木走日記

場末の時事評論

ホワイトカラーエグザンプションで露呈した安倍政権の限界

●残業代ゼロ 首相「少子化対策にも必要」〜あまりにもピンボケで能天気な安倍発言

 5日の朝日新聞記事から・・・

残業代ゼロ法案「次期通常国会に提出」 厚労相が強調
2007年01月05日12時24分

 柳沢厚生労働相は5日の閣議後の記者会見で、一定年収以上の会社員を労働時間規制から外し、残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入に与党内から慎重論が出ていることについて、「次期通常国会に法案を提出する方針を変えるつもりはない」と改めて強調した。

 柳沢厚労相は「与党内で十分な理解がいただけていない」と認めつつ、「企画・立案を担当するホワイトカラーの生産性を上げるためにも、労働時間ではなく、どんないいアイデアを出し、制度化したかで成果をはかるべきだ」と述べた。

http://www.asahi.com/life/update/0105/007.html

 一定年収以上の会社員を労働時間規制から外し、残業代をなくすホワイトカラー・エグゼンプションの導入に関して、柳沢厚生労働相「次期通常国会に法案を提出する方針を変えるつもりはない」と改めて強調したそうであります。

 同じく5日の朝日新聞記事から・・・

残業代ゼロ 首相「少子化対策にも必要」
2007年01月05日22時01分

 安倍首相は5日、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。さらに「(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化(対策)にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」とも述べ、出生率増加にも役立つという考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う」と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ。

 ただ、連合などはサービス残業を追認するもので過労死が増えるなどとして導入に猛反対している。このため、夏の参院選をにらんで与党内でも慎重論が広がっている。

 しかし、首相は通常国会への法案提出については「経営者の立場、働く側の立場、どういう層を対象にするかについて、もう少し議論を進めていく必要がある」と述べるにとどめた。
http://www.asahi.com/politics/update/0105/007.html

 政府・与党は、残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入に関して、予定通り次期通常国会に法案を提出する方針を強調している中、「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入すれば、結果的に労働時間短縮につながり、家で過ごす時間が増えれば少子化対策としても有効であると会見で述べた安倍首相なのであります。

 ・・・

 うーん、安倍首相就任以来4ヶ月目にして、正直一番考えさせられた首相コメントであります。

 残業代をなくすという経団連労働基準法改正案「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、その内容を本当に正しく理解しての発言なのでしょうか。

 二つの点でこの安倍発言は政治家として甘いですね。

 まず一点目は、この改正案が結果的に労働時間短縮につながる保証など何も担保されていないことをご存じないのか、理解していないのか?

 このホワイトカラーエグゼンプション制度は、経営側が悪用すれば時間外労働に対する賃金の支払いを免れたり、労働時間をかえって実質的に長くする可能性が指摘されていることをご存じないのでしょうか?

 そしてより致命的だと思えるのは、その政治家としての判断の甘さ、発言のタイミングの悪さです。

 なぜ、統一地方選参院選を控えた2007年この時期に、このようなアメリカ圧力による大企業優先の労働法改悪案を支持表明してしまうのか?

 このタイミングで実質庶民の減収に繋がりかねないリスクのある、少なくとも慎重に徹底議論すべきホワイトカラーエグゼンプション制度を安易に支持表明するその政治センスの無さには呆れてしまうのです。

 失礼ながら、もしかしたら安倍首相は税制・労働問題などに関しては庶民感覚に疎く政策に明るくないのではないかと、うすうす疑念を持っていたのですが、今回のこの安直な発言で私の心の中でその疑念は確信に変わってしまいました。

 あまりにもピンボケで能天気な安倍発言なのであります。

 ・・・

 ふう。

 今日はこの多くの問題を抱える安倍政権が次期国会で導入法案を目指しているホワイトカラーエグゼンプション制度についてその問題点を徹底的に検証いたしましょう。



●まず今回のホワイトカラーエグゼンプション制度が外資企業及び大企業以外誰も利益を得ないことが自明なその胡散臭い経緯を押さえておく

 まずホワイトカラーエグゼンプション制度がなぜ今この時期に導入が検討されているのか、その経緯についてしっかり押さえておきましょう。

 ここに昨年6月に発行された日米投資イニシアチブ報告書である「成長のための日米経済パートナーシップ」というレポートがあります。

 このレポートにはアメリカ政府が正式に「ホワイトカラーエグゼンプション制度を日本に導入するよう要請」したと報告されています。

 「成長のための日米経済パートナーシップ」より該当箇所を抜粋引用。

(3)労働法制
米国政府は、労働移動を促すことが組織の価値の極大化を図る上で重要であると指摘し、この観点から次の四点を挙げた。
第一に、米国政府は、確定拠出年金制度の拠出限度額の引き上げ、給与天引きではない従業員拠出を認めること、及び従業員が最適な投資戦略を決めることや適時、ポートフォリオのリバランスなどの適切な行動を確保することを助けるために、投資助言サービスを任意で利用できることを認めるよう要請した。米国政府はこれらの変更が確定拠出年金制度をより魅力的なものにし、従業員、事業主双方に利益があると述べた。
第二に、米国政府は、解雇紛争に関し、復職による解決の代替策として、金銭による解決の導入を要請した。
第三に、米国政府は、労働者の能力育成の観点から、管理、経営業務に就く従業員に関し、労働基準法による現在の労働時間制度の代わりに、ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入するよう要請した。
第四に、米国政府は、労働者派遣法による規制については、限られた時間の仕事や職場(選択)の自由を希望する者を含む労働者により多く雇用の機会を提供する必要があるとの観点から、これを緩和すべきであると指摘した。

成長のための日米経済パートナーシップ 10ページより抜粋
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/0606nitibei1.pdf

 つまりアメリカ政府が世界的に進めるグローバル資本主義導入の一環として日本国政府に対しホワイトカラーエグゼンプション制度を導入するよう要請したわけです。

 このレポート自体、それ以前よりのアメリカ政府の日本における自国企業の収益性・効率性を上げるための日本の親米保守派に対するグローバル資本主義導入圧力の結果なわけですが、実はこの昨年6月のレポートは、その一年前2005年6月に公表された日本経団連の提言を受けてのものであります。


 日本経団連は、2005年6月21日付けでホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」というレポートを公表しています。

ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言
2005年6月21日
(社)日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/teigen.pdf

 この17ページに及ぶ小レポートに今日国会で検討されている日本版ホワイトカラーエグゼンプション制度の骨子が始めて登場したのであります。

 フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』がわかりやすくレポート内容をまとめていますので抜粋しましょう。

日本経団連の提言内容
2005年6月21日付けで公表された日本経団連の提言するホワイトカラーエグゼンプション制度の内容は以下の通り(概要[2]・本文[3])。

■適用対象者(年収条件は例示)
・現行の専門業務型裁量労働制の対象業務従事者(賃金要件を問わない)
・法令で定めた業務の従事者で、月給制か年俸制、年収が400万円か全労働者の平均給与所得以上の者
・労使委員会の決議により定めた業務で、月給制か年俸制、年収が400万円か全労働者の平均給与所得以上の者
・労使協定により定めた業務の従事者で、月給制か年俸制、年収が700万円か全労働者の給与所得上位20%以上の者
■除外内容
・労働時間・休憩・休日・深夜業の規制からの除外
■届出義務
・労使合意により対象業務とされた場合には、所轄の労働基準監督署に届出が必要
■賃金控除
・遅刻・早退・休憩時間に関する賃金控除は行わない。欠勤は賃金控除の対象
■労働者の健康への配慮
・企業の業種・業務・職種内容に応じ、産業医の活用方法・取り組みなどを自主的に労使で決定
■規定方法
労働基準法第41条(労働時間規制の適用除外)に追加

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%82%B0%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

 ここに条件付きながら年収400万円以上の労働者の一切の残業賃金除外(労働時間・休憩・休日・深夜業の規制からの除外)がはじめてうたわれたのであります。

 しかも都合のいいことに「■労働者の健康への配慮」では、「・企業の業種・業務・職種内容に応じ、産業医の活用方法・取り組みなどを自主的に労使で決定」とし、経営側がその労働者の保護を放棄できる逃げ道まで設けられたのであります。

 ・・・



●「外圧」を利用したのか利用されたのかは微妙だが好都合だったのが日本の財界

 昨年9月にはこの日本経団連提言を後押しするように在日米国商工会議所(ACCJ)から「労働時間法制の見直しおよび自律的な労働時間制度の創設を(Modernize Work Hours Regulation and Establish a White-Collar Exemption System)」という意見書が出されます。

在日米国商工会議所意見書
労働時間法制の見直しおよび自律的な労働時間制度の創設を

Modernize Work Hours Regulation and Establish a White-Collar Exemption System
在日米国商工会議所 / The American Chamber of Commerce in Japan
http://www.accj.or.jp/document_library/Viewpoints/VP_WhiteCollar.pdf

 この在日米国商工会議所の意見書の冒頭部分を抜粋いたしましょう。

Recommendations

The American Chamber of Commerce in Japan (ACCJ) urges the Ministry of Health, Labor and Welfare (MHLW) to modernize the current work-hour regulations to better reflect the changing social and economic environment, including Japan’s evolution into a services-oriented, knowledge-based economy and the diversification of the Japanese workforce.

To help ensure that its labor market makes the greatest possible contribution to the nation’s economic productivity and international competitiveness, and in line with Prime Minister Abe’s platform of promoting a system that reforms working habits and styles and allows women, mid-level employees, and the elderly to more readily enter the work force, the Government of Japan may want to consider the following:

・An overtime system modeled on the U.S. white-collar exemption system would support long-term economic growth with healthy levels of labor mobility
・Broadening the narrow definitions of “managerial and supervisory positions” under the Labor Standards Law (LSL) to harmonize them with the needs of the new white-collar exemption system
・Deregulating the existing discretionary work-hour system to eliminate burdensome procedural requirements or simply replace the system with a new white-collar exemption system that encompasses a broader population of white-collar workers, including those already within the current discretionary work system
・ Eliminating the LSL requirement to pay a late-night work premium to exempt employees, including those within the new white-collar exemption system

提言

在日米国商工会議所(ACCJ)は厚生労働省に対し、現行の労働時間法制を見直し、サービス業の台頭、知識集約型経済への移行および就業形態の多様化等社会経済環境の変化に対応した制度の創設を要請する
日本の労働市場が日本国の経済的生産性および国際競争力に最大限寄与するものとなるよう、また雇用慣行・就業形態の改革により女性、団塊世代および高齢者が労働市場に容易に参入できる仕組み作りを推進しようとする安倍政権の方針を支援する方策として、日本政府には以下に掲げる事項をご検討いただきたい。

・健全な雇用流動化を促進し、長期的な経済成長を実現するために米国のホワイトカラー・エグゼンプション制度を参考とした労働時間制度を導入する。
・新しいホワイトカラー・エグゼンプション制度に適合するよう、労働基準法で限定的に定義されている「管理監督者」の範囲を拡大する。
・現行の裁量労働制を巡る規制を緩和して繁雑な手続的要件を廃止するか、裁量労働制の対象労働者を含めたより広範囲のホワイトカラー労働者を対象とする新しいホワイトカラー・エグゼンプション制度と完全に置き換える。
管理監督者等適用除外労働者にも深夜業の割増賃金を支払わなければならないとする労働基準法の規定を廃止し、新しいホワイトカラー・エグゼンプション制度の対象者も含め深夜労働割増賃金の支払の適用除外とする。

在日米国商工会議所意見書 2ページより引用
http://www.accj.or.jp/document_library/Viewpoints/VP_WhiteCollar.pdf

 ここにはっきりと、安倍政権に対し名指しで「安倍政権の方針を支援する方策として」「米国のホワイトカラー・エグゼンプション制度を参考とした労働時間制度を導入」するよう要請しているのであります。

 米国が日本に求めているのは「米国のホワイトカラー・エグゼンプション制度を参考とした労働時間制度」であるとはっきりとうたわれているのであります。

 その要請内容はほぼ日本経団連の提言内容に即したものでありますが、その重箱の隅をつつくような几帳面な指導内容は少しばかりこっけいですらあります。

 一例だけ。

The proposed white-collar exemption system should not create the need to follow additional procedures. For example, there should be no requirement for a labor-management agreement or labor-management committee approval. While ACCJ acknowledges that these procedures could reduce the possibility of future disputes, they are also likely to lead to disputes (or standoffs) at the time of implementation.

ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入にあたり、必要手続が増える事態は避けねばならない。例えば、労使協定の締結や労使委員会の決議を義務付けるべきではない。これらの手続により、将来的に争議が発生する可能性が抑えられる可能性があることはACCJも認識しているが、また同時に、導入時において争議(または対立)が起きやすくなると考えられる。

在日米国商工会議所意見書 5ページより引用
http://www.accj.or.jp/document_library/Viewpoints/VP_WhiteCollar.pdf

 在日米国商工会議所は、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を日本政府が導入する際にはきっと労使で揉めるだろうから、「労使協定の締結や労使委員会の決議を義務付けるべきではない」と、ごていねいに日本政府に注文を付けているのであります(苦笑

 もちろん日本進出を果たしている自国企業のためなんですが。

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 ここまで検証した通り、ホワイトカラー・エグゼンプション制度のその導入目的は、明らかにアメリカ政府が世界的に進めるグローバル資本主義導入の一環として日本国政府に対し要請した結果に応えるためであります。

 そしてこの「外圧」を利用したのか利用されたのかは微妙(苦笑)ですが、好都合だったのが日本の財界です。

 実は過重労働やサービス残業に対する行政の監督強化に不満を持ち規制緩和をいっそう推し進めたいという財界側の意向にこの「外圧」はとても好都合だったのであります。

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●「ホワイトカラーエグザンプション」制度そのものは良しとしても、それを運用するフェアなルールが今回の提案ではまったく担保されていない

 私は小さいとは言えIT関連業を営んでいる経営者です。

 本来なら企業家として、人件費が削減できるので競争が激化するグローバル資本主義化が進む未来においても競争力を維持することが可能になるホワイトカラー・エグゼンプション制度の主旨には大賛成なのであります。

 たとえば同じ賃金の二人の従業員が同レベルの仕事をこなすのに、優秀なA君が8時間で完了し残業もなく定時に帰宅、対する不出来なB君は12時間掛かり4時間の残業の後ようやく完了したとします。

 現状ではB君に比し時間当たり生産性が1.5倍も優秀なA君には残業代はつかず、不出来なB君には残業代が発生してしまい、これでは労働者間の公平・意欲創出・生産性向上・企業の競争力の確保、あらゆる面で企業経営にとってはマイナスなわけです。

 同じ仕事量でも、だらだらやった方が高収入になるのはやはりおかしいですし、このようなことを認めていては労働意欲の向上を阻害するだろうことは否めません。

 原則としてですが知的労働者に時間基準ではなく成果物基準で報酬を与えるという意味でホワイトカラー・エグゼンプション制度の主旨には何も異議はありません。

 しかしです。

 今回のアメリカ圧力の安倍政権の目指すこのホワイトカラーエグザンプション制度には断固反対なのです。

 なぜなら「ホワイトカラーエグザンプション」制度そのものは良しとしても、それを運用するフェアなルールが今回の提案ではまったく担保されていないからです。

 具体的に説明しましょう。

 今回の目的は財界側がどんなにきれい事を並べても、企業側としてのその真の目的は、残業や休日出勤の割増賃金を払わなくて済み、試算では11兆5,851億円もの人件費が削減できる点にあるのは明らかです。

 また達成すべき成果をもとに時間という概念を考えないで人員配置などの経営計画をたてやすくなり、残業の多寡による給与変動がなくなること、さらには、対象従業員の健康管理義務が無くなることも経営側の大きな狙いのはずです。

 このような経営側の狙いは理解はできるのですが、問題はそれを運用するフェアなルールが今回の提案ではまったく担保されていないことです。

 日本経団連の提案では、労働時間という基準をなくした中で、給与はどう支払われるべきかといった点について法案化を含めた具体的な対策がまったく示されていません。

 また、超過労働への対処策については基本的に個々の企業の問題としているため、短時間で成果を上げた労働者に賃金はそのままで次々に仕事を与えるだけ(労働強化)ではないのか、無賃金残業を合法化しようとするだけ(労働時間強化)ではないのか、労働者の健康管理コストを削減したいだけではないのか、といった疑問点に対して回答がありません。

 これらの疑問は決して杞憂ではありません。

 日本の大企業が今回の「ホワイトカラーエグザンプション」制度を安易に導入したらいったい何が起こるでしょうか。

 体力のある一部大企業でも労働環境は激変するでしょうが、下請け中小企業は目も当てられない惨状になるでしょう。

 生き残り競争に勝つために一部の中小零細企業でこの制度の悪用が始まるのは必至と思われるからです。

 一部の中小零細企業を中心に労働時間の長時間化、サービス残業の合法化を招くでしょう。

 その流れは一度始まったら誰も止められないでしょう。

 悪貨は良貨を駆逐すると言いますが、適法な労働時間や賃金体系を守ってきた良心的な零細企業には、この生存競争に勝ち目はまったくないでしょう。

 高い賃金に耐えかねて廃業するか、制度の悪用に手を染めるか、いづれかの選択肢しか残されていないでしょう。

 ・・・

 私は経営者の立場として、このアメリカ式「ホワイトカラーエグザンプション」制度の安易な導入には、フェアなルールが今回の提案ではまったく担保されていないという一点で、断固反対なのであります。



●露呈した安倍政権のアメリカ追従のネオリベ政策の限界

 今回のホワイトカラーエグザンプション制度ですが、選挙への影響を心配して与党内でも慎重な意見が少なくないようです。

 おそらく議会にはかられることは安倍さんはこのタイミングにおいては断念することでしょう。

 ただ油断はできません。

 小泉政権以来安倍政権においても新自由主義ネオリベラリズム)を標榜し、成果主義などアメリカ政府が世界的に進めるグローバル資本主義に追従する施策が目に付いてきたのは衆目の一致するところだからです。

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 ここに来て非正社員と正社員間の所得格差拡大や企業間の業績格差拡大など、ネオリベ政策の限界が目に付くようになってきました。

 そしてこの傾向は日本だけではなくアメリカを始め国際的にも顕著な傾向にあります。

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 安倍首相は、アメリカ式「ホワイトカラーエグザンプション」制度の安易な導入は、諦めるべきです。

 今回の「ホワイトカラーエグザンプション」制度導入検討は、安倍政権のアメリカ追従のネオリベ政策の限界が露呈したのだと思います。



(木走まさみず)