親日国家台湾のありがたくも切ない親日度を考察してみる〜日本統治時代への「郷愁」と日本文化への「憧憬」、これらが層を成している
ネット上で台湾に関する最新記事が2つ目に止まりましたので、今回はこれを取り上げます。
最初は台湾における世論調査からです。
まずはグラフを見てください。
公益財団法人交流協会台北事務所の実施した世論調査の結果によれば、「最も好きな国や地域はどこですか」(単一選択)に日本を挙げた人は42%で、調査を開始した2008年以来、4回連続で第1位だったそうで、日本に対して何らかのプラスイメージを持つ人は98%にのぼるのだそうです。
2日付けサーチナニュース記事が伝えています。
「一番好きな国は日本」…台湾でアンケ、98%がプラスイメージ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0702&f=national_0702_029.shtml
台湾の人々がいかに日本に好意を持ってくれているのか、非常にわかりやすいグラフですよね。
台湾が世界屈指の親日国であることは、3.11の大震災において台湾が群を抜いてたくさんの義援金を日本に送ってくださったことからも有名ですが、それにしてもこの世論調査の結果は、日本人としてありがたいながら、少し切なくなるものがあります。
私が切なくなるのは、台湾人の「親日」はその複雑な悲劇的な歴史背景によるところが大きいのであり、その点をあまり理解していない日本の若い人達にも、その歴史的な経緯を正しく知識として持ってもらいたいと望んでいます。
で、誰かがはかったわけではないでしょうが、上記台湾の世論調査の記事が掲載された同時期に、たいへん興味深いインタビュー記事がネットで掲載されています。
WIRED1日付け記事から。
2013.7.1 MON
INTERVIEW 『台湾アイデンティティー』監督に訊く、台湾の「日本語世代」と考える日台関係
http://wired.jp/2013/07/01/interview-taiwan-identity/
うむ、監督の酒井充子さんは、台湾をテーマにしたドキュメンタリー映画ばかりを取り続けているジャーナリストです。
台湾は1895年(明治28年)から半世紀、日本に植民地支配されていた。台湾人に生まれながら、日本人として日本語で教育を受けた「日本語世代」は、どんな戦後を送ったのか。日本の撤退、国民党の圧政、民主化へ……歴史に翻弄された彼らの戦後を通し、台湾と日本の未来を探るドキュメンタリー映画『台湾アイデンティティー』が7月6日(土)より公開される。酒井充子監督は「台湾を日本が統治し、あの時代を背負った人々がいまも生きている。日本人はそれを知ったうえで、台湾と向き合ってほしい」と語る。
たいへん興味深いインタビュー記事であります。
私が特に印象に残ったのはこの箇所です。
──取材を通して日本に対する恨み言は聞かれませんでしたか?
それが言わない、だから切ないんです。「日本人になれなかった」という彼は、日本時代を批判する視線をもち合わせていないんです。「日本人になりたかった」自分のまま、ずっと戦後を生きてきました。当時の日本による教育が純粋培養的に保たれているんです。そこが本当に切ないですね。ただし、日本がよかったわけではないんです。「日本時代のほうがよかった」と、思わなければならない時代があったということです。
うん、「日本人になりたかった」自分のまま生き続ける、だから「日本時代を批判する視線をもち合わせていない」、切ないですね。
台湾の人々をジャーナリストとしての冷徹さとしかし「元」日本植民地の苦悩を優しいまなざしで見つめ続けてきた酒井充子さんは、「わたしは日本人に、台湾という国を中国や韓国と比較せずに見てもらいたい」と主張してインタビューを結んでいます。
──日本では東日本大震災後の、台湾からの大規模な義援金などの影響もあり、台湾を「親日」とくくる見方があります。中国や韓国との関係が悪化しているいま、相対的に台湾をもち上げている印象を受けます。
日本人はわきまえてほしいです。台湾に生まれた彼らが、なぜインドネシアや日本にいるのかを、考えてほしいのです。それは日本抜きには考えられないこと。わたしは日本人に、台湾という国を中国や韓国と比較せずに見てもらいたいのです。
台湾には日本統治時代があり、あの時代を背負って生きてきた人たちが、いまも住んでいます。「何となく親日な感じがする」ではなく、日本統治時代があって、台湾のいまがあるのです。日本人にはそれを知ったうえで台湾と向き合ってほしい。そう切に願います。
台湾では日本の敗戦で日本人の統治は終わりますが、入れ替わり大陸から国民党軍とその関係者(外省人)がやってきて台湾人現地人(内省人)を迫害する、2.28事件が起こり多くの犠牲者が出ます。
国民党軍による統治は過酷を極め、多くの「日本語世代」の人々は現在でも日本統治時代を相対的に懐かしく思っています。
・・・
さて台湾に関する記事を2つ紹介しましたが、最後に興味深い事象でまとめてみたいと思います。
先の世論調査記事で「日本が最も好きな国」と回答した人を年齢別でみると若い世代ほど好感度が高くなっています。
12年調査で、「日本が最も好きな国」と回答した人を年齢別でみると、20代が54%、30代が50%、40代が37%、50−64歳が37%、64−80歳が39%だった。若い世代の方が日本への好感度が高いことが分った。
興味深いですね。
親日国家台湾の親日度はどうやら多層の構造をなしているようです。
ひとつは日本語世代の日本統治時代への「郷愁」、ひとつには若い世代のアニメやファッションなど日本文化への「憧憬」、これらが層を成して日本への好感度となっているようです。
日本は台湾との関係を大切にしていきたいですね。
(木走まさみず)