木走日記

場末の時事評論

空気を読み過ぎる総理大臣は国民にとって面倒くさいです

子ども手当「無駄削減した分だけでやる」 鳩山首相

2010年2月14日20時58分

 鳩山由紀夫首相は14日、2011年度から月額2万6千円を満額支給する予定の子ども手当について、「子ども手当のために将来に借金を残したくない。財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを基本的には作ろうと思っている」と述べた。

 発言は、財源次第では満額支給にこだわらない姿勢を示したとも受けとれ、議論を呼びそうだ。

 首相官邸に中学3年生までの子どもをもつ父母10人を招いて開いたお茶会「リアル鳩カフェ」の席上で述べた。母親の一人から子ども手当について「お金を頂けるのはすごくありがたいが、子どもに借金を残すんじゃないかと将来が不安になる」という意見が出ていた。

 子ども手当民主党マニフェストでは、10年度に半額支給し、11年度に満額支給することになっている。5.5兆円が必要で、一部は配偶者控除の廃止分などをあてる予定だが、歳出削減を進めないと満額支給は厳しいとされる。

 首相は2日、野田佳彦財務副大臣が「(満額支給の)ハードルは高い」と述べたことに対し、「マニフェストに従って国民に信を問うたわけだから、とことん追求するべきだ。満額の支給に向けてできる限り努力する」と記者団に述べていた。(今野忍)

http://www.asahi.com/politics/update/0214/TKY201002140190.html

鳩山首相「満額をやる。全然ぶれてません」 子ども手当

2010年2月15日11時51分

 鳩山由紀夫首相は15日、2011年度からの子ども手当満額支給を見送るかのような14日の発言について「当然、予定通り、満額(支給)をやる。そのための財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていくということを申し上げた。それは変わらない」と説明した。首相公邸前で記者団に答えた。

 記者団から「発言がぶれているとも思える」と問われると、首相は「全然ぶれてません」と強く否定。「国債を発行して子ども手当の財源にしたいとは思わない。あくまでも歳出削減でやっていく」と語った。

 首相は14日、子育て中の父母10人とのお茶会で「財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを作ろうと思う」と発言。財源次第では満額支給にこだわらないとも受け取れる発言をしていた。

http://www.asahi.com/politics/update/0215/TKY201002150199.html?ref=reca

 うーん、またですか、ちょっと鳩山発言を整理しておきましょうか。

<2日>
「(満額支給の)ハードルは高い」(野田佳彦財務副大臣)に対しては、

マニフェストに従って国民に信を問うたわけだから、とことん追求するべきだ。満額の支給に向けてできる限り努力する」

つまり「満額の支給に向けてできる限り努力する」と応じます。

<14日>
「お金を頂けるのはすごくありがたいが、子どもに借金を残すんじゃないかと将来が不安になる」(お茶会「リアル鳩カフェ」の同席の母親の一人)に対しては、

子ども手当のために将来に借金を残したくない。財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを基本的には作ろうと思っている」

つまり「無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを基本的には作ろうと思っている」と応じます。

<15日>
「発言がぶれているとも思える」(記者会見での記者団)に対しては、

「当然、予定通り、満額(支給)をやる。そのための財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていくということを申し上げた」

つまり「満額(支給)をやる。そのための財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていく」と答えています。

 ・・・

 一時が万事この調子なのでしょう。

 この人の発言は、いつも曖昧模糊(あいまいもこ)になってしまう。

 鳩山さんは育ちの良さからなのか、発言相手の話をいったん肯定する話法を乱用しすぎているきらいがあります。

 彼が端から相手の意見を否定するのはメディア相手か、自民党相手ぐらいなもの(苦笑)です。

 上記の一連の発言も彼が相手の意見をいったん肯定してしまうところがそもそも発言趣旨のポイントが見えづらくなるわけです。

 思い切り鳩山さんの、相手を否定しないお人好しな話法を私なりに補足してみましょう。

 まず2日の「(満額支給の)ハードルは高い」(野田佳彦財務副大臣)に対しては、

「(はいそのとおりです。たしかにハードルは高いです。ハードルは高くとも)マニフェストに従って国民に信を問うたわけだから、とことん追求するべきだ。満額の支給に向けてできる限り努力する」

 カッコ内の相手の発言に対する全面肯定が隠されているのです。

 また、14日の発言も同様です。

「お金を頂けるのはすごくありがたいが、子どもに借金を残すんじゃないかと将来が不安になる」(お茶会「リアル鳩カフェ」の同席の母親の一人)に対しては、

「(はいそのとおりです。たしかに)子ども手当のために将来に借金を残したくない。財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを基本的には作ろうと思っている。(基本的にはそう思っているがハードルは高いのです)」

 興味深いのは、鳩山さんの「・・・という仕組みを基本的には作ろうと思っている」という説明ですね、「基本的には」というこの言葉には(作ろうと思っているがハードルは高いのです)というニュアンスがその行間に含まれているわけですね。

 ・・・

 世の中には、何を自己主張しているのかその一番言いたい点が曖昧模糊(あいまいもこ)になってしまう、その場の空気を読み過ぎてしまうお人好しの人間というのが確かにいます。

 鳩山さんはその場の空気を読み過ぎて発言相手の話をいったん肯定する話法を乱用しすぎているきらいがあります。

 結果として世間からは「発言がぶれているとも思える」(記者会見での記者団)わけです。

 相手を立てて空気を読み過ぎて何が言いたいのか曖昧模糊(あいまいもこ)になってしまうのは、飲み屋でのオヤジ同士の
政治談義や床屋談義ではよくありことです。

A「やはり小沢さんはダメだよな」

B「でも彼は政権交代の立て役者だし、今回の検察の暴走は行き過ぎだよな」

C「うん、自民党はおとがめ無しで民主党ばかり狙われている、そんな恣意性を確かに感じるな」

A「やっぱりねえ、そうだよねえ、・・・火のないところに煙はたたないとは言うモノのねえ、今回はねえ、行き過ぎだよねえ・・・(汗」

 最後のAの発言こそ空気を読み過ぎて意味不明になってしまっているのです。

 「火のないところに煙はたたない」と本当は言いたいが、B、Cと検察批判が続いたのでとりあえずそれを肯定して発言してるからわけわからん内容となります。

 この語り口こそ、空気を読み過ぎて何が言いたいのか曖昧模糊(あいまいもこ)になってしまう典型であります。 

 私の見るところ、この手の人間は実はお人好しが多いのです、八方美人的なですが。

 一国の最高責任者がそんなお人好しであることは国民にとってとても面倒くさいことです。

 いちいち行間を読まなければなりませんもの。



(木走まさみず)