木走日記

場末の時事評論

韓国は決して屈しない!〜外交的敗北を肯定的評価で装う文在寅大統領のレトリック

韓国が失効6時間前という土壇場で、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、破棄するとしていた方針を転換し、延長することを表明しました。

文在寅大統領は米国からの大きな圧力に屈したとの指摘があります。

韓国の予想以上に米国の怒りを買ってしまったのです。

JBPRESS誌にて高濱賛氏が、ハリス駐韓米大使の発言を取り上げています。

(前略)

 ところが文在寅大統領がやったことは、米国から見れば、こうだ。

 ハリス駐韓米大使は韓国の聯合ニュースとのインタビューでこう述べている。

「韓国は、歴史認識問題を米国の安全保障と条約上の義務である朝鮮半島防衛に関する我々の能力に影響を及ぼす安保領域に拡大した」

「(日韓対立の)核心の争点は、結局、日韓の歴史認識問題だ。これが経済的な問題に拡大した。(日韓の間に)大きな違いがあるとすれば、韓国がこの問題をさらに安保領域に拡大したことだ」

(後略)

韓国はなぜGSOMIA破棄を覆したのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58338?page=5

つまり、アメリカにしてみれば、これまで日韓の歴史認識問題に関しては基本的に関わってこなかった、なぜならこの問題は日韓どちらについても米の利益にならない不毛性を有しているわけです。

しかしながら今回、韓国はこの日韓の歴史認識問題を「朝鮮半島防衛に関する我々の能力に影響を及ぼす安保領域に拡大」(ハリス氏)し、アメリカを巻き込んだわけです。

韓国政府は最終段階ではGSIOMIA破棄決定を一定期間、凍結(Freeze)し、日本が輸出規制で譲歩すれば延長する案を米側に伝えていたといいます。

ところが、ここ数日の水面下の日韓交渉で日本が輸出規制で譲歩するとの『確約』を得たために破棄決定を取り下げたといいます。

本件では日本と韓国では解釈が大きく異なることに留意が必要です。

日本では韓国が米国の圧力に屈したのだという面が強調されていますが、韓国では異なります。

例えば朝鮮日報記事は、「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を日本と輸出規制問題を話し合うことを条件に一時延長することにした」とあくまでも一時延長であり、「韓日がこれまでの姿勢から一歩ずつ引」いた、つまり日本も譲歩したから一時延期したのだと報じています。

(関連記事)

GSOMIA条件付き延長、破局回避
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/11/23/2019112380004.html

記事中、韓国政府高官は、「日本は韓国をホワイトリストに再び入れる」ことがなければ、「政府はいつでもGSOMIAの効力を終了させることができる」と何度も強調したとあります。

青瓦台の金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長は同日、「政府はいつでもGSOMIAの効力を終了させることができるという前提の下に(8月22日に決定した)GSOMIA終了通知の効力を停止させることにした」「韓日間の輸出管理政策対話が正常に行われる間、日本側の3品目輸出規制に対する世界貿易機関WTO)提訴手続きを停止することにした」と述べた。GSOMIA終了時刻の6時間前に、韓国はGSOMIAをひとまず延長し、韓日が日本の輸出規制撤回のための対話を開始するという妥協案が出たものだ。青瓦台関係者は「日本は韓国をホワイトリストに再び入れるべきだし、3品目の輸出規制は撤回されなければならない」と語り、今回の決定が「条件付き」であることを何度も強調した。文在寅大統領は「GSOMIA問題はうまくまとまった」というメッセージを青瓦台の姜ギ正(カン・ギジョン)政務首席秘書官を通じ、ハンストしている第一野党・自由韓国党の黄教安(ファ・ギョアン)代表に伝えた。

文在寅大統領は「GSOMIA問題はうまくまとまった」と韓国国民に表明しています。

この歴史的とも言える自らの外交敗北を、文在寅大統領は日本に妥協させたと肯定的評価を装っているのです。

なんというレトリックでしょう。

韓国は決して屈していない(苦笑)のです。

つくづくタフな民族だと感心してしまいます。

ふう。



(木走まさみず)