか? 今回はわかりやすくゲーム理論の入門解説を試みたいと思います。

ゲーム理論に関心はあるがよくわからないという初心者の読者は、時間が許すならばお付き合いください。

・・・

最初に「囚人のジレンマ」問題でゲーム理論の基本的な考え方を説明します。

ゲーム理論の参考書で必ず出てくる有名な問題に「囚人のジレンマ」があります。

囚人のジレンマ問題

ある事件において共犯と思われる二人の囚人(囚人A、囚人B)が留置所に収監されている。決定的な証拠がない二人の囚人は完全に隔離された上で、双方に同じく以下の条件が与えられた。

・もし、あなたが黙秘し、もう一人も黙秘したら、二人とも懲役2年である。
・もし、あなたが自白し、もう一人が黙秘を続けた場合、あなたを無罪にする。もう一人は懲役15年とする。
・もし、あなたが黙秘し、もう一人が自白したら、あなたは懲役15年、もうひとりは無罪となる。
・もし、あなたが自白し、もう一人も自白した場合、双方とも懲役10年とする。
・もう一人の方にも、全く同一の条件を伝えてある。

このとき、囚人がどちらを選択するのがよい戦略かというのが問題である。

ゲーム理論では、合理的な行動を予測するために、当事者の「利得」を場合分けした表を作成します。

f:id:kibashiri:20200317151326p:plain
※『木走日記』作成

この表の見方ですが、例えば囚人Aが黙秘し、囚人Bも黙秘した場合、左上のマスになります。

「ー2・ー2」(A・B)とあるのは、この場合、AもBも懲役2年(懲役をマイナスで表現しています)になることが示されています。

さて二人の囚人にとってどの選択が共通の利益になるのかはそれぞれの利得値の合計で判断できます。

合計値は、左上のマスー4、右上のマスー15、左下のマスー15、右下のマスー20です。

左上のマス、つまりAもBも沈黙すれば、双方懲役2年で最適解であることが分かります。

二人とも「二人が協調して黙秘することを選択すれば、二人の懲役は共に2年ですむ。」ことが最高の果実(専門用語では「パレート最適」と言います)であることを理解しているのです。

しかし、二人の囚人は完全に隔離されているので相談することはできません。

そうすると、囚人Aにとっては、囚人Bが自白しようが黙秘しようが、いずれも自白を選択する方が囚人Aにとって「最適な選択」(支配戦略)であるということ、つまり合理的な判断で「自白」を選択するのです。

囚人Aにとって黙秘した時の自分の利得はー17(囚人Bが黙秘ならー2と囚人Bが自白ならー15)で、自白した時の自分の利得はー10(囚人Bが黙秘なら0と囚人Bが自白ならー10)を比較して、合理的に利得の多い「自白」を選択してしまうのです。

この問題がなぜ「囚人のジレンマ」と名付けられているかといえば、二人とも「二人が協調して黙秘することを選択すれば、二人の懲役は共に2年ですむ。」ことが最高の果実(専門用語では「パレート最適」と言います)であることを理解しているにも関わらず、二人とも、それぞれ一人で考えた「最適な選択」(支配戦略:専門用語では「ナッシュ均衡」と言います)は、いずれも自白、結果二人の懲役は共に10年を選択してしまうということです。

f:id:kibashiri:20200317151344p:plain
※『木走日記』作成

ここから本題です。

さてトイレットペーパーを買い占めてしまう行動をゲーム理論の「協調(コーディネーション)ゲーム」で説明を試みます。

ゲーム的状況の中には、プレイヤー同士が別々の戦略をとることがナッシュ均衡になるものもありますが、プレイヤー同士が同じ戦略になるように戦略を協調させることが、ナッシュ均衡をもたらすゲームもあります。

このようなゲームが「コーディネーション(協調)ゲーム」です。

今、自分(A)と周りの人たち(B)がプレイヤーです。その取りうる戦略は「あわてない」と「買いに急ぐ」の二択だとします。
両者ともあわてないときの利得が+2・+2、どちらかが買い急ぎどちらかが慌てなかった時の利得は買い急いだ側が+1、あわてなかった側がー1、両方とも買いに急いだ場合双方とも利得は0とします。

利得表はこうなります。

f:id:kibashiri:20200317161424p:plain
※『木走日記』作成

自分(A)の立場で考えます。

周りの人たち(B)があわてない限り、自分もあわてないことが、支配戦略(ナッシュ均衡)となります。

ありがたいことにこの戦略はこのゲームの最高の果実(パレート最適)でもあります。

f:id:kibashiri:20200317161511p:plain
※『木走日記』作成

この状態は「協調が成功している」と言われます。

しかし、もし周りの人たち(B)が買いに急いだ場合は話が変わります。

周りが買い急ぎ自分だけが慌てない場合(右上のマス)、自分の利得はー1になりますので、自分もあわてて買い急ぐほうが、利得0(右下のマス)ですから、右下のマスが支配戦略(ナッシュ均衡)になります。

f:id:kibashiri:20200317161528p:plain
※『木走日記』作成

この場合、支配戦略が最高の果実とはずれていますので「協調が失敗している」状態ですが、プレイヤー自分(A)は、これしかない戦略として、合理的に判断して行動しているのです。

まとめます。

このように戦略を協調させることが、ナッシュ均衡をもたらすゲームをコーディネーション(協調)ゲームと呼びます。

人はコーディネーションゲームで、利得の高い均衡と低い均衡があっても、必ずしも高い均衡を選ぶとは限らないのです。

コーディネーションで利得の低い均衡を選んでしまうことを「コーディネーションの失敗」と言います。

周りの人たち(B)がトイレットペッパーの買い占めに走ると、協調は失敗に終わり、自分(A)も買い占めに走ることが合理的な行動となります。

以上、トイレットペーパーを買い占める人たちの行動原理の説明をゲーム理論で試みました。

本エントリーが読者の知見を深めるのに少しでもお役に立ちましたら幸いです。



(木走まさみず)

1万円ほどの「商品券を配布」とかズレまくっている与党幹部案〜現金給付をやるならば、アメリカ並みに一人10万円をキャッシュでバラ撒くべき

報道によれば、米政府は国民に直接現金給付も含めた総額1兆ドル(107兆円)の経済対策を検討しているとのことです。

ティーヴン・ムニューシン米財務長官は17日、「米国民に直ちに小切手を送る考えだ」、「米国民はいま現金を必要としており、大統領はいま現金を給付したいと思っている。いまというのは2週間以内のことだ」と述べました。

米政府は巨額の経済対策を議会と協議しており、総額2500億ドル(約26兆9000億円)分の小切手の送付はその一部となります。

(関連記事)
米政府、国民に現金給付を検討 1兆ドルの経済対策
https://www.bbc.com/japanese/51940101

一人当たり1000ドル(10万7000円)を検討しているとのことです。

イギリスの年間予算にほぼ匹敵する1兆ドルの経済対策は、2008年金融危機の際の対策よりも大型で、米連邦政府の昨年の歳出の約25%に当たる規模となります。

小切手の給付のほか、航空業界やホテル業界への救済措置などが含まれる見込みです。

上記BBCの記事によれば、「1000ドルの小切手では不十分だ」とし、「閉鎖中の小規模事業所の賃金と維持費の負担を大規模に支援すること」も合わせて実施すべきとする大学教授の意見も載せています。

記事より当該箇所を抜粋。

現金給付をどうみる

バラク・オバマ前大統領の政権時代、経済諮問委員会の委員長を務めた米ハーヴァード大学のジェイソン・ファーマン教授(経済学)は、現金給付を主張してきた。

ファーマン氏は、「人々が仕事を休む必要があるときに、休めるようになる。家賃の滞納を防ぐことにもなる」、「外出しないでお金を使う方法はたくさんある」とBBCに話した。

一方、民主党エリザベス・ウォーレン上院議員のアドバイザーを務めるカリフォルニア大学のゲイブリエル・ザクマン教授は、大規模な失業や倒産を防ぐためには、政府は企業支援を優先すべきとの考えを示した。

ザクマン氏は、「1000ドルの小切手では不十分だ。アメリカに必要なのは、閉鎖中の小規模事業所の賃金と維持費の負担を大規模に支援することだ」とツイート。議会には両方の実施する道もあるとした。

2週間以内に国民に一人当たり1000ドル(10万7000円)の現金を給付するとムニューシン米財務長官が述べています。

その規模とスピード感に驚かされます。

米議会は3月6日、ワクチン開発などに充てる83億ドルの緊急補正予算を成立させ、16日には下院で新型コロナの検査無償化などを盛り込んだ100億ドル規模の「経済対策第2弾」を可決済みです。

今回は第三弾なわけですが、航空業界救済も含め総額1兆ドル(107兆円)の経済対策であります。

個人が受け取る小切手の額1000ドルや受給資格などは実はまだ検討中であり確定はしていませんが、報道によれば細かい調整はありそうですがほぼこの予算規模で実施される見込みです。

米政府は今の経済的状況を相当深刻に捉えているのだと思われます。

で、日本です。

政府・与党が1人あたり1万2000円の現金給付を検討していることが分かりました。

(関連記事)
コロナ対策「現金給付1万2000円以上」政府与党検討
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000179353.html

何かアメリカ政府の政策と文字通り1桁少ない現金給付なのであります。

さらに記事によれば、「与党幹部からは商品券を配布することで確実に消費につなげる案も浮上」とのことです、現金給付にすらならない案です。

収入を失い光熱費や家賃の支払いにも支障がでている困窮層に、1万円ほどの「商品券を配布」って、ズレまくっています。

この自民党幹部は、今の世界経済の深刻な局面を完全に読み間違っています。

正にセンスがない、ナンセンスな与党幹部案なのでした。

「商品券を配布」でみみっちい消費の確保をして何になります?

それよりも困っている世帯の生活救済こそ第一義に考えるべきです。

いちおう「現金給付1万2000円以上」と「以上」がついていますので、どこまで増額されるのかはまだ不明ですが・・・

現金給付をやるならば、アメリカ並みに国民一人当たり10万円をキャッシュでバラ撒くべきです、しかも時間をおかずにです。

現金給付をやるならば、アメリカ並みに大胆に実施すべきです。

この局面で1万円ぽっちの小出しの給付など、何の経済効果も生みませんし、何の救済にもなりません。



(木走まさみず)

日本だけが感染者数を低く抑え続けることは、疫学的・統計学的には非常に難しい〜日本は冷静にこの新型の疫病と持続可能な対策を講じるべき

ここへきてヨーロッパの状況の悪化が顕著です。

さて現在日本の新型コロナウイルスの感染状況を含め、国際比較をしつつ検証してまいりたいと思います。

この6日間(3月11日〜3月16日)の変化を検証します。

各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況の正確な情報が公開されている外務省のサイトは以下です。

外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/

まずは3月11日の国別感染者数推移①を見てみます。

■図1:新型コロナ国別感染者数推移①(3月11日現在)
f:id:kibashiri:20200316174244p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
※グループ分けは『木走日記』付記
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

中国、イタリア、イラン、韓国の感染者数が突出していることが確認できます。

この段階でイタリア、イラン、韓国をグループAとします。

グラフの縦軸に着目してください、感染者数8万の中国までグラフに入れていますが、2番目のイタリアが範囲に入るように12000人(赤丸を付けました)が中国を除けば軸の最大値になっています。

この目の荒い軸では日本(568人)はほぼフラットな線に見えます。

次に、上記4国を除いた各国の感染者数推移②はこちらです。

■図2:新型コロナ国別感染者数推移②(3月11日現在)
f:id:kibashiri:20200316172139p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
※グループ分けは『木走日記』付記https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

やはりグラフの縦軸に着目すると、最大が1900人(赤丸を付けました)と拡大されていますので、明らかに2つのグループが存在していることが見て取れます。

感染者数および伸び率から、上位のフランス、スペイン、ドイツ、米国をグループB、日本、スイス、オランダ、英国をグループCとします。

このように国際比較すると、日本は中国を除けば感染者数とその伸び率は比較的低い第三グループCに位置づけられます。

このサイトでは国別感染者数推移のグラフを今確認したように、上位国を確認するグラフ①と下位国を確認するグラフ②を、それぞれ縦軸の目盛りを変えて2つのグラフで表現しています。

さてたった6日間で2つのグラフは様変わりします。

まずは3月16日の国別感染者数推移①を見てみます。

■図3:新型コロナ国別感染者数推移①(3月16日現在)
f:id:kibashiri:20200316174029p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
※グループ分けは『木走日記』付記
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

縦軸の最大が、中国を除けば12000人から24000人(赤丸を付けました)と倍になっていることに着目してください、これは5日前から比べて、2番目のイタリアの感染者が10149人から24747人に増えているためです。

さらに着目したいのは、グループB・Cからスペインが抜け出す形で韓国に迫り、グループAに加わっています。

3月16日の下位の国を、感染者数推移②で確認します。

■図4:新型コロナ国別感染者数推移②(3月16日現在)
f:id:kibashiri:20200316174049p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
※グループ分けは『木走日記』付記
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

5日前は1900人だった縦軸の最大が、4倍以上の8000人(赤丸を付けました)になっていることに着目してください。
8000人に迫るスペインだけでなく、グループBのフランス、ドイツ、米国も感染者数が拡大していることも見て取れます。

グループCの中でも、少し見づらいですが、スイスと英国などが感染者数・伸び率共に増加していることが分かります。

新たにノルウェースウェーデンオーストリアなどヨーロッパの諸国がグループCに加わっています。結果、このグラフでは日本はグループCの最下位に位置づけられています。

目立つのはこの六日間で欧米諸国で感染者数が爆発的に増えていることです。

国別の感染者の増加率をグラフ化してみました。

■図5:新型コロナ国別感染者増加率(3月11日〜3月16日)
f:id:kibashiri:20200317075224p:plain
※外務省 公開サイト『各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況』より
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html
※『木走日記』作成

スペインはなんと4.78倍です、他の欧米諸国も軒並み2.4〜3倍以上です、驚くべきはこの感染者の増大がたった6日間で起こっていることです。

逆に中国と韓国は、1.001倍、1.062倍と感染者数に関しては収束に向かっていると見てよろしいでしょう。

さて注目するのは、六日間の国別の感染者の増加率が1.433倍の日本です。

この値をどのように評価しそしてどのような将来の感染者数推移の予測をするのか。

遠くない将来、この新型ウイルスも今までインフルエンザや流行性感冒がそうであったように、全世界的に国民の感染率がフラット(かつ高め)に近づいていくとすれば、抗体保有者も増えて落ち着いてくることでしょう、残念ながら今感染者数の少ない日本国もやがて感染者数は確実に増えていくことでしょう。

問題はそのペースだけであり、日本だけが感染者数を低く抑え続けることは、疫学的・統計学的には非常に難しいことでしょう。

つまり、欧米のような急激な感染者爆発でイタリアのように医療リソースが破綻することは絶対に避けなければなりませんが、このウイルスとの戦いは、かなりの長期戦を覚悟しなければなりません。

とすれば、医療破綻を避けつつ、しかし経済破綻してしまうような持続不可能な無理のある対策も避ける、絶妙なバランスの政策が求められると考えます。

前回私は日本は「自粛要請を打ち切る政治的決断の時」だとのエントリーさせていただきました。

安倍首相の責任において自粛要請を打ち切る政治的決断の時
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/03/15/182113

主張のコアの部分を再掲します。

ここは政治的決断の時です。

安倍首相の責任において自粛要請を打ち切ると共に、国民に新型コロナウイルスとの戦いは、「短期決戦型」の勝利は不可能であることをわかりやすく説明をしていただきたいです。

新型コロナウイルスを短期で撲滅することはその感染力からほぼ不可能であること、しかしながら今までのインフルエンザや感冒と同様に、中長期的に人間社会と「共生」させることは可能であること、やがて人類にとって毎年のようにはやる流行性感冒が一種類増えただけという当たり前のような存在になること、医学的・科学的知見を得た上で、国民心理をパニックに陥らせないように説明していただきたいです。

そのうえでこれ以上、自粛要請の延長は、現在まで判明した疫学的事実は徹底的に配慮した上ですが、全面的に解除すべきです。

ここは政治的決断の時です。

長期間でも持続可能な柔軟なウイルス対策を取るべきであり、全国一律のイベント中止要請など経済的に破綻してしまうような、政府による自粛要請は、この際解除すべきだと考えます。

解除したとして、学校の休校期間は、公立校は各自治体の判断に委ね、私学は各学校法人の判断に委ね、各イベントの開催するかしないかも官民のそれぞれの主催者の判断に委ねればよろしいと思うわけです。

また万が一、解除によりその反動で感染者数増加の兆候が見られたら、すぐに政府による必要な対策を復活すると、解除の際条件を付けるのも有効だと思われます。

中長期的には日本だけが感染者数を低く抑え続けることは、疫学的・統計学的には非常に難しいと考えます。

日本は、欧米とは独自に、冷静にこの新型の疫病と持続可能な対策を講じるべきだと考えます。



(木走まさみず)

安倍首相の責任において自粛要請を打ち切る政治的決断の時

厚生労働省によると、14日発生が確認された新型コロナウイルスの国内感染者は63人となり、1日での報告者数としては過去最多となりました。

(関連記事)
新型コロナウイルスの国内感染者、1日で過去最多の63人-厚労省
2020年3月15日 10:30 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-15/Q77LE6T0G1O401

当ブログが集計してきた日本国内の感染状況【日別発生数】は以下のとおりです。

■図1:日本国内の感染状況(3月15日現在)【日別発生数】
f:id:kibashiri:20200315170915p:plain
※『木走日記』作成

明らかに増加傾向にあるわけですが、増加する傾きを視覚的に近似してみましょう。

当日の発生数を棒グラフで、過去5日の発生数の平均を折れ線グラフで描きます。

■図2:日本国内の感染状況(3月15日現在)【日別発生数と直近5日の平均】
f:id:kibashiri:20200315170933p:plain
※『木走日記』作成

ご覧のように5日平均値のグラフは、棒グラフの凸凹を丸めて近似的に傾きがあらわれています。

ちなみに平均値を計算するデータ数(5日)を大きくとればとるほどグラフは丸まり(凹凸が減り)ます。

赤いグラフの傾きは、残念ながら日本国内の感染者日別発生数がいまだ時と共に増える傾向にあることを示しています。

数値で確認する限り、感染者数の発生を抑えることはいまだできていません、そしてグラフでご覧いただいたように、今後5日とか10日で大きく感染者数が減少する兆候は全く見られません。

さて3月20日です。

安倍総理大臣は10日、緊急対応策の第2弾を発表しました。また、大規模イベントなどの自粛については今後、さらに10日間程度、延長するように要請しました。

安倍総理大臣は「全国規模のイベントについては、中止・延期・規模縮小等の対応を要請したところですが、専門家会議の判断が示されるまでの間、今後、おおむね10日間程度はこれまでの取り組みを継続頂くよう、ご協力をお願い申し上げます」と述べています。

(関連記事)
新型肺炎“自粛延長”あと10日で十分?いつまで?
[2020/03/10 23:27]
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000178626.html

冷静に考えてあと5日で感染者数の増加が収まるとは思えません。

逆に感染者の増加率がさらにアップしていく兆候さえ見られるわけです。

この新型コロナウイルスは致死率は低いですがその感染率は予想以上に強いことがわかってきています。

発生を抑えることは容易なことではありません。

ならば疫学的には感染者数の増加が収まるまで学校休校やイベント中止を継続していくのが正解でしょう。

しかし、これ以上中長期の自粛期間の延長は、経済的に持たないでしょう。

ここは政治的決断の時です。

安倍首相の責任において自粛要請を打ち切ると共に、国民に新型コロナウイルスとの戦いは、「短期決戦型」の勝利は不可能であることをわかりやすく説明をしていただきたいです。

新型コロナウイルスを短期で撲滅することはその感染力からほぼ不可能であること、しかしながら今までのインフルエンザや感冒と同様に、中長期的に人間社会と「共生」させることは可能であること、やがて人類にとって毎年のようにはやる流行性感冒が一種類増えただけという当たり前のような存在になること、医学的・科学的知見を得た上で、国民心理をパニックに陥らせないように説明していただきたいです。

そのうえでこれ以上、自粛要請の延長は、現在まで判明した疫学的事実は徹底的に配慮した上ですが、全面的に解除すべきです。

ここは政治的決断の時です。



(木走まさみず)

2ヶ月後の我が国の感染者数を、3つのシナリオで予測〜安倍政権は極めて難しい政治判断を求められる

今回はモデルを用いて2ヶ月後の我が国の感染者数を、3つのシナリオで予測したいと思います。

まずは正確な現状の数値を押さえます。

■図1:日本国内の感染状況(3月13日現在)【発生数累計】
f:id:kibashiri:20200314192057p:plain
※『木走日記』作成

グラフの傾きは残念ながら明らかに増加傾向にあります、指数関数的とは言えませんが二次関数的には傾きがましていると判断できそうです。

これは毎日確認される感染者数すなわち【日別発生数】をグラフにすればより明確に分かります。

■図2:日本国内の感染状況(3月13日現在)【日別発生数】
f:id:kibashiri:20200314192112p:plain
※『木走日記』作成

ここでシナリオを三つ用意します。

・シナリオ①
現在の59名の発生数がピークでありこの後暫時発生数は減少していく
・シナリオ②
日別発生数は100人まで増加し、そのあと減少していく。
・シナリオ③
日別発生数は200人まで増加し、そのあと減少していく。

解説します、図2でも確認できますが明らかに【日別発生数】は現在も増加傾向にあります。
従って現在をピークとする・シナリオ1は可能性としては少ないのですが、もっともおとなしい予測になるはずです。
ピーク100人を設定した・シナリオ2は、ここまでの経過から増加ペースを実測値を継承しているミドルの予測と言えます。
・シナリオ3は、イタリアや韓国のようにピーク時200人の感染者が発生してしまうもっとも危険なシナリオといえましょう。

■図3:日本国内の感染者数予測(3月13日現在)【日別発生数】
f:id:kibashiri:20200314192130p:plain
※『木走日記』作成

実際の発生数はこのような直線的なグラフ予測にはならないはずですが、モデルを用いたあくまでシミュレーションなのでご理解ください。

さて実際のシミュレーション実行結果です。

■図4:日本国内の感染者数予測(3月13日現在)【発生数累計】
f:id:kibashiri:20200314192148p:plain
※『木走日記』作成

二ヶ月後に・シナリオ1は2500人前後で感染者数は収束を見ています。

・シナリオ2は5200人前後、・シナリオ3は9500人前後ですが収束はまだしていません、・シナリオ3は最終的には1万人を超えることでしょう。

もちろん、ここでお示しした3つのシナリオは、無限にあるシナリオから当ブログが勝手にピックアップしたものであり、感染者がこれより以下に少ない将来予測も、逆にこれ以上に拡散してしまう将来予測も、十分に有り得ることは留意してくださいませ。

さてです。

いくつかシミュレーションして理解できることは、ここ2週間ほどでこの状況の拡散や収束を判断することは極めて困難であるだろうことです。

何をもって、現在の学校休校措置やイベント中止の要請を解除できるのか、あるいは逆に何をもって緊急事態宣言となるのか、何を基準に判断するというのでしょうか?

いつまでも今のようなイベント抑制などを続ければ経済が持ちません。

では、要請を解除したとき、仮にそのとき感染者数がさらなる増加に転じた場合、判断ミスとの批判は免れません。

ここ半月で、安倍政権は極めて難しい政治判断を求められることになるでしょう。



(木走まさみず)

新型コロナウィルス惨禍をいち早く克服しつつある中国経済〜なにか釈然としない了見の狭い私

欧米株が12日、歴史的な急落に見舞われました。米ダウ工業株30種平均終値は、前日比2352ドル60セント安い2万1200ドル62セントと下落幅は過去最大となりました。
欧州株も軒並み10%以上下落しました。トランプ米大統領が11日夜、新型コロナウイルスの拡大阻止のため、英国を除く欧州からの外国人の入国禁止を発表。経済活動が世界で収縮する懸念が強まったためです。

(関連記事)
NYダウ2352ドル安、過去最大の下げ幅 米入国制限警戒
2020/3/13 5:03 (2020/3/13 7:27更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56743620T10C20A3000000/

上記記事によれば、ダウ平均は下落率(9.99%)でみても、リーマン・ショック時の08年10月15日(7.87%)を上回り、1987年10月19日のブラックマンデー(22.61%)以来の大きさとなったとあります。

2月12日に付けた史上最高値からの下落幅は8300ドル(28%)超に達した模様です。

さて世界同時の株暴落連鎖を受けて日経平均終値は、1128円安の1万7431円と、2016年11月以来3年4カ月ぶりの安値に沈みました。

(関連記事)
日経平均終値、1128円安の1万7431円
2020/3/13 15:01 (2020/3/13 15:08更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56755270T10C20A3000000/

あらためてここ二ヶ月(1/15〜3/13)の日経平均終値の推移をグラフにしてみます。

日経平均終値の推移
f:id:kibashiri:20200313160115p:plain
※『木走日記』作成

ご覧のとおり、この二ヶ月でピークから6652.46円減少、率は27.62%と、NYダウの28%(下落幅8300ドル)とほぼ同率であることがわかります。

参考までに同期間イタリアの株価指数の動きを下記サイトで確認します。

イタリア40 相場情報
https://jp.investing.com/indices/it-mib-40

この二ヶ月でのピーク25477.55(2/19)から、14949.50(3/12)と、その減少率は41.32%を記録しています。

さてこの記録的世界同時株価暴落の局面で、一国だけその影響が軽微な国があります。

中国です。

ロイターの速報記事によれば、中国の代表的株式指標である上海総合指数は13日2,887.4265ポイント、前日比-36.0591ポイント、-1.23%の減少に留まっているのです。

(関連記事)
中国・香港株式市場・大引け=下落、海外市場に連れ安
https://jp.reuters.com/article/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%BB%E9%A6%99%E6%B8%AF%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%83%BB%E5%A4%A7%E5%BC%95%E3%81%91%EF%BC%9D%E4%B8%8B%E8%90%BD-%E6%B5%B7%E5%A4%96%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AB%E9%80%A3%E3%82%8C%E5%AE%89-idJPL4N2B635V?il=0

この二ヶ月の上海総合指数 (SSEC)の動向をグラフで確認いたします。

上海総合指数 (SSEC)の推移
f:id:kibashiri:20200313181019p:plain
※以下のサイトデータより『木走日記』作成
上海総合指数 相場情報
https://jp.investing.com/indices/shanghai-composite

ご覧のとおり、中国株は2月3日に早くも底値に着き、それ以降世界のどこよりも早く、株価の上昇基調に突入しているわけです。

おそらく、新型コロナウィルス惨禍をいち早く克服しつつある中国が、世界で一番早く経済回復を果たし、前回のリーマンショックのときと同様、今後世界経済をグイグイ牽引することになるかも知れません。

これはこれで人類社会にとり、今回の新型コロナウイルス惨禍に少なくとも経済的にはおぼろげながら出口が見えてきた兆候とすれば、吉報なのでしょう。

しかしながら、了見の狭い私から言わせれば、例えれば町中に広まってしまった大火事の発火場所の住人が、多くの迷惑を人々にかけたのに、誰よりもまっさきに鎮火に成功し商売を開始するようなものでしょう。

なにか釈然としません。

このモヤモヤ感をいだいてしまうのは私だけでしょうか?



(木走まさみず)