木走日記

場末の時事評論

成人の日〜高度経済成長もバブルも知らない「平成」世代に期待する

 平成生まれが遂に成人となる記念すべき2010年の「成人の日」、「昭和」世代から「平成」世代へと日本の担い手が交代するその始まりの日です、この世代交代こそが低迷する日本の歴史的ターニングポイントとなると考えている不肖・木走であります。

 新成人が生まれた1989年は、バブル経済最後の絶頂の時期でした、そしてバブルがはじけこの20年、彼らには何の責任はありませんが新成人の20年の歩みは、同時に日本経済は「失われた20年」と表現される長期低迷期にはまり込み、出口を見出すこともできず今日デフレスパイラルの恐怖に喘いでいるわけです。

 昭和天皇崩御した1989年つまり平成元年は、政界などへの未公開株ばらまきで、「政治とカネ」が問題となったリクルート事件が起きたときでもあります、そしてそれも要因の一つとなり、参院選では与野党の勢力が初めて逆転しました。

 それからの20年、日本の政治は結果的に日本経済の長期低迷に無策であったわけです、政治は混乱ついに政権交代が起こり民主党政権が昨年誕生したのであります。

 40代後半である私自身の世代の責任を含めてこの20年、「昭和」世代は無策というか無力でありました。

 経済は疲弊し政治は混乱し先進国中一人日本だけがGDPを下げ続け、世界の中の日本の存在感はますます希薄になりつつあります。

 新成人にとって、就職など仕事は関心事の一つでありましょうが、今春卒業予定の高校生・大学生の就職内定率は、前年より大幅に落ち込んでおり、働く気力は十分にありながら2人に一人は「若年失業」候補となってしまっています。

 これらは「平成」世代の責任ではありません、すべて私達「昭和」世代の責任であるといっていいでしょう。

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 平成元年生まれの青年の話を2つ。

 都立高校を卒業後、地元の美容院で働きながら夜学で美容師の専門学校に通うI青年。

 「成人の日はお店も稼ぎ時だから、朝4時から準備に入るんです」

 寝坊が怖いから前の日にお店に詰めるといってました。

 彼は身長180センチの長身ですがその手を見て少し驚きました、アカギレで痛々しいのです。

 「まだ見習いだから私はお客様の洗髪(シャンプー)担当なんです、薬品で手があれちゃって」

 はにかみながらうれしそうに語る彼の顔は輝きに満ちていました。

 2月に国家試験があり美容師の資格を取り無事専門学校を卒業することが今の彼の当面の目標だそうです。

 「今の店でキャリアを積んでできるものならば将来自分の店を持てたらと思っています」

 成人の日にお店に泊り込むときは一着しかもっていないスーツを持ち込むのだそうです。

 「店長がお店がひと段落したら、成人の日のお祝いに記念に私の写真を撮ってくれるんです」

 素晴らしいと思いました。

 しっかりと手に職を付けあきらめないでがんばってほしいです。

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 短大を今年卒業予定のAさん。

 今まで50社以上試験を受けてきましたがまったく内定がとれなくて全滅でした。

 「事務職希望でしたが、最後は職種にこだわらず応募しましたがダメでした」

 彼女は今年、大きな決断をしました。

 介護福祉士の国家試験資格取得を目指すといいます。

 コンビニでアルバイトをしながら、NHK学園の通信制高校で勉強をすると言います。

 労働と学業の両立は大変だよと言いますと、中学・高校の時バスケ部で鍛えたので体力だけは自信があると屈託なく笑います。

 「親も余裕がありませんから、学費は自分で稼がないとなりません」

 素晴らしいと思いました。

 どうか立派な介護福祉士を目指して最後まであきらめないでがんばってほしいです。

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 私達「昭和」世代がふがいないからか、彼ら「平成」世代はたくましく育っていると私には思えます。

 就職状況も厳しく親世代の収入も当てにできない彼らは、少なくとも私が20歳だったときよりも、はるかに真剣に人生について考えており、何とか自分の人生を充実させようと真摯に努力しています。

 高度経済成長時代もバブル時代も知らない「平成」世代。

 生まれてから彼らは斜陽する日本しか知りません。

 しかし彼らには私達「昭和」世代にはない気骨が感じられます。

 彼らは日本の挫折を見て育ちました。

 停滞する日本を真に活性化するには、「昭和」世代から「平成」世代へと日本の担い手が交代することかも知れません。

 長期自民党政権の終焉は単に政治的な意味合いだけではなく、「昭和」世代の終わりの始まりだったのかもしれません。

 「平成」世代に大いに期待します。



(木走まさみず)