木走日記

場末の時事評論

原子燃料コンスチペーション〜使用済核燃料は完全に糞詰まり状態

 天然ウランが鉱山で採掘されてから原発軽水炉)で発電に使用されるまで大きく七つの工程があります。

工程1:ウラン鉱山で採掘
工程2:精錬工場で天然ウラン鉱石をウラン精鉱(イエローケーキ)に濃縮
工程3:転換工場でイエローケーキを六フッ化ウランに変換
工程4:濃縮工場で六フッ化ウランの濃度(ウラン238に対するウラン235の比率)を高める
工程5:再転換工場で六フッ化ウランから二酸化ウラン粉末を精製
工程6:燃料工場で二酸化ウラン粉末を燃料ペレットに加工、被覆管に封入、原発で使用されるウラン燃料
工程7:原子力発電所でウラン燃料による発電が行われる

 主な放射性廃棄物としては、工程5において劣化ウランが生成するのと、最後の工程7において使用済核燃料と低レベル放射性
廃棄物が生成されます。

 そこで使用済核燃料を再処理工場(六ヶ所村)において再処理を行いウランやプルトニウムを回収、回収したウランなどを、転換工場やMOX燃料加工工場に送り再利用することで、原子燃料を効率よく利用可能であるとするのが原子(核)燃料サイクルの根本的な考え方です。

図1:原子燃料サイクル

 このサイクルは日本においてはいまだ実現していません。

 MOX燃料加工工場(建設中)と再処理工場(試運転中)は未稼働、そして再処理工場が稼動すれば生成される高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、場所も方法もまったく未定のままだからです。

 原子燃料サイクルはサイクルしておらず膨大な量の使用済核燃料が各原発にプールされ続けています。

 使用済核燃料は完全に糞詰まり状態なのであります。

図2:原子燃料コンスチペーション

 英語で便秘をコンスチペーション(Constipation)といいますが、まさに現状は原子燃料コンスチペーションといえましょう。

 さらに事態を複雑にしているのは、再処理工場が稼動しなければ本来は発生しないはずの高レベル放射性廃棄物がすでに六ヶ所村にたくさん蓄えられている事実です。

 溜まりに溜まっている使用済燃料の一部をフランスなどの海外の再処理工場に依頼して、MOX燃料に変換してもらってきたのですが、フランスからはMOX燃料とともに再処理で発生した高レベル放射性廃棄物も日本に戻ってきているからです。

図3:原子燃料コンスチペーションその2

 原発再稼動しようがしまいが、この使用済み核燃料と高レベル放射性廃棄物の処理の問題は極めて深刻な問題です。

 ただ原子燃料コンスチペーションの状態で安易に原発再稼動すれば、処理できない使用済み核燃料や放射性廃棄物を増やし続けることになります。

 日本の原子燃料サイクルは高速増殖炉もんじゅも含めて、現状破綻してると表現しても過言ではないでしょう。

 完全にコンスチペーション、糞詰まり状態です。

 いまこそ原子燃料サイクルはどうするのか、また、最終処分場をどうするのか、六ヶ所村再処理工場の扱いも含めた根本的な議論が必要だと思います。



(木走まさみず)